IS×機動戦士ガンダムGQuuuuuuX 自由な「ソラ」 作:ミヤトルト
タイトルを少し変えました(2025/06/07)
「えーっと……名前はアマテ・ユズリハ。ジオン公国の代表候補生です、よろしくお願いします」
入学式を終え、分けられたクラスで始めてのHR。
アマテこと私はクラスの担任……だと思う、山田先生の「自己紹介しましょう」という一言から始まった自己紹介のトップバッターとして、自分でも無難過ぎると思う自己紹介を終えた。
ただし、返事は皆無。
山田先生の拍手だけが響くのは虚しいというか、逆に山田先生が可哀想に思える。
せめて先生に合わせた拍手位しろよ……と思いながら席に着いた。
「(そんなに珍しいかな……珍しいか、世界で1人だけだもんね)」
私の自己紹介も続く子の自己紹介も、クラスの視線を一人占めしているその1人の前では無力だ。
その無数の視線を浴びているのはこのクラス、いやこの学校でたった1人の男。
世界で唯一のIS男性操縦者、織斑一夏。
……いままでの常識であった、「ISは女性にしか起動できない」というルールを破った男。
そりゃあ、珍しさでいえばこれ以上無いだろう。
でもさぁ、学校の入学初日だよ? 普通はもっとクラス中でワイワイやって、自己紹介できゃーきゃーやる物じゃないの? 私だって小学校と中学しか知らないけど、それも一貫。
「(せめてニャアンが同じクラスだったらなー)」
別のクラスに分けられた友達を思う。
ニャアンは大丈夫かな、あの子人見知り激しいし、押しに弱いし、そのくせ怒ると怖いし。
せめてクラスで浮かずに、本人が望む通りにISの勉強できれば良いけど。
そんな事を思いながら自己紹介を終えた子に向けて私も拍手。内容は殆ど聞いてないけど。とりあえずアイカワという名前だけは覚えておいた。
名前を覚えておけば、後は話の流れで趣味とかは聞き出せる。
中学で学んだ私の処世術という奴だ。
「(にしても学園で1人だけの男、か」
私も件の男性操縦者を見てみる。
顔立ちは至って普通な感じの日本人、いや普通の日本人ってのもよく知らないけど。
それでも彼の顔立ちは整っていると思う。
その他には……なんとなく真面目そうかな。あと嘘付くのとか下手そう。すぐばれるというか、そもそも嘘を付くこと自体が苦手なタイプと見た。
そして分かりやすい、今なんかガチガチに緊張しているのがよく分かる。
ま、それはこのクラス中の視線を受けてたら誰でもそうか。
私だったら……あんま想像したくない。
正直、私のそういう線には全く響かない。まぁ見た目だけで判断するのも良くないけど。
「では次に、織斑一夏君! お願いしますね」
そんなこんなで、次の自己紹介が織斑一夏の番になった。
このクラスの殆どが気にしている男子生徒の自己紹介、さてどうなる。案外一発かましてくるかな、それなら面白いんだけど。
立ち上がった唯一の男子に、注手が集まる。
それこそ一挙一動を誰も見逃さないようにしているみたい。
「織斑一夏です!!」
そう自分の名前を叫んだ男子こと織斑一夏。
正直、名前は全員知っていると思う。死ぬ程ニュースで見たし。
重要なのはここから。
彼はどんな風に何を話すのか。すこしワクワクしてる自分が居る。
「い、以上です!!」
まさかの名前だけで終了。
私は思わず口笛を吹いた。
やるじゃん。
予想外の自己紹介にずっこけてしまった女子生徒達を見てそう思う。
そんな教室の様子に?マークを頭に浮かべている織斑君、なるほど意外と天然か。
そして次の瞬間、彼の頭に何かしらが叩きつけられ「スパァンッ」と良い音が鳴った。
「痛ぁ!?」
織斑君が頭を押さえながら、叩かれた先を見る。
私もその先を見て、固まる。
だって、そこに居たのは……
「自己紹介位はまともにしろ、馬鹿者」
「千冬姉ぇ!?」
「ここは学校だ。織斑先生と呼べ」
そう言って、再び織斑君の頭に一撃……よく見たら出席簿、結構痛そうなそれを与えたのは私も知っている……いや、恐らくこの業界で知らない人はいない。
元日本代表の織斑千冬選手!
凄い!
私は素直にそう思う。
だって、織斑千冬選手といえばかつてISの世界的な大会「モンドグロッソ」で個人の総合優勝を果たし『ブリュンヒルデ』の二つ名を持つ。まさに生ける伝説!
そんな人が教師として教えてくれるなんて!
……まぁ、私の最終目的は宇宙に行くことだから少しずれるけど、それでも凄い人から教えてもらえるのは嬉しい。
そして当然それは私だけじゃなかった。
『『『キャァァァアアア!!!』』』
「うごっ」
クラスの女子の大半による絶叫、それは先頭列に座る私の頭へと直撃した。
とんでもない音量、頭が割れるかと思った。
しかし、織斑千冬選手……いや織斑先生は呆れながらため息を吐いて答えた。
「ハァ……毎年毎年、よくまぁこんな馬鹿共が集まるものだ。山田君、副担任なのにここまでありがとう」
「い、いえ!先輩の為ですから!」
『お姉さま、本物の千冬お姉さまよ!!』
『凄い! 凄いわ!』
「よく聞け、私がお前達の担任となる織斑千冬だ! 私の仕事はまだまだ使えない馬鹿であるお前達を使える馬鹿にすることだ! 分かったな!」
『キャ~~~!!』
『お姉さまに馬鹿と言われたわ!』
『あぁ、流石お姉さま。罵って、罵倒して、でも時には褒めて! そして付け上がらないように躾して~!!』
流石の私も着いて行けなかった。
たしかに、ブリュンヒルデが担任なんて凄い事だ。でもこれば過剰……というか、少し危ない生徒もいる気がする。
ちょっと不安になってきた……
でもこの賑やかさは悪くなない。それにやはり織斑先生の存在は大きいと思う。
賑やかなクラスメイトに、唯一の男子生徒、それに担任はブリュンヒルデ。
私は自分の口角が上がるのを感じた。
これから先の学校生活、想像よりもとても楽しそうだ。これなら、あの緑のおじさんに感謝しても良いかも。
そんな思いと共に、私のIS学園生活はスタートを切った!!
ーーーーーーーー
朝のホームルームから数時間後の昼休み、私は食堂のテーブルでニャアンと向かい合いながら、倒れ伏していた。
「どうしたの、マチュ? ご飯冷めちゃうよ?」
「ニャアン。私、この学校生活もう無理かも」
「早くない? なにがあったの?」
「聞~い~て~よ~」
「うわ、面倒そうな予感」
ダル絡みを読み取ったニャアンが引こうとするけど、私は更に体を伸ばして追い付いた。
ちゃっかり日替わり定食のアジフライは避難させてる辺りニャアンだと安心すら感じる。
そして私は話始めた、あの忌々しいホームルームの後に行われたクラス代表を決めの事件を……
「つまり、最初は他の子達が面白さ半分で男子の織斑君をクラス代表に推薦したと」
「そう」
「で、それに怒ったイギリスの代表候補生のオルコットさんが、自分が代表候補生なのを理由に自己推薦」
「うん」
「しかも織斑君の事を男ってだけで馬鹿にし始めて、オルコットさんと織斑君の対決が決まった」
「そうなの」
「そしたら、織斑千冬選手……先生が、代表候補生ならマチュもそうだよねって事で推薦してマチュも巻き込まれた」
「そうなんだよー」
「でも、オルコットさんがジオンの事を馬鹿にしてきたからマチュもその喧嘩を買って、勝利宣言を決めたと」
「ぐふぅ……」
ニャアンの口から事実を羅列されると非常にキツい、なんで私はこうなんだ……いっつも喧嘩を売られると買わずにはいられない。
緑のおじさんにもよく「怒りを静めなさい」と言われたのを思い出す。
が、今回は向こう……セシリア・オルコットに非があると言わせて貰う。
「だってさー、私が宇宙探索枠なのを『これから先を担うに相応しい人間が少ない、ジオン公国の苦し紛れの形だけの代表候補生。私のような、真のエリートと比べるまでもありませんわ』なんて抜かしやがったんだよ!? 私は、本気で宇宙目指してるんだっての!!」
「マチュ視点だし脚色はされてるだろうけど……マチュにとっては譲れない部分だもんね。殴ったりしなかったよね?」
「殴った、ムカつくあいつにアッパーカット「えっ」頭の中でね」
「良かった……本当に……初日から暴力沙汰とか勘弁してよぉ……」
私の頭の中のイメージを、受け取ったみたいにオルコットが顎に手を当てて驚いた事は言わないでおこう。
私もまさか、オルコットが
「それで、マチュは戦うの? クラス代表を賭けるんでしょ?」
「うーん、まぁクラスの代表とか面倒だけどね」
これは本音。
だってクラスを纏めるとか面倒だろうし難しいだろうし。あぁ、でもあのクラスメイト達なら面白いかもしれない。
……ま、色々と想像はできるけど結局は想像。
私にとって大事なのは一つ。
私の夢を、
だからオルコットは、私の敵だ。
「マチュ! 戦いに乗り気なのは分かったから、押さえてよ。気分悪くなりそう……」
「あ、ごめん!」
一旦深呼吸。息を大きく吸って、吐く。
うん、落ち着いた。
さっきまでのグルグルしてドロドロ沸き立つような、そんな怒りは静まったと思う。
ごめんニャアン。お詫びに私の日替わり定食Bから唐揚げを一個渡す。
即座に箸をつけるのはニャアンらしいと思う。
「それで? 勝つの?」
「勝つよ。当たり前でしょ」
「まぁ、マチュらしいか……」
最悪クラス代表については……勝者権限を使って織斑君に投げよう。
なんとなくだけと、彼なら上手く回せるだろう。むしろクラスの女子達が勝手に動くまである。
……それはそれで問題か? ま、良いだろ。学校生活は楽しくあるべきだよ。
「楽しさの為にクラス代表が犠牲になるのはどうなの。ハァ……」
「大きなため息、ニャアンも何かあった?」
「あった。本当にさぁ……」
あー、この感じ。
諦めモードというか、面倒なのを押し付けられたというか。
なるほど、つまり。
「なったの? クラス代表?」
「……私が自己紹介でジオンの代表候補生なのを言ったら、仕立て上げられた」
「あー……」
つまり、他にそれっぽい肩書きを持つ人が居なかったから、それっぽい理由を付けれるニャアンにしたって感じか。
それは確かに彼女の性格を考えれば良いものじゃ無いだろう。
「でもさ、クラス代表の経験って就活に有利じゃないの?」
「む、それはそうかも……でもなんで今かなぁ、二年生になってからが良いよ」
「そうなのかな」
ふーん、とニャアンの言葉を考えながら箸で唐揚げを動かす。
ニャアンの目的は結局の所は生活。
ある意味で私とは正反対、ずっと先を見ている。
先を見ると考えれば、一年生で全体的な流れを知ってから代表になった方が良いのかな。
そんな事を考えながら唐揚げを動かす私に、ニャアンが何か言いたそうに見ている。
「何?」
「いや、もう昼休みが半分以上終わるけど」
「げぇっ!」
私は慌てて唐揚げ定食に意識を戻して、箸を動かし食べ進める。
危ない危ない、ご飯は味わって食べるべきだ。
途中でこっちを見てたニャアンに、追加でもう一個唐揚げをあげた。
ーーーーーーーー
色々とあった入学初日の放課後。いや冷静に見ると初日なのに凄い情報量だった。
まあとにかく、私はIS学園の寮に向かいながら……いや、帰りながらか? とにかく学園寮の自室へと向かう。
寮の部屋自体は元々入学通知書に書いてあったし、ニャアンと同室なのも確認済みだ。
という訳で普通に自分の部屋の中へ入る。
「あ、お帰り。マチュ」
「ただいまーって、何これ?」
部屋に入れば、謎の段ボールがあった。
大きさは多分私が両手で持てる位。
それが2つ。片方はニャアンの手の中。
はて? 着替えなんかは春休み中に送ってもう仕舞われているはずなんだけど。
なんだこれ?
「ほら、この子達は色々と問題があって遅れてたでしょ?」
「あー! てことは!?」
ニャアンの一言に私もようやくその荷物にピンと来る。と同時に持ってる荷物を放って残った段ボールの梱包を開け始める。
中から出てきたのは……
『マチュ! マチュ!』
「ハロ! 久しぶりー」
『ヒサシブリ ヒサシブリ』
白くて丸い球型のロボット。
我がジオン公国の代表的ペットロボットことハロだ。しかも私だけの耳がスピーカーになっているハロ。
正確には別の人の物だが、なんだか気に入られて譲り受けた。
「コンチ!」
『HISASIBURI NYAN』
「久しぶりだね!」
ニャアンが開けた方からはコンチと呼ぶ誰が作ったのか分からないけど、とりあえずニャアンの側に居るペットロボット。
ヤドカリみたいに四角い箱に手足が生えたような見た目で、よく分からないピコピコ音で話す。
因みに内容は誰にも分からない。
「お前達、やけに時間かかったねー。何か変な事されてない?」
『サレタ、サレタ』
『GAKUEN NO ANZEN NO TAME』
「された!?」
「え、何か駄目だったの?」
『サツエイ、ロクガ、ロクオン、ホカノタンマツヘノセツゾク、キノウガ、ツカエナイ』
『security no tameni sibariga hituyoudatta』
「……まぁ、妥当と言えば妥当か」
「この学園、機密情報ばっかりだもんね」
正直、禁止された機能は納得しかなかった。
そりゃそうだよね、こいつらコロコロ動き回って色々と不味そうなあれこれを知りかねない。
とは言え、それぞれの相方としては何も問題はない。私達がそれぞれの相方と再会して喜んでいると……
「……うん?」
「どうしたの?」
「いや、なんか」
『ナンカ、ナンカ』
ドガッ!
「うわっ!」
「ひっ!? な、何!?」
私達の隣の部屋から、とんでもない騒音が聞こえてきた。
何事かと慌てて扉から出れば、そこには今日初めて本物を見たIS男性操縦者の織斑一夏。
「え、織斑君じゃん。何してんの」
「あ、えっと……ユズリハさん」
「アマテでいーよ」
「そ、そうか?」
「で、何してんの?」
「え!? あ、そのー……えーっと……」
うーん?
何だかたどたどしい。
割りとハッキリ言って来る、こんなタイプじゃないと思ってたけど。ていうか部屋は隣なのか。
なんかおかしいと思う私の足下をハロがコロコロ転がって行く。
「何だこれ?」
「ハロ、私のペットロボット」
「へぇ……って、ちょっと待て!?」
「な、何だお前は!?」
「お?」
ハロが覗いた隣の部屋からまた別の声。
この声は……篠ノ之箒さんだっけか。たしか束博士の妹、ただし本人に指摘すると怒る。
まあ家族関係は色々だ、深く突っ込む話じゃない。私もお母さんとの関係を聞かれるのは嫌だ。
「ハロ、何があった?」
『キガエチュウ、キガエチュウ』
「えっ」
「ちょ、待ってくれ! これは事故だ!!」
『ノゾキ、ノゾキ』
「だから違うって!?」
「……ハロ、戻っておいでー」
『モドル、モドル』
「これは事故……絶対に信じてない目!」
私はどんな目で織斑君を見ていただろうか。多分虫を見る目か、流石に無いわー。
いやまぁ? 仮に本当に事故だとして?
悪意の無い覗きって余計に質悪くない?
扉を閉めて鍵をきっちりかける。
「マチュ?」
「ニャアン、戸締まりはしっかりしようね」
「え、うん。……そんなに?」
「うん、絶対」
「事故なんだー!」と叫ぶ織斑君の声を聞きながら、私はニャアンと共に戸締まりの重要性を再確認した。
男は皆獣、事実はともかくそんな感じで行こう。
こうして私達の入学初日は終わった。
クラス代表戦まで行こうとしたら、マチュとニャアンの日常パートで6000字越えたので戦闘は次回。