You are our Hero!!   作:直樹

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元作品(2024-07-30公開)
・時期的にはサトシくんがハイパークラスくらい
・推しと推しポケが見たかった欲望の成れの果て


雪と夢で羽開く

「寒いところにいるポケモンの調査?」

「ぴぃか?」

 よく晴れたある日の午前中。太陽もすっかり準備運動を終えて、いよいよ元気に生命たちの身も心も照らさんばかりの日差しとなる頃合いだった。

 サクラギ研究所にてリサーチフェローとして活動するサトシとゴウは、所長であるサクラギからの次の活動内容の通告に対して口を揃えてそう返す。サトシの肩に乗っていたピカチュウも二人に続いて首を傾げた。

「そう。冬になればカントーも寒いけど、一年を通して気温が低いところのポケモンたちの調査をしてほしいんだ」

 サクラギが続けるとなるほどと二人は頷く。そうなると行き先は恐らくシンオウ地方だろう。四季は存在するがカントーから見ると北に位置する地方である為比較的涼しい。キッサキシティとその周辺ともなれば一年を通して雪に覆われている。

「今回はガラル地方に行ってもらいたい」

 しかしサクラギの口からは別の地方名が飛び出した。シンオウとは比較にならないほどに距離が離れている為に実感しにくいが、ガラル地方はシンオウ地方並みに緯度が高い。場所によってはガラル地方もまた一年を通して雪に覆われている場所もある。

 また前述の通り、カントーにあるサクラギ研究所から距離がありなかなか現地の情報が入ってこない。この時代、データとしての情報は容易に入手出来る。しかし研究者として直接得た情報はやはり単なる数字とは重みが全く異なる。サクラギ自身の研究の為、またサトシとゴウにとっては現地のポケモンたちの息遣いを感じ取る経験の価値から今回の調査はガラル地方に決定した、というわけだ。

 そうとなれば早速と二人は顔を見合わせて笑顔で頷き合う。旅支度をしてガラル地方へLet's go! とサトシたちはいつも通り元気よく研究所を出発した。

 

 ***

 

 ガラル地方、キルクスタウン。

 ここは古い建物が立ち並ぶ温泉町と言われている。道路は住民や観光客の為に綺麗に除雪されているが、建物の上や草木には真っ白な雪が積もっている。町の北側には温泉があり、傷ついた野生のポケモンが温泉に浸かることもあるらしい。

 温泉の更に北側にはキルクススタジアムがある。ジムチャレンジをするチャレンジャーのジム戦の場だが今回は特に関係ない。

「サトシ、今回はバトルメインじゃないんだからな。間違ってもジムに入るなよ」

 スマホロトムでキルクスタウンの情報を読み上げていたゴウが先手で釘を刺した。

「分かってるよ!」

「でもバトルしたいって顔に出てるぞ」

「う〜……そりゃ出来るならしたいけど……。キルクスタウンのジムリーダーってどんな人なのかな」

「えっと……。いわタイプの使い手で名前はマクワ。発足から間もない新進ジムのジムリーダー……だって」

「へえ〜! いわタイプの使い手なんだ!! ますますバトルしたくなった!!」

「だから今回は駄目だって!!」

 わいわいと盛り上がりながら辿り着いたホテルイオニアに宿を決める。部屋にて荷物を整理しつつ、キルクスタウンを拠点としてポケモンの調査をしようと今回の作戦を立てた。

 まずは8ばんどうろ、ゆけむりこみちへと足を踏み出す。

 雪も降っており心なしかキルクスタウンの中よりもっと寒く感じる。ピカチュウも寒いらしくサトシの上着の中に潜り込んできた。それを見てゴウもサルノリに声をかければ、サルノリもまた同じようにゴウの上着の中に入る。閉めたチャックを少し開けて、顔だけひょっこりと出したまま調査開始だ。

 生息しているのはやはりこおりタイプのポケモンたちばかりだ。ユキカブリ、デリバード、バニリッチなど他の地方で見られるこおりポケモンもいる。

 こおりタイプばかりかと思いきやダゲキとナゲキの姿も確認できる。彼らは武道家のような見た目の通りにかくとうタイプだ。

「絶対寒いっしょあれ……。なんでこんなとこにいるんだろう」

「うーん……。寒いところでもっと自分を鍛えるぞー! 強くなるぞー! ってことだったりして。ほら、特訓してるみたいだし」

 ゴウはサトシの考えを「そんな馬鹿な」と一蹴しかけた。しかしサトシが指をさした方を見れば、一組のダゲキとナゲキが組み手らしきことをしている。なるほど一理ありそうだ。温泉も近くにあるし、もしかしたら特訓の後にお互いを称え合いつつ浸かっているのかもしれない。

 草むらをかき分けていくとサトシが一つの大きな雪玉を見つけた。小さい子どもたちが雪だるまでも作っていたのだろうか。それにしては雪玉が一つだけなのは少し変だと首を傾げると、雪玉からにゅっと小さな手足が生えて来た。

「うわ! 雪玉じゃない……ポケモン!?」

 雪玉——ポケモンはこちらを振り向き、悪戯が成功したと言いたげにけらけらと笑っている。小さな足でぴょんぴょん跳ねる姿がとても可愛らしい。

 サトシの悲鳴に気づいたゴウが駆け寄ってくる。驚いた反動で尻餅をついたサトシに大丈夫かと声をかけつつ、スマホロトムを雪玉のようなポケモンに向けた。

『ダルマッカ、ガラルのすがた。こおりタイプ!』

 ゴウのスマホロトムが読み上げた説明に、二人は驚いた。

 ダルマッカといえばほのおタイプであり体も真っ赤のはずだ。しかし目の前にいるのは白い上にこおりタイプ。しかもガラルのすがたということは、ガラル地方の環境に適応したリージョンフォームだ。

「……赤いからダルマッカなら白かったらダルマッシロ?」

「上手いけど今はまずゲットが先! ……って、ああっ!待ってくれよ!」

 新しい発見だとゴウはモンスターボールを取り出すが、ダルマッカは軽快な笑い声を上げ、これまた軽快な足取りで跳ねながら去っていってしまった。生憎ゲットならず。

 落ち込むもサトシのまだチャンスはあるの励ましですぐに顔を上げる。少し探せばまた出会えるだろう。

 

「あれ……? サトシ、あそこ何か集まってないか?」

「どこ?」

「ほらあそこ。多分ニューラだと思う。何匹か集まってるみたいだ」

 ゴウが示した方にサトシも顔を向ける。

 黒いポケモンが複数匹で何かを囲むようにして集まっている。ゴウの確認通りにニューラが三匹見える。

 何をしているのか確認しようと少しずつ近づく。今まで知らなかったニューラの新しい生態が見られるかもしれない。

 驚かさないようにそっと近寄っていけば、ニューラたちが囲んでいる何かも見えてきた。

 雪と同じくらい白くて、氷の棘のような殻がついた何か。多分初めて見るポケモンだ。その小さなポケモンは随分とぼろぼろで——。

「ちょ、あれ三匹がかりで……! あっ、サトシ待てって!」

 ゴウの制止も全く意味がない。サトシはポケモンが傷ついていると脳に情報が伝わるよりも先に脊髄で判断し、反射的に飛び出してしまう。

「ピカチュウ、ニューラたちに10まんボルト!」

 ピカチュウも一切の躊躇なくサトシの指示に応じて上着から抜け出し技を放つ。

 やり方は荒っぽいかもしれないが完全に倒し切るのではなく攻撃を止めたいだけだ。そんなサトシの気持ちを汲み取ったピカチュウの電撃は普段より数段威力を落としてある。それでも不意打ちの10まんボルトはニューラたちを驚かせるには十分だ。三匹の内二匹は慌てて去ったものの、一匹のニューラは逃げ出さずにピカチュウに向き直った。

「お前たち! 何があったか分かんないけど三対一は卑怯だろ!」

 サトシの言葉を理解しているかは分からないが、残ったニューラはにやりと笑ってメタルクローで飛びかかってくる。それに対しピカチュウはアイアンテールで迎え撃った。はがねタイプの技同士がぶつかる音が鋭く響き、お互いを勢いよく弾き飛ばす。

「でんこうせっか!」

 離れた距離を今度は急速に縮める。ニューラはメタルクローでピカチュウを返り討ちにしようと構えた。素早い攻撃だが動きは直線的だ。相手の動きから目を離さなければそれを捉えることは容易い。

 しかしでんこうせっかは直接攻撃する為に放ったわけではない。ニューラの正面に飛び込むと見せかけ、メタルクローを構えた爪——右爪とは真反対の左側をピカチュウが駆け抜けた。

「エレキネット!」

 でんこうせっかの速度はそのままに、一気にニューラの背後を取る。一瞬の驚きで動きが遅れたニューラの隙を逃さずエレキネットでその身を拘束した。ニューラは電気の網を断ち切ろうともがくが、動こうとする程に鋭い電撃のダメージが入ってしまい踏ん張りきれない。

「今だ! アイアンテール!!」

 ピカチュウは大きく飛び上がり、縦回転して落下しながら鋼鉄の尾をニューラの頭に直撃させた。効果は抜群だ。

 アイアンテールの衝撃でエレキネットも弾けて消失する。ニューラは大きなダメージを負いはしたが、まだ目を回していない。爪で頭を押さえながらピカチュウを忌々しげな瞳で睨みつけている。かなりの強者のようだ。

 だが強者だからこそかピカチュウの実力を理解したようでもあった。強者と呼ばれる実力の中で更に一握りの強さを持つ存在とバトルを続けても勝ち目はない。悔しそうな表情をしながらもやっとその場からニューラは去っていった。

「ぴかぴ!」

 バトルを終えたピカチュウがニューラたちに囲まれていたポケモンに駆け寄ってサトシを呼ぶ。見たところダメージはかなり受けているがまだ意識はある。短い呼吸をする度に漏れる小さな鳴き声が痛々しい。

「とにかくポケモンセンターに連れて行かないと……!」

 サトシはそのポケモンをそっと抱え走り出した。ピカチュウとゴウもまた彼についていく。

 走りながらゴウはサトシの抱えているポケモンについてスマホロトムに尋ねた。

「ロトム、あのポケモンは?」

『ユキハミ、いもむしポケモン。こおり・むしタイプ!』

 

 ***

 

 ポケモンセンターの自動扉が開く数秒すらひどく長く感じる。それほどまでにサトシは急いでいた。自分のポケモンだとか野生のポケモンだとか、もっと言えばポケモンか人かも関係ない。傷ついて弱っている命がそこにあるのなら絶対に助けたい。ただそれだけだ。

「ジョーイさん!! このポケモンっ、お願いします!!」

 息を切らせながら声を上げた。

 ジョーイはサトシの声に僅かに驚きながらも、腕に抱えられたポケモンを確認すると表情を変えた。ポケモンの手当てをする者としての真剣な表情だ。

「分かりました、お預かりします。……大丈夫よ、責任を持って必ず元気にするから安心して。そんなに泣きそうな顔しないで、ね?」

 サトシの腕からポケモンを引き取りつつ優しく声をかける。そしてすぐにイエッサンと共に処置室へと入っていった。

 サトシは処置室の扉が完全に閉まっても、動かずに扉を見つめたままだ。足元のピカチュウがサトシを見上げ、心配そうに一声鳴いた。

 数十秒経ってからゴウとサルノリがようやくポケモンセンターの中へと入ってくる。ぜえぜえと切れた息を少し整えてからゴウはサトシの肩に手を置いた。

「サトシ、大丈夫か?」

「……うん。なあゴウ。オレ、泣きそうな顔してる?」

「なんで?」

「ジョーイさんに言われたんだ。『そんな泣きそうな顔しないで』って」

「泣きそう、かはわかんないけど、すごい心配そうな顔してるとは思う」

「そっか」

 ゴウだってサトシがどう思っているかが分かる。ポケモンのことに対して必死になる上に、気持ちが素直に——もっと言えば馬鹿正直なまでに顔に出てきてしまう人物だ。あのポケモンの元気な姿が見られるまでサトシの表情はきっと晴れないだろう。

 とりあえず座ってようぜ、と待機用の椅子へ促す。座った膝の上にピカチュウを抱えたまま、視線は床と処置室の扉を行ったり来たり。

 ——リサーチフェローとしてのパートナーだし、俺の大事な友達だし、少しでも安心させたいな。

 そう考えたゴウの行動は早かった。立ち上がり自動販売機へと向かい飲み物を買う。確か以前にママの作ってくれるミルクココアが好きと言っていた。彼の母親の味とは違うだろうが少しでも気分が和らげばいい。ゴウは自然と温かいココアのボタンを押していた。

「ほらサトシ。外寒かったし、体も冷えただろ」

 努めて明るい声でゴウはサトシの前にココアの入った紙コップを差し出した。

 湯気とカカオの香りが顔に触れる。自分の好きな飲み物だと判断したサトシは顔の力を緩ませた。

「ありがと」

 普段よりは元気がなかったがやっと笑顔が溢れた。一口飲んで美味しいと呟き、再びサトシはゴウにお礼を伝えた。

「ピカチュウも飲むか?」

「ぴぃかちゅ!」

 ——良かった。

 ゴウも無意識に力の入っていた肩の力をようやく抜いた。元気のないサトシはやはり彼らしくないのだから。

「るきー!」

 急にゴウの肩にサルノリが登り、左手に持たれた紙コップに手を伸ばす。

「わっ! サルノリこぼれるこぼれる! 危ないだろ! お前も飲みたいんだな、熱いからちょっと待てよ~」

 少し冷ましてからな。ふうふうと息を吹きかける間もサルノリは早く早くと無邪気に急かすのだった。

 

 十数分ほど待っただろうか、処置室の扉が開きストレッチャーに乗せられたポケモンが出てくる。

「もう大丈夫よ。傷は多かったけど軽いのばかりだったから安心して。数日安静にしていれば元気になるわ」

 ジョーイの言葉でサトシたちは安堵の息を吐いた。先程までの傷はほとんど目立たなくなっていたが、ポケモンの額に貼られた絆創膏に目がいく。幸いそれもすぐに取ることが出来そうだ。

「良かったな~。えっと……」

「“ユキハミ”というポケモンなの。ガラルではこの辺りやカンムリ雪原といったところに生息しているのよ。他の地方にもいるけれど、雪山とかやっぱり寒いところにいるわね」

 寒いところに生息する為に雪を食べて成長する。立派な氷の棘を持つ個体はそれだけたくさんの雪を食べた証拠だ。

「でもこのユキハミ、この辺りでは少し有名な子でね」

 ジョーイが困った声を漏らす。ジョーイの話によるとユキハミは今回のようにポケモンセンターに何度も運ばれてきている。種族としてではなく()()ユキハミだけが怪我をしてやってくるのだ。

 その理由は強くなりたいから。

 強くなりたいから他のポケモンに勝負を挑む。しかし事実としてユキハミという種は決して強いポケモンとは言えない。いくらポケモン自身が強くなりたいと願ってもそう簡単にはいかない。

 それでも無謀とも言える挑戦を続けてしまうのがこのユキハミだった。実力の離れすぎたポケモンに挑んではボロボロになり、通りかかったトレーナーによりポケモンセンターへと運ばれる……という流れだ。

「お前強くなりたいんだなぁ。でも無茶しすぎも駄目だぞ」

 サトシが優しくユキハミを撫でる。ユキハミは一瞬固まったが、すぐに警戒心を解いたようで気持ちよさそうに目を細めた。

「それサトシが言えたことか?」

「どういうことだよ」

 ゴウの正論が飛ぶが、サトシにはどうも正しく伝わっていないようだった。

 サトシたちのやり取りを見ていたジョーイが微笑みながらも決心した表情で口を開いた。

「そのユキハミ、サトシくんにお願いできないかしら?」

「えっ」

 サトシとゴウの声が重なる。

「ユキハミの為にも育ててくれるトレーナーがいた方がいいと思うの。ユキハミ、あなたはどう?」

 ユキハミはジョーイの言葉の意味をなんとなく理解したのか、サトシの指先を柔らかい口で挟んだ。餅のように柔らかく少しくすぐったい。

「ユキハミもサトシくんのこと気に入ったみたいだし、どうかしら?」

 サトシはユキハミの顔を見つめるが、自分が気に入られたというならその理由がよく分からなかった。ただポケモンセンターに運んだのなら、今までにもそうした人たちがいたのだし既にユキハミが気に入ったトレーナーもいるかもしれない。

「俺はユキハミの気持ち、分かるな」

 ゴウがサトシの顔を見て笑い、ユキハミに視線を移して続ける。

「ユキハミはさ、サトシとピカチュウのバトルを見てたんだ。あんなバトル見せられたら好きにならない訳ないだろ。

 強くなりたいユキハミなら尚更だよ。あんな風になりたい、って絶対思うっしょ。サトシたちのバトルを見て好きになった俺が言うんだから間違いないよ」

 恥ずかしいがとても嬉しい言葉だった。ゴウの笑顔と言葉に背中を押され、サトシはほんの少しだけ不安そうな声でユキハミに話しかけた。

「ユキハミ、オレでいいのか?」

 その言葉に対して、ユキハミはすぐににっこりと笑い氷で出来た鈴のような鳴き声を上げた。肯定の意のようだ。

 それに釣られてサトシも表情を明るくする。

「ありがとう、それじゃあ……」

 空のモンスターボールを取り出し、手に持ったままユキハミの額に絆創膏を避けて優しく押し付ける。ユキハミが赤い光と共にボールへと吸い込まれる。ボールはサトシの手の中で数回揺れ、ぽんと軽快な音を立てた。

「ユキハミ、ゲットだぜ」

 声は張り上げないが、明るい声でいつもの台詞を紡いだ。

 

 ***

 

「おおー! 降ってきた!」

「本当!? 見たい見たい!」

 ユキハミをゲットした後、サトシたちはホテルイオニアに戻っていた。夕食までの時間に今日の調査のまとめを行ったのだが、そのほとんどはゴウ一人の作業である。一応サトシも一緒にまとめを手伝おうとしたのだが、ゴウの確認という名の質問に答える程度である。圧倒的現場派サトシ。

 今は夕食も終え大浴場に行こうかといったタイミングだ。そんな時に窓の外では雪が降り始めた。キルクスの灯りとそれを受けてきらきらと輝く雪がとても美しい。

「ピカチュウ、ユキハミもこっち来いよ!」

 ベッドの上で遊んでいたふたりに駆け寄る。ピカチュウは定位置のサトシの肩に、ユキハミはサトシの腕に抱えられて窓際へと連れていかれる。

 ピカチュウはサトシと同じように目を輝かせ雪に感動していたが、ユキハミはサトシの腕の中でもがいている。口を窓に押し付けて窓を押し退けて前に行こうとしているようだ。

「ユキハミどうしたんだよ。……外に行きたいのか?」

 サトシの言葉に正解と言わんばかりにユキハミが嬉しげに鳴く。しかし今は夜で外も随分寒い。かと言ってユキハミひとりで外に出すのもトレーナーとしては無責任だ。

「ゴウ、少しだけ外行ってきていい? ゴウたちは先に温泉入っててもいいし」

「分かった。あんまり遅くなるなよ」

「サンキュー。じゃあ行ってくる!」

 ジャケットを羽織りピカチュウを肩に、ユキハミを腕の中に抱えてサトシは勢いよく雪降るキルクスタウンへと飛び出した。

 時間に余裕があればユキハミ自身に歩いて案内してもらいたいところだが、ユキハミは歩くのがとてもゆっくりなポケモンだ。今は腕の中から案内してもらう。ユキハミがこっちと鳴く方へとサトシが歩みを進める。

 雪の降る夜のキルクスタウンは、街の灯りが雪と合わさって晴れの時よりも柔らかい印象を与える。そんな街の景色を楽しむ余裕も特になく、こっちこっちとユキハミは小さな鈴のような声でサトシを急かす。

 しばらく歩けば、街を抜けて9ばんどうろまでやってきていた。あまり街から離れると戻るのにも時間がかかってしまう。ここらが限界だろうかとサトシが思った頃、ユキハミが今までとは違う鳴き方で空を見上げた。それに釣られてサトシとピカチュウも夜空を見上げる。

「初めて見るポケモンだ……!」

 夜空にはポケモンが複数匹集まり、ゆったりと舞うように飛行している。

 丸みを帯びた胴体、頭部からは大きな触覚、一対の薄く大きな羽を持ち体は真っ白だ。体中が真っ白な中に輝く、深い青色をした目がこの夜空にも似ている。

 スマホロトムを取り出しそのポケモンの情報を得る。

『モスノウ、こおり・むしタイプ。ユキハミの進化形』

 ユキハミはこのモスノウたちを見たかったらしい。小さな目を輝かせ、優雅に夜空を舞うモスノウたちを眺めている。

 ——自分よりも強い相手でも関係なくバトルを挑むユキハミ。何度ボロボロになっても諦めない。モスノウはユキハミの進化形。

「ユキハミ、もしかしてお前、進化したかったのか?」

「み!」

 ユキハミは雪の夜空を飛ぶモスノウに憧れを抱き続けていた。自分もあんな風になりたくて進化しようと必死だった。

 しかし他のポケモンたちに挑んでは負けてしまう。通りがかったトレーナーに手当てを受けたり、ポケモンセンターに運ばれるのを何度繰り返したか。それでも諦めずに技の特訓をしてまた他のポケモンへと挑んでいく。少しだけ諦めそうな気持ちもあったが、自分の夢はどうしても捨てたくなかった。

 そしてサトシとピカチュウに出会った。

 強くてかっこいいバトルを見て感じた。このひとたちとならきっと強くなれる。自分もあんな風になりたい。

「そういうことならオレはお前が強くなるのを全力で手伝う。一緒に強くなろう、お前を必ずモスノウに進化させる。お前の夢、一緒に叶えよう」

 ポケモンの為ならばどんな苦労も苦労ですらない。トレーナーの責務だからとかではない。ただ自分がそうしたいからそうするのだ。

 雪降る夜のポケモンとトレーナーの約束だ。

 

 ***

 

 サトシたちは寒いところでのポケモンの調査を終えサクラギ研究所へと戻ってきた。戻ってきてからも以前と変わらずに多くのポケモンのリサーチに走り回る日々だ。

 サトシはリサーチだけでなく当然PWCSに向けての特訓も欠かせない。時間と時間の隙間を見つけてはサクラギパーク内で日々鍛錬である。

 そのメンバーの中にユキハミが加わった。ユキハミ自身の実力を踏まえて、技を鍛えたり体力をつけることや動ける範囲を増やす練習などみんなに協力してもらう。例えば威力を下限ぎりぎりにまで抑えたルカリオのはどうだんに向かってこなゆきをぶつけて相殺できるようにする特訓などである。

 時にはバトル好きなゴウのポケモンたちにも手伝ってもらった。ユキハミも他のポケモンたちも全力で特訓を続けていった。

 そんな日々をしばらく続け、出会った時よりも確実にユキハミはバトルでの実力も上がってきていた。

 あまり素早く動けなくても、使える技が少なくても。トレーナーとの信頼関係や技の使い方次第で成長できることをユキハミ自身は感じていた。

 ——しかし。

「み……」

「進化、まだみたいだな」

 未だにユキハミは進化を果たせずにいる。

 ポケモンの進化は多種多様だが基本はレベルアップである。その為にこうして特訓しているのだが進化の兆しもなかなか見られない。多くのレベルアップが必要となればまだまだ先かもしれないが、進化しないのが続けばユキハミも自信を無くしてしまうかもしれない。

「ユキハミは弱くなんてない、強くなってる。ピカチュウもそう思うよな?」

「ピカ」

「だよな〜。なんでだろ」

 うんうんと悩むサトシたちを見て、横から特訓を眺めていたゴウが声をかける。

「レベルアップ以外の条件があるんじゃないか?」

「レベルアップ以外?」

「そ。ピカチュウだってライチュウに進化するにはかみなりのいしが要るし、リオルがルカリオになるには十分に仲良くなってから昼間にレベルアップだ。ユキハミもただ強くなる以外の条件があるのかも」

 ゴウのアドバイスを聞いたサトシは「確かに!」と勢いよく立ち上がった。ではその肝心の条件は何か、サクラギ所長に相談してみることにしよう。

 

「ユキハミの進化条件かい? 確かにただレベルアップだけでは駄目だね」

 やっぱり。ゴウの考えた通りだとサトシが声を上げた。ゴウは隣で僅かに照れ臭そうにしながらも得意気に笑って胸を張った。

「そうだな……。今ここで教えてしまえば確かにユキハミを進化させることは可能だろう。図鑑で調べても簡単に知ることが出来る。しかし君たちは我がサクラギ研究所のリサーチフェローだ。

 どうだろう。次のリサーチテーマはユキハミの進化条件を突き止めるというのは」

 ポケモンの研究に関わるものとして己の手で仮説を立ててそれを検証していく。基本中の基本だ。

 サトシもゴウもサクラギの提案に頷いた。

「ユキハミが進化して、条件が何なのか君たちの仮説を立てられたら報告においで。その仮説が正解か不正解かは関係ない、見つけるまでの過程が大切だ。報告、楽しみにしているよ」

 

「よーし! 片っ端から……」

「駄目だ、そんなの非効率的すぎだろ。少し考えてから!」

「え〜……」

 パークに戻り早速ユキハミの進化大作戦の作戦会議を開始した。

 思い立ったら即行動のサトシと知識を使ってまずは考えるゴウ。サトシはすぐにでもありとあらゆる事を試して、早くユキハミを進化させてあげたかった。

 しかしどんなに小さな事と言えどこれはポケモンの研究の一つだ。答えこそ決まっているが考えて行動することに意味がある。さすがに今回ばかりはゴウもサトシに振り回されてはいけなかった。

「サトシは進化の条件ってなんだと思う?」

「オレはレベルアップだと思ってたからなぁ。あとはこおりのいしとか?」

 石での進化は一理ある。確認されている進化の石に関わりのあるタイプだからだ。

 他に考えられる条件としては仲良くなってレベルアップ、特定の行動を取る、交換をする、時間帯、場所……。あまりにも選択肢がありすぎる。これでは片っ端から試すのと変わりない。

「う〜ん……」

 両手で頭を抱えて唸る。もっとスマートに、いやかっこつけるよりも片っ端からの方が? いやそれもちょっと……。

「なあ、ゴウ」

「……なんだよ〜、サトシももっと考えてくれよ〜」

「あのさ、ユキハミがいた場所が一番いいんじゃないかな」

「え?」

 サトシたちがユキハミと出会ったのはガラル地方8ばんどうろのゆけむりこみちだ。そして夜には空を飛ぶモスノウも見た。何か特別な条件があると仮定するのなら元々ユキハミがいる場所が最も満たしやすいのではないだろうか。

「確かに……! カントーとガラルじゃ環境が全然違う、そうだよ、当たり前っしょ!」

 それなら今すぐガラルに行こう!

 この短時間で悩んだり喜んだり、ゴウは忙しいなあと何故か他人事のようにサトシは感じていた。

 

 ***

 

 再びガラル地方、キルクスタウン。宿に荷物を置き防寒対策をして8ばんどうろへと飛び出した。空は晴れ、太陽の光が雪に反射し眩しすぎるくらいだ。

 サトシたちもユキハミもやる気は十分だ。ここで色々と試せばきっと進化できるに違いない。

 やるぞー! とみんなで拳を突き上げた。

 

「……はみ」

「変だよなあ……」

「ピカ……」

 あれから二日は経過した。特訓もしたしゴウがこおりのいしを入手してくれたからそれも試してみた。しかしユキハミは未だに進化しない。

 ユキハミも誰が見ても分かるくらいにしょんぼりしているし、明るさが取り柄のサトシもさすがにもう無責任に大丈夫とは言えなくなってきた。

 サトシたちが特訓している間にゴウはキルクスタウン周辺のポケモンを調査したり、新しくゲットもしていたようだ。ゴウがこの二日間で色々と得ているのサトシたちは未だに進めていない。進化条件を調べる事自体はサトシとゴウ二人のものではあるが……。なんとなく焦ってしまう。

 結局この日も時間は無情に過ぎてしまった。

 日も暮れ夕飯と入浴も済ませてあとは寝るだけ。今日きっちり休んで明日こそは進化したい。ただバトルするだけではなく技の使い方も変えてみよう。ネギガナイトのように急所に当たる事で進化することもあるし、特定の技を覚えて進化することもある。

 諦めるのだけは絶対に嫌だ。

 

 ふ、とサトシが窓の外に視線を向けた。

 灯りに煌めくキルクスタウンと雲一つない夜の空が目に映る。そういえば天気予報で今夜は晴れるから冷え込みが強くなると言っていた。

 ——そういえば天気のこと気にしてなかったな。あと夜に何かするってのも。

 カロス地方で出会ったヌメルゴンは進化の条件が雨という天気に深く関わりがあるポケモンだった。時間帯であればグライオンやルガルガンがそうだ。

 サトシは一瞬今からちょっとだけバトルをしようかと考えたがみんな疲れているのを思い出した。さすがにやめておこう。

 でも少しだけ外に出たい。外に出て痛いくらいの冷たい空気を感じたい。この焦燥感のようなものを全部吐き出して、一旦氷のようにパキッとリセットしたい。サトシは無性にそう感じた。

 

「ユキハミ、寒くないか? って言ってもお前こおりタイプだもんな。寒い方が嬉しいよな」

「み〜!」

 あまり遅くならないとゴウと約束して、サトシとピカチュウ、ユキハミは夜の散歩に出かけた。ピカチュウもユキハミも自分の足で歩いていく。夜でも町の中は人がそれなりにいるため、少しだけ町から離れたところまで行く。

 十五分も歩けば人の騒めきはもう感じられない。サトシたちが雪を踏み締める音と時折吹く冷たい風の音、遠くから聞こえるポケモンの鳴き声しか耳に届かない。

「なあユキハミ。お前がモスノウになりたいって言ってくれたのも寒い夜だったよな」

 あの時は雪が降っていた。雪と共に舞うモスノウを輝く目で見ていたユキハミが忘れられない。今は晴れで空には星が瞬いている。違う天気だけどどっちも綺麗で好きだなとサトシは呟いた。

 立ち止まりその場で深呼吸をする。カントーの冬とは全く違いとても冷たくて、それでいて澄んでいるような空気が身体を巡る。

 ——うん、すっきりした。

「焦るし不安になるけど、オレは信じてる。ユキハミは絶対にモスノウに進化できるって」

 叶えたいことは言葉にするのだ、声に出すのだ。自分に言い聞かせるため、それに周りにも知ってもらうため。

 叶えたいことは、夢は声に出さなきゃ。

 ヒトと同じ言葉は話せない。でも声に出すことはできる。自分自身の声がある。

 むい、と顔を空へ向けユキハミはユキハミの言葉で大きな声で夢を叫んだ。

「みぃーっ!」

 ——絶対モスノウになるぞ!

 

「そろそろ戻らないとゴウに心配されちゃうな。帰ろっか」

 約束もあるし、とピカチュウとユキハミを抱えて急ぎ足で帰ろうとした瞬間だった。

 突然の突風と共に天気が変化した。猛吹雪といっても差し支えない。今の今まで雲ひとつなく晴れていたのが嘘のようだ。さっきまでの穏やかな天気はどこへいってしまったのだろうか。

 サトシは慌てながらもふたりを抱えて周囲を見渡す。こんなに急に天候が変わるならきっとポケモンが技か何かを使ったんだ。

「いた! きっとあのユキカブリたちだ!」

 幸い原因と思しきポケモンたちはすぐに見つかった。三匹のユキカブリたちが何かに怯えるようにして目を閉じて震えている。ユキカブリたちの向かいにはニューラが三匹いた。野生のポケモンたちのバトルか何かだったのかもしれない。

 細かいところまでは分からないが、不利になったユキカブリたちがパニックになり一斉にふぶきやこごえるかぜを使った。その結果彼らの特性であるゆきふらしと合わさり、急激にここら一帯の天気を荒らしてしまったのかもしれない。

 ニューラたちも天気の変化に驚き慌てて去っていった。しかしユキカブリたちはニューラたちに気づくことなく、目を閉じ怯え続けている。このままじゃ帰ることもできないしユキカブリたちだって危ない。

「おーい! ユキカブリー!! もうニューラたちはいないぞー!! 大丈夫だから!!」

 サトシが声を荒げて叫ぶがユキカブリたちには全く届いていない。

「こうなったら……。ピカチュウ!」

 威力を抑えたピカチュウのでんき技で驚かせてこちらに意識を向けさせるしかない。まずはこの状況を一回止めなければ!

「ユキカブリたちを傷つけないように、足元を狙って10まん……」

「はみ!!」

 ——待って!!

 ユキハミがそれを制止した。

 サトシの腕から抜け出し、ユキカブリたちをキッと睨みつける。それだけで分かる。ユキハミが今どうしたいのか。

「ユキハミ……。分かった。ピカチュウ、応援頼むぜ!」

「ピッカァ!」

 ユキハミが今使える技はどれも威力が少し控えめだ。ならば足元ではなく直接ユキカブリたちを狙っても問題はない。あまりにも優しすぎるとこの吹雪と区別がつかないから、しっかりと特訓の成果を出し切るつもりで。

「ユキハミ、ユキカブリたちによく狙いをつけて……。よし、こなゆき!」

 指示を受け、大きく息を吐き出すようにしてこなゆきを発動させる。特訓をして前よりも威力が上がったこなゆきだ。

「頑張れユキハミ、もう少し……!」

「ピィカチュ〜……!!」

 しかしあと数十センチか、というところでユキハミのこなゆきが霧散する。

 ぶわりと自分の夢も散る錯覚に陥る。

 

 届かない。自分の力じゃ、やっぱり。

 

 悔しい、悔しい。あんなに特訓して、あんなに頑張って。どうして、自分は、進化できなくて、技の一つも届かなくて。

 涙が溢れる。

 その涙すらこの吹雪でどこかへ飛んでいく。冷たくて、とっても、ひどい。

 

「——ユキハミ! オレはお前のこと信じてる!! ユキハミがどれだけ特訓してきたかオレもピカチュウも、ゴウたちも知ってる! お前がどれだけ強くなりたいか知ってる!!

 だからユキハミも信じてくれ! ユキハミ自身を、自分の力を!!」

 この人となら強くなれると思った。この人とポケモンたちのように強くなりたいと思った。この人たちが自分の夢を手伝ってくれた。一緒に強くなろうと手を取ってくれた。

 サトシとなら、進化できると思った。サトシが自分を信じてくれる。自分一人じゃ得られなかったものが今ここにある。

 もう一度挑むんだ。駄目ならもう一回、それでも駄目ならもう一回。サトシもよく言っているじゃないか。諦めちゃ駄目だって。

「ユキハミ、もう一回こなゆき!!」

「はみぃぃぃッ!!」

 生きてきた中で一番強く技を放つ。絶対に成功させる、届かせてみせる。

 届け、届け——。

 心臓が大きく鳴った。

 身体が一瞬強張る。目をぎゅっと瞑り、力を入れ直す。力が身体の真ん中に集まっていく感覚がする。

 力も、夢も、集まって集まって、大きくなって。ぎゅーっと溜め込んだ力、想い、全部!

 

 ——開け!!

 

「——モスノウ!!」

 ()()が開いた時、初めて聞こえたのはキミの嬉しそうな声だった。

 足が地面に無い。見える世界が広い。

 ああ、僕は、僕は!!

 

 羽を大きく羽ばたかせて雪と共に風をユキカブリたちへと送る。こなゆきじゃない、たった今覚えたばかりの新しい技、"こごえるかぜ"ならきっと届く!

 

 モスノウのこごえるかぜは見事ユキカブリたちへと命中し、驚いた彼らがモスノウたちを見る。

「ユキカブリー! もうニューラたちはどっか行っちゃったよ!! 大丈夫だから落ち着いてくれ!!」

 再びのサトシの叫びに今度はユキカブリたちも反応した。キョロキョロと周囲を確認し、敵がいない事を把握したようだ。彼らの落ち着きと共に吹雪も落ち着いていく。

 吹雪が完全に止みユキカブリたちもどこかへと去っていく。またなーとサトシが手を振る時にはあまりにも静かな空間に戻っていた。

 

「サトシー! 大丈夫かー!!」

 背後からゴウの声が飛んでくる。振り返り無事を示すために声を上げた。

「急に猛吹雪になったから心配したんだぞ! 遭難とかしてないかって……あれっモスノウ、ってことは……!?」

「そう! 進化できたんだ!」

「マジかよ、やったじゃん! で、条件何か分かった!?」

「えっ。あー……何が条件だったのかな……」

「ちょ、どういうことだよそれ!?」

「えっと、どこから話せば……」

 一体何を満たしたことで進化したのか。無我夢中だった彼らは何も分からない。宿に戻りゴウによる調査という名の尋問が始まるのだった。

 

 ***

 

「以上のことから、"十分に仲良くなって、夜にレベルアップする"がユキハミからモスノウへの進化条件だと考えられます!」

 ガラル地方から戻り、彼らなりというかほとんどゴウがまとめた進化条件の推論発表が行われた。

 サトシたちが進化した状況そのままが条件ではなく、今まで進化しなかった条件と照らし合わせた結論だ。天気の条件ももしかしたら入るかもしれないが、ユキハミの生態を考えるとそこまで重要ではなさそうだった。

 そしてその推論は見事に正解を射抜いた。

 発表と道筋も含めサクラギもとても満足そうだった。子どもたちの成長を感じられること、ポケモンの謎と魅力を改めて認識したこと。一人の研究者として、サトシとゴウをリサーチフェローに任命したのはやはり正解だったと喜びを溢れさせていた。

 

 余談だが進化のエピソードの部分は感動のあまり涙を流していた。助手のキクナとレンジには少し呆れられていた。

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