真紅の稲妻の帰還/プランBの二人   作:黒月乃沙鵺子

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話が一瞬UC0085に戻ります。
エグザベ・オリベとジョニー・ライデンがMAVを組む流れの話です。



ジオン公国突撃機動軍(予備役)大佐ジョニー・ライデン

 シミュレーター上の仮想宇宙に真紅の稲妻が走った。追いかけるは白いMS。ギャンである。

 対して真紅の稲妻――紅いMS――はゲルググと呼ばれていた。

 ゲルググもギャンも一年戦争後期に生産されたMSであり、お互いの性能に特別の優劣はない。

 ならばこそ乗り手の力量が如実に現れた。

 

「俺の弾切れが先か、貴官を仕留めるが先か」

 

 コックピットの中でジョニー・ライデンは呟く。

 左目を切り裂くように額から頬にかけて切傷の跡が残り、5年前よりも心做しか身体は痩せていた。

 乗機のゲルググもシミュレーター上で表示される外見を紅に変更しただけであり、ソドン艦内に予備機として置いてあった機体でしかない。

 

「弾切れまで逃げさせはしません!」

 

 シミュレーター上の模擬戦故に、ジョニーの呟きは無線で相手に伝わっていた。

 実直な雰囲気を発する茶髪の青年。エグザベ・オリベ少尉である。

 彼の専用機である白いギャンは、大型複合兵器《ハクジ》はビームを発する。

 ハクジは槍であり、増設された推進器であり、そしてビーム兵器であった。

 ハクジより放たれたビームをジョニーの操るゲルググは避ける。そのまま機体は反転し、お互いのMSは相対する。

 ジョニーは逃げから攻撃に移った。

 ギャンの元々の加速にハクジによる推力が加われば、ゲルググではすぐに追いつかれる。

 故にジョニーは何処かで攻めに転じなければならなかった。

 ビームを避け、ギャンの盾より放たれるミサイルを潜り抜け、ハクジを撃ち抜く。

 シミュレーター上でハクジは爆発し、強烈な閃光を発する。

 

「武器を一つ失っただけだ!」

 

 爆炎の向こうよりビームがギャンの頭部を撃ち抜いた。ゲルググはビーム・スプレーガンを捨てる。

 すでにもう一つのビーム・スプレーガンも弾切れし捨てられている。

 この戦闘はすでに十分以上続いていた。

 ギャンはビームサーベルを引き抜き、ゲルググと鍔迫り合いを演じる。

 ジョニーはゲルググを巧みに操り、ギャンのコックピットを蹴り飛ばす。

 シミュレーター故にエグザベのコックピットに衝撃は走らない。実戦ではコックピットをMSが蹴り飛ばしたならば相応の衝撃が加わる。気絶や負傷もあり得る攻撃であった。

 

「クランバトルのルールなら俺の勝ちだ。今日はここまでにしよう」

 

 ジョニーは自らの勝利を宣言した。

 

「大佐殿がそうおっしゃるのなら」

 

 エグザベはまだ余力を残していた。いやむしろここからが本番だった。ニュータイプの感覚はMSのメインカメラを失おうとも戦闘を可能としていた。

 しかしエグザベはここで引き下がる。

 エグザベはギャンのコックピットを降りた。ペガサス級強襲揚陸艦ソドンのMS格納庫には、エグザベの見知った人影が往来していた。

 ギャンの直ぐそばに立つゲルググから、ジョニー・ライデンが降りる。

 白いワイシャツに派手な紅いネクタイが締められている。そして、グレーのズボンに革靴、ホワイトカラーのような格好だ、とエグザベは思った。

 

「予備役とはいえ民間人が軍艦に乗って、それもMSのシュミレーターで模擬戦なんかしてよろしいのですか!?」

 

 コモリ少尉が格納庫で傍らに立つシャリア・ブルに向かって喚いている。

 

「構いませんよ。ジョニー・ライデン大佐は今もキシリア様の為にその務めを果たしておられる」

 

 シャリア・ブルは答えた。皮肉である。

 ジョニー・ライデンは予備役に編入された後も、キシリアから物資や資金の支援を受け、キシリアの為に働いていた。

 

「キシリア様の親衛隊、その若き隊長殿の実力は確認しておきたかった。無理を言って済まん。シャリア・ブル中佐」

 

 ジョニーは一瞬眉間に皺を寄せた。シャリア・ブルの皮肉に気づかぬジョニーではなかった。

 そしてすぐに表情を戻し、シャリア・ブルに向かって鷹揚に手を振る。

 エグザベ・オリベはまだ少尉ではあるが、フラナガン・スクール首席のニュータイプという経歴から親衛隊でMS部隊の隊長ポストが内定していた。

 それ故にジョニーはその実力を確認しておきたかった。

 

「次はキャリフォルニア産のワインでも持ってきて頂ければと存じます」

 

 シャリア・ブルはワイン好きであるが、この場合のワインは別のものを示していた。ダイクンの血筋、アルテイシアの擁立である。

 

「善処する。それとオリベ少尉を借りられないだろうか」

 

 ジョニーにも当然キャリフォルニア産のワインが何を示しているか伝わっていた。

 シャリア・ブルとダイクン派の共謀に関わっていたのだ。

 

「ちょっと!横暴じゃないですか!」

 

 コモリはジョニーに対し、極めて不服を示す。

 

「……用件を聞きましょう」

 

 ジョニー・ライデンは今もキシリア派内に影響力を持つ。ジョニーの頼みごとは無下にできるものではなかった。

 

「オリベ少尉にはクランバトルで俺のMAVを演じてもらいたい」

 

「クランバトルですか、それは貴方がキシリア様より受けた命令が関係しているのでしょうか?」

 

 ジョニーは民間に下ってからもキシリアの命令で動いていた。その命令で現地部隊を指揮下に置くことや兵や装備を供与させることができた。

 

「我はサイド6の首筋に当てた短剣であるが、それだけじゃあない」

 

 ジョニーはクランバトルでゲルググの性能を示し続けていた。ジオン有数のエースパイロットが乗るゲルググは、連邦の退役軍人が乗る軽キャノンよりも優れていると示すために。

 また有事の際は、そのままサイド6の軍警を武力制圧する。その命令も与えられていた。先のジオン独立戦争を戦い抜いた歴戦の戦士が操るゲルググが12機。それが暴れるのならばイズマコロニーの軍警が装備するザクではいくら数があって対抗不可能だろう。

 

「次のクランバトルには地球連邦軍の新型MSが出てくる。これを破壊せよとのキシリア様の命令だ。生半可な相手では俺のMAVは務まらん。オリベ少尉並みに動ける奴が必要だ」

 

 ジョニー・ライデンはエグザベ・オリベというニュータイプを危険視していた。

 エースパイロット1人の活躍で戦局が変わることを知っていた。

 シャア・アズナブルはたった一人でグラナダを地球連邦軍から救ったのだ。

 エグザベ・オリベは来るアルテイシア擁立の前に始末せねばなるまいとジョニー・ライデンは考えていた。

 

「いいでしょう。彼もニュータイプですから」

 

 シャリア・ブルは当然ジョニーが何を考えているか思考が読めていた。

 それでもシャリア・ブルはエグザベ・オリベという若いニュータイプの

力を信じていた。

 

 そして話は、UC0079のジオン独立戦争に戻る。

 




次回からはジョニー・ライデンがクルスト・モーゼスを暗殺しに行く話になったりイフリート改とか出てきます。メイビー。
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