因縁の時系列的はセモベンテ隊(今ここ)→(闇の奥?)→プリムス艦隊→ソロモン?→ルナツー戦→クランバトルになります。
今回は地球連邦軍サイド、セモベンテ隊視点です。次回はセモベンテ隊がジョニー・ライデンに蹂躙されます。
一年戦争(ジオン独立戦争)開戦初頭。コロニー落としの混乱の中、コダマ・ウィラード中尉は北米戦線を61式戦車で走り回った。
ウィラード中尉は初陣から僅か1ヶ月でザクを2機、マゼラアタックを5両撃破するという戦果を上げた。
現地の人員不足とその戦果故に、任官したばかりの少尉から中尉へと昇進した。
そして今度は戦車から別のモノで戦場を駆けることになった。
メキシコの某所、地球連邦軍の基地、そこにはシートのかけられた大型の機材が複数横たわっている。そしてその側には多くの人員が行き交っている。
通常の戦車小隊よりも整備士の人数が多いようにウィラードは感じた。
「ようこそセモベンテ隊へ。
フェデリコ・ツァリアーノ中佐はウィラード中尉を出迎えた。隻眼と傷跡の残る顔は歴戦の軍人を思わせる。
軍人になって日が浅く、女性であれば馬鹿にもされるか、とウィラードは軽口を流す。
コダマ・ウィラードは金髪碧眼の白人女性で、学生時代はプロムで相手に困ったことがなかった。自他共に認める美人であった。
「コダマ・ウィラード中尉であります。私が受領する乗機はどれでありますか?」
ウィラード中尉は尋ねる。特殊な作戦を行う部隊への配属としか聞いていない。そしてウィラードは戦車乗りだ。ならば戦車を与えられるものとこのときは思っていた。
「これだ」
ツァリアーノ中佐は機材のシートをめくる。
そこには白く塗装されたザクの姿があった。
「俺たちはこのザクに乗り、宇宙人どもを騙し討ちする」
「……それは面白そうであります」
ウィラード中尉はザクの姿を見て、初めて61式戦車に乗った日を思い出した。新しいモノに乗る興奮はいくつになっても変わらない。
そしてこのザクは宇宙から地球に降りてきたジオンへの復讐を叶える力である。
思わず口角がつり上がる。
セモベンテ隊はこうして発足した。
ツァリアーノ中佐の率いる第1小隊はザク3機、61式戦車1両。ウィラード中尉率いる第2小隊はザク3機、61式戦車1両で1個中隊であった。
メキシコからアリゾナに進出したセモベンテ隊はジオン軍の物資集積所を潰して回った。アリゾナの砂漠各所の物資集積所にはろくな守備戦力も配置されておらず、セモベンテ隊は終止有利に行動を続けていた。
ある夕方、セモベンテ隊はジオン軍のザク1個中隊8機と遭遇した。
物資集積所を襲撃して直ぐであり、セモベンテ隊は弾薬を消耗していた。
「連邦の部隊を見なかったか?貴殿らの方角にある物資集積所が襲撃を受けたようだが……」
どうやらジオンのザクたちはセモベンテ隊を友軍と認識しているようだった。
ジオンのザクは敵襲を警戒し、散開している。ザクとザクの間の距離は500メートルであった。密集しているよりも散開している方が奇襲に強い。
「中佐」
ウィラードはツァリアーノ中佐に声をかける。ウィラード率いる第2小隊はツァリアーノ中佐の第1小隊の1キロメートル後方を進んでいる。
「ああ。どうやら連邦の部隊が我らの後方を荒しまわっているようだ……」
ツァリアーノ中佐はジオン兵との会話を続けながら、ザクの左手を上げた。攻撃の合図である。
岩陰を迂回して現れた61式戦車が砲撃する。ツァリアーノ中佐と会話をしていたジオン兵の乗るザクに砲弾が直撃する。胴を穿たれ、仰向けに転び爆発した。
「連邦の鹵獲ザクだ!!」
ジオン兵が直ぐにマシンガンの銃身をツァリアーノたちに向ける。
「同数の敵相手だ!撃破よりも突破を優先しろ!」
ツァリアーノは跳躍し、空を滑空しながらマシンガンを発射する。ツァリアーノの攻撃によりジオン軍のザクが穴だらけになる。パイロットが死んだのか動力系が壊れたのか擱座する。
ジオン兵はツァリアーノ機を狙うものと地上を走る他のザクや61式を狙うものに別れる。
「ジオンは皆殺しだ」
距離を詰めてきたウィラードのザクがバズーカを撃つ。ツァリアーノを狙うザクが吹き飛ぶ。動力や装備に誘爆しそのままザクは撃墜された。
交差するように飛んでくる61式戦車2両の砲撃で更にもう一機が撃破される。
「連邦め、舐めるなよ。俺たちの方がザクに乗っている時間は長いんだ!」
ジオン軍のザクは既に半数の4機になっていた。数で劣勢に陥ったジオン軍であったが、士気は高い。
ジオン兵は61式戦車にバズーカを撃つ。61式戦車は直撃を避けたが、爆風で履帯を破損し行動不能に陥る。
「チッ!弾切れか!ならば」
ウィラードはヒートホークを投げた。投げたヒートホークは2キロメートル先を走るザクに突き刺さった。移動するMSに射撃を当てるだけでも困難であるが、ヒートホークを投げて突き刺すことは更に難しい。偶然ではなく、自在にこれを成すことができるならば、そのパイロットは間違いなくエースパイロットと呼べるだろう。
その後、ジオン軍のザクたちはセモベンテ隊に集中砲火を喰らい、1機を残して文字通り全滅した。セモベンテ隊の勝利である。追撃すれば、もう1機も撃破できたはずだが、それよりもセモベンテ隊は撤退を優先した。
「修理している暇はない。61式戦車は爆破しろ。乗員は第2小隊の61式戦車に乗せろ」
しかし、セモベンテ隊も61式戦車を1両失った。またザクの弾薬も物資集積所から奪うか、撃破したMSから奪うしかない。
ザクの予備部品も在庫は十分とはいえない。
すっかり日は落ちて、夜の空に星が輝いている。そしてやはりこれも鹵獲機材であるサムソン・トレーラーがアリゾナからメキシコに向かい走っている。
セモベンテ隊は補給のために後方の基地へと戻るのだ。
「今はまだ小さな反撃だが、いつか俺たちはジオン軍を宇宙に追い出すことができる」
トレーラーに寝そべり運搬されるザク。そのコックピットから顔を出したツァリアーノ中佐が誰に言うでもなく虚空に向かって口にした。あるいは神に反撃を誓ったのかもしれない。
「はい、中佐。私も微力を尽くす次第であります」
また別のトレーラーに横たわるザクのコックピットを出てきたウィラード中尉が反応する。ツァリアーノ中佐はバツの悪そうな顔をした。
「ウィラード、お前はこんな部隊ではなく、真っ当な部隊で真っ当に出世しろ」
「こんな可愛い僕を袖にするのですか?」
ウィラード中尉は自身の顔に自信があった。
「お前ができる奴だからだ。お前は俺と違う」
ツァリアーノ中佐は鹵獲ザクによる後方攪乱があくまでも時間稼ぎでしかないと認識していた。V計画が成就するまで連邦が耐え忍ぶための足搔きと自身の行いを定義していた。
地球連邦軍の未来はウィラード中尉のような若者が担うべきだ、とツァリアーノ中佐は思っていた。
老兵は若者に未来を託すために地を這い、戦うのだ。