真紅の稲妻の帰還/プランBの二人   作:黒月乃沙鵺子

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 ジョニー・ライデンがオリジナルヒロイン(いつもそんな感じだろ)と寝たり、一週間戦争とルウム戦役に出ます。


ジョニー・ライデンと開戦前夜からルウム戦役

 宇宙世紀0078年12月24日。空は暗く、街の電灯や建物はイルミネーションで様々な色に輝いている。

 サイド3「ジオン公国」の首都ズムシティの一角に一つのアパートメントがあった。そのアパートメント敷地内にある駐車場に一台のエレカが止まった。

 季節は冬であるが、雪は降らず気温は低くもならない。コロニーは常に快適な環境に保たれている。環境管理システムが故障しない限り。

 エレカの運転席から金髪碧眼の男が降りてくる。一般的に美男子と呼ばれるような顔つきの男だった。ジョニー・ライデン中尉である。

 

「お前、ずっとここに住んでいるのか?」

 

 ジョニー・ライデンが助手席の女に尋ねる。

 

「引っ越すのが面倒でな」

 

 エレカの助手席から女が出てくる。銀色に近い色素の薄い金髪をツインテールに纏めている。銀縁の眼鏡をかけ、そのレンズの向こう側には緑色の瞳がある。色の薄いグレーのズボンに白い長袖のワイシャツを着ている。その上から白衣を羽織っていた。

 彼女の名はレーテー・クラウスナーという。

 ジオン工科大学の院生である。

 

「ワインはまだあったか」

「さっき買ってきただろう?」

 

 ジョニーの問いにレーテーが答える。

 緊張していたのだ。ジョニーにはこの先の展開が見えていた。地球連邦にジオンが宣戦布告をする。そして自分は生きて帰れないかもしれない、と。

 家族に別れ(ともすれば永遠の別れになる)を告げるよりも、ジョニー・ライデンはこの女に別れを告げることを優先した。

 

 二人はアパートメントの階段を登る。

 三階の一室に入る。レーテーの部屋だ。

 

「夕飯は何がいいかな?」

「ハンバーグ」

 

 ジョニーはファミレスに行くとだいたいハンバーグを頼む。値段がステーキより安いというだけでなく、単純に好きだからだ。

 

「君はいつもそれだ」

 

 レーテーが冷凍庫から冷凍食品をいくつか取り出す。

 食卓に冷凍ハンバーグ、冷凍パン、冷凍のポテトサラダが並ぶ。

 赤ワインのボトルを手に取ろうとするジョニー。ジョニーの手より先にレーテーがボトルを掴んだ。

 そして二人分のグラスに赤ワインが注がれる。

 

「ありがとう」

 

 ジョニーは赤ワインの入ったグラスを手に持つ。

 

「ここは私の王国だ。故に私が君という客をもてなすのだ」

 

 レーテーはボトルを持ったまま演劇的で大仰な台詞を口にした。まだアルコールは一滴も口にしてはいない。

 

「女王よ、騎士たる我から陛下にお伝えしなければならないことがありまする」

 

 ジョニーも同じような口ぶりで返す。

 

「申してみろ」

「遠からずジオンは地球連邦に宣戦布告を行う。だから最後に会いに来た」

「宇宙移民が地球から真に自由になるときが来たか」

 

 レーテーはワインボトルをテーブルに置く。

 

「では、ジョニー・ライデン中尉の武運長久と宇宙移民の解放を祈り、乾杯」

 

 レーテーとジョニーのグラスがぶつかる。

 そして赤いワインがお互いの喉を通っていく。

 

「ついに来るべき刻が来た。だが、喜びより不確定な未来への不安が勝る」

 

 レーテーは眼鏡の位置を人差し指と中指で調整する。

 

「わかるよ。でもこれはみんなの自由の為に必要なことなんだ」

「……大勢死ぬだろうな」

「それに含まれないように頑張るが、死んだら済まんな」

 

 一般的に人は死を恐れる。ジョニー・ライデンには死の実感がまだなかった。心身ともに健康な青年であったからだ。自分は死なないというぼんやりとした認識があった。

 

「死ぬなよ、ジョニー」

「命令か?女王陛下の命ならばこれは一生懸命にならねば」

 

 ジョニーはおどけてみせる。

 

「茶化すな。これは祈りだよ」

 

 パイロットでも軍人でもないレーテーがジョニーにできることは限られていた。

 後に真紅の稲妻とも幻獣の騎士とも呼ばれる青年が無事に帰還することを祈ることしかできなかった。

 その後、二人は一つのベッドで寝た。コロニーの中がほのかに明るくなるまで二人は絡み合い、その後少し眠り起きた。

 ジョニーの休暇は25日までだったので、朝食を食べるとレーテーの部屋を出ることにした。

 

「じゃあな。我が姫君、レーテー・クラウスナー」

 

 ジョニーはレーテーの部屋の玄関で、レーテーの手の甲にキスをした。

 

「君の帰還をズムシティで待っている。宇宙の果てまで出征したとしても私の下に戻ってくれ。私の騎士、ジョニー・ライデン」

 

 ジョニーの乗るエレカが見えなくなるまでレーテーはアパートメントの外で見送った。

 

 

 一年戦争の最序盤、通称一週間戦争。

 ジョニー・ライデン中尉はこのとき初陣を迎えた。サイド1のコロニー守備隊所属のセイバーフィッシュを5機撃墜したと記録されている。

 

 つづくルウム戦役にてジョニー・ライデン中尉は特別強襲大隊の第4中隊第4小隊の小隊長を務めた。

 このときジョニーは「とにかく赤く塗れ」と命じ、整備士たちにザクを赤く塗らせた。

 後の戦いではジョニーの乗機は全身赤と黒で塗装されていた。だが、ルウム戦役では両肩を赤く塗っただけで塗料が在庫切れしてしまった。

 またザクの左肩には黄色いユニコーンのエンブレムが描かせていた。

 両肩の赤いザクをジョニーは格納庫で見上げる。

 肩が赤いだけでも通常色の緑より強そうにジョニーは感じた。ジョニーは小学校時代に赤いケースに入った絵の具セットを使っていた。

 

「ジョニー中尉」

 

 そこに黒いノーマルスーツの大柄の男が現れた。

 

「大隊長殿」

 

 ジョニーは反射的に敬礼する。相手は特別強襲大隊のガイア大隊長である。

 

「貴様もシャアを真似て機体を赤く塗るのか?」

 

 ガイア大隊長はシャアとは折り合いが悪いようで、シャアのザクを彷彿とさせるジョニーのザクに嫌味を言いにきたのだ。

 

「はい、違います。これは私の趣味であります」

 

 ガイア大隊長は厳しい人間ではなかったが、ジョニーは無難に軍人らしい硬い態度で返した。

 

「ならば良し。立派に戦って英雄になれ」

 

 ジョニーはガイア大隊長に肩を叩かれた。パワハラではなくコミュニケーションである。宇宙に人類が生活するようになっても人間は特に変わっていなかった。

 

 そして出撃の時が来た。ジョニーはザクに乗る。

 

「ジョニー・ライデン、ザク出撃する」

 

 パプア級補給艦よりジョニー・ライデンが出撃する。僚機がその後ろについて発艦する。

 

「英雄ってなんだ?大勢殺した奴か国営の墓地に名前の刻まれた奴か?」

 

 ジョニー・ライデンが独り言を呟く。

 

「小隊長、独り言がデカすぎますよ」

 

 ジョニーの部下が無線でジョニーに突っ込む。

 

「気にするな。俺について来い」

 

 サラミス級巡洋艦やマゼラン級戦艦の対空砲火を避けて、ジョニーたちの小隊がレビル艦隊に突入する。

 

「針の山みたいだ!」

 

 レビル艦隊の対空砲火を見て、誰かが弱音を吐く。

 

「メガ粒子砲の直撃以外は気にするな!突っ込んでバズーカを叩き込め!」

 

 ジョニーはその弱音に答えた。サラミス級やマゼラン級には対空機銃やミサイルなどの火器が搭載されている。ミノフスキー粒子が散布された空域において、ミサイルは基本的に当たらない。対空機銃が多少被弾してもザクはそう簡単に落ちない。

 

「ははっ!これが死か!」

 

 ジョニー・ライデンは狂笑した。

 マゼラン級戦艦のメガ粒子砲を避けて、マゼラン級のブリッジにヒートホークを叩き込む。マゼラン級の周囲を近距離で飛び回りながら、マシンガンを連射する。

 対空機銃がジョニーの乗るザクの装甲を叩く。死の気配がジョニーの肌を撫でた。

 死の指先は冷たく、ジョニーの全身を流れる血液の熱さを際立たせる。

 

 このようにルウム戦役において、ジョニーは3隻の戦艦を沈めた。

 一週間戦争とルウム戦役の戦功によりジョニー・ライデンは大尉になった。

 

 

 

「塗りますか?紅く」

「それがどんなMSでも俺は紅く塗る。幻獣(ユニコーン)の騎士が宙を駆けていると誰が見ても分かるように」

 

 ジョニー・ライデンは紅いMSを駆る。一年戦争(ジオン独立戦争)終了後も紅いMSを駆り、稲妻の如き速度で宙を飛ぶ。

 

 宇宙世紀0085年。彼はサイド6のイズマコロニーのクランバトルに参加する。

 この話はジョニー・ライデンが地球連邦軍の軍人と戦い、そして帰還するまでの話だ。

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