ジャッジ・ザ・デーモン タナトス・アサイラム   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 アニメタウンを中心に凶事から人々を守護する鬼の制裁者ジャッジ・ザ・デーモンは凶悪犯であるMrフェイクを捕縛し、数々の凶悪犯を収容している精神病院タナトス・アサイラムへ連行する。
 いつもと違い、大人しく連行されるMrフェイクに違和感を覚えるジャッジ・ザ・デーモン。その不安は現実となり、タナトスへと連行されたMrフェイクは隙を見て逃げ出してしまう。
 そしてMrフェイクが事前に潜入させておいたトガヒミコと怪盗ジーニアスと共にタナトスを占拠し、収容されていた凶悪犯たちを次々と解放し、医師や警備員たちを人質に取り立てこもってしまう。
 この事態にジャッジ・ザ・デーモンはMrフェイクを止めるべく追跡するが、その道中なんとMrフェイクと内通してた守衛によってアニメタウン警察本部長のウェルズが捕えられてしまう。
 ジャッジ・ザ・デーモンは急きょウェルズ救出に向かうのだったが、犯罪者の魔窟と化したタナトス・アサイラムは一筋縄ではいかなかった。



【ジャッジ・ザ・デーモン】悪夢と血塗れの怪力【タナトス・アサイラム】

[魔窟と化したタナトス・アサイラム]

 

 集中処置棟から何とか脱出できたジャッジ・ザ・デーモンは、外に通じる洞窟からタナトス・アサイラムを見渡した後にデーモンスーツに収納している翼を広げて地上へと舞い降りる。

 そこでジャッジ・ザ・デーモンは、警備に当たっている守衛二人と話する。

「申し訳ありませんが此処を通す訳にはいきません。封鎖しています」

「この先には何が?」

「古いポンプ施設です。ハワード所長は着任して間もなく、保安上の理由から此処を封鎖しました」

 続いてジャッジ・ザ・デーモンは、二人目の守衛にも話を聞く。

「このトンネルは封鎖しています。誰も出入りはできません」

「Mrフェイクの行動は予測できない。警戒を続けてくれ」

「はい、あなたはアイツが此処に来ると?」

「何が起きても可笑しくない……今の現状は、そうだ」

 守衛二人と話し終わったジャッジ・ザ・デーモンは、続いてタナトス・アサイラムの敷地内を探索しながら警備に当たる守衛達から話を聞く事に。

「ジャッジ・ザ・デーモン! 中で何があった? 俺たちは此処を警備するよう言われて、その後無線が使えなくなった。今は此処で酷い音楽を聞かされているだけだ」

「Mrフェイクがアサイラムを占拠した。アイツがあんた達を此処に仕向けたんだ」

「奴はどうやって? あーー、つまりまた……狂人が逃げ出した訳か……」

「警備員のフランク・ボールズという奴が裏切って、Mrフェイクを逃がした。が、既にフランクも殺された。用済みと言う訳だ」

「酷い話だな。俺に何かできる事は?」

「アンタ達はこの場に残って、引き続き警備に当たってくれ。何かあったら、また呼びに来る」

 更に別の守衛からも話を聞いた。

「またMrフェイクは自由の身か」「それも長くはない」

 探索を続けるジャッジ・ザ・デーモンは更に守衛から話を聞いた。

「奴ら悪党共はより凶暴になっている。助けは要るか?」

「いや、此処で警戒を続けてくれ」

 

 と、ジャッジ・ザ・デーモンが敷地内を探索しているところに、Mrフェイクが拡声器で囚人達に訴えかける。

「ジャッジ・ザ・デーモンの車が停まったままみたいだ。帰らせる訳にはいかないよね?」

 それと同時に、ジャッジ・ザ・デーモンのスーツに内蔵されているジャッジモービルの警報音が鳴った。

【警告:ジャッジモービル 感知警報】

 どうやら囚人達がジャッジモービルを見付けては、破壊しようとしているみたいだ。ジャッジ・ザ・デーモンはすぐさま通信でキャサリン・ルースに連絡した。

「キャシー、ジャッジモービルの警報を止めてくれ!」

「警報がさっきから鳴りっぱなしですよ。どうしたの? あなたは今どこに?」

「タナトス・アサイラムの外にいる。警報はおそらくトガヒミコと紫京院ひびきだろう。彼女達とウェルズが一緒なら、ウェルズの身が危ない」

「OK、止めたわ。ジャッジモービルは島の北部、集中処置棟の近くに止まっています。今そっちに島の全体図を送りました。ジャッジモービルの位置もマークしておきました」

「サポート、ありがとう」

 ジャッジ・ザ・デーモンはキャサリン・ルースに礼を言うと、彼女が送信してくれた島の全体図を見ながらジャッジモービルの停車場所まで向かった。

 

 ジャッジモービルに向かう道中、駆け付けた救急車両の陰で守衛が死んでしまった同僚の側に付き添っていた。

「信じられない、ジャックが殺されちまった……」

「此処に居てやってくれ。俺が終わらせる、全てな」

 ジャッジ・ザ・デーモンはそう守衛に言い残すと、グラップネルガンを用いて上へと移動して、行く手を阻む二人の武装囚人の背後に回る。

 そしてジャッジ・ザ・デーモンは静かに背後から忍び寄り、武装した囚人二人を静かに倒した。

 

 そうしてジャッジ・ザ・デーモンは島北部に辿り着くと、それと同時にMrフェイクが拡声器で自信満々に喋るのだった。

「もうすぐ、島全体がボクのものに。ちゃんと見ててよ、このボクMrフェイクのプランを」

 そんなMrフェイクの台詞を聞きながらも、ジャッジ・ザ・デーモンはジャッジモービルの所ま辿り着く。そこでは既にボンネットなどをボコボコに凹まされているジャッジモービル、そして未だにジャッジモービルを壊そうとする囚人達が群がっていた。

 未だに破壊行為を続ける囚人達に、ジャッジ・ザ・デーモンは駆け付けると、そのまま飛び蹴りを喰らわして先制攻撃を仕掛ける。

「ジャッジ・ザ・デーモン!」

 此処でジャッジ・ザ・デーモンは六人の囚人達と乱闘を開始。

 囚人の一人がジャッジ・ザ・デーモンに蹴りをお見舞いしようとするが、ジャッジ・ザ・デーモンはその蹴ってきた足を掴んで逆に捻るとそのまま足の骨をへし折って囚人を倒してしまう。

 更に他の囚人達にも、流れるような動きで拳や蹴りをお見舞いしながら囚人達の攻撃を回避しつつ反撃に転ずる。

 殴り掛かってきた囚人を持ち上げて、別の囚人へと投げ付けて二人同時に倒すジャッジ・ザ・デーモン。

 そして遂にジャッジ・ザ・デーモンは六人の囚人達を一掃して片付けてみせた。

 

(ジャッジモービルに爆破ジェルがある。必要になるかもしれないし、所持しておこう)

 六人の囚人を倒したジャッジ・ザ・デーモンは、ジャッジモービルからガジェットである爆破ジェルを取り出して装備する。

 脆い壁などを破壊したり、ブービートラップとしても用途の幅が広い爆破ジェルを装備したジャッジ・ザ・デーモンは、ジャッジモービルの周辺を見渡して思った。

(トガヒミコと紫京院ひびきがモービルを壊そうとして小競り合いをしたらしい。周辺を調べよう、何かの手掛かりが見つかるかもしれない)

 ジャッジモービルの周辺を隈なく観察してみたジャッジ・ザ・デーモンは、地面に落ちてた酒用のフラスコを発見する。

(ウェルズ愛用のフラスコだ。確か、新世代型委員会からのプレゼントの筈……)

 ウェルズのイニシャル入りのフラスコを発見したジャッジ・ザ・デーモンは、そのフラスコに入っている酒を分析する。

(ボールズが飲んでた酒とは成分が違う、アルコール度数の低い酒だ。これを追えば……流石はウェルズだ)

 ジャッジ・ザ・デーモンは、ウェルズが自分を追跡しやすい様にと、あえて愛用のフラスコを落としたのだと察する。

 と、ここでジャッジ・ザ・デーモンはキャサリン・ルースに報告する。

「キャシー、ウェルズ愛用のフラスコを見つけた。イニシャル入りのフラスコだ」

「私たち新世代型委員会が、ウェルズさんの本部長就任を祝ってプレゼントした品ですよ」

「わざと落としてくれたんだ。ウェルズは生きてる!」

 ジャッジ・ザ・デーモンは再びウェルズ救出の為に、今度はウェルズのアルコールを追う事に。

 と、ウェルズのアルコール成分は、今やMrフェイクによって乗っ取られたセキュリティによって閉鎖された大型扉の先だった。

(セキュリティドアには鍵が。別のルートでウェルズを追跡しよう)

 そう考えたジャッジ・ザ・デーモンは、ドアのすぐ隣の壁に注目する。

(あの壁は脆そうだ。ジェルで爆破できるかもしれない)

 脆そうな壁を発見し、ジャッジ・ザ・デーモンは壁に爆破ジェルを適量吹き付けて、器具の爆破スイッチを押してジェルを爆破。壁は吹き飛んで先へと進めるように。

 

 壁を抜けて進んでいくと、そこはアサイラム西部の区画だった。

「規則を破った人は死刑! 「でも」も「しかし」も即却下!」

 狂言の様に拡声器から自分が仕切るアサイラムのルールを語るMrフェイク。

 すると何処からか銃声が響いてきた。

 ジャッジ・ザ・デーモンは遠視してみると、医療棟の玄関前に囚人達が群がっていた。

(どうやら、医療棟を占拠したいと見える)

 しかもウェルズのアルコール成分も、医療棟に続いていた。ジャッジ・ザ・デーモンは医療棟に向かうが、その道中負傷した守衛と会話する。

「囚人達が医療棟の方に! Mrフェイクは何を?」

「島を乗っ取る気だ、次の標的は医療棟らしい。誰か逃げて来たか?」」

「ドクターが一人。だけど殺されて海に……」

「分かった、此処で待ってろ」

 守衛と話し終えたジャッジ・ザ・デーモンは、そのまま空気中のアルコール成分を追って医療棟の前まで駆け付ける。

「ジャッジ・ザ・デーモンだ!」

 すると駆け付けたジャッジ・ザ・デーモンに、八人の囚人達が気付き、ジャッジ・ザ・デーモンと乱闘を開始。

 乱闘の中、ジャッジ・ザ・デーモンは囚人の一人を持ち上げては、そのまま階段へと投げ飛ばして囚人を気絶させる。

 更に他の囚人も、足や腕などの骨をへし折って気絶させ、戦闘不能に陥らせる。

 こうして八人の囚人との乱闘を終えたジャッジ・ザ・デーモンは、ウェルズのアルコール成分を追って医療棟へと入る。

 

 医療棟に入ると、目の前には閉ざされた電子ゲートと、その先の医療ロビーでのんびり椅子に座って読書を楽しむトガヒミコの姿が確認できた。

「ちょっと! 人のプライバシーを邪魔しないでくれません!」

「ウェルズは何処だ?」

「あら、知りたいんですの?」

 ジャッジ・ザ・デーモンがウェルズの居場所を問い詰めようとトガヒミコに迫っていると。

「俺は此処だ!」「黙ってなさい!」

 どうやら死角の位置にウェルズは拘束されているらしく、そんな大声を上げるウェルズにトガヒミコは物を投げ付けて黙らせる。

「クソっ、この悪ガキめ……!」

 ウェルズが悪態をつく中、トガヒミコは悠々とジャッジ・ザ・デーモンに言った。

「ごめんなさいね、デーモン。別の出入り口でも探してください。ま、あればの話ですけどね」

 確かに電子ゲートに阻まれてトガヒミコの方には行けず、ウェルズも助け出せない状況に、ジャッジ・ザ・デーモンは立ち去るしかなかった。

(此処は通れないな、別のルートを探すしかない)

 一旦外に戻ったジャッジ・ザ・デーモンは、グラップネルガンで医療棟の屋根上へと上る。

 そして何処か侵入できるところはないかと探索していると、医療棟玄関の屋上に脆い壁があるのを発見。

 ジャッジ・ザ・デーモンはその脆い壁を爆破ジェルで破壊して内部へと侵入。

 

 

[医師達の救出]

 

 メンテナンス・アクセスで通気口へと潜入して進むジャッジ・ザ・デーモンの耳に、またしてもMrフェイクが囚人達に命令しているのが聞こえてきた。

「ドクターを全員かき集めるんだ。隅から隅まで探すんだ、いいね」

 囚人達に医師を全て集める様にと指示を出すMrフェイク。

「部屋という部屋を調べるんだ。ゴミ箱の裏までチェックする心意気でね」

 最後にMrフェイクは医療棟内の医師や囚人達に告げる。

「ドクターも君たちも脱走禁止。逃げたらボクお手製の毒ガスで死んでもらうから」

 それからもジャッジ・ザ・デーモンは通気口を通って医療棟内の療養所へと辿り着いたが。

「いや、放して!」

「黙って、そいつらと一緒に居ろ!」

「分かったから、怒鳴らないで」

 療養所では武装した囚人達が医師達を脅して一カ所に集めていた。

(なぜドクター達を……?)

 ジャッジ・ザ・デーモンは何ゆえMrフェイクが医師達を集めているのか疑問に思うのだが、まずは療養所を徘徊する囚人達を一掃して捕らえられた医師達を救出する事に。

 まずジャッジ・ザ・デーモンは先ほど装備した爆破ジェルを二カ所、囚人達の死角に付着させ、それから渡り通路を徘徊する囚人に忍び寄り、窒息させて気絶させる。

 更にもう一人、囚人の背後に忍び寄り同様に窒息させて気絶させる。

 そして仕上げに、爆破ジェルを二カ所爆破させて、その付近に立っていた囚人二名を吹き飛ばして気絶。

「なんだ!?」

 残ったエレベーター前の囚人に、ジャッジ・ザ・デーモンは滑空して飛び蹴りをお見舞いすると、すかさず囚人の頭部を攻撃して完全に気絶させた。

 

 こうして五人の武装囚人を撃破したジャッジ・ザ・デーモンは、捕らわれていた医師たち医療スタッフを解放する。

「もう大丈夫だ」

 女医に話し掛けるジャッジ・ザ・デーモン。

「巡回中に突然押し入ってきたの。銃があったから、抵抗できなくて……」

「誰か一緒では?」

「ええ、エレベーターに乗せてたわ」

「今は動力が落ちているな……ひとまず、此処はもう安全だ」

「分かったわ」

 と、ジャッジ・ザ・デーモンが女医と話し終えると、医療スタッフ達は他のスタッフたちの事を心配する。

「皆は無事だろうか。銃声がした、助けに行かないと」

「忘れてた。観察室にDrケラマンが残ってる。手術室にはDrチェンも」

「Drヤンもだ。彼女はレントゲン室に」

 スタッフ達の困惑に、ジャッジ・ザ・デーモンは答える。

「探してくる、此処で待っててくれ」

 そう答えると、ジャッジ・ザ・デーモンは一階の扉を通って通路へと出て、各々医師達を救出に向かう。

 

 ジャッジ・ザ・デーモンが通路を通って医師達の安否を確認するべく駆け抜けるが、その道中にタナトス・アサイラムの方針を述べる映像がテレビに映し出され、ハワード・ラグラフト所長や彼の信頼が厚いDrヤンの力説が流れてきた。

「タナトス・アサイラム発展の功労者、Drヤンをご紹介します」

「人の心は複雑ですが、日々、解明が進められています。プロジェクト・ゴッドは安全かつリスクのない環境で……最終的な目標としては、現行法に耐えられない弱い収容者を……本プロジェクトの成功で、タナトス・アサイラムは世界に注目されるでしょう」

「最高のケアを受けられる安心の施設、タナトス・アサイラムは日々進歩しています。いづれ、なぜ二次元人がUMAなどの異常者(ヒール)に変異してしまうのか。そのメカニズムも明かされる事でしょう」

 最後にそう述べられ、映像は繰り返し流れるのだが、その道中に二人の囚人が鉄パイプを持って待ち構えていた。

「あの守衛は?」

「あのクソ野郎はキャッシュだ」

「あの左手のフックは?」

「何も知らねえんだな。キラー・タートルを怒らせて、ガブリとやられちまったのさ」

 二人の囚人の会話を聞いたジャッジ・ザ・デーモンは、速攻で攻撃して二人の囚人を纏めて気絶させてみせた。

 

 囚人二人を撃破したジャッジ・ザ・デーモンが扉を抜けると、其処は囚人観察室だった。

「ボス、フック船長を閉じ込めたぜ。だけど仲間も……」

「誰一人として出しちゃダメだ。失敗しちゃうような部下はいらないよ」

「そうだな、奴はトロかったしな!」

 二人の囚人がMrフェイクと無線で連絡を取り合って話していた。

 ジャッジ・ザ・デーモンは二人の背後に忍び寄り、囚人二人の頭同士をぶつけ合って二人同時に気絶させる。

 そして囚人二人が眺めていたガラスの向こうに籠城しているDrケラマンとアーロン・キャッシュ警備員にジャッジ・ザ・デーモンは問い掛ける。

「何があった、キャッシュ」

「ドクターを助けに入ったら閉じ込められて、ガスが……」

 キャッシュがジャッジ・ザ・デーモンに説明ていると、さっきジャッジ・ザ・デーモンが倒した囚人が落とした無線機で状況を聞いたMrフェイクがキャッシュをおちょくり出す。

「勇気がありますねぇ、キャッシュ! 誰でも良いから手を貸してあげよう、フックじゃなくてね!」

「勝手に笑ってろ、出れたらたっぷり礼をしてやる」

「そう怒らないでよ、ちょっとからかっただけでしょ」

 Mrフェイクと言い合うキャッシュを、ジャッジ・ザ・デーモンが宥めつつ訊ねる。

「奴に構うな、排気システムは動くのか?」

「試したが駄目だった、遠隔操作を止められたらしい」

「俺が止めに行く」

「ああ、ガスを止めてくれ」

 キャッシュと約束したジャッジ・ザ・デーモンは、グラップネルガンで上へと上がると其処で通気口をこじ開けてガスが充満している囚人観察室へと侵入する。

(さてと、この囚人観察室には三つファンがある筈。まずは、それらを一つずつ動かさないとな)

 ジャッジ・ザ・デーモンは観察室の中にある操作盤を見付けるとジャッジラングを投げて、操作盤を強引に起動。これにより1号ファンが起動した。

「聞こえるか、ジャッジ・ザ・デーモン。1号ファンが回り始めた」

 キャッシュからの呼びかけで、ジャッジ・ザ・デーモンは別の高所へと飛び移るのだが、そんなジャッジ・ザ・デーモンの目に飛び込んできたのは。

「早くしてくれよ、アレが何だか知ってるだろ」

 なんと逃げ遅れたのか、ロープに捕まって宙吊りになっている囚人がいた。

 そんな囚人など気にせず、ジャッジ・ザ・デーモンは二基目のファンも操作盤にジャッジラングを投げて起動させた。

「2号ファンも動き出した。もう少しの辛抱だ、ドクター」

 キャッシュは同伴しているDrケラマンに言い聞かせる。

「高いトコに来すぎちまった。堕ちたら怪我しちまう!」

 その一方で、宙吊りになっている囚人は一人困惑するばかり。

 だが、最後の操作盤が密室状態の小部屋で、操作盤にジャッジラングを当てるには脆い屋根を破壊しなければならなかった。

(やむを得ないな)

 するとジャッジ・ザ・デーモンは、その小部屋の真上で宙吊りになっている囚人が掴まっているロープをジャッジラングで切断した。

「うわーーーーっ!」

 落下する囚人の重さで、屋根は崩落して室内にジャッジラングが届く様に。ジャッジ・ザ・デーモンは素早くジャッジラングを投げて三基目のファンを起動させた。

「三基ともグリーン、最大出力だ。すぐに換気できるはず」

 キャッシュと医師がやっと部屋から出て、新鮮な空気を吸っている最中、ジャッジ・ザ・デーモンは先ほど落とした囚人を見てみると、囚人は気絶で済んでいた。

「間一髪でジャッジ・ザ・デーモンの登場とは。キャッシュったら、余計な真似をして」

 一方で医師やキャッシュが無事だったのを、Mrフェイクは不満に思ってた。

 キャッシュとケラマンを救出したジャッジ・ザ・デーモンは、キャッシュの愚痴を聞くとスグに他の医師の救出に向かった。

「悪党や異常者(ヒール)を捕まえる度に死人が出る、これじゃイタチごっこだぜ」

 

 キャッシュの愚痴を聞くと、ジャッジ・ザ・デーモンは他の関係者の許へと急ぐ。

(まだ関係者が残っている。救出しなければ!)

 

 そして通路を駆け抜けて、ジャッジ・ザ・デーモンはDrエイドリアン・チェンがいるであろう手術室へと入室する。

 手術室に入ると、なんと拘束ストレッチャーにDrチェンが拘束されていた。

 ジャッジ・ザ・デーモンはスグにDrチェンへと歩み寄る。

「ジャッジ・ザ・デーモン!」

「何も喋るな、もう安全だ」

「ダメだ……これは罠だ!」

「解ってる。だが、狙いは俺じゃない」

 ジャッジ・ザ・デーモンが答えると、手術台周りのテレビ画面全てにMrフェイクが映り、喜々として喋り出す。

「ご名答! やっぱり名探偵なんだね、なんで分かったの?」

 ここでMrフェイクは、手術室の二階部分に潜んでた囚人達に命じる。

「さあ、降りてきな! 名探偵をぶん殴っちゃえ!」

 降りてきた五人の囚人と乱闘を開始するジャッジ・ザ・デーモン。

 囚人達は各々、ジャッジ・ザ・デーモンに直接殴りにかかる者もいれば、手術室に設置されているヒューズボックスやレントゲンのパネルを壁から引き剥がして投げ付けようとする者まで様々。

 だがジャッジ・ザ・デーモンは冷静に対処しつつ、殴り掛かってくる囚人の拳を受け止めると、その囚人の腹部を蹴り上げて倒したりする。

 更に物を投げ付けてくるのに対しては、投げ付ける前にジャッジラングを投げて怯ませたり、投げ付けられても瞬時に回避して反撃に転じたりする。

 華麗に足払いを決め、囚人を転倒させていくジャッジ・ザ・デーモンに囚人達の攻撃は留まらない。

 そして数分の間に、ジャッジ・ザ・デーモンが五人の囚人達を戦闘不能に至らしめると。

「グズグズしないで、さっさと降りて戦うの!」

 なんと更に増援として五人の囚人が降りてきた。

 ジャッジ・ザ・デーモンは先ほどと同様に囚人達を攻撃したり、回避すると同時に反撃に転じたりなどして確実に囚人達を撃破していく。

「思い上がらないでよ、デーモン。こんなのは前座に過ぎないんだから!」

 全ての囚人達を倒したジャッジ・ザ・デーモンは、手術台に拘束されているDrエイドリアン・チェンを救出する。

「すまない。言おうと思ったが、言えなかった」

「気にするな。雑魚相手に苦戦はしない」

 Drエイドリアン・チェンを解放した後、ジャッジ・ザ・デーモンはすぐさま最後の医師Drヤンを救出しに向かう。

 

 通路を駆け抜けるジャッジ・ザ・デーモン。そんな彼の前に、またしても囚人が鉄パイプを武器に襲い掛かる。

 ジャッジ・ザ・デーモンは振るわれる鉄パイプを強引に奪い取り、その鉄パイプで逆に相手の囚人を殴り付けて反撃。

 残った二人の囚人にも、ジャッジ・ザ・デーモンは果敢に攻めて、腹部や顔面を容赦なく痛め付けて気絶させる。

 こうして通路の三人と乱闘を終えたジャッジ・ザ・デーモンは、Drヤンがいるであろうレントゲン室に赴いた。

 

 レントゲン室に入ってみると、壁に囲まれた空間に五名の武装した囚人がDrヤンを取り囲んでいた。

「どうしてこんなことを? 言われた通りにしたはずよ」

「んなこと知るか! 俺たちは命令を聞くだけだ」

「誰か来たら移動させろってな。お前は取引材料らしい」

「すべてはボスの思惑通り、内通者もいるしな」

「内通者が要るのは分かる。でも、なぜ私だったの?」

 迂闊に手を出せば、Drヤンが危険な目に遭う。そう考えたジャッジ・ザ・デーモンは、六人を取り囲む壁の二カ所が脆い事に気付く。

 ジャッジ・ザ・デーモンはその二カ所の壁に、爆破ジェルを吹き付けた後、爆破ジェルを爆発させて壁を崩落。爆発の衝撃に巻き込まれて五人の囚人達は吹っ飛んで気絶してしまう。

「イヤ! やめて!」

 突然の爆発に怯えるDrペニー・ヤンに、ジャッジ・ザ・デーモンが歩み寄って話をする。

「何が起きてるの? Mrフェイクが逃げたって本当?」

「残念だがな。だがすぐに捕まえる」

「私はMrフェイクの処置を担当してたわ。所長が更生させたがってて」

「国連議長選に影響があるからな」

「それだけじゃ……そうだわ! あいつら、ドクター狩りをすると!」

「スタッフは全員救出した。此処に居てくれ、その方が安全だ」

 そうDrヤンに言い残すと、ジャッジ・ザ・デーモンは療養所へと戻って、再びウェルズの追跡を再開しようと走り出す。

(医療スタッフは全員助けた。トガヒミコと紫京院ひびき、それにウェルズを追おう)

 

 そしてジャッジ・ザ・デーモンは療養所に戻ってきた。

「みんな無事だった?」「ああ、全員助けた」

 女医からの質問に答えるジャッジ・ザ・デーモン。そこに、アーロン・キャッシュがDrヤンと共に来る。

「ジャッジ・ザ・デーモン、またもや問題発生だ」

「タナトス棟に戻りたいの。研究ノートがそこに。Mrフェイクには渡せないわ」

 このDrヤンの訴えにジャッジ・ザ・デーモンは同意できなかった。

「危険すぎる。この島はもはや戦場も同然だ」

「私のライフワークなのよ。あなた達にそんな権限は……」

 と、Drヤンがどうしてもと訴えると、同行してたキャッシュが発言した。

「俺が送っていく。奴らに仕返しもしたいしな」

「賛成し難いが……」

 囚人達に制圧された屋外へと出歩くのは危険と判断するジャッジ・ザ・デーモンが素直に賛同できずにいると、その時。

「誰だ! エレベーターを呼んだのは!?」

「私たちじゃないわ。下から来てるみたい!」

 突然動き出したエレベーターに戸惑うジャッジ・ザ・デーモンと女医達。ジャッジ・ザ・デーモンは皆に言伝してから高所へと移り、身を潜める。

「キャッシュ、Drヤンは任せた。他の者は観察室に退避だ、急げ!」

 グラップネルガンで高所へと退避したジャッジ・ザ・デーモンは。エレベーターから降りてきた三人の武装囚人を視認する。

「どこかに奴がいる。手分けして探せ!」

 武装した囚人が三人、エレベーターから出て各自散開するのを見届けたジャッジ・ザ・デーモンは、毎度の如く囚人達の後ろに忍び寄り、静かに囚人を倒していく。

「何なんだ、この病院。まるで拷問部屋だ」

 そう文句を吐く囚人の一人を、ジャッジ・ザ・デーモンは静かに倒して気絶させる。

「病院は嫌いだ、いるだけで悪寒がする」

 続いて二人目の囚人にも静かに接近して、窒息・気絶させる。

「やけに静かだ……」

 不気味なほどの静寂に気付いた最後の囚人も、ジャッジ・ザ・デーモンが忍び寄って気絶させて終了。

 

 三人の武装囚人を倒した後、ジャッジ・ザ・デーモンは空気中のアルコール成分を追って地下から上がってきたエレベーターに乗り込んだ。

 するとエレベーターの扉は自然に閉まり、エレベーター内のテレビジョンにMrフェイクが映った。

「かかったね、エレベーターごと落っこちろ!」

 そう大声でエレベーター内に閉じ込められたジャッジ・ザ・デーモンに呼び掛けるMrフェイク。

「おやすみなさい、デーモン」

 そして……

「ドカーーン!! ……なぁんちゃって!」

 陽気に微笑むMrフェイク、するとエレベーターが勝手に地下へと下りていく。

「まだサプライズが残ってるんだ。楽しみにしててよ……! 何もかも!」

 そう自信満々に語るMrフェイクの力説を聞いていると、ジャッジ・ザ・デーモンはエレベーター内に充満する不快な空気が喉に引っかかり咳き込んでしまう。

 

 

[悪夢の襲来]

 

 エレベーターが地下へと下りていくのと同時に、謎の悪感で咳き込んでしまうジャッジ・ザ・デーモン。

 更に地下からは大勢の人間の絶叫が響いてきた。

 

 エレベーターが地下へと到着し、停止するとジャッジ・ザ・デーモンは迷う事なくエレベーターから出る。

 すると目の前の処置室の中から悲鳴と絶叫などが聞こえてきた。

「やめてくれ、肥田先生! やめてくれっ!」

「肥田などいない……」 

「こいつら……体中に……!」

「此処に居るのはナイトメアだ!」

 恐怖で絶叫する医師や守衛、それとは反対に冷静に対話する老人の声。

 ジャッジ・ザ・デーモンが歩み寄って、処置室の中をガラス越しで見てみると、苦しみ発狂する守衛や医師、そして車椅子に座ったままで発狂する西宮硝子の祖父母がもがき苦しんでいた。

 と、ジャッジ・ザ・デーモンが処置室の中を凝視していたその時。

「出してくれ! 頼むから出してくれ!」「!」

 突然、発狂した状態でガラス越しから訴えてくる西宮硝子の実父が飛び込んできた。

 一驚するジャッジ・ザ・デーモンだが、彼が室内を凝視してみると、うっすらと壁に恐ろしいオバケの様な影が映し出される。

 ジャッジ・ザ・デーモンはすぐに部屋の隣の鉄格子を掴んで止めようとするが、そのオバケの影をした人間はそのままジャッジ・ザ・デーモンの前から逃げ去ってしまった。

「ふふふっ、ドクターが診察を始めたみたいだね。順番が来たらブザーで呼ぶってさ。教えてよ、デーモン。君が一番怖れてるのは、何だい? 孤独? それとも……ぐふふ」

 スピーカーから問い掛けてくるMrフェイクの戯言を聞き流しつつ、ジャッジ・ザ・デーモンは先ほど逃げ去った人間の追跡をする事に。

 発狂して死亡した守衛や医療スタッフ達の死体が確認できる処置室の突き当りは、脆い壁となっており、ジャッジ・ザ・デーモンはその壁を爆破ジェルで吹き飛ばして先へと進行する。

 

 爆破ジェルで壁を吹き飛ばし、先へと進んでいくジャッジ・ザ・デーモンの目に飛び込んできたのは。

「ジャッジ・ザ・デーモン、助けてくれぇ!」

 なんと金網にしがみ付くウェルズが、ジャッジ・ザ・デーモンに助けを求めてた。

 だが「うわあああ……」何者かに引きずられて、見えなくなってしまう。

(ウェルズ!)

 ジャッジ・ザ・デーモンは目の色を変えて、ウェルズを追った。

 通気口の鉄格子を外し、その中を通って通路へと出る。

 そして其処でウェルズが引きずられた跡を発見して、それを追っていくと壁際に寄りかかるウェルズの姿を発見する。

 ジャッジ・ザ・デーモンはウェルズの安否を確認するべく、指を彼の首の頸動脈に押し当てて脈を取るのだが。

「……済まない、ウェルズ……」既にウェルズは死亡していた。

 悲痛な心境のジャッジ・ザ・デーモンは、現状を報告するべく通信機でキャサリン・ルースに連絡を入れる。

「キャシー……済まない、間に合わなかった」

「只今、電話に出られません。発信音の後にメッセージを……」

「キャサリン、聞いてるのか?」

「早く切って!」

 何故かキャサリン・ルースから拒絶されたジャッジ・ザ・デーモンは困惑しながらも、ウェルズを殺害した犯人を追う事に。

 

 そしてジャッジ・ザ・デーモンはその足で、遺体安置所へと辿り着いた。

 普通よりも異質で重苦しい空気が張り詰める遺体安置所だが、この時は何故か通常以上に感じられる空気がおかしかった。

 遺体安置所の隅から隅まで探索したジャッジ・ザ・デーモンは、遺体安置所を出る事に。

 だが、出入り口から出ると、何故か再び遺体安置所に戻ってしまう。

 普通ではない事態に、ジャッジ・ザ・デーモンは冷静に考えようとするのだが。

 遺体安置所の中央、三つの金属製のテーブルの上に遺体収納袋が同じく三つ置かれていた。しかも、どの遺体収納袋も中からモゾモゾと蠢いていた。

 ジャッジ・ザ・デーモンは一つ一つ、遺体収納袋を開けてみる事に。

 そして最初に開けた遺体収納袋の中に押し込められていたのは。

「Mrウォルト!?」「君をこの世界に招いたのは間違いだった」

 なんとジャッジ・ザ・デーモンこと小田原修司を二次元界に招いた神の一人ウォルト・ディズニーが入ってた。

 ウォルト・ディズニーからの発言に激しく戸惑い、思わず転倒しそうになるジャッジ・ザ・デーモンは次に反対側の遺体収納袋を開けてみる。

 すると、その遺体収納袋の中に入っていたのは。

「手塚先生!?」

「修司くん、これ以上僕たちの世界を穢さないでくれ……!」

 ウォルト・ディズニーに続き、手塚治虫にまでも拒絶されるジャッジ・ザ・デーモンは、最後に残った遺体収納袋を開いてみた。

 と、最後の遺体収納袋を開けてみると、中から出てきたのは悍ましい真っ黒い容姿をしたオバケの様な怪人だった。

 

 と、危うく気絶しそうになるジャッジ・ザ・デーモンが立ち上がると、遺体安置所の風貌がガラリと変わっていた。

 なんと遺体安置所が曇天の中の様な空中へと浮遊し、進のが困難な地形に変形していた。

 ジャッジ・ザ・デーモンは変形した地形を跳び越えて、向こう側へと辿り着くのだが。

 見上げてみると、摩天楼の様に高く積み重なった地形の頂上には、二次元界の希望の象徴である聖龍隊の軍旗にも使われている魔鳥のシグナルライトが曇天に照射されてた。

 その時、シグナルを視認するジャッジ・ザ・デーモンが耳鳴りを起こしたと思いきや、彼の目の前に巨大な黒い影が現れる。

「哀れな鬼よ。ようこそ、私の世界に」(ナイトメア……)

 巨大な全貌で目から凄まじい光線を照射する元精神科医のナイトメアを目の当たりにするジャッジ・ザ・デーモン。

 巨大なナイトメアは、宙を舞いながら回転し、自分の周りで浮遊する建造物を監視してた。ジャッジ・ザ・デーモンはナイトメアに見つからないよう慎重に頂上へと向かう。

 

「お前の心を引き裂いてやる!」

 ナイトメアは精神的にジャッジ・ザ・デーモンを殺そうと躍起になっている様子。

 

「何をしようとしている?」

 爆破ジェルで壁を崩壊させると、中央を回ってたナイトメアが慌てた様子で崩壊した壁を凝視する。

 と、ナイトメアが崩壊した壁の付近を凝視している間に、ジャッジ・ザ・デーモンは先へと駆け上がっていく。

 そして頂上の魔鳥のシグナルを使用し、ナイトメアにシグナルライトを直射させた。

「何をしようとしている?」

 そのシグナルが直射すると、ナイトメアは光に呑み込まれて消滅するのだった。

 

 雄叫びと共に光に包まれて消滅したナイトメア。

 気付くとジャッジ・ザ・デーモンは通常の遺体安置所に戻っていた。

「聞こえる、修司さん? 何があったの?」

「キャシーか……いや、何でもない」

「連絡が途切れたから、本当に大丈夫なの?」

「ああ、ちょいとナイトメアと戯れていただけだ」

「え?」

「また連絡を入れる」

 キャサリン・ルースからの通話で、ジャッジ・ザ・デーモンは先ほどからの通話の前後から既にナイトメアの術中に嵌っていたのだなと認識する。

 そんなジャッジ・ザ・デーモンはどうしても確認したい事があり、遺体安置所から出るのだった。

 

 

[ウェルズの救出]

 

 ナイトメアの幻覚に苛まれていたジャッジ・ザ・デーモンは、先ほど通路の端に寄りかかってたウェルズの死体を確認するため走る。

 そしてジャッジ・ザ・デーモンがウェルズの死体の所まで駆け付けると、案の定やはりウェルズではなく守衛の死体だった。

(ウェルズじゃなかった! 今回のナイトメアの幻覚ガスは、いつもより強力らしい……!)

 と、ジャッジ・ザ・デーモンが先ほど確認した死体がウェルズではなかった事を再認識しているところに、Mrフェイクがまるで混乱を誘う様にスピーカーでジャッジ・ザ・デーモンに話し掛ける。

「混乱してるのかい、デーモン。夢と現実の区別がつかないのかい。身を任せるんだ、楽になるよ」

 すると守衛の死体のすぐ近くの鍵がかかっている扉を、三人の囚人達が力任せに体当たりして突破してきた。

 扉を突破し、ジャッジ・ザ・デーモンに襲い掛かるのは二人の囚人と、両手に刃物を持った囚人の三人組だった。

 ジャッジ・ザ・デーモンは襲い掛かってくる三人の囚人を相手に闘い始める。二人の囚人には拳と蹴りで打撃を与え、刃物を持つ囚人には両腕のブレードエッジで刃を受け止めつつ的確に反撃を仕掛ける。

 そしてジャッジ・ザ・デーモンは三人の囚人達を素早く倒した。

「ジャッジメント」

 三人組の囚人を倒したジャッジ・ザ・デーモンは、そのまま通路に着色スプレーで吹き付けられた赤い矢印を目印に、病棟の奥へと進行する。

 と、棟内を進行するジャッジ・ザ・デーモンを挑発する様にMrフェイクが話し掛けてきた。

「小細工はもうやめようか。トガヒミコちゃんと怪盗ジーニアスがウェルズを殺したがってるんだよね」

 Mrフェイクの発言にも、冷静さを欠けないジャッジ・ザ・デーモンは足早に棟内を駆け抜ける。

 そして赤い矢印に従いながらジャッジ・ザ・デーモンが駆け抜けていくと、そこは実験室だった。

「本部長はガラスの奥だよ。見てちょうだいよ」

 実験室の室内を覗けるガラスを見てみると、ジャッジ・ザ・デーモンにまだ気付いていないトガヒミコと怪盗ジーニアス、そして椅子に縛り付けられているウェルズを視認できた。

「少しでも君の気配がしたら、トガヒミコと怪盗ジーニアスがウェルズを撃つ手筈なんだよね」

 Mrフェイクの言う通り、ガラスの向こうのトガヒミコと怪盗ジーニアスは、いつでも椅子に拘束されているウェルズを銃殺できるように銃器を持っていた。

「さあ! 誰にも気付かれず、三人の所に辿り着いてみなよ」

 そうMrフェイクから告げられたジャッジ・ザ・デーモンは、実験室の閉ざされた出入り口の横の通気口を塞ぐ鉄格子を静かに外して、実験室内へと侵入する。

 

 静かに通気口を通っていくと、同じく武装している囚人達の会話が聞こえてきた。

「ジャッジ・ザ・デーモンをウェルズに近付けるな。Mrフェイクに責任を取らされるぞ」

「誰も通しゃしねえよ。デーモンを倒して名を挙げてやる」

「とにかく、しっかり見張れよ!」

「行くぞ!」

 どうやら実験室内には、トガヒミコと怪盗ジーニアスも含めて七名の武装した敵が徘徊している様子だった。

 通気口を通って実験室内に侵入したジャッジ・ザ・デーモンは、近くに立っている武装囚人を一人、背後から忍び寄って静かに倒す。

 それからジャッジ・ザ・デーモンは姿勢を低くして、他の武装囚人に忍び寄り、静かに物音を立てずに倒していく。

「ウェルズ本部長は、特等席で殺されるのを待っているだけのご様子みたいだ」

 その間、実験室の監房室ではトガヒミコと共に今か今かとウェルズを銃殺しようかと待ち望んでいる怪盗ジーニアスが拡声器を通してお喋りしていた。

「デーモンは居た? いないんですの? とんだ腑抜けですわ。このままじゃMrフェイクの勝利ね!」

 トガヒミコも、姿を見せないジャッジ・ザ・デーモンに対して既に勝気でいたのだが、その間にもジャッジ・ザ・デーモンは次々に武装囚人を静かに倒していく。

「いつか必ず、再び捕まるぞ。そしてまた刑務所に逆戻りだぞ。ヒミコ、ひびき」

 一方、椅子に縛り付けられているウェルズはトガヒミコと紫京院ひびきに忠告しつつ辛抱していた。

「パワードスーツを着た黒い鬼を見付けたら報告! ヒミコちゃんとひびきちゃんがウェルズを撃ち殺すから」

 そんな実験室でのやり取りを監視カメラを使って眺めているMrフェイクが徘徊する武装囚人達に告げる。

「MrFに打ちのめされて、ジャッジ・ザ・デーモン打つ手なし!」

「お前らクソガキの言葉で、俺の心が折れると思ってるのか」

 全ての武装囚人を静かに倒したジャッジ・ザ・デーモンが監房室へと向かう中、怪盗ジーニアスの発言にもウェルズの精神は負けてはいなかった。

 

 そして我慢できなくなったトガヒミコと怪盗ジーニアスは、持っていた銃器でウェルズを射殺しようと構えた。その時。

「「うわあっ!」」

 ガラス張りの天井を突き破って、二人の真上からジャッジ・ザ・デーモンが拳を振り上げてトガヒミコと怪盗ジーニアスの頭に一発ずつ拳を叩き込んで気絶させる。

「おいおい、遅いじゃないか」

 耐え忍んでいたウェルズの問い掛けに、トガヒミコと怪盗ジーニアスを気絶させたジャッジ・ザ・デーモンが近付き、拘束を解く。

「今回のMrフェイクはいつも以上に策を講じてる。勝ち目があるかどうか……」

 ウェルズの拘束を解きながら話すジャッジ・ザ・デーモンに、ウェルズが笑顔で返した。

「お前ならできるって。ところで……アレを見てみろよ、何だと思う?」

 ウェルズは視線を振って、実験室の中央にある頑丈なガラス張りの小屋を見詰める。

「このお喋りさん! サプライズが台無しだよ」

「お前は黙ってろ」

 ウェルズの告白にMrフェイクが文句を言うと、ジャッジ・ザ・デーモンがMrフェイクに反論する。が、Mrフェイクは笑いながらジャッジ・ザ・デーモン達に話し返す。

「いやいやいや、お喋りは司会者の得意分野でしょ。明石家さんまだって、お喋りを取り除けば面白くなくなるだろ?」

 

 そんなMrフェイクの戯言を聞き流し、ジャッジ・ザ・デーモンとウェルズは実験室の中央にあるプレハブ小屋の様な小部屋に入って調べてみる。

「DrヤンのログインIDが必要みたいだな」

「ウェルズ、それよりも俺の後ろに隠れろ、早く!」

 パソコンを調べるウェルズに、小屋の奥を見たジャッジ・ザ・デーモンが伝えると、ウェルズも小屋の奥へと目を向けた。そして白煙の中から現れたのは。

「サングリエント……?」

 なんと先日のタナトス・アサイラムの集団脱走の際に脱獄したと報告されてたサングリエントが、小屋の壁に拘束されていたのだ。

「なんで、お前が此処に……!? この前の集団脱走の際に脱獄してたんじゃ……!」

 焦燥し切った顔でウェルズが疑問を投げかけると、拘束されているサングリエントは苦しそうに訴えた。

「下ろせ……」「誰がこんなことを?」

 完全に衰弱し切っているサングリエントを前にジャッジ・ザ・デーモンが唖然としてると、サングリエントは返答する。

「ヤンだ、Drヤンだ。俺の体から、筋肉増強剤を……殺してやる、あのプルハを……」

 と、ジャッジ・ザ・デーモンとウェルズが痩せ細ったサングリエントに注目してると、テレビ画面にMrフェイクが映ってはサングリエントに謝罪する。

「ごめんね、サングリエント。ドクターにはキツく言っておくよ。ボクのオモチャになった気分はどうだい? さぁってと、バトルの開幕だ!」

 次の瞬間、Mrフェイクは手に持っているスイッチを押して、衰弱してるサングリエントに筋肉増強剤を注入して強引に興奮させた。

 そしてMrフェイクが握るスイッチが押され、衰弱してるサングリエントに筋肉増強剤が注入される。

 すると衰弱して、痩せ細っていたサングリエントの肉体が瞬く間に膨張し、筋肉が膨れ上がり全身が真っ赤に染まる。

「逃げろ、ウェルズ!」

 そして目の色も変わって興奮状態のサングリエントを前に、ジャッジ・ザ・デーモンがウェルズにこの場から早急に退避するよう叫ぶ。

 巨体化したサングリエントは床へと下りると、一直線にジャッジ・ザ・デーモンに襲い掛かってきた。

 ジャッジ・ザ・デーモンはサングリエントの大岩ほどもある拳を、上から横から回避し、サングリエントの顔に一発拳を叩き込む。

 しかしサングリエントは全く怯まず、それどころかジャッジ・ザ・デーモンを持ち上げるとそのままレンガの壁へと投げ付けた。

 壁に叩き付けられて、壁の裏側へと投げ飛ばされるジャッジ・ザ・デーモン。

「お行儀よく、遊ぶんだよ」

 そんな様子を監視カメラで観戦するMrフェイクが、ジャッジ・ザ・デーモンとサングリエントに呟いた。

 

 そして実験室と隣接しているボイラー室の中で、ジャッジ・ザ・デーモンとサングリエントの死闘が展開される。

 

 

[対決! サングリエント]

 

 実験室に拘束されてたサングリエントが、Mrフェイクの手で筋肉増強剤を投与されて暴走。

 ジャッジ・ザ・デーモンを隣接するボイラー室へと追いやると、そのままサングリエントはジャッジ・ザ・デーモンと戦闘を開始してしまう。

 サングリエントは怪力で、すぐ近くの石柱を引き剥がし、巨大なレンガの塊をジャッジ・ザ・デーモンに投げ付ける。が、ジャッジ・ザ・デーモンは素早い回避でサングリエントの攻撃をかわした。

 するとサングリエントは次に、ジャッジ・ザ・デーモンへと一直線に突進してきたが、ジャッジ・ザ・デーモンは回避すると同時にサングリエントへとジャッジラングを投げ付けて、顔面に直撃させる。顔面にジャッジラングが直撃したサングリエントは顔を押さえた為に前が見えなくなり、壁へと激突してしまう。

 壁に激突したサングリエントが朦朧としている所に、ジャッジ・ザ・デーモンが接近してサングリエントに連続攻撃を浴びせる。そして最後にマーシャルアースキックでサングリエントの顔面を床に叩き付けた。

 顔面を強打するサングリエントは、床を殴り付けて強力な衝撃波を繰り出すが、ジャッジ・ザ・デーモンはこれも回避する。

 と、監視カメラで観戦してたMrフェイクがサングリエントに問い掛けつつ命じる。

「応援が要りそうだね、サングリエント。OK! 君たちも、やっちゃいな!」

 するとボイラー室の二階部分で待機していた囚人達がボイラー室に雪崩れ込む。

 

 雪崩れ込んできた囚人達の相手をしながら、同時にサングリエントとも闘う事になったジャッジ・ザ・デーモン。襲い掛かる囚人達の猛攻を掻い潜りながらサングリエントの攻撃にも対処していく。

 するとサングリエントは再び石柱を引き剥がして、レンガの塊を投げ付けてきたが、ジャッジ・ザ・デーモンではなく乱闘する囚人達に直撃してしまう。

 そしてサングリエントが再びジャッジ・ザ・デーモンに突進してくるが、ジャッジ・ザ・デーモンは囚人達の乱闘を闘い抜きながらサングリエントにジャッジラングを投擲して顔面を攻撃。顔を押さえるサングリエントは、そのまま囚人達に体当たりしながら壁へ激突。朦朧とする中、ジャッジ・ザ・デーモンの猛攻を浴びて再び顔面を床に叩き付けられる。

「それで本気かい、サングリエント? 手を貸してあげようじゃないか」

 戦闘がサングリエントに不利な中、Mrフェイクは更に増援である囚人をボイラー室に雪崩れ込ませた。

 

 更に大勢の囚人達を相手にするジャッジ・ザ・デーモン。そんなジャッジ・ザ・デーモンにサングリエントは気絶している囚人を投げ付けて遠距離攻撃。だが、ジャッジ・ザ・デーモンは攻撃を回避してかわす。

 サングリエントはまたしても突進攻撃してきたが、ジャッジ・ザ・デーモンは再度ジャッジラングを投げてサングリエントの視界を奪うと、サングリエントは壁へと激突。

 だが今度は囚人達に阻まれてサングリエントに接近する事が叶わなかった。

 そんなジャッジ・ザ・デーモンにサングリエントはまたしても気絶している囚人を投げ付けて攻撃。寸でのところでジャッジ・ザ・デーモンは回避する。

 そしてまたもや突進してきたサングリエントの顔にジャッジラングを直撃させて、サングリエントを壁へと激突させる。

 壁に激突したサングリエントを、ジャッジ・ザ・デーモンは徹底的に攻撃して完膚なきまでに痛め付けた。

 

 するとジャッジ・ザ・デーモンとサングリエントの激しい戦闘で、ボイラー室が崩落を始めた。

 激しい戦闘で建物が崩落し出し、サングリエントが瓦礫に埋もれる中、ジャッジ・ザ・デーモンはグラップネルガンを用いて急いで脱出。

 辛うじてマンホールから脱出するジャッジ・ザ・デーモン。だが彼はサングリエントとの戦闘の最中に、左腕を痛めてしまってた。

 するとジャッジ・ザ・デーモンは遠隔操作でジャッジモービルを呼ぶ。

「ジャッジ・ザ・デーモン、大丈夫か?」

「何とかな、ウェルズ」

 そこに先に実験室から屋外へと脱出していたウェルズが駆け寄り、ジャッジ・ザ・デーモンを気に掛ける。そんなウェルズにジャッジ・ザ・デーモンは問い掛ける。

「トガヒミコと怪盗ジーニアスは?」

「消えたよ。騒ぎに乗じて逃げたんだろう」

 すると此処でジャッジ・ザ・デーモンはウェルズに提言した。

「ウェルズ、島から出るんだ」

「俺は新参者でも無けりゃ、若造でもない。自分の面倒は自分で見られる」

 と、ジャッジ・ザ・デーモンとウェルズが話していると、そこに壁を突き破って脱出したサングリエントが強襲する。

 サングリエントはジャッジ・ザ・デーモンを捕まえると騒ぎ出した。

「殺してやる、ジャッジ・ザ・デーモン。その次は、あのプルハだ!」

 しかしジャッジ・ザ・デーモンは冷静さを欠ける事無く、サングリエントに告げた。

「サングリエント、完全に頭に血が上っているようだな。少し頭を冷やしておけ」

 するとジャッジ・ザ・デーモンが先ほど呼んだジャッジモービルがその場に駆け付け、そのままサングリエントへと一直線に突撃。

 ジャッジ・ザ・デーモンの方は間一髪、サングリエントを蹴り飛ばした事でジャッジモービルの直撃を免れた。

 そしてジャッジモービルに突っ込まれたサングリエントは、そのままジャッジモービルごと海に突っ込んで消えてしまうのだった。

「いい車だったのにな」

 ジャッジ・ザ・デーモンと共にサングリエントが海にジャッジモービルごと突っ込んで消えたのを目の当たりにしたウェルズは、サングリエントと共に海に突っ込んで消えたジャッジモービルを見て呟く。

 

 そして二人は船着き場に移動すると、ジャッジ・ザ・デーモンは再びウェルズに提言する。

「アニメタウン本土に戻ってくれ、ウェルズ。ここは危険すぎる」

「お前さんを置いていくのは、ちょっと……」

 ジャッジ・ザ・デーモンに言われて渋々船に乗り込むウェルズに、ジャッジ・ザ・デーモンは更に告げた。

「Mrフェイクはアニメタウン中に爆弾を仕掛けた。ウェルズ、お前の指揮も必要なんだ」

 すると船上で待機していた警察官一人がウェルズに声をかける。

「行きましょう、本部長」

 こうして渋々ながらもアニメタウン本土に戻る事を了承したウェルズは、最後にジャッジ・ザ・デーモンに問い掛けた。

「そういえば……サングリエントが口にしてた、プルハって何の事だ?」

 これに対してジャッジ・ザ・デーモンは、口を詰まらせながら説明する。

「あーー、それは……スペイン語で、ウィッチ…………魔女を意味する」

「あーー、なるほど……」

 口を詰まらせるジャッジ・ザ・デーモンの言動に、ウェルズも納得する。聖龍隊には魔女も多く在籍しているからだ。

 

 

 

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