静止の月に花開く   作:Mr.♟️

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8話

 

轟焦凍と緑谷出久の戦いは激戦の末、轟が勝利を収めた。あれを激戦といってもいいかは悩ましいところではあるが、轟焦凍が使用していなかった炎の個性を行使したこと。緑谷出久が両腕をボロボロにしていたこと。以上の理由から激戦と評しても問題はないだろう

 

次戦のアナウンスが流れる

 

『A組から登場!優雅なる知性の化身!!冷静な思考と豊富な知識で、戦況を切り拓く華麗なる戦術家ッ!!』

 

『誇りを胸に──優勝までのビクトリーロードを歩め!!八百万百ーーーっ!!』

 

『対するB組は!聖なる誓いを胸に刻み、刃を振るう敬虔なる乙女騎士ッ!!』

 

『初戦では応用力を見せつけ、圧倒的勝利を飾った!!──塩崎茨ああぁぁっ!!』

 

『慎みと誇り、そして信念がぶつかる一戦ッ!!頭脳と信仰、どちらがこのリングを制するのかァ!?』

 

場内は静まり返っていた。どちらも初戦を制した実力者であり、そして共に「知性」と「品格」を感じさせる立ち居振る舞い。その対峙は、剣道の一騎打ちのような緊張感がある

 

『──スタート!!』

 

合図とともに八百万が構えようとした、その時

 

「参ります!」

 

塩崎が、地を蹴った。爆発的なスピードではない。だが、個性を使用して仕掛けてくると考えていた八百万の隙をつくことは出来た。八百万が塩崎の行動を読めなかったのも無理はない。塩崎の個性を活かすなら、中距離からの戦闘が最も適しているのだから

 

「っ!」

 

八百万は咄嗟に手を伸ばす。自身が考えていた展開とは全く違う。何でも良いから装備を創造しようとする──が、

 

「させません!」

 

塩崎の茨が八百万の足元から襲う。近接戦闘かと見せかけた個性での攻撃。八百万の思考速度は戦いの展開に追いつけていない

 

その一瞬、創造は止まる

 

(避けなくてはっ!その後は距離をと、いえ、むしろ距離を詰めて──)

 

八百万は後方へ飛び退く。その瞬間、右足にかすかな痛みが走った。視線を落とすと、細く鋭い棘が突き刺さっている

 

(──その行動は想定内です)

 

その行動を読んでいたかのように、塩崎は更に個性を発動させる

 

「逃がしません」

 

その言葉とともに、ステージ全体に茨が地を這い、八百万を包囲する。

 

 

『創造させない』それが塩崎茨の、この戦いにおける作戦だった。言葉にすることは簡単だが、そんなに簡単なことではない。だが、塩崎はここまで完璧に自身の作戦を実行できている

 

(──クラスのためにも、私自身のためにも、この勝負勝たせてもらいます!)

 

八百万百の個性《創造》は強力だ。それゆえに、発動させる隙を与えなければ、形勢は自身に傾く。塩崎はそう考え、試合開始直後から徹底的に仕掛け続けていた。それこそ、思考を混乱させるために近接戦闘を仕掛ける素振りを見せもした

 

 

「ナイフを──!」

 

 

八百万は困惑しながらも視線を巡らせ、包囲を打破する道を探る。だが、冷静に見渡せば見るほど、それは絶望的な現実として突きつけられる。左右から、後方から、正面から、地を這って攻撃してくる。辛うじて創造できたのはサバイバルナイフ一本。それ以上に複雑な物体を創造する時間はなかった

 

 

(できる限りの応戦を)

 

八百万はそれでも反撃を試みる。迫ってくる茨の一部をサバイバルナイフで切断し、強行突破を試みる。八百万は疑問に思うべきだった。呆気なく茨を突破できたことを

 

 

「──その策も見抜いています」

 

地を走る茨が、八百万の脚に絡みつき、引きずるようにして体勢を崩す。咄嗟に八百万は受け身を取るが、すぐさま全身を茨で拘束された。指一本動かせないほど締め付けられる

 

 

 

 

 

「八百万さん、最後まで諦めない心意気は素晴らしいと思います。ですが──勝負はつきました」

 

「.....っ」

 

八百万の唇がわずかに震える。敗北を認めるかどうか。その間にも、茨は容赦なく身体を締め付ける。呼吸が徐々に苦しくなっていく

 

 

 

そして──

 

 

「.....私の、負けです」

 

 

その言葉とともに、八百万百の身体は茨から解き放たれ、ゆっくりと地面に降ろされる。ミッドナイトがすぐさま合図を出し、勝敗をコールする

 

『勝負アリィィィィィッ!!! 勝者──塩崎茨ああぁぁぁぁっ!!!』

 

観客席から、歓声と拍手が湧き上がる。A組の敗北に驚きの声も混じる中、B組からは歓喜の叫びが上がった。塩崎はそっと八百万のそばに歩み寄り、声をかける

 

「大丈夫ですか?」

 

「えぇ、大丈夫ですわ。お見事でした、塩崎さん。私も今以上に研鑽を積みます」

 

──戦いを終えても険悪な空気はなく、二人は観客に向かって同時に一礼した。それは、品格と誇りを持って戦った者たちだけが見せられる、堂々たる退場の姿だった

 

 

 

 

 

 

 

「──よく繋いでくれたね、塩崎。花月、みてなよ。僕が、僕達が君の言葉は現実にするところを」

 

B組で表彰台独占。物間の対戦相手は常闇だ。楽に勝てる相手ではないどころが、勝つことさえ難しい相手

 

「期待してるよ」

 

それでも、花月はその言葉を疑うことなく微笑んで送り出した。それに物間は照れくさそうに笑笑みを浮かべ、リングへと向かう

 


 

『続いてのカードはこれだァァァァ!!!』

 

プレゼント・マイクの声が響き渡る

 

『影の化身、闇に潜む使徒ッ!!冷静沈着、かつ荒々しき闘志を燃やす──常闇踏陰!!』

 

ステージ中央に現れたのは、黒き影を身にまとう少年──常闇踏陰

 

『対するはB組ッ!!あらゆる個性を自らのものとし、戦場に混乱をもたらす策士!!』

 

『B組の策士!知略の模倣者──物間寧人ッ!!!』

 

観客席から大きな歓声が飛ぶ。物間はいつものように、やや大仰に手を広げて応えた──が、その表情は笑っていない

 

(僕が負けたら意味がないんだ。君の言葉を現実にするためには、僕が勝ち進まなきゃいけないんだ)

 

物間の脳裏には、花月雫の宣言が浮かんでいた「B組で表彰台を独占する」。その高い目標を、挑戦を本気で現実にしようとB組全員が思っている。そしてそれは、ここまで勝ち残った人間に課された責任だ

 

 

『──スタート!』

 

開幕と同時に、物間が飛び出した。狙うは一点。常闇に触れること。触れてからでなければ、勝負論さえない

 

(あの個性、ダークシャドウ。コピーできれば、勝ちの目はある。スカじゃないことを祈っておこう)

 

全速力で距離を詰める。だが──その目論見は、開始数秒で瓦解する

 

 

 

「ダークシャドウ──斬れ」

 

「──っ!?」

 

黒い影が、大鎌のように伸び、物間の進行方向をなぎ払う。かろうじて身を翻すも、僅かのタイミングの遅れで袖が裂け、肌にかすかに焼けるような痛みが走った。物間が想定していたよりも速い

 

(ちょ、近寄れない!?)

 

だからといって諦めはしない。再び仕切り直し──物間は再突撃を試みる。フェイントを混ぜ、時に跳躍し、角度を変えながら迫る。だが、常闇のダークシャドウはあらゆる動きを予測していたかのようにタイムラグなく反応し、一瞬の隙も与えない

 

(そんなのって、あるのかよ。強い。強すぎるだろ)

 

物間は理解する。自分の動きでは懐に飛び込むことさえ出来ないと

 

「策はないのか?模倣者よ」

 

「あるさ──あっても、届かないんじゃ意味がない!」

 

物間が叫ぶ。背後から回り込みを試みるも、ダークシャドウの軌道はそれを塞ぎ、ついに肩を掠められ、吹き飛ばされる。策があるのは本当だ。だがしかし、その策は個性をコピーできてからのものだ。コピーするところまでは、諦めずに愚直に常闇に向かって走るしかない

 

 

 

リングの端で踏みとどまりながら、物間は歯を食いしばる

 

(勝ちたい。いや、違う──勝つんだ!!)

 

全力で叫ぶ

 

「──どけよ、ダークシャドウ!!勝つのは僕だ....!」

 

今までの特攻とは覚悟が違う。攻撃を受けたとしても、ゴリ押ししてでも進む覚悟が物間にはある

 

 

 

 

 

 

 

「──眠れ、模倣者よ」

 

刹那、リングの床から影が跳ね上がった。まるで噛みつくような勢いで、ダークシャドウが物間に突進する。その攻撃は、衝撃は──精神論だけで耐えることができる威力ではなかった

 

 

 

「が──あっ!」

 

激しい衝撃と共に、物間の身体が宙を舞い、そのままリングの外に叩きつけられる

 

『場外ッ!!!勝者──常闇踏陰ッ!!!』

 

爆発のような歓声。その中で物間は地面に伏し、叩きつけられ荒くなった呼吸とともに拳を握りしめた。何もできなかった。それが、物間寧人が叩きつけられた現実だった

 

 

 

 

(負けた。花月、ごめん。塩崎、ごめん。みんな──ごめん)

 

だが、立ち上がった彼の表情は、泣いてはいなかった。暗くなかった。その顔は前を向いていた

 

 

 

 

 

 

(まだ、僕達B組は終わってない。塩崎がいる。花月がいる。今の僕にできるのは──2人の応援だけだ。今は落ち込むな。家に帰ってから落ち込めばいい。今は──クラスのためにできることを考えろ。全力で応援しろ、物間寧人)

 

ステージの上で静かに背を向ける常闇。その姿を一瞥し、物間は道化師のように大きく礼をし、リングを後にした

 


 

観戦席の一角。B組生徒たちが固まるように並び、次なる戦いを見守っていた

 

「行ったね、物間」

 

拳藤がそう言って、隣に座る花月雫の肩に軽く肘をぶつける。半分からかい、半分本気。リングへと向かう物間を見送りながら、拳藤はいつもの勝気な笑みを浮かべる

 

「いつもはもっとうるさいのに、今回はちょっとマジだったじゃん」

 

取蔭切奈が小さく笑いながら言う。眼は鋭いが、声はやわらかい

 

「.....物間、勝てるかな?」

 

小大唯の声は、か細くも澄んでいた。数秒花月に問いかけるように視線を向けるが、答えを求めているというより安心感を欲しているようでもあった

 

「勝つよ。きっとね」

 

花月雫は短く、しかし確信を込めて応えた。静かな声が、四人の少女の胸に小さく震えるように響いた。花月の脳内では、自身の言葉を否定していた。だが、それを差し置いても物間の勝利を信じたいと思っている

 

「信じること。祈ること。それが私たちにできることです」

 

塩崎茨の言葉には、誰よりも強い祈りが込められていた。彼女は物間の敗北は避けたいと考えている──それは

 

(花月さんの言葉を現実にしたい)

 

塩崎は膝の上で手を組みながら、リングをまっすぐに見据えていた。言葉にはしないが、その視線は、何よりも強く物間を応援している。いや、B組全員が強く応援している

 

「始まる」

 

拳藤の声をかき消すほど大きく、プレゼント・マイクのアナウンスが響いた

 

『影の化身、闇に潜む使徒ッ!!冷静沈着、かつ荒々しき闘志を燃やす──常闇踏陰!!』

 

『対するはB組ッ!!あらゆる個性を自らのものとし、戦場に混乱をもたらす策士!!』

 

『B組の策士!知略の模倣者──物間寧人ッ!!!』

 

 

(.....がんばれ、物間)

 

花月は確かに宣言したのだ。「B組で表彰台を独占する」と。そこに込められた意思は、注目を集めるためのでまかせなんかではない。本気で発した言葉だ

 

その可能性が残るかどうかは、この試合にかかっている

 

 

 

 

 

 

 

現実は非情だった

 

 

物間が叫びながら弾き飛ばされるのを見て、拳藤は立ち上がり大きな声で声援を送る。B組の大半が拳藤に続いて声援を送る

 

「まだいける。まだ負けてない」

 

「でも、近づけないと....」

 

小大の声が震える。ダークシャドウの猛攻。影が生き物のように襲いかかる様子は、恐怖さえ感じさせた。物間が狙っていた接触の機会は、一度たりとも訪れない

 

「──ダークシャドウは反応が早すぎる。どうやっても近づけないんじゃ、コピーなんて.....」

 

取蔭がつぶやく。けれど、そこで口を噤んだのは、ふと隣の塩崎の表情が見えたからだ

 

塩崎は、ただ静かに祈るように、手を胸に当てていた。その横顔は、まるで誰かを信じてやまない修道女のようだ

 

(物間さん.....)

 

B組の応援は、きっと物間にも伝わっている。だが──

 

 

 

「っ、ダメだ。あれは」

 

拳藤が呟いたその瞬間、物間が地面に叩きつけられた。リング外。審判の叫びが響く

 

『勝者──常闇踏陰ッ!!!』

 

場内の歓声が沸き上がる。A組の勝利に、観客席が沸いた。それに反して、B組エリアは静まり返っていた

 

「……っ」

 

小大が、小さな声を漏らす。拳藤は腕を組み、悔しげに唇を噛んでいた。取蔭は目を伏せ、塩崎は静かに目を閉じた

 

「立派に戦ったよ、物間」

 

その声を最初に漏らしたのは、花月だった。リングの脇で、物間寧人がふらふらしながら立ち上がる。その表情に絶望はなかった。彼はただ、いつものようにオーバーに観客に頭を下げ、最後に客席の一角に目を向ける

 

──その視線の先には、B組がいた

 

(今年は僕と塩崎に任せなよ)

 

「....かっこつけやがって」

 

拳藤が少し静かな声でそう言うと、取蔭がふっと笑った。その傍ら、誰にも気づかれない等に静かに花月は立ち上がりリングへと向かう

 

 

 

 

 

 

 

リングへと繋がる入場口──そこで、二人の少年がすれ違った

 

一人は、今しがた敗北し、リングから戻ってきた者

 

一人は、これから戦場へと向かう者

 

「....ごめん、負けた」

 

物間寧人はうつむき加減に呟いた。その声には悔しさも、無念も含まれていた。だが、言い訳の色はなかった。花月の目を一瞬だけ見て、足を止めることなく歩き続けようとする

 

──その腕を、花月雫が軽く掴んだ

 

ほんの一瞬。だが、確かに止めた

 

そして、目をしっかりと合わせた

 

「──更に燃えたよ、君のおかげで」

 

花月の瞳に宿っていたのは、まぎれもない闘志だった。普段の授業では見ることのないその目を見て、物間は息を呑んだ

 

 

 

 

 

 

 

リングへ向かう花月の後ろ姿に物間は少しだけ笑って呟いた

 

「勝てよ、花月」

 


 

『──さあ!続いての試合はッ!』

 

場内にプレゼント・マイクの声が響き渡る

 

『A組から登場!無重力の乙女、空に舞う正義のヒロインッ!!』

 

『優しい心を力に変えて戦う──麗日お茶子ぉぉッ!!!』

 

お茶子がステージ中央へと姿を現すと、観客席から歓声が上がる。前戦で見せた泥臭い戦いは観客の心に残っている

 

『対するB組は!!静止の支配者!』

 

『動きを封じ、戦局を操るは、冷静なるB組の静かなる炎──花月雫ぅぅぅ!!!』

 

静かな足取りで、花月がステージに現れる。落ち着き払った目線、抑揚のない歩調。だがその佇まいには、自信が溢れているように見える

 

 

 

(──悪いけど、すぐに終わらせる)

 

お茶子の表情がやや強張るのを花月は見逃さなかった。原因は明白だ。初戦での花月の戦いぶり──飯田の速度でさえ捉えてしまう動体視力。麗日の背に冷たい汗がつたる

 

 

 

 

 

 

 

『スタートッッ!!!』

 

 

 

開始の合図。お茶子は即座に踏み込もうとする──が、その瞬間

 

《静止》

 

 

 

──全てが止まった

 

 

 

 

 

お茶子の足が、地を蹴る寸前で硬直する。目は大きく見開かれ、驚愕に染まる。指先、腕、足、髪の毛の動きすら──ぴたりと止まる

 

 

 

(どないせい言うねん....!)

 

花月は目を逸らさず、淡々と歩みを進めていく。静止の個性、それは視界に入っている対象を止める力。条件は視認──ただそれだけ。接触も、予告もいらない

 

 

 

(彼女の個性は、手で触れることで発動する。僕が相手でついてなかったね)

 

花月は観客席へも一切視線を向けない。ただ、目前の敵へと歩みを進める

 

一歩、また一歩

 

一歩、また一歩──

 

花月の足音だけが、リングに響いていた。誰もが息を呑み、観客席から声ひとつ漏れない。麗日お茶子は動けない。いや、正確には──止められている

 

髪が風に揺れることさえない。まるで時間の流れから取り残されたかのように、お茶子の姿は固まり続けていた

 

花月の動きは緩やかだ。焦りも、迷いもない。ただ、淡々と──一歩一歩、敵に近づいていく。その姿に、誰もが不気味な威圧感を覚える

 

(一撃で場外に送ってあげよう)

 

花月はそう考えた。お茶子の顔は、固まったまま、わずかに恐怖を滲ませている。それは本能的な恐怖ではない。ただ、自分が今何もできないという事実に対する、純粋な動揺だった

 

 

 

 

「これで終わりだ」

 

囁くように、花月が呟いた。ちょうどお茶子の眼前、至近距離まで歩み寄ったその瞬間──

 

左脚を鋭く振り上げる

 

お茶子の胴を正確に捉える角度。花月の蹴りは一切の無駄なく放たれた。

 

──同時に、《静止》が解除される

 

 

 

 

 

「──ッ!」

 

 

 

空気が動いた。硬直が解けた瞬間、反射的に何か行動しようとする──が、その瞬間にはすべて手遅れだった。自身の腹部に振り抜かれる花月の蹴り

 

 

 

 

 

「くっ──があッ!!」

 

 

 

乾いた音が鳴った。お茶子の身体が、無様に宙を舞う。力強く、鋭く、手加減も容赦もない一撃。お茶子の背中がリング外に、勢いのままに弧を描いて落下する

 

 

 

 

 

 

 

『──場外ッ!!! 勝者──B組・花月雫ッ!!!!』

 

 

 

ミッドナイトの声が響く。だが、観客席は一瞬、完全な沈黙に包まれた。

 

圧倒的だった

 

何もさせなかった

 

そして──暴力的だった。無抵抗の相手を、女子を蹴り飛ばした花月に対して観客は若干の批判的な気持ちを抱えながらも

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおッ!!」

 

「なに今の!?一撃!?」

 

「無慈悲!女の子相手に容赦なさすぎるだろ!!」

 

次第に歓声とどよめきが交錯する

 

花月は軽く頭を下げ、すぐにリングから降りた。その目には、勝利の高揚もなく、ただ当然の結果を示す冷静さだけが宿っていた

 

ステージの外で、サポートに駆けつけたリカバリーガールが麗日を丁寧に抱え上げる。彼女はしばらく呆然としていたが、やがて唇を噛みしめ、小さく頷いた

 

 

 

残された戦いは準決勝・決勝のみ

 

轟蕉凍VS塩崎茨

 

常闇影踏VS花月雫

 

 

 

 

「塩崎、決勝で君と当たることを楽しみにしてる」

 

「──はい」

 

静かに頷き、塩崎はリングへと向かう

 


 

 

 

 




書きたい部分にたどり着く前に、モチベがつきかけてきた
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