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「お前、名を何と言う?」
戦姫がエミヤの元へ来て発言した第一声がそれだった。戦姫は脅すため剣をエミヤへと突きつけたが、今すぐ斬ろうとはしなかった。
「私に交戦する意志は無い。まずはこの剣を納めてはくれないだろうか?」
エミヤは両手を挙げ、自分には戦う意志が無いことを先に伝えるのを優先した。
「私が聞いているのはお前の名だ。それ以外のことは喋らなくて良い」
しかし突きつける剣が納められることはなく、更に突きつけられてしまう。
「エミヤだ」
名乗らなければ話が先に進まないと知ったエミヤは自分の名、真名を答えた。
「エミヤ? 聞いたことのない名だなそれがお前の名前か」
「ああ、そうだ」
何故エミヤは『アーチャー』ではなく真名を答えたのか。それは自分がクラスを持ったサーヴァントとなって召喚されたのではなく、受肉した一個の命としてこの地に召喚された事により今の彼にはクラスが存在無かった。よって真名を隠す理由がなかったのだ。
「そうか。エミヤ、お前には聞きたい事が沢山あるのだが今はいい」
そこまで言うと彼女は後ろを振り向いた。
「やっと来たか」
振り向いた先には彼女を護衛していた四人の護衛がいた。四人の護衛達は馬を走らせ真っ直ぐこちらへ向かってきていた。
「エレオノーラ様ー!」
そらから間もなくして四人の護衛が追いついてきた。護衛はエミヤを取り囲むと即座に武器を構えた。
「貴様よくも……!」
四人の護衛の中でも青い甲冑を纏った兵が怒気を露にして今にもエミヤに斬りかかろうとしていた。
「よせリム。この男に剣を向けるのは私が許さないぞ? 」
「しかしこの者はエレオノーラ様の命を狙った襲撃者です。この場で殺すのが」
「私は許さぬと言った筈だ。剣を納めろ、リム」
「……申し訳ありません」
リムと呼ばれた青い甲冑の兵は未練がましい様子を見せながらも構えていた剣を鞘に納め、他の兵も同じ様に剣を納めた。きっと仮面の内の顔は相当悔しい顔をしていることだろう。そんなリムの様子をエミヤは見ていた。
(リムと言ったか。女だと見て間違いなさそうだが、まさか戦姫以外の女が戦場にいるとはな)
「よそを向いていないで自分の身を心配したらどうなのだエミヤよ?」
そこで視線をエレオノーラへ戻す。自分の身を案じろと言われたが、自分がどうなるかなど大方の予想は既に検討がついていた。
「検討はついている。大方、捕虜になるか殺されるかのどちらかだろう」
「ほう、察しがいいな。見事だ」
「このくらい誰にでも出来るさ」
捕虜にするかこの場で殺すかの二択。エミヤが望んでいるのは捕虜になり相手の陣地へ行くこと。それがエミヤの目論みだった。だが何故そのようなことをしようとするのか。
それは今のエミヤの身体は霊体でなく受肉した身体であることにあった。つまり長時間動けば動く程にエネルギーを消費し疲れを伴う。消費したエネルギーを補給するには栄養を取り休養することが必須となる。しかし彼には金銭が無い。そのため食料も寝床も入手困難。野宿を選ぶこともできるが、外では何が起きるか分からない。また竜と出会しでもしたらまた面倒なことになってしまう。
「それで、私はどうなるのだ?」
そこで出た案が捕らえられ捕虜になること。そうなれば牢獄に入る事になっても外で野宿をするよりは安全な面がある。しかし、そうなっても長期間続く筈がない。
だからエミヤはあの時エレオノーラに矢を射ったのだ。そうして自分の実力を見せることで自分には他とは違う何かを持っている。殺すには惜しいと思わせ興味を持たせたのだ。
「お前をどうするかなど最初にお前を見た時から決めている」
その結果、今こうしてエレオノーラは剣を振るうことなくエミヤと対峙している。
(さぁ、どうくる?)
ここまできて殺す選択肢が出るとは思えないと言うのが今のエミヤの心情だった。
殺すか捕らえるか。次にエレオノーラの言う一言で今後のエミヤの運命が決まる。
「お前はこれから私の捕虜(もの)だ。これは決定事項、お前に拒否権は無いと思え」
答えは殺すではなかった。しかし
「……それは私は捕虜の身になると受け取って良いのか?」
「そう受け取って貰って構わないが。なんだ不満なら受け付けんぞ?」
「いや、不満は無い。了承した」
その返事を聞いたエレオノーラは顔に笑みを作り笑った。
(……何とかなったな)
それを見て肩の荷が下りたエミヤは安堵した。これで目論見通りエミヤは捕らえられエレオノーラの捕虜となった。
「エミヤ。さっきも言ったがお前には聞きたい事が沢山ある。向こうに着いたら覚悟しておけよ?」
「分かっているさ」
「素直でよろしい! それとこれからの移動だが、お前も馬に乗るといい」
エレオノーラがそう言うが今この場にいる馬は五頭。誰も乗らない余った馬は無い。誰かの馬に乗るとになるのは明らかだった。
「リム、お前の馬の後ろに乗せてやってくれ」
「……分かりました」
よりにもよって自分に対し一番怒気を散らしていたリムが使命された。使命されたリムは渋々とエミヤの元へと馬を連れてきた。刃物の様に鋭く睨み付ける強い視線が仮面の奥から向けている。
「……少しでも怪しい行動をしたら振り落として踏みつけますのでそのつもりで」
(怖い女だな)
エミヤは何も喋らずにリムの乗る馬に乗った。これ以上、相手の気に触らないようにと距離は少し多目に開ける。
「乗ったな。今日はもう充分だ、よし撤収するぞ!」
エレオノーラ 一行は馬を進ませた。途中、エミヤはリムにわざと振り落とされないかと心配したが、何も仕掛けてはこなかった。
三話目、無事に更新することができてよかったです。描写やエミヤに違和感を感じた方申し訳ありません。これからも頑張るのでよろしくお願いします!
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