紅い弓兵と戦姫 【凍結】   作:無機物

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続きを楽しみにしてくださっていた方申し訳ありません! 感想を書いてくださった皆様申し訳ありません!何を言っても言い訳なのですが、マイページにログイン出来ないという事態が起きまして、はぁ!?なんなんだよ! ってなりそのまま何もしないで今までいました。パスワードを変えれば入れたものをと今思っています……


言い訳すいませんでした。では4話目どうぞ!


強化

あの日、炎は全てを飲み込んだ。

 

 

突然現れたその炎はあらゆる物を飲むと勢いのまま飲み込んだ物全てを燃やしていった。その勢いは止まることを知らなかった。

 

 

沢山の血が流れ、血と肉の焼ける匂いが漂い、生臭い死臭が鼻を刺激した。

つい先程まで当たり前のようにあった沢山の命は思いの外あっさりと簡単に燃え尽き、消えた。

 

 

耳に聴こえてくるのは物を燃やす炎の音と自分の体が焼ける痛みに悶え苦しむ人の呻き声。男性の声、女性の声、子ども老人赤子、沢山の命が焼け苦しみ消えていく光景が目に焼きついた。

 

 

生きようと必死にもがき、助けを求めた者もいた。だがその思い空しく、どんなに足掻いても最期はその呼吸を止めた。

 

 

……形あるのも何時かは壊れる。だが、これはあまりにも残酷すぎた。まだ先のある未来をまだ新しい命を、炎は見境なしに燃やしていった。

 

 

 

 

程なくして雨が降る

 

 

 

「……よかった! ……生きてる ……生きてる!」

 

 

炎は一人を残し全てを焼き付くした

 

 

「……ありがとう! ……ありがとう!」

 

 

振りだした雨で燃え盛っていた炎に弱まりが見えてくるなかで男性の救われた、助かった。そんな思いのこもった声がただただ木霊した。

 

 

雨は燃え盛る炎に降り続き、焼ける地を冷たく静めていった。後に残ったのは焼けて木炭となった建造物と身元が分からない程焼け焦げた人の死体だった。

 

 

……消して忘れることの出来ない、自分の全てが変えられた日

 

 

 

 

『貴方の一生は永遠に武器を複製し続け、その身を戦場に投じる事。貴方に安息は許されない』

 

 

――お前は誰だ? 聞いたことのない女性の声が直接頭の中に届いた。声の主は何処にいるのか分からない。女性の話はゆっくりとした口調で続く

 

 

『意味の無い出来事は存在しない。貴方は使命を持ってこの地に招かれた。貴方はその使命を知らない。だか、何れ知ることとなる』

 

 

――刹那。冷たく静めた筈の焼け跡が再び業火の如く燃え上がった。崩れた建物、焼けた死体、自分に手を差しのべてくれた『あの人』のことも業火の炎は一瞬で包み込んだ。

 

全てを炎に包まれ、彼はまた一人になった。視界に見えるのは生き物の様に蠢く炎それだけ。だが不思議と体は熱くない。そればかりか、さっきまであった体の痛みが何一つ感じなかった。

 

 

『今はただ自分が信じていた理想をただ貫いていればそれでいい。沢山殺して、沢山救っていればそれで』

 

 

誰だ、誰なんだ。そう言いたいが口も体も動かない。辛うじて機能するのは目だけ。そしてその目に映るのは炎の赤だけで他は何一つ見えない。

 

 

『我の名前など知る必要は無い。だが、これも何れ知るだろう。今はただ、貴方が信じていた理想を信じてただ――ただ戦っていればそれだけで――』

 

 

そこで女性の声は消えて、自分を包んでいた炎の色は次第に真っ白になり、視界全てを眩しいくらいの白に変わっていった。

 

 

 

 

窓から差す突き刺さる様な朝日の眩しさに刺激され目を覚ました。

エミヤがエレオノーラの公国へついたのは昨日の夜。夜遅かったこともあり、エミヤはその日を用意された部屋で過ごすこととなった。

 

(何か夢を見た様な……)

 

 

夢を見ていたのは分かるが何を見ていたのかは思い出せない。だが、夢とは睡眠中に見る曖昧で形の無い出来事。気にすることでもないかとエミヤは頭を切り替えた。

 

 

「私としたことが、随分睡眠をとってしまった様だな」

 

 

この部屋に時計は無い。ふと、窓から日を見るとあと一刻程経てば昼頃になると言うところまで太陽は昇っていた。疲労を溜める程動いた訳でも就寝した時刻が遅かった訳でもないのにと気に病むが過ぎてしまったことはどうしようもないと気に病むのを止めた。

 

 

 

特にすることも無いエミヤは窓から外を見て景色を眺めていた。城壁で遠くを見ることは出来ないが、それより近くの道を歩く兵や使用人などは見えた。見る限りでは皆活気があって生き生きとしている。

 

 

(いい場所だな。見る限りの者は皆明るく活気がある。元々こういう人間が多いのか、それとも――)

 

 

部屋へ近く一人の気配を感じ部屋の扉の方を見た。その気配はどんどん近いてくると扉の前で止まった。

するとノックもせずに扉が開いた。

 

 

(使用人……ではないな)

 

 

扉をノックせずに扉を開けたのは金色で長髪の女性だった。その長い髪は頭の左側で結んでいる。

 

 

「リムアリーシャです。まだ寝とると思い起こしに来たのですが、余計な気遣いだったようですね」

 

 

冷淡な視線をエミヤへ向け話すリムアリーシャ。その声は昨日会った青い甲冑を纏っていたリムと瓜二つだったので直ぐにその人だと分かった。

 

 

「起こしに来たと言うことは何か用があると言うことか?」

 

 

「はい。エレオノーラ様があなたを呼んでおりますので連れに参りました」

 

 

無愛想にリムアリーシャがそう言い返すと部屋に入ってきた。入ってきた彼女をエミヤはあらためて見る。

 

歳は17か18といったとろこか、服装は全体的に露出度が高く手足に長手袋と長靴を身に付けており、腰には剣の納まった鞘があった。

外見だけを見れば美人の部類に入るのだろうが、そらよりも無愛想な振る舞いと冷淡な視線の方が目立っていた。

 

 

「――あまり見ないでください。不快でたまりません」

 

 

「気に触ってしまったか。悪気は無かった、申し訳ない」

 

 

「緊張感が足りない様に見えます。貴方は捕虜の身なのに寛いでいるようにも見えます。もう少し慎んではいかがでしょうか?」

 

 

リムアリーシャはまた冷淡な口調で話す。その声には怒りが混ざっている。

 

 

「元々こういう性格なのだ。こればかりはどうしようもない」

 

 

リムアリーシャは呆れてしまったのかエミヤの返した言葉に何も返そうとはしなかった。そしてエミヤへ背を向け扉に手を当てるとそのまま扉を押し開けた。

 

 

「立ち話をやり過ぎてしまいました。時間をこれ以上無駄にする訳にはいきませんので付いてきてください」

 

 

それを聞いたエミヤはベッドから出ると、そそくさと部屋から出て行く彼女の後についていった。

 

 

 

リムアリーシャの後ろにつき、エミヤは公宮の廊下を歩いていた。廊下から見れる公宮の造りはとても立派でしっかり手入れもされて目立つ汚れもない。廊下に付けられた溢れ日の入ってくる窓からは広い中庭が見える。

 

そこから暫く歩くと中庭に面していた壁が消え、壁の代わりに列柱式の造りになった。そこから見える中庭では多くの兵たちが稽古にはげみ活気に満ちていた。

 

 

「いい雰囲気だな。皆活気に満ちている」

 

 

「当然です。ここはエレオノーラ様の公宮なのですから」

 

 

当たり前だと彼女は答えた。確かにそれは見れば明らかだ。稽古や巡回を繰り返す兵だけではなく、廊下ですれ違う侍女や侍従たちも生き生きとして活気がある。

中庭を見るのを止め視線を正面に戻し、これからのことを考えた。

 

 

(まさかこんな召喚をされるとは思ってもみなかったな)

 

 

こんな形で召喚されたのは初めて。マスターとの繋がりも無く、更には受肉までしている。

 

 

(間違い(エラー)と判断するべきか、それとも意味を持って招かれたか……。どちらにしても、また貧乏クジを引かされたことに変わりは無いか)

 

 

 

リムアリーシャは歩くのを止めると振り返りエミヤの方を見た。

 

 

「ここです」

 

 

連れてこられた場所は城壁の側にある稽古場だった。そこには十数人の兵たちがおり、エレオノーラはその中に混じって立っていた。

 

 

「少しでも怪しい動きをすれば…… いや、寧ろしてくれた方が助かりますね。いろいろと手間がはぶける」

 

 

剣の鞘を鳴らし、あからさまな敵意をエミヤへぶつけるリムアリーシャ。今すぐにでも始末したいと言う情がエミヤにまで伝わってくる。

 

 

(突然斬りかかってくる事は無いと思うが、一応警戒はしておくべきか)

 

 

「ん、来たか」

 

 

エミヤとリムアリーシャが来たことに気づいたエレオノーラは上機嫌な様子で歩み寄ってきた。

 

 

「ご苦労だったな。捕虜の具合はどうだった?」

 

 

「それは今の彼を見ての通りです。捕虜の身でありながら緊張感に欠けています。先程も此処へ来る途中、外を見ては能天気にいい雰囲気だな。と言っておりました」

 

 

それを聞いたエレオノーラは肩を震わせ忍び笑いを漏らした。

 

 

「たしかにな、気持ちに余裕があるのだろうな」

 

 

「鈍いだけでしょう」

 

 

笑いを止めたエレオノーラはエミヤの方を向く。

 

 

「前も言ったがお前には聞きたいことが沢山ある。が、それは明日にでもすることにして今は別にやってもらいたいことがある」

 

 

そう言ってエレオノーラはある方を指さした。

 

 

「ここから矢を射て、あれに命中させてくれ」

 

 

彼女が指さした先にあったのは城壁に沿って並べられた的だった。その距離約300m。

 

 

「それだけか?」

 

 

300m先の的を射抜くことはどんなに弓を熟知した者でも不可能と言える距離。仮に飛ばすことが出来たとしても届く前に失速して射抜くことは出来ないだろう。

だが、それは人間ならでの話。エミヤにとっては何の問題の無い距離である。

 

 

(これに何の意味があるのかは知らんが、早々に終わらせるとしよう)

 

 

いつもの癖で弓を投影しようと左手を前へ出すと、横から失笑を漏らしながら一人の兵が近いてきた。艶のある黒髪を肩まで伸ばした優男だ。

 

 

「これはこれは、異国の弓兵殿は弓も矢も持たずに矢を射るのですか?」

 

 

嘲り混じりに失笑しながら近いてくる優男の兵の手には弓と四本の矢があった。この弓と矢であの的を射れということなのだろう。

 

 

「矢を射る前の私なりの儀式の様なものだ。可笑しいと思うのも無理はないだろう」

 

 

そう言って優男から弓と矢を受け取った。優男はまだくつくつと失笑を漏らしながら帰っていった。

受け取った弓を見て、エミヤは眉をしかめた。

 

 

「なんだこの弓は……」

 

 

受け取った弓を見てまずエミヤが思ったことはそれだった。弓の素材が悪く握り具合が悪いうえに、弦の張りも反も悪い。

 

 

(愚考だな。こんな粗末な弓でここの弓兵は敵を仕留めれるとでも思っているのか?)

 

 

横目でエレオノーラを見ると、彼女は離れたら場所から期待に満ちた眼差しを此方へ向けていた。次に先程弓を渡してきた優男の方を見る。優男は他の仲間と共ににやにや笑いながらこちらを見ていた。

 

 

(なるほど、そいうことか)

 

 

優男達の様子を見て確信した。あれは何かを企んでいる顔だと。そしてこの粗末な弓は彼らが手を加えた代物だと。

 

 

「小癪な真似を」

 

 

面倒事を起こすつもりは無いので敢えて何も言わないエミヤだが、つい苛立ちを覚え愚痴を溢してしまう。

 

 

「私がやることは理解した。それと、矢を射る前に確認したいのだが、矢は全てを的に当てなくても良いのか?」

 

 

「随分と弱気なのですね。それとも体調が優れないのですか?」

 

 

「慣れない弓を使うのでな、的に当てる矢を一本だけにさせてもらいたいのだ」

 

 

それを聞いたリムアリーシャはエレオノーラの元へ駆け寄るとすぐに戻ってきた。了承は得たのかと聞くと、彼女は首を縦に振った。

 

 

(トレース、オン―――)

 

 

それを見たエミヤはその手に持つ粗末な弓に魔術回路を使い魔力を通す。自分の唯一使える魔術、強化。基本骨子、構成材質を解明し物の精度を高める文字通りの魔術。

生前の頃はろくに出来なかった時期もあったが、今ではほんの一瞬で出来る。

 

 

(こんなとろこか)

 

 

強化された弓を一度見る。基本骨子から構成材質まで変えられたその弓はもう粗末な弓ではない。

 

 

「始めてください」

 

 

開始の合図と共にエミヤは弓に矢をつがえる。エミヤが矢をつがえるの見た優男の連中はまた嘲りの混ざった失笑を漏らしていた。

 

 

「もうすぐ無様な姿が拝めるなぁ」

 

「恥をかいて赤くなってるところにどんな追い討ちをかけてやろうか」

 

「自分が見せ物になっているのに気づかないで可愛そうに」

 

 

哀れみと蔑みの視線がエミヤへ向けられる。それは優男の連中だけではなく他の兵からもだ。こんな距離届く筈がないだろう。ここにいる兵達は皆そう思い、エミヤは見せ物状態になっていた。

 

 

(見せ物か。ならば見せ物らしく芸を見せてやるとするか)

 

 

兵達が口々にたたく罵倒をエミヤは気にもとめない。

弓につがえた矢を引き、狙いを定め

 

 

(……なんだ?)

 

 

矢を放つ前に、エミヤの視界に影が映った。城壁上を移動するその人影は全身をマントで隠している。ここまで怪しい姿をしていればそれの正体は直ぐにわかった。

 

暗殺者(アサシン)だ。

 

そして暗殺者はある物を手に握っていた。腕の力で飛ばす弓とは違う、銃の様な形の機械仕掛けの弓。普通の弓とは比べものにならない程の威力を持つ弩(クロスボウ)だ。弩が向けられる先にいるのはエレオノーラ。

 

 

「おい―――」

 

 

狙われているぞ、と言う前に矢は放たれた。その狙いは正確で確実に彼女を捉えている。

 

 

 

 

「――――――」

 

 

 

 

エレオノーラが何か呪文の様なものを唱えた。そしてそれをエミヤは見た。

刹那、爆発でも起きたかの様にエレオノーラの前で軌跡を描き爆風が起きた。

彼女目掛け飛んでくる矢は突如出現した爆風と衝突し勢うと、起動を外れ何もない場所へ落ちた。

 

 

それを見た賊は武器を投げ捨てると一目散にその場から逃げ出した。

 

 

 

 

「あの賊を捕らえよ!」

 

 

逃亡する暗殺者を見てリムアリーシャは周りの兵に命令を下す。弓を持った兵はその場で矢を放ち、近接武器を持った兵は城壁へと駆けていった。

放たれた矢は暗殺者に届く前に力尽き落ちていき、城壁へ駆けていく兵、城壁上にいる兵も捕らえようと追いかけるが追いつかない。ここままいけば逃げられるのは言うまでもないだろう。

 

 

「――あの賊は生け捕りにするのか?」

 

 

落ちついた口調でエミヤはリムアリーシャに尋ねる。

 

 

「そんな悠長なことを言える状況に見えますか……!」

 

 

悔しそうに城壁上の暗殺者を睨むリムアリーシャ。彼女もここままでは逃げられると分かっているのだろう。

彼女も賊を追いかけてたかったが、エレオノーラの側を離れる訳にはいかなかったのだ。

 

 

「分かった。ならば足を狙う」

 

 

エミヤは弓を高く構えるとそのまま迷わず矢を射放った。

城壁上を走る暗殺者との距離は稽古場にある的よりも遠い位置にいる。だがこの程度の距離、彼にとって何の造作もないこと。

 

 

矢は垂直に軌道を変えることなく飛んでいき、動くその足(的)を射抜いた。

足を射抜かれた暗殺者はその場に倒れ、追いついた兵に取り押さえられた。

 

 

「なん……だと?」

 

 

城壁上を駆けていた兵も下にいる兵も皆、信じられないものを見たかの様に愕然とし兵の殆どの視線は暗殺者ではなくエミヤへ向けられていた。

 

この場に彼を罵倒する者はもう一人もいなかった。

 

 

「で、でたらめだぁ……あんな粗末な弓で……」

 

 

さっきまで嘲り混じりにの失笑を出していた優男とその仲間も今は一様に呆気に取られ恐怖さえ覚えている。

 

 

「これはやり過ぎてしまった様だな」

 

 

エミヤは周りを見ると肩をすくめる。後ろを見れば先程まで自分を睨みつけていたリムアリーシャでさえ今では周りの兵と何ら変わりもない。

エレオノーラの方を見る。彼女だけはこのばで自分に恐怖以外のもの好奇心を抱いていた。

 

 

「一応聞くが、もう充分だろうか?」

 

 

「あぁ、よくやった」

 

 

心から嬉しそうに彼女は笑った。そしてまた風吹き、エミヤの白い髪とエレオノーラの銀の髪を靡かせた。

 

 

(……風、これは一体)

 

 

弩の矢の勢いを殺し軌道を変える程の風。エミヤの視線は自然にエレオノーラの腰にある長剣を捉えていた。

 




一週間投稿を目指してこのざまです……。今後もこんなことがあると思いますが今後も宜しくお願いします。感想、意見などお待ちしております。

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