「改めて、今回の作戦を共有させてもらうね」
花月の声は控えめだが、その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。取蔭はニヤリと笑い、小大と柳は静かに頷く
「今回のルールは、騎手以外もハチマキを狙えるのがポイントだ。つまり、騎馬に求められるのは機動力と頑丈さだけじゃない。そう、僕が求めたのは攻撃力」
花月の言葉に、取蔭が腕を組んだまま目を細める。花月がこのメンバーを選んだ理由を、取蔭は説明されるまでもなく理解していた
(超超超攻撃的な変則的な布陣)
「攻めの軸は柳と取蔭に任せたい。柳は相手に多少接近する必要があるけど『ポルターガイスト』で相手のハチマキを引き寄せられる。取蔭の『トカゲのしっぽ切り』は、自在に切り離したパーツで狙いに行ける。僕は二人が相手のハチマキを狙う瞬間をサポート&ハチマキを狙ってくる相手への牽制」
「僕が止めて2人が奪う。単純かもしれないけど、これが1番効果的だと思う。ここまではいいかな?」
「狙う相手はどうするの。臨機応変にでもいいけど。もし、心操にそこをつけ込まれたら厄介だよ」
誰かが指示を出してその時点で狙いやすい相手を狙う。オーソドックスな方法だが、もし心操が花月の声真似等で会話に混ざってしまったら。乱戦状態になっているであろう状況故に反射的に反応してしまうかもしれない
「僕は喋らない。心操の女声の真似は絶望的だから、多分引っかからないと思う。だから、誰を狙うかの指揮は取蔭にお願いするよ」
「オッケー、ハチマキ全部集めるから」
取蔭が唇の端を釣り上げて笑う。その挑発的な笑みが、逆に心強さを感じさせる
「迫りくる手と、勝手に動き出すハチマキ。ホラーっぽくて面白そう」
「確かに。言われてみたら怖いね」
咳払いをして、花月は逸れた話をもとに戻す
「ここまでは攻撃の話。守備の要は君だよ、小大」
「ん」
「君は騎手だけどハチマキは狙わなくていい。むしろ、常に首にかけているハチマキに触れていてほしい。君の『サイズ』があれば、守りの面で僕達は圧倒的に有利になる。もしハチマキを取られそうになっても──」
「サイズを変えてスカす、でしょ?」
小大が控え目に微笑みながら、花月の言葉を続ける。今回の騎馬戦でも、小大は自身の個性は役に立たないと思っていた。だが、この作戦ならむしろ守備の要になる。必要にされることは嬉しい
「他の生徒の対策も考えようか、もう少し自身があるしね」
「爆豪はどうするの?障害物競走で抜かされたんでしょ?」
「問題ない。彼が僕を抜かせたのは、進行方向が直線だったから。今回の騎馬戦の範囲なら、障害物競走と同じようなことをすれば場外に出ることしかできない」
止められた後に個性を発動して無理やり動いているに過ぎない。故に、手の方向を変えることは出来ない。花月の個性が発動している間、爆豪は一方方向にしか進むことができない。更に付け加えれば、個性を発動して加速したところを再度止めることもできる。まあ、それは爆豪の騎馬にだけ拘った場合の話だが
「──さあ、行こうか。勝つのは僕達だ」
花月は全員の視線をゆっくり見渡す。柳は手を胸の前で組み、分かり辛いが僅かに笑みを浮かべている。取蔭は挑戦的な笑みを浮かべながらも、真剣な目をしていた。小大はただ一言「うん」と短く頷いた
『作戦会議時間終了!競技を始めるわ!!』
緑谷出久&麗日お茶子&常闇踏陰&発目明
轟焦凍&八百万百&上鳴電気&飯田天哉
爆豪勝己&瀬呂範太&切島鋭児郎&芦戸三奈
花月雫&柳レイ子&取蔭切奈&小大唯
物間寧人&塩崎茨&心操人使&拳藤一佳
骨抜柔造&鉄哲徹鐵&泡瀬洋雪
宍田獣郎太&角取ポニー
尾白猿夫&葉隠透&口田甲司
黒色支配&凡戸固次郎&庄田二連撃
吹出漫我&小森希乃子&回原旋
障子目蔵&蛙吹梅雨&峰田実
砂藤力道&耳郎響香&円場硬成
緑谷組: 10,000,320
爆豪組: 650
轟組: 600
骨抜組: 495
障子組: 405
物間組: 375
花月組: 355
砂藤組: 335
尾白組: 295
黒色組: 195
宍田組: 100
吹出組: 165
1.緑谷組: 10,000,320
2.轟組: 1,490
3.花月組: 1,365
4.物間組: 780
5.爆豪組: 0
6.骨抜組: 0
7.砂藤組: 0
8.障子組: 0
9.尾白組: 0
10.黒色組: 0
11.宍田組: 0
12.吹出組: 0
『おいおい!!どうしたよ、お前たちぃぃぃぃぃ!!!!ポイントが一部の騎馬隊に集中してるぞ!!』
騎馬戦が始まってから10分が経過した。小大の騎馬隊は想定以上の成果を上げていた。柳と取蔭の個性を活かしたハチマキ奪取戦法が功を奏し、爆豪の騎馬からもハチマキを奪うことに成功していた。誤算だったのが、爆豪が怒りと焦りから執拗に小大の騎馬を狙い続けていた。彼の攻撃は芦戸や瀬呂の個性を駆使して多角的に仕掛けられたが、小大の個性によってすべて回避されていた。小大はハチマキを奪われそうになる瞬間にサイズを変化させ、攻撃をかわす。そもそも、爆豪からすればそこに辿り着くまでが遠い
「また爆豪!仕掛けてくる!前から黒色の騎馬も来てる!凡戸の個性に気をつけて!」
取蔭が冷静に状況を分析し、仲間たちに指示を出す。黒色の騎馬が接近してきており、その中にいる足止めに最適な凡戸の個性による妨害を警戒しなければならない。小大の騎馬隊はこれまでの戦法を維持しつつ、状況に応じて柔軟に対応していく
「花月は黒色の騎馬を止めて、正面から突破する。小大はその間に爆豪が近づいてきたらうまくかわして」
取蔭の指示に従い、花月は正面から迫る黒色の騎馬隊の動きを止め、小大はハチマキのサイズをいつでも調整できるよう警戒を怠らない
小大の騎馬隊は、爆豪の執拗な攻撃にも冷静に対応して攻撃を無力化していく。しかし、緑谷の騎馬を狙うことはできず、1位を狙うことは難しい状況だった
「緑谷の騎馬を狙いにいきたいけど──爆豪がしつこすぎる。ごめん、花月。1位は狙いにいけない。」
取蔭は安全策をとった。無理をすれば残り時間1分で仕掛けることができなくもない。その場合、爆豪に対しての対応が手薄になってしまう
「──行こう、1位のハチマキを盗りに」
小声ではあったものの、確かに届く力強い声だった。普段は控えめな小大が、意志の強い目をしていた。思わぬ彼女の一言に、取蔭と柳は驚いたように目を瞬く。花月は口元に笑みを浮かべ、頷いた
「大丈夫、皆は1位のハチマキを奪うことに集中して。私は──絶対にハチマキを盗らせないから」
首にかけているハチマキを握りしめる力が強くなる
「──1位で突破しよう!」
取蔭は静かに小さく笑い返し指示を飛ばした。それに呼応して騎馬は速度をあげ、全体から狙われている緑谷の騎馬へと足を進める
──その瞬間、電流が騎馬隊を襲う。上鳴の個性だ。小大の騎馬だけではない。轟騎馬周辺のすべての騎馬が、電流に痺れ、わずか数秒動きを止められた
「よこせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
背後から迫る爆豪。電流でハチマキから手を離してしまった小大。数秒の麻痺が、守るべきものを奪われる致命的な隙を生んだ。花月の個性で静止させようにも、後ろを振り向かないと発動できない。小大の騎馬隊に、爆豪を止める術は残されていなかった
「やれやれ、だね」
小大の騎馬隊と空を飛び勢いよく向かっている爆豪を隔てるように、茨が割って入った。爆豪の突撃を、茨が真正面から受け止める。花月は小さく目を見開き、そして声を漏らす。同じく爆豪も状況が飲み込めず、思わず声が漏れた
「──塩崎.....?」
「は?」
その数秒後、競技終了のアナウンスが流れる
『競技しゅぅぅぅぅぅぅぅぅりょぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!』
『最終スコアはこれだぜ!!』
1位、轟焦凍&八百万百&上鳴電気&飯田天哉 10,001,645
2位、花月雫&柳レイ子&取蔭切奈&小大唯 1,365
3位、物間寧人&塩崎茨&心操人使&拳藤一佳 780
4位、緑谷出久&麗日お茶子&常闇踏陰&発目明 165
5位以下 0
『1〜4位までは最終種目進出だぜェェェェェェェェェェェェ!!!!』
「ごめん、私が1位を狙うなんて言ったから、最後危なくて」
小大が弱々しく呟く。だが花月は微笑む
「いや、小大は悪くないよ。僕も同じ気持ちだったから」
取蔭が小さく笑う
「まあまあ、反省は後でいいでしょ。とりあえず……勝ち残ったんだからさ!」
柳がそっと呟く
「雄英体育祭でここまで勝ち残れるなんて....夢みたい」
「どうだい花月!君が選ばなかった僕達も、負けてないだろ?」
物間が挑発的に言う。だが、その表情には誇らしさと充足感が滲んでいた。花月はわずかに肩を上下させ、真剣な目で応じた
「本当に助かったよ。ありがとう、物間。塩崎が間に入ってくれなかったら、僕達は負けてた。本当にありがとう」
花月の言葉は嘘偽りのない感謝だった。物間はふっと笑い、手をひらひらと振る
「礼なんかいらないさ。君の開会式のラブコールに応えただけだからね」
物間の隣に立つ他のメンバー達も静かに微笑んでいる
「──うん。表彰台は僕達B組が独占しよう」
「あれ、花月はどこに行ったの?さっきまで食堂にいたよな?」
拳藤が物間に問いかける。つい先程まで、確かに物間の隣の席に花月は座っていたのだ。いつものようにおにぎり定食を食べていた
「経営科と組んで何かやってるみたいだよ。ったく、休めばいいのに。Mr.サイレントは優しいねぇ」
物間は少し呆れたようにボヤく。花月は自身が配信者であることをB組に打ち明けていた。いずれバレることになる上に、特に隠しているわけではないからだ。他者から知られて、隠していると語弊を受けることの方が面倒くさいと判断した
「だからアイツだけ、経営科の生徒が花月の分の定食を事前に注文してたんだ。時間短縮のためにな」
心操が補足する。体育祭でやることのない経営科は、暇を持て余している。その程度のことで、一緒になにかできるのであれば進んで行う
「本当にいいのか?俺達は大歓迎だが、余計に疲れるだろ?」
「無駄じゃないよ。生配信とか動画のコメントで、僕に会いに来るって言ってくれてる人達がいたんだ。本当に来てるかはわからないけど、ファンサービスも大事な活動だからね」
「それに、君たち経営科も何かしらの形で参加できたほうが楽しいじゃないか」
体育祭の賑やかな雰囲気に包まれた出店エリアの一角に設けられていた。屋台の明かりが柔らかく灯り、香ばしい匂いや甘い香りが風に乗って漂う。花月はその中にひときわ目立つ「配信者:Mr.サイレント」の幟の横に立っていた。簡易なテーブルとパネルが用意され、その前にはファンが長い列を作っている
元からMr.サイレントを知っているファン、体育祭の戦いを見て気になって並んだライト層
経営科の生徒たちは、サポート役として列の整理や案内、事前に用意していたステッカー等をてきぱきと配っていた。花月は深呼吸をひとつし、笑顔を整える。自分を待ってくれているファンたちがいる。少し緊張もするけれど、それ以上に胸に小さな期待が灯っていた。予想以上に並んでいる列に少しだけ気圧されたのは内緒だ
「──始めようか」
小声で呟きながら、花月は一歩前に出る。最初の客は、体育祭のTシャツを着た小学生の男の子。手には『キラキラ輝く星に手を伸ばせ』と書かれた花月のステッカーを握りしめていた。小さな体をいっぱいに使って胸を張り、しかし顔は緊張で赤くなっている
「こんにちは。来てくれてありがとう」
花月が優しく声をかけると、少年は目を丸くしてから、小さな声で「はいっ!」と答えた
「花月さん、いや、Mr.サイレント!応援してます.....!優勝してください!!」
精一杯の言葉に、花月は目を細めて笑い、ゆっくり頷いた
「頑張るね。ステッカーにサインしてもいいかな?」
「お、おねがいします!」
ペンのキャップをあけ、花月は小さなステッカーの端に自分の名前を書き込む。少年はそれを両手で大事に抱え、目を輝かせて見上げてくる
(僕みたいな、まだヒーロー候補生に過ぎない人間の行いでこんなに喜んでくれる。配信していてよかった)
「大切にする!」
「うん。君も、将来もっともっとキラキラ輝けるって信じてるよ」
列の後ろで見ていた経営科の生徒が、その微笑ましいやり取りにそっと目を細める。次に来たのは、制服姿の女子高生二人組。少し恥ずかしそうに顔を見合わせながら、色紙を差し出した
「サイン、お願いできますか?」
「もちろん。二人とも体育祭の時に声援くれてたよね。ありがとう」
「え!?聞こえてたんですか.....?」
「うん。すごく力になった。もちろん、サインさせてもらうよ」
花月は丁寧に色紙にサインを入れて渡すと、二人は嬉しそうにお互いの顔を見合わせて頬を赤らめた
「ありがとうございますっ!」
「応援してます.....!」
(よかった、前の方に並んでるから声援を送ってくれてるかもしれないって思ったんだよね)
ファンサービスの列は賑やかで、けれど花月は誰に対しても決して流れ作業のようにせず、目を合わせ、言葉を返す
「動画での言葉が、すごく胸に残ってて....!」
「嬉しいよ。今日は熱いから熱中症に気をつけてね」
おそろいのTシャツを着た二人組の青年が、花月に向かって大きな声で「Mr.サイレント最高ー!」と叫ぶと、周りから笑い声が上がる。花月は軽く片手を上げて、彼らに笑顔を返した
「ありがとう」
ファンたちは次々に、花月の元へやってくる。小さな子どもから、大人の女性まで。中には体育祭の競技中に泣いてしまったと言うファンもいた
「頑張ってる花月さんの姿を見て、泣いちゃったんです。すごく勇気をもらえました」
「泣いてもいい。泣けるほど何かを感じてくれたなら、僕にとってはそれ以上の言葉はないよ」
花月は手を握り、静かに微笑む。ファンの瞳に涙が浮かびながらも、笑顔が咲く
出店の香りが風に乗って流れ、どこか柔らかい空気が会場を包む。花月の小さな言葉と笑顔に、ファンたちの表情がどんどん緩んでいくのがわかる
そして──そんな和やかな空気の中、列にひときわ目立つシルエットが並んでいるのに気づく。背が高く、凛とした立ち姿。周囲のざわめきが一気に大きくなり、花月は目を見開いた
(プロヒーロー・リューキュウ!?)
リューキュウの姿に花月だけでなく、列全体が一瞬息を呑んだ。ここからファンサービスはさらに盛り上がりを見せることになる
プロヒーロー・リューキュウの存在感は、まるでその場の空気を一変させるかのようだった。列の賑やかな雰囲気が一瞬静まり返り、次の瞬間、列にいたファンたちがざわめき始める
「えっ、あれ、リューキュウだよね!?」
「本物!?なんで並んでるの?」
小さな子どもたちの目がまん丸になる。大人のファンも、思わずスマホを構えてリューキュウの姿を写そうとしている。出店の明かりに照らされ、長い髪をまとめたリューキュウの凛とした立ち姿が、花月のファンサービス会場にふわりと溶け込んでいた
花月自身も、一瞬言葉を失う。まさか、プロヒーローのリューキュウが自分のファンサービス列に並んでいるなんて思いもしなかった。けれど、彼女は穏やかな笑みを崩さず、花月の目をまっすぐに見つめていた
「動画を見て、少し興味があったんだけど──迷惑だったかしら?」
その低く落ち着いた声が、花月だけでなく周囲のファンの耳にも届く。小さな歓声があちこちから上がり、先程よりも明らかに盛り上がる。ヒーローの中でもチャート上位の人気ヒーロー、そんなリューキュウがヒーロー科の1年生のファンサービスに足を運んでいるという事実に、誰もが驚いていた
「り、リューキュウさん。お会いできて光栄です」
花月は少しだけ声を震わせながら頭を下げる。けれどリューキュウは、肩の力を抜くように微笑んだ
「そんなに緊張しないで。あなたがプロヒーローになったら、一緒になる機会もあるでしょうし」
それを聞いて、花月は顔を上げる。リューキュウはまるで、花月がプロヒーローになることを確信しているようだった
「期待に応えられるよう頑張ります」
周囲のファンたちは、思わずスマホを握りしめながら息を呑んでいた。目の前で繰り広げられる、プロヒーローとヒーロー候補のやり取り。本来であれば大したことではない。よくある光景だ。だが、この列に並んでるのは多少なりとも花月に魅了されているファンたち。彼ら彼女たちからすれば、まさに夢のような光景だった
「リューキュウさん、もしよろしければ──花月と一緒に、少しだけファンサービスをお願いできませんか?」
経営科の生徒の1人が、勇気を振り絞って提案する。リューキュウは小さく笑い、ほんのわずかに頷いた
「いいよ。でも、3年生の会場を見に行きたいから、少しだけね」
その言葉に、列に並んでいたファンから歓声が上がる。大人も子どもも、まるで花火でも上がったかのような表情をしていた。
「すごい!」
「写真撮っていいのかな!?」
ファン同士が顔を見合わせ、スマホを取り出しながら列を整え直す。経営科の生徒たちも、思わず顔を見合わせて笑った。花月の横で、リューキュウは肩をすくめて小さく笑い、そしてファンの前に進み出る
「──それじゃあ、少しだけお邪魔するね」
花月の横に並んだリューキュウ。2人の姿が並んだ瞬間、出店エリアの一角にまるで特別な空間が生まれたように感じられた。花月は視線を横に向けて、リューキュウと目を合わせる。プロヒーローの隣に立つなんて、緊張するに決まっている。その相手が、自身が尊敬しているヒーロートップ3に入っているヒーローであれば尚更。けれども、その緊張よりも強く感じるのは──横に並べる誇らしさだった
ファンたちの顔には笑顔と期待が浮かび、その空気は柔らかくも熱気に包まれていた。花月はもう一度深呼吸をして、言葉を整える。そして、列の先頭に立つ次のファンに向かって、リューキュウと一緒に静かに微笑んだ
ここから、花月とリューキュウ、そしてファンたちとの特別な時間が始まろうとしていた。
リューキュウと並んで花月がファンサービスを開始すると、待っていたファンの表情は一気に輝きを増した。もともと花月目当てに集まったファンたちにとっても、まさかプロヒーローのリューキュウと一緒に交流できる機会が訪れるとは思いもよらなかったのだ
「はい、次の方、どうぞ!」
経営科がどんどん列を捌いていく。花月は目の前のファンに優しい笑顔を向ける。リューキュウも横に立ち、落ち着いた表情でファンに頷く。列の先頭にいたのは、緊張した様子の小さな女の子。震える手に似顔絵が描かれた紙をもっている
「.....これ、もらってください!」
「ありがとう。大事にするね」
花月はしゃがんで、女の子と同じ目線に合わせるように微笑む。その仕草に女の子はほっとした表情を見せる。リューキュウもやわらかな声で声をかけた
「素敵な絵ね」
女の子は顔を真っ赤にして頷くと、花月とリューキュウに「がんばって!」と小さく声をかけ、駆け足で列を抜けていった
続いて訪れたのは青年ファンだ。雄英高校の体育祭を見に来た帰りだという彼は、興奮しているように見える
「Mrサイレント、本当にかっこよかった!開会式の宣言、すごく胸に響きました!絶対に優勝してください!!」
「ありがとう。有限実行するよ。だから、応援よろしくね」
青年は感激したように表情を輝かせた。花月に向かって「これからも応援します!」と力強く告げ、目を潤ませながら列を離れる。花月は軽く手を振って見送り、その笑顔に周囲の空気がさらに温まっていく
次々とファンが並び、花月とリューキュウに言葉をかけていく。中には、花月のイラストがプリントされた手作りのうちわを持つ女性ファンや、応援メッセージを書いた手紙を渡す学生もいる。花月は一人ひとりの声に耳を傾け、リューキュウもその傍らで温かい視線を向けていた
列の後ろの方では、順番を待ちながら小声で感想を言い合うファンもいた。
「プロヒーローと一緒にファンサなんて、信じられない....!」
「Mr.サイレントの人柄だよね」
「こういう瞬間に立ち会えるなんて、幸せだなぁ」
ファンたちのそんな声は、花月の耳には直接届かない。けれど、その雰囲気は確かに伝わっているようだった。花月は終始笑顔を崩さず、丁寧に、そして誠実にファン一人ひとりと向き合い続けた
「ありがとう。応援してくれるその気持ちが、僕にとっては何よりの力だよ」
「絶対に負けないって思ってる。だから、一緒に夢を見ていこう」
花月のそんな言葉に、ファンの瞳は輝きを増す。リューキュウも隣で微笑んで頷き、その静かな存在感が花月をさらに引き立てていた
気づけば出店の一角は、笑顔と温かな声に包まれていた。花月とリューキュウ。二人の姿が並ぶその光景は、まるで一瞬だけの奇跡のようだった。ファンたちはその一瞬を目に焼き付けようと、必死にカメラを構え、時にはスマホを下ろして直接その光景を胸に刻んだ
ファンサービスの時間は瞬く間に過ぎていった。出店の一角で行われていた小さなイベントは、開始から50分ほどで終了を迎えようとしていた
「そろそろ時間だね」
経営科の生徒が、そっと花月のところへ近寄る。休憩時間の終了時間が近づいている。列はまだ続いている
「ごめんね、あとの対応は任せてもいいかな?」
「うん、ステッカーがもう少し余ってるから、それだけ売れたら終わらせるよ。最終種目、頑張ってね」
「──いい時間だったわ」
リューキュウが小さく呟く。花月は荷物をまとめ終えると、振り返り、ゆっくりと彼女に頭を下げる
「リューキュウさん、本当にありがとうございました。リューキュウさんが来てくれたお陰で、ファンの人たちも喜んでました」
「礼なんていらないよ。私も初心を改めて思い出すいい機会になったから──最後まで諦めずに頑張りなさい。私は3年生の会場に行くから直接は見れないけど、録画を見るのを楽しみにしてるわ」
その言葉に花月は目を瞬かせて、そして小さく微笑む
「──えぇ、明日のネットニュースに注目してください」
【雄英体育祭2025実況スレ Part25】
1: 名無しさん@おーぷん
花月やばすぎwww
あの障害物競争の立ち回り何?相手の動き止めてんじゃんwww
2: 名無しさん@おーぷん
個性が地味かと思ってたけどあれヤバいな。派手さはないけどえげつない
3: 名無しさん@おーぷん
取蔭と小大が相性よすぎwww小大のハチマキ防御スカしてるの神すぎwwww
4: 名無しさん@おーぷん
でも正直、爆豪と轟の方がカッコよくね?花月のやつ地味じゃん?
5: 名無しさん@おーぷん
>4 いや地味じゃないぞ。あれ地味に見せかけてかなりテクい動きしてる
6: 名無しさん@おーぷん
騎馬戦で爆豪が花月の騎馬隊に粘着しててワロタwwwwマジで執念深いwwwwwww
7: 名無しさん@おーぷん
>6 爆豪にあそこまで粘着されて負けないのすげーわw
8: 名無しさん@おーぷん
>5 それが地味
9: 名無しさん@おーぷん
爆豪もだけど、轟の騎馬のコンボえぐい
10: 名無しさん@おーぷん
まあ最終的に1位は無理だったけど、花月チーム2位って普通に大健闘じゃね?
11: 名無しさん@おーぷん
障害物競争も良かったよな
12: 名無しさん@おーぷん
どうせA組の話題しかないんだろ?って思ったら、B組も同じくらい注目されてるな。やっぱり、最初の選手宣誓がインパクト強かったよな
13: 名無しさん@おーぷん
花月(Mr.サイレント)のファンサどうだった?なんかやってたんでしょ?
14: 名無しさん@おーぷん
俺行った!外の出店の一角で花月が経営科と一緒にステッカー売ってた。「キラキラ輝く星に手を伸ばせ」って書いてあったぞwwwwwwwwwww
15: 名無しさん@おーぷん
>14 しかもプロヒーローのリューキュウ混ざってたって聞いたぞ!裏山!
16: 名無しさん@おーぷん
リューキュウもいたwww花月と一緒にファンサしてて、子供に笑いかけたりして神対応だったわwwwあの場にいたやつ勝ち組wwwwwwww
17: 名無しさん@おーぷん
配信で知名度つけてるから一定層のファンもいるよな。雄英高校入学前は50万くらいだった登録者が、今では400万人突破してる
18: 名無しさん@おーぷん
リューキュウが出てくるとか運営の仕込み感ww
19: 名無しさん@おーぷん
>18 それはないだろ。リューキュウがMr.サイレントの動画を見て、自分のことを尊敬しているヒーロートップ3に入れてるのを見て元から興味があったんじゃないか?
20: 名無しさん@おーぷん
俺も並んだけど、花月が目合わせて「ありがとう」って言ってくれたぞ。リアルで心臓止まるかと思ったwww
21: 名無しさん@おーぷん
いいなぁ
22: 名無しさん@おーぷん
拳藤さん好きだ。付き合ってください
23: 名無しさん@おーぷん
なら小大さんは俺と付き合ってください
24: 名無しさん@おーぷん
騎馬戦のB組の結束感すごかったな。結果、A組とB組の最終種目進出者、対して変わんないぞ
25: 名無しさん@おーぷん
物間もめっちゃいい仕事してたな。塩崎とのコンボが地味に強すぎるwwww
26: 名無しさん@おーぷん
いやマジでB組推しになりそう
27: 名無しさん@おーぷん
1人だけファンサしてんのおかしくね?依怙贔屓だろ
28: 名無しさん@おーぷん
【速報】花月のステッカーが1時間ちょいで売り切れたらしいwwww
29: 名無しさん@おーぷん
>27 行動できるやつが、行動しない奴らよりも機会が与えられるのは当然だろ
30: 名無しさん@おーぷん
さて、最後の種目も楽しみだな。本当にB組が独占するのか、A組が前評判通りの結果を見せるのか──オラ、ワクワクしてきたぞ!
リューキュウセット
リューキュウ、リューキュウ