人外に勝利して転生したらなんか溺愛されるようになった。   作:you are not

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強い人外が自分より強い奴に脳焼かれるのいいよね。関係ないけどFGOが好きです。


殺した悪魔が惚れてた話

 俺の名前はアダム‥‥今はデイモンって名前で生きている。別に改名したとか偽名を使っているわけじゃない。ただ死んで生まれ変わった。俗にいう転生をしただけの話。

 

 前世の俺はフリーランスの殺し屋だった、怪物専門のな。仕事内容はゴブリンやらドラゴンやら魔獣やらを駆除する。やりがいがあって、ノルマも残業もない、成長できる頭を使わなくていい楽な仕事だったよ。ハッハッハッ、嘘は言ってない。

 

 実際、周囲からも称えられてた。

「アダムさんが来てくれて本当に助かりました」

「さすが怪物殺しだ。やっぱ頼りになりますね!」

 

 ……で、仕事終えたらこれだよ。

「あの人、ちょっと怖いよね」

「あんな人が街に居続けるのはちょっと……」

「もう仕事終わったなら帰ってくれませんか?」

 あまりの扱いの酷さに俺泣いちゃいそうだった、というか一回男泣きした。

 

 それもこれもガキの頃にドラゴンに故郷襲われて、一人で生きて行かなくちゃならなくなったせいだ。あのクソトカゲ、蘇らせてもう一回絞めてやりてぇと何度も思った。

 

 そうして俺は気味悪がられて、利用されて、疎まれながらも懸命に生きてきた。そんなころだったかな、あいつと出会ったのは。

 

 俺は依頼を受けた。いつものように酒場の隅で周りと距離置かれながら酒飲んでると仕事の話をされて、いつものように報酬の話をしてたのは覚えてる。ただ違ったのは話を持ってきたのがその国のお偉いさんなのとターゲットが大物だったこと。

 

『隣国を滅ぼした大悪魔の討伐』

 

 聞いた時は何で俺に?と思ったよ。そういうのは大抵、国お抱えの精鋭騎士どもが相手して自国の名声を上げようとするもんだ。不思議に思いながら話を聞くとすぐに理解できた。なんてことは無い、ただその精鋭騎士どもが全滅してるってだけの話で、しかも、この国に近づいてきてるときた。そりゃ、余所者にも頼るわなと納得した。

 

 俺はその依頼を承諾し、大悪魔リリスと戦うことになった。胸を貫かれながら笑うリリスを見て、盛大に死んだ。相打ちだった。

 

 そしたら、俺はただの赤ん坊に転生してた。伝説とか噂だけかと思ってたから正直困惑しっぱなしだったよ。心を置いてけぼりで体が勝手に泣いて笑うんだぜ?ちょっと座り心地が悪かったがそれ以上に期待で満ちてた。

 

 ―――それが、俺の第二の人生の始まりだった。

 

 

 ―――

 

 

 転生してから十二年。俺はすくすく育って、気づけば身長はパン屋の棚にちょっと足りない程度になっていた。体格は前世と変わらず、中肉中背の健康体なのはいいのだが、前世と容姿が顔つきや髪色どころか、手の皺までも一緒だった。そのことについて多少、心当たりがあった。

 

 昔、酒場で学者から酒のつまみ替わりに与太話を聞いたことがある。

 

 曰く、回復魔術では目が見えないとか耳が聞こえないなどの障がいを直すことができない。そこから逆算して、容姿と言うのは魂に宿るのではないかと言う仮説が存在するという。その仮説を正しいんだとすれば容姿が前世から変わらない事に納得がいく。

 

 と、うだうだ考えていたが結局見た目がどうであれ、平穏で殺し合いなどしない人生を送れればそれでいいのだ。

 

 そう結論付けながら俺は鼻息交じりに王都の街中を歩いていた。誰からも睨まれることもなく、ヒソヒソと陰口を叩かれないので、心が軽い軽い。

「いやぁ、弱いっていいね」

 そう呟いた時、上空から風が吹いた。風が、ざわりとざわめく。

 

 なんか、嫌な予感。

 

 直後、俺の背後からふわりと冷たい気配。気づいた時には──背中に柔らかい何かが抱きついていた。

「アダムたああああああんっ!!!!!」

「うええええっ!? ちょ、なにッ──」

 背中から腕を回される感覚と同時に黒い膜のようなものが俺の全身を包み込む。ひんやりとするが何処か心地よい熱を感じる。

 

 俺を包み込んだ黒い膜と評したものはよく見れば、蝙蝠ような水かきのついた巨大な黒い羽だった。そして、その持ち主に心当たりがあった。まぎれもなく、前世俺が戦った存在、大悪魔リリスの持つ羽の一つだった。

「‥‥」

 冷や汗が止まらない。なにせ、殺し合った相手が目の前にいる。しかも、背後を取られ抱き着かれる形で拘束されている。相手の胸の柔らかな感触を背中で楽しんでいる場合ではなかった。

 

「会いたかったああああああああ♡♡♡ もう、もう、どれだけ探したと思ってるの!?ていうかなんでこんなとこにいるの!?なんでそんな顔してんの!?なんで、なんで、なんで……っ、もうやだ、愛してる、大好き、最高、世界一、地球の核、魂の片割れっ♡」

 俺の思考を他所にリリスはハイテンションにまるで恋人にでも出会ったかのように、俺に話しかけてくる。ちょっと何言ってるかわからない。お前そんなキャラだった?なんかもっと、寡黙でクールだったじゃん。

「あー‥‥どちら様?」

 関わりたくないので、とぼける。すると、リリスは先ほどのテンションが嘘のように口を閉ざし、目を大きく開き点のようにして固まる。

 

 一瞬の硬直の後、リリスは俺の胸倉を掴んで自分と向き合うような形にする。

 

「ざっっつけんな!とぼけないでよ!あなたが、私の世界に色をつけたのに、あなたが、私に、生きる意味を!くれたのに!!それをなかったことにしようとしないで!!!」

 怒声が俺の鼓膜に響き渡る。その圧は間違いなく、大悪魔のそれだった。それだけにわからなかった。

「‥‥うわ、重」

 こいつの俺に向けてくる感情が。俺がリリスにしたことって、命を賭けた殺し合いなだけのはずだ。なのに、こいつの中じゃ、それが求愛になってるらしい。こいつの頭の中でどうしてそうなったのかわからないが、ただわかることが一つある。

 

 ―――俺の望む平穏は終わったということだ。

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