起きたらレイヴンだったんだが、なんかコレ違うくね? 作:⚫︎物干竿⚫︎
はい、どうもへっぽこ新人レイヴンのレストレイドです。
光陰矢の如しとはよく言ったもんで、この世界でおはようございますからのマッドアイとの戦いから1ヶ月が気が付けば過ぎていました。
その間に少しずつだが俺が今居る場所の事もわかって来た。
まず第一に大災害によって地上は滅び、ここはそれから逃れるために建造されたアーコロジーとして機能している超巨大なジオフロントだ。朝昼晩があって、曇りや雨の日まであるのにとてもそうは思えないが確かにここは地下深くにある。
レイヤード08と言う名前で、ここみたいなのが最低でも8箇所はこの世界にあるらしい。とは言え、レイヤード間の行き来はもちろん連絡を取り合ったりとかは出来ないが。
ちなみにだが、ここを管理しているのはAIらしい。中央管理局と言うこのレイヤードの中央に堂々と聳える塔のように見えているものがそれだ。なんでこうなったかと言うと、地下に潜ってしばらくは良かったんだが力を持った企業同士が覇権を巡って相争う戦国時代になって全滅一歩手前まで行ったところで、ようやくやめようやとなってその後、またそう言う事にならないようにってAIに統治を委ねたそうだ。そんで、AIの方も人類の保全が最大目標なのですんなりとそうなった。なんだかんだで企業が強い力を持ち続けてるのもこの頃のがそのまま続いてるんだそうな。
さて、その企業だが勢力としては二分するような感じでレイヴンを使ったり普通に販売競争やらで競り合っている。
まずは俺を贔屓にしてくれているカーマインアームズとそれに連なる企業の一派。AIの管理に肯定的で、今の秩序を良しとしている。
もう一方が、戦国時代の後に台頭して来たベルゼラインテクノロジーを主としたどちらかと言うと新興企業群の一派。AIの管理には否定的で人間は自らで自治をすべきだと野心的。一応は管理体制下にはあるが、虎視眈々とチャンスを伺ってるんじゃないかと言うのは割と付き合いの多いカーマインアームズの傭兵起用部の人の談。
ACのパーツにも両者の思想はしっかりと現れていて、カーマインアームズの一派は旧時代から積み重ねた技術に裏打ちされた非常に安定した高品質さが売りだ。未だに俺のACの大半を占める貸与パーツはカーマインアームズの前身のゼネラルファイアーアームズが世に送り出した最初期の第1世代型ACマーヴのパーツだ。第2世代型ACが主流の時代には型落ちも良いところだが、それでもレイヴンの操るACに求められる基準の最低限を満たしているのが高い技術の証拠だ。
で、ベルゼラインテクノロジーの一派は光学兵器などの先進的なパーツが多い。荒削りな面も多く当たり外れが激しいとも言われる事も多いが、第2世代後期型ACとでも言うべき新型機も見られる。噂によると第3世代型ACなる物を開発していると言われているが、真実は定かではない。とにかく先進的で新境地の開拓的な面が強い。マッドアイが装備していた自機の姿を投影する事で相手の認識を撹乱する特殊兵装もここの物だ。
そして、レイヴンズネストだが、仲介業者ではなく中央管理局の中にある部署のひとつでレイヤードにおけるACとレイヴンの管理と監視のための組織であるらしい。戦国時代にそれはもう企業の鉄砲玉としてレイヴンが暴れ回ったそうで、AI様が危機を覚えたようだ。諸々のサポートが手厚いのもレイヴンが暴走しないようにするための飴政策だそうで。
「さて、今日はなんか目ぼしいニュースはあるかな?」
壁に埋め込まれたテレビを付けると小綺麗な女性のニュースキャスターの姿が映し出された。
『本日未明、カーマインアームズ社の輸送トラックがイーストフロントよりの輸送中に全労働者の代表を名乗る武装集団によって襲撃を受けました。幸い、同行していたレイヴンによって撃退され怪我人も0との事ですが、フロント間を行き来する方々はご注意ください。中央管理局よりセキュリティーガードによる巡回警備を増強する旨が発表されてはおりますが………』
「おうおう元気だねぇ。まぁ、俺達レイヴンからしたら丁度良い小遣い稼ぎ相手なんだが」
この1ヶ月の間に何回か護衛依頼の話が来て俺も返り討ちにしている。だって連中の用意してるのって機関銃乗っけて鉄板増強したバンか輸送用2脚軽MTを機関銃で武装したのが精々だし………おかげ様で俺も結構稼がせて貰いました。
で、ニュースの中にあったイーストフロントだが、このレイヤードで人が暮らすようになってから新造された区画で大元のレイヤード08を中心にして東西南北に増設されていてそれぞれに用途が割り振られている。
まずニュースにも出て来たイーストフロントはレイヤード中の重工業などの工場が集められていて、カーマインアームズとベルゼラインテクノロジーが一番にっこり笑顔の下で腹をナイフで刺しあってる場所で両社の鉄砲玉のレイヴン同士のドンパチも多い。
他の3つのフロントだが、農業や畜産と言ったレイヤード08の食糧供給を一手に担う生命線のサウスフロント。各社の専門研究所や大学の研究室がある科学研究の最前線ノースフロント。温泉旅館にビーチやらなんやらとちゃんぽんでカオスな娯楽のためのウエストフロント。
地底生活300年ほどの間に戦国時代やりながらここまでやってんだから全く人間ってのは大した生き物だ。しかも絶滅寸前から拡張しまくった全域に人住んでんだから感心するやら呆れるやら。
んで、俺が住んでるのはそのドンパチの最前線イーストフロントの居住エリアの片隅にある倉庫だ。基本的にはACのガレージでそこに寝泊まりするためのスペースをプレハブでポン付けした感じだ。
昨日のスポーツの試合がどうだのと目ぼしいニュースも無いのでテレビを消して携帯を手に取る。ゴツいスマホみたいな感じの見た目で、それ相応に頑丈な代物である。
「やっぱ、なかなか全身のパーツは揃わないよなぁ」
Kから送られて来たカタログをつらつらと流し見して行く。今の俺のランクで買えるパーツが表示されているが種類はそう多くはないし、そもそも金が足りないから何も買えない。
ちまちまと金を貯めてジェネレーターとブースターは買い替えた。カーマインアームズ傘下のオーガスタエンジンって会社の製品で、XAM06マドロックと言う並程度の重量にエネルギー供給出力に優れたジェネレーターとベルゼラインテクノロジーの軽くて瞬間ブースト出力に特化したSEAGⅢlightと言うブースターだ。
このおかげでトップスピードはそこまでだが、瞬発力はかなりのものになった。代わりに貯めた金は生活費分抜いたら機体の維持するくらいしか残らなかったが。予定としては金が貯まったら次は腕部をカーマインアームズの中量腕部パーツのアイゼン・アルトに買い換えるつもりだ。
ちなみにマッドアイはこのアイゼン・アルトのコアと頭にベルゼラインテクノロジーの第2世代型ACアーテルⅡの腕と脚部のキメラで多分ブースターは俺のと同じでジェネレーターはわからん。
アセンブリに関してはその程度で他は変更は無し。弾の無駄撃ちが減って来たので対ACでも無い限りは弾を撃ち切る事も無いし、とりあえずは両手の装備は今のライフルとマシンガンで問題無い。本体の装甲がペラい?これでも第2世代AC基準で近代化改修はされているし、重量も中量2脚に部類こそされてるがほぼ軽量2脚並に軽いからその分回避に余力があるからそれでどうにかする感じだが、そもそも俺も購入権はあるがぶっちぎりで値段が高い、一番安い頭部ですら40万を超えるイスルギ重工業ってとこの重量級ACのフソウでも無きゃ装甲で耐えるって言う戦術は取れない。
だからこそACの立ち回りは基本的にほとんど地に足を着けずに飛び回るようなものになる。レイヴンと言う傭兵達の呼び名もそこから生まれたらしい。戦場を舞う死を告げる鳥、なんて呼ばれた事もあるそうな。
変わり映えのしないカタログをずっと見ててもしょうがないからカタログを閉じてリビング兼ベッドルームな部屋の数少ない家具の今座っているソファーの丁度後ろ、出入り口の側にあるロッカーを開けて中に入れてあるパイロットスーツに着替える。防弾防刃、対衝撃に優れたインナーの上から更にアーマーと強化外骨格を兼ねた装備で、そもそもこれが無きゃまともにACの操作はままならない。
ぱぱっと着替えを済ませてヘルメットを脇に抱えてプレハブ小屋を出る。外はキャットウォークの上でそのままACの方まで移動出来るようになっている。上のランクのレイヴン連中はどうか知らないが、俺みたいなランクの低いレイヴンの標準的な住処はこんな感じだ。
ACのところまで移動してコアの頭部の少し後ろ部分にあるハッチを開けてそこから中に入る。丁度頭部の真下、最もコアの奥深いところにACのコックピットブロックは配置されている。ちなみに緊急脱出装置は頭部パーツごとコックピットブロックを覆っている箇所を吹っ飛ばした後に戦闘機よろしくシートごと射出される仕組みになっている。まぁ、この機能使われる事は滅多にないんだが。だって、大体使う前に死ねるし。
非常灯を頼りに主電源を入れてACを起動させる。ジェネレーターの駆動する音に合わせてモニターやら計器類に火が灯って行く。
『システム通常モード起動。おはようございますレイヴン』
「おはようさん。今日もいつも通り訓練頼むぞ」
この電子音声だがACに搭載された機体管制とパイロットの補助の両方をしてくれる優れものサポートAIでCOMと言う。レイヴン1人1人に専用で割り振られていて、ACに乗っている時間が延びれば延びるだけパイロットに最適化されて行く学習型だ。実際、十分に成長したCOMはパイロットが操作しなくてもある程度はACを動かせるようになるらしい。
それを活かして回避をCOMに任せて射撃に専念したりとかも出来るようになるそうだが、当然ながらそこまで至るには膨大な時間と経験値を与えなきゃいけない。必然、振るい落としに残った歴戦のレイヴン達の特権になるし、そもそもそのレベルになってるレイヴンならCOMの補助動作より早く機体を動かせるからおまけくらいの位置付けだ。
『システム戦闘モード起動。シミュレーションパターンビギナー展開します』
このシミュレーションプログラムもレイヴンズネストの傭兵支援のひとつで、俺がやっているのはEランクからDランクまでの新人レイヴン向けの物でとにかくひたすらに現れるMTを倒し続けるだけのシンプルなものになっている。そんなもので訓練になるのかと思うが、やるとやらないとじゃ雲泥の差がある。少なくとも最低限の腕は磨ける。
実機を動かすので命の危険が無いのは致命打になり得るコアへの攻撃が禁止されているウエストフロントでも人気の見せ物ACアリーナだけで、コレに参加するにはDランクのライセンスが必要だ。しかもアリーナ専門でやってるような奴らが多数を占めている都合上、腕を磨く云々以前に叩き潰されかねない。
要するに俺が主に受けてるような護衛依頼やらでちまちま小遣い銭稼ぎつつ腕を磨け、と言う訳だ。たまにマッドアイみたいなのが出てくる事もあるがその時は運が悪かったと諦めるしかないが。
ん?実機動かす訳じゃないのになんでパイロットスーツ着てるかって?普通の服とじゃ当たり前だが感覚が違うからだよ。あとはシミュレーション中に仕事のお呼びがかかった時に即応出来るように。
シミュレーション内ではあるが、ジェネレーターとブースターを交換したおかげでマッドアイと戦った時とは隔絶的な機敏さでACが動く。その分上下運動もより激しくなって最初は酔ったが慣れた。
ブースターを噴射してジャンプしつつ斉射されるマシンガンを躱しつつ眼下の2脚MTにライフルを撃ち込んで破壊する。すぐさま別のMTからロックされて警告が表示されるが、これもブースターの短噴射で落下タイミングをずらして回避してMTを撃破する。
息を吐く間も無く今度はミサイルの警告が表示され、ミサイルランチャーを装備した汎用の人型2脚MTがミサイルを撃ち込んでくる。ミサイル使えないEランクのレイヴン向けなのにミサイル積んだ奴が出て来るのはズルいと思うんだ!頭の中でレイヴンズネストに文句を垂れながら左手のマシンガンで迎撃する。フルオートではなく指切りの短連射でなるべく弾を抑えながら弾幕を張りミサイルを撃ち落としながらMTに近付いてマシンガンとライフルの両方をぶち込んで撃破。
ちなみにミサイルはライセンスがDランクからの解放で、ACと言えば左腕のブレードだがコイツに至っちゃCランクまで上げないとそもそもショップに並ばないと来ている。もしかしなくても低ランク帯のレイヴンが割とあっさり死ぬ要因だと俺は思う。
特にこの日は仕事の呼び出しがかかる事も無く、普通にシミュレーションだけやって飯食ってシャワーを浴びて寝た。
レストレイドくんなヤベー時代の後の比較的安定してる時代に運良く放り込まれました。もし、文中の戦国時代だったら?起きた瞬間人生終わってました。
今のところは完璧で素敵なAI様です。今のところは。
「市民。あなたは幸福ですか?あなたの幸福の手伝いをします」
本作ではレイヴンはライセンスによる格付けがされています。依頼の達成率に応じて課される昇格試験を経てランクアップする方式。
Eランク:最低限レイヴンとして認定されるレベル。
Dランク:駆け出しのレイヴンとして他レイヴンからも認められるレベル。
Cランク:一端の実力を備えた名実共にレイヴンを名乗れるレベル。
Bランク:腕利きの傭兵として企業からのお抱えの話が来るレベル。
Aランク:一般市民でも名前知ってるレベルの凄腕。
大体こんな感じ。マッドアイはBランクまでは届かないCランク帯を彷徨ってるうだつの上がらない一般レイヴンだけどアリーナだとそこそこ人気のある低ランカー。