「…それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」
「今回はシャーレのお2人にお越しいただいているので、いつもより真面目な会議が出来そうですね…」
「何よその言い方、まるでいつも私達が不真面目みたいじゃない」
セリカさんが誘拐された事件からしばらくして、先生と私はアヤネさんに誘われてアビドスの定例会に参加することになりました
「本日はよろしくお願いします」
“よろしくね”
「さっそく議題に入ります。本日は、アビドスにとって大きな問題である『借金をどう返済するか』について、議論していきます」
「意見のある方は挙手して下さい」
「はい!!」
「はい、黒見さん。お願いします」
「…苗字で呼ぶのやめない?なんか堅苦しい」
「で…でも、一応会議なんだから…それなりに体裁を」
やはりと言ってはなんですが、ここで過ごしてて分かるのは借金がアビドスのみなさんにとって根深い問題であることです
もちろんみなさん楽しそうに生活をしてはいるのですが、節々に借金について考えているだろうことがわかります
特にセリカさんは顕著で、借金に対して一番真摯に向き合っていると言っても過言ではありません
「いいんじゃな〜い、先生もいるんだし…たまにはお硬い感じでやってもさ」
「はい!委員会っぽくてとてもいいと思います〜!」
「先輩たちがそう言うなら…」
「とにかく!私たちは多額の借金を抱えていて、会計担当としては我が校の財政状況は破産寸前としか言いようがないわ!」
「このままだと廃校よ!みんな分かってるでしょう?」
「現状利息の返済だけで手一杯、今まで通り、指名手配犯を捕まえたり、ボランティアをするのも限界が近い」
「何が、でっかく一発狙わないと埒が明かない!」
だから、今回の議題について、かなり期待が持てる人だと思っています
「でっかくって…例えばどんな?」
「これよ!チラシを街で配ってたの!」
そう思いつつ、セリカさんが取り出したチラシの内容に目を向けます
「『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金!』……えっ…」
「そうよ!これでガッポガッポ稼ごうよ!」
……期待できると…思ってたんですけれど…
「この前説明会があってね、このブレスレット…身につけるだけで運気が上がるんだって!これを周りの人に紹介すれば」
「セリカさん…」
「な、なによ?」
「元ヴァルキューレ所属として、後でお話があります」
「な、なんでよっ!」
“セリカ…それはマルチ商法って言ってね、詐欺の一種なんだ…”
「ん、儲かるわけない」
「へっ!?…もう2個も買っちゃったんだけど…」
「セリカちゃん、だまされちゃいましたね☆」
「この後個別授業があるのでセリカさんは教室に来て下さい…」
セリカさん…会計として大丈夫なんでしょうか…
「全くセリカちゃんったら〜気をつけないと悪い大人に騙されて取り返しがつかなくなっちゃうよ〜?」
「ぐぅっ…」
「えっと…それでは…他にご意見のある方、いらっしゃいますか?」
「は〜い」
「はい…小鳥遊委員長、どうぞ。少し嫌な予感がしますが…」
アヤネさんの発言がもう不穏なんですが…
「わが校の問題は借金もそうなんだけど、根本的なところは生徒数が数人しかいないことなんだよね」
「そうなんですか?」
「うん、生徒数っていうのは学園の影響力とほぼほぼイコールでね、膨大な数の生徒を持つゲヘナやトリニティがキヴォトス全土において強い力を持つのはその生徒数にあるんだ。ミレニアムみたいに特別な技術を持つ学園は例外だけどね」
「それに生徒数が多いとその分お金が使われて、自治区内で経済が回るでしょ?」
「だから生徒数を増やさなきゃね、まずはそれからだね〜」
…思ったよりしっかりとした意見が出て来ましたね…流石3年生…いつもはゆったりした感じですが、やるときはやるんですね
「とても鋭い意見ですが…では、具体的にはどのようにして生徒数を増やすのでしょうか?」
「簡単だよ〜他校のスクールバスを拉致してしまえばオッケー!」
「登校中のスクールバスをジャックして、転入学書類にハンコを押さないと解放しないってするんだ〜」
「これで転入生爆増間違いな〜し!」
なるほど、
「………はい?…」
え、今完全に拉致って言いましたよね?バスジャックするって言いましたよね?…聞き間違えじゃなければ最終的に恐喝するって言いましたよね…
「悪くないね、ターゲットはどこ?ゲヘナとかそのへん気にしなさそうだけど、その代わりに生徒側の抵抗が激しそうだし、狙いによって戦略を変える必要がある」
「シロコさん!?」
「それで認められるとは思えませんし、他校の風紀委員が黙ってませんよ…」
「やっぱり?」
「やっぱりじゃないですよ…」
「それじゃあ私からいい考えがある」
「…………はい…砂狼シロコさん」
さっきホシノさんの案に乗っていましたし、もう不安しかないですね…
「銀行を襲おう」
「はいっ!?」
「ターゲットは市街地の第一中央銀行。いろんな情報はすでに仕入れてあるから確実に成功する」
「5分で1億は稼げる。はい、みんなの覆面も用意しておいた」
そう言ってシロコさんは額に2番と書かれた目出し帽をかぶります
「いつの間にこんなものを…」
「これ、シロコちゃんの手作り〜?」
「わぁ、レスラーみたいです!」
カチャン
「ん?」
「逮捕です」
「ん゛!?」
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「…えー、ホシノさんとシロコさんはセリカさんとはまた別の個別授業を後日行います。特にシロコさん」
「ん…」
「みなさん…もっとまじめに話し合って下さい…」
「あのー、はい!次は私が!」
「はい、十六夜ノノミさん。違法なものは抜きでお願いします」
「はい!犯罪でも詐欺でもないクリーンな稼ぎ方があります!」
「それは?」
「アイドルです!スクールアイドル!」
「先日アニメで見たんですけど、学校の復興と言えばスクールアイドルだそうです!」
“興味あるね…”
先生?
とは言えさっきまでのものと比べたら遥かに良いのもまた事実ですね………そんなことはないですね……
「却下」
「あら?ダメなんですか?」
「ホシノ先輩なら特定の層に大ウケしそうなのに」
セリカさん…それ遠回しにディスってません?
「こんな貧相な身体に興奮するような人は人間としてあれでしょ〜却下〜」
先生驚いたように身体震わせないで下さい…反応に困ります
「せっかくポーズも考えたのに」
そう言ってノノミさんはポーズを決め、
「水着少女団のクリスティーナで〜す♧」
そう言い放ちました…はい…その…
「ダッサっ!」
セリカさんが代弁してくれたので発言は控えさせていただきます
「えー、徹夜で考えたのに……」
徹夜で考えたからでは?
「あの…そろそろ結論を…」
「もう先生に任せちゃおうよ、先生は今までの意見の中でどれがよかったと思う?」
「今までの案の中からですか!?」
「だいじょ〜ぶ、先生が言うなら間違いないよ」
「その自信は一体どこから来るんですか!?」
「先生〜どれがいい?」
“アイドルグループ結成!プロデューサーには私がなる!”
「えぇっ!本気ですか!?」
「やりました〜☆」
「まぁ…1番マシなのは…それに…なるんですかね…」
「それじゃあ、全員の振り付けを考えよう」
「まぁ、いいんじゃな〜い」
どれが1番いいかって聞かれたらまぁ…アイドルグループでしょう…
「……い……ですか…」
アヤネさん…?
「いいわけないじゃないですか!!!!」
「いい加減にしてください!!!!!!」
「出たー!アヤネちゃんのちゃぶ台返しー!」
「きゃあ!アヤネちゃんが怒りました!非常事態です!」
「何が行けなかったんだろう」
「シロコさん…答えは明確ですよね…」
「真面目にしてください!マルチ商法だとか「ギクッ」バスジャックだとか「うへぇ…」銀行強盗だとか!「ん…」ふざけないでください!!!」
この会議を終えて1つ学んだことがあるとすれば…アビドス対策委員会の中で最も怒らせてはいけないのは、アヤネさんだということです
アビドス対策委員会の中で一番怒らせると怖いのはアヤネちゃん、異論は認める