TS魔法少女飲酒フォックス   作:TSF大好きマン

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初投稿です。
TS魔法少女飲酒物が読みたくて自家発電しました。
お手柔らかにお願いします。


プロローグ

『――警告。第三地区にて空間の異常を確認。対象地域の住民は直ちに地下シェルター、または協会指定避難所へ避難してください。繰り返します――』

 

 けたたましい警報音と避難を促すアナウンスが鳴り響き、昼時の賑わいを見せていた繁華街は警報を合図にぴたりと静まり返った。

 一瞬の沈黙の後、危機を察した人々が一斉に動き出す。

 荷物を抱えて足早に歩き出す親子、泣き叫ぶ赤子を抱きかかえながら逃げ惑う女性、携帯端末で地図を確認しながら走り出す学生、避難を呼びかけながら走る従業員たち。

 繁華街はたちまち混乱に包まれ、人々が地下シェルターへと続く階段へとなだれ込む。そんな人波に逆らうように、一人の小柄な少女が逆方向へと駆けていた。

 

《ヒカル、勤務時間外に悪いが仕事だよ。》

(わかってる。)

 

 黒のパーカーを羽織り、大きな猫耳付きのフードを深く被った金髪の少女、ヒカルは念話で語りかけてきた相棒に脳内で短く応じると、逃げ惑う人々を避けるように路地へと足を踏み入る。

 次の瞬間、彼女の体を無数の光の粒子が包み込む。

 数秒後、粒子が消えた先に立っていたのは、赤と白を基調とした巫女装束に身を包み、金髪に赤い瞳をした狐耳の少女――魔法少女〈ワイルド・フォックス〉だった。

 変身を終えたヒカルは4階建ての建物の屋上へと跳び移ると、現場への道案内を頼んだ。

 

「ユズ、出現予想地点は?」

《ここから南東の住宅街の一角だよ。ナビは任せて。》

 

 ユズの案内が始まり、ヒカルは屋上を跳び移りながら現場へと急行した。

 

 

◇ ◆ ◇

 

 

 案内に従うこと数分。

 ヒカルがたどり着いたのは人の気配ひとつない、モダンな一軒家や集合住宅が並ぶ住宅街だった。

 空間異常特有のピリピリとした異質な空気が肌を刺し、全身の毛が立つような不穏な気配が背筋を這い上がる。

 思わず身をこわばらせたヒカルは、警戒を強めながらゆっくりと住宅街の奥へと足を踏み入れた。

 

《機械兵の生命反応を確認…ヒカル、来るよ。》

 

 警告の直後、ふしゅうと空気が漏れるような音を聴覚が拾う。

 金属が擦れる音とともに、地面を踏みしめる重々しい足音が住宅街に鳴り響いた。

 足から伝わる振動はヒカルのもとへ――正確には、地下シェルターを目指して近づいている。

 

「――【召喚】」

 

 接触まであとわずか。ヒカルは覚悟を決め、手元に日本刀を召喚する。

 魔法少女らしからぬ物騒な武器だが、接近戦をするしかない彼女には最適な得物だった。

 

 振動は次第に激しさを増し、住宅街を破壊しながら"異常"はついにその姿を現した。

 体長はおよそ3メートルから5メートル。全身を金属の鎧で覆った二足歩行の機械生命体――通称〈機械兵〉。丸みを帯びた頭部には眼球を模した二つの視認機器が赤く光り、装甲の隙間からは絶え間なく白い煙が噴き出している。

 

「AAaaa!」

 

 視認機器がヒカルを捉えるや否や、機械兵たちは電子的な雄叫びを上げ、武装を次々と展開しながら戦闘態勢に移行。銃火器や槍状の武装が次々と突き出され、彼女に狙いを定める。だが、先に動いたのはヒカルだった。

 

「ふっ!」

 

 地を蹴って一気に機械兵の一体へ肉薄し、抜刀と同時に横薙ぎの一閃を放つ。刀身と装甲が激しくぶつかり、火花が散る。僅かな拮抗の後、刀身は装甲ごと機械兵の胴体を斬り裂いた。

 金属片が宙を舞い、裂け目から噴き出した白煙が煙幕のように広がる。重々しい音を立てて倒れ込む巨体を跳び越え、ヒカルは次の獲物へと視線を向けた。

 

(視認できる範囲の機械兵は十体…どれも歩装級だから問題ない。)

 

 遅れて放たれた銃弾と槍状の武装を、身体能力に物を言わせて躱しながら間合いを詰める。避け損ねた銃弾がヒカルの体を捉えたが、数発程度なら彼女の衣装が無効化するため問題ない。

 機械兵の一体に狙いを定めると、ヒカルは胴体に淡い光を纏った蹴りを叩き込む。鈍い音を立てて巨体が宙に浮かび、別の機械兵の武装を巻き込みながら住宅の壁に激しく衝突して停止した。

 

「AaGaAaa!」

 

 蹴り終えたヒカルを隙だらけだとばかりに攻撃する機械兵。しかし、彼女はすでに月の行動を見据えていた。

 跳ねるようにその場から距離を取る。寸前まで彼女がいた場所に槍と銃弾が殺到し、衝撃音とともにアスファルトが激しく抉れた。

 

「二体目ッ!」

 

 攻撃によってわずかに硬直した機械兵に跳びかかり、一閃。刀身が分厚い装甲を断ち切り、火花と白煙を撒き散らしながら、巨体が地響きを立てて崩れ落ちる。

 瞬時に距離を取ると、ヒカルは次の機械兵へと斬りかかった。

 

 

 最後の機械兵が煙をまき散らしながら崩れ落ち、辺りに静寂が戻る。

 舗装された道路には抉られた破壊跡と無数の瓦礫が散らばり、住宅のいくつかは無残に倒壊している。壁には無数の銃痕が痛々しく刻まれ、戦闘の痕跡が濃く残されていた。

 ヒカルはゆっくりと息を吐く。破れた衣装と焦げ跡が戦闘の激しさを物語っているが、気にする素振りもなく周囲へ目を向けた。

 

《――機械兵の生命反応沈黙。殲滅完了だよ。》

 

 ユズからの念話を受け、ヒカルは日本刀を鞘に納めると、衣装についた埃を軽く払った。

 

「被害状況は?」

《今のところ負傷者はいないよ。周辺住民の避難も済んでいるから、後始末は協会に任せて帰ろう。》

「…わかった。」

 

 戦闘の余韻が残る街並みから視線を逸らし、ヒカルは静かに歩き出した。

 

 

◇ ◆ ◇

 

 

 夕方。戦闘を終え帰路に着いたヒカルは、浴槽に身を沈めていた。

 暖かな湯が疲れた体を包み込み、戦闘の緊張がゆっくりと解けていく。

 湯気の中、天井を見上げながらヒカルはぼんやりと考えを巡らせていた。

 

(――自分が魔法少女になっているなんて、今でも信じられないな。)

 

 魔法少女〈ワイルド・フォックス〉こと古酒(こさか)ヒカルは男である。

 正確には"元男"であり、半年前まではIT企業に勤めるどこにでもいる冴えないシステムエンジニアだった。部署の送別会でしこたま飲酒をし、泥酔した帰り道。空間異常に巻き込まれ、機械兵に殺されかけた所を異世界からやって来た精霊のユズに助けられ、酔っぱらってあれよこれよとしているうちに元の面影一つない、金髪赤目の狐耳少女になっていた。

 酔いが覚め、意識を取り戻した当初は現実だと受け入れられなかったものだ。

 

(あの夜、一体なにがあったんだ?)

 

 泥酔していたあの夜のことをヒカルは何一つ覚えていない。全てユズと協会の人間から聞いた内容であり、ユズに尋ねてもいつもはぐらかされるため真相は謎のままである。

 魔法少女――異世界から侵略してくる機械兵と敵対する存在である精霊たちが力を授けた少女たちの総称であり、精霊の加護を受けて機械兵の脅威から人類を守護する守護者。

 本来、精霊は年若い少女としか契約しないとされるが、ヒカルは男性でありながら精霊と契約を交わし、魔法少女になっている。協会に保護された後、様々な検査を受けたが、なぜ契約が成立したかは未だに謎である。

 異例の魔法少女となったヒカルも例外ではなく、人類の守護者として日夜機械兵との戦いに身を投じている。

 

「命を懸けることになったとはいえ、生活は前よりも充実してるんだよなぁ…。」

 

 現在彼女が暮らしている住居も魔法少女の福利厚生の一つである。

 1LDKの広々とした間取りには最新のセキュリティと生活設備が整えられており、家賃・光熱費はすべて協会が負担。

 魔法少女としての活動には協会から給与が支払われており、その額はかつての社会人時代とは比べ物にならないほど高い。趣味に費やす資金は十分すぎるほど潤沢で、生活に不自由はない。

 魔法少女のイメージダウンを防ぐ目的から、アルコール類や成人向けの雑貨の購入には協会を通す必要があるといった制限はあるが、生活の質は社会人時代より数段向上している。

 

 

 風呂から上がったヒカルはバスタオルで髪を拭いながらリビングへと足を運んだ。

 魔法少女になってから髪の手入れには以前の何倍も時間がかかる。こればかりは半年たった今でも慣れないと、ぼやきながら冷蔵庫を開ける。

 

「仕事終わりは一杯やらないとな。」

 

 協会経由で取り寄せた缶ビールとビールグラスを手に取り、ソファまで移動したヒカルはソファに腰掛けながらテーブルにグラスを置いた。缶のステイオンタブを起こし、心地よい音とともにビールを開ける。グラスになみなみと黄金色の液体を注いでいくと、きめ細やかな泡が立ち上がり、黄金の上に白い層を形成する。

 グラスを持ち上げ、軽く唇を当てる。喉を通る冷たい炭酸の刺激とホップの苦みが心地よく、風呂上がりの火照った体に沁み込んでいく。

 

「風呂上がりに飲むビールはやめられないな。」

 

 小学生高学年くらいの幼い少女が美味しそうにビールを飲むという、絵面だけ見れば完全にアウトな光景がそこにはあった。どこからどう見ても魔法少女の未成年飲酒現場である。

 だが、その中身はれっきとした成人男性であり、肉体は別として実年齢上は飲酒権を有している。法的にはセーフ、倫理的にはグレー、視覚的にはアウトである。

 協会からも「魔法少女のイメージダウン」の観点から外出先での飲酒は固く禁じられているが、自室内であれば自己責任という形で黙認されており、担当職員からも「飲酒はほどほどにしてくださいね。」と圧をかけられることはあるが、ヒカルは自室限定とはいえ飲酒することを許されていた。

 

 おつまみとして燻製ナッツを頬張りながら、ヒカルはリモコンを手に取り、テレビの電源を入れる。画面が明るくなり、ニュースキャスターの落ち着いた声が室内に流れた。

 

『本日午後一時、都内で発生した空間異常は魔法少女〈ワイルド・フォックス〉により防がれました――』

 

 テレビには街中を跳び回りながら機械兵を次々と薙ぎ倒す〈ワイルド・フォックス〉の活躍が映し出さるれている。ニュース映像をぼんやりと眺めながら、ヒカルはグラスを傾け喉を潤す。

 

「まさか、自分がニュースデビューするとはな…」

 

 半年前までは、犯罪以外のことでニュースに取り上げられるなんて夢にも思わなかっただろう。

 数分ほどして〈ワイルド・フォックス〉の報道が終わると、画面は別の地域で活躍した魔法少女へと切り替わっていく。

 酒とつまみを楽しみながら、ヒカルは静かにグラスを再び傾けた。

 明日もまた戦いが待っている――だからこそ、それまではこの一時の安らぎを噛みしめていたかった。

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