ビームライフルの光線が宇宙空間を引き裂いていく。
現在、サイド6周辺の宙域でクラン『トゥエルブ・オリンピアンズ』と『ARK』のMSが対峙していた。
一方は白兵戦を、もう一方は遠距離での撃ち合いを繰り広げていた。お互いにMAVから引き離され、一対一での戦闘を余儀なくされていた。
「このプレッシャー、もしや赤い彗星なのか!?」
『トゥエルブ・オリンピアンズ』に所属するコダマ・ウィラードは、敵MS――真紅のゲルググ――のコンバットマニューバの鋭さに思わず呟いた。
ウィラードは自身の乗るバーザムを必死に振り回している。バーザムは地球連邦軍の次期量産機……その試作MSだ。
頭部からトサカ状のブレードアンテナが伸び、モノアイのカメラが頭部に備わっている。
カタログスペックではゲルググを上回るMSである。
だが、ウィラードのバーザムは真紅のゲルググに翻弄されている。
「俺は赤い彗星じゃない」
ゲルググのコックピットで、ジョニー・ライデンは呟く。ウィラードとは無線通信で繋がってはいない。
高速で機動しながら、ジョニーはビームライフルの照準をバーザムに合わせる。
真紅のゲルググのビームライフルがバーザムの頭部を掠める。
「死ねよや!!」
ウィラードはお返しとばかりにバーザムのビームライフルを乱射する。照準は荒い。牽制射撃だ。それをゲルググは全速で進みながら、避ける。バーザムは全速でゲルググから逃げている。このままではゲルググのパイロットがバーザムの機動を把握し、撃墜は免れない。
「だからさ。俺はシャア・アズナブルじゃない。ジョニー・ライデンだ」
真紅のゲルググのコックピットで、ジョニー・ライデンは吐き捨てた。
ウィラードの独り言が聞こえたわけではない。
このゲルググの色と動きを見て、相手は自ずとシャア・アズナブルを思い浮かべるだろうと、ジョニーは思っただけだ。
「俺はガンダムに乗ったことなんか一度もないのに、どうして他人はシャアと勘違いするんだ?お前はどう思う?オリベ少尉」
ジョニーは無線機でMAVに呼びかける。
「はいッ!?何でしょうか!?」
エグザベ・オリベ少尉は敵バーザムのツイン・ビーム・スピアと鍔迫り合いを行いながら、返事を返す。返事を返すが、目の前の敵機に集中力を注いでいたためにジョニーの話を上手く聞き取れていなかった。
エグザベに相対するバーザムの頭部はV字型のブレードアンテナを持ち、ガンダムのような頭部に換装されていた。六つの眼を持つ異形の顔だ。
「俺ってシャア大佐と似ているか?」
「色は似ているんじゃないですか?」
エグザベのゲルググは、シールドからミサイルを発射する。
相対するバーザムはツイン・ビーム・スピアを振り回しミサイルを破壊していく。
実力伯仲。クランバトルは殺し合いではないが、既にお互いは殺しを前提としての戦闘を行っていた。
実力が近しい相手を殺さずに無力は不可能。お互いにそう割り切っていた。
「アイツのカラーはピンクっぽいだろ」
ジョニーはエグザベに返す。
ウィラードのバーザムは逃げつつ、エグザベに接近していた。
バーザムの肩がエグザベのゲルググの腰にぶつかる。ゲルググは吹き飛んでいく。
「うああああ!!」
「何吹き飛ばれてんだよ。ニュータイプだろ」
ジョニーは飽きれる。実際にMS同士の戦闘ではしばしば白兵戦が発生し、そのいくらかは体当たりだ。
体当たり自体には戦闘を決着させるほどの殺傷力はない。だが、MSの体勢が崩れてしまい、危険な状態になってしまう。
「アン!!交代だ!紅いのを任せる!!」
ウィラードはもう一機のバーザムにビームライフルを投げる。
ツイン・ビーム・スピアを持ち、ガンダムの頭部を持つバーザムには強化人間が乗っていた。その強化人間はアン・ムラサメと呼ばれていた。
「承知!!槍はおいておくよ!」
ウィラードとアンは互いの得物と相手を交代した。
一体如何にして、この戦いが始まったのか。
それはジークアクスがマチュの手に渡るよりも時を遡る必要がある。