追放ものに転生した。ただし、ざまぁされる側らしい   作:流石ユユシタ

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間章【一方その頃、救済の光は……】

「どういうことだ……」

 

 

 

 救済の光、リーダーであるアルドは疑問の声をあげていた。まるで、狐につままれたような不可思議な表情を浮かべながらであった。

 

 

 

「そうね、まるで不可解だわ」

 

 

 

 アルドと同様に同じメンバーであるイザベルも疑問を持っていた。また、フィアナ、ギルバートも同様だった。

 

 

 彼等4人は冒険者ギルド内、そこに置いてある机を4人で囲いそれぞれ席について疑問を浮かべていた。

 

 

 彼らが持つ疑問、それは一つである。

 

 

 

 

()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()……?」

 

 

 

 

 アルドは思わず、自身の疑問を口にした。農民厄災のシエラと錬金スキル使いミクスを追放した後、彼等は新たな錬金スキル使いを募集した。

 

 

 シエラは居ても居なくても必要ないと本心で彼等は思っていたが、錬金スキル使いは何かと重宝する。

 

 

 冒険ではモンスターによる攻撃を受けた際にすぐに回復するため、ポーション、毒消しポーション、魔力回復ポーション、麻痺回復ポーションなど様々必要となる。

 

 しかし、それらを一々持っていて動きに支障を来たすし、瓶に入れていた場合は激しい動きをした際に割れてしまうなんてこともある。だからこそ錬金スキル使いは素材を持ち歩き、いつでも調合出来るように必要と言われる。

 

 

 

 

「まぁ、いいじゃない。アタシはそもそも論、錬金スキルは冒険に必須ではないと思うわ。だって、ポーションが必要なら買えばいいじゃない」

「いや、……それはCランク以下での話だろ」

 

 

 

 アルドも、最初はそもそも錬金スキル使いをパーティーに入れる必要がないとも思っていた。

 

 

 しかし、それは最初だけ。

 

 

 思い直した理由はポーションとは割と値が張るということだった。品質さえ気にしなければポーションなんて安く買える。

 

 だが、救済の光は現在Bランク冒険者で構成されている。大金を稼ぐには危険な依頼を受ける必要があるし、危険な依頼を受けるには準備がいる。

 

 

 今まではシエラが素材を必死に集め、それをミクスに渡すことで想像以上に質の良いポーションが手に入っていた。

 

 それだけではなく、ミクスは影に持ち物を格納するスキルを持ち合わせている。常時魔力を消費してしまうため、使用頻度は少なかったが、ポーションが大量に必要とされるであろう依頼の時はわざわざ任務前に徹夜でポーションを大量錬成して、持参するなんてこともあったほどだ。

 

 

 だが、それをしていたミクスも、何よりシエラもいない。

 

 

 シエラの才能と重要さには彼等は未だ気づいていないが、目に見えてポーションが手に入りづらくなったこと。

 

 

 

 

 

 何より、そのポーションを無償で作り続けていたミクスが消えたことで報酬が以前よりも減ってしまったことが救済の光の苛立ちを高めていた。

 

 

 

 

「ポーションが割と値を張るわねぇ、でもぉ、私なら安く仕入れられるわぁ」

 

 

 

 パーティーの1人であり、治癒を担当するフィオナがそう口にした。彼女は大商家の娘であり、ポーションを手に入れることができる。

 

 

 

「そうね! それがいいわ!!」

 

 

 

 イザベルがフィオナの提案を後押しする。また、ギルバートもその提案には賛成だった。

 

 

「オレもそれで良いと思うぜ。ミクスもシエラも、雑用寄りの仕事のはずだ。オレ達みたいなエリートがすることじゃねぇ」

「そうねぇー。ただ、錬金スキル使いは私もぉ、居た方が良いと思うわねぇ。旅先でポーションが切れた場合と、何らかの原因で紛失した場合はぁ、困ってしまうわぁ。特に魔力回復ポーションはBランク以上の依頼、Cランク以上も必須とも言われるわぁ」

 

 

 

 スキルを使う場合、どのスキルも例外なく魔力を使用しなければならない。逆に魔力がなくなってしまうと何も出来ない。

 

 

 そのため、魔力回復ポーションとそれを作れるのは非常に重要ではある。

 

 

 

「だから、錬金スキル必要なのに誰もパーティーに来てくれないって言っただろ」

「アルド、本当に必要かしら? フィオナも魔力回復ポーションの為に錬金スキルがほしいというけど、元から多く持って冒険すれば良いだけなんじゃないの?」

「そうねぇ……。そうとも言えるけどぉ。ポーションも魔力回復ポーションも安く仕入れるってのは難しいわねぇ。私が商家の娘だから、お父様に支援をお願いするくらい訳ないけどぉ、それやり過ぎたら私に負担が大きくかかるってことになるわぁ。それじゃ、結局利益にならないって事になるしぃ」

 

 

 

 

 安く仕入れることも出来るが、あまりにやりすぎると利益ではなく、損となる。だから、あまり過度な責任を持たされるのはフィオナからしたら拒否したいことだった。

 

 

 

「まぁ、そうねぇ、結論として私はぁ、新たな錬金スキル持ちをパーティーに入れるか、報酬からの利益を減らして冒険準備資金を今後大きくするかの2択かってなるわねぇ」

「……はぁ、利益が減るのは嫌よ。今までミクスとシエラがそこら辺してたわけでしょ。代わりを呼びましょ。雑用でもなんでもやらせて、雑費も負担させて」

「あらー。流石は貴族様の娘、イザベルさんだわぁ。悪どいことをそう簡単にさせようとするなんてぇ」

「アンタも、そうしてきたじゃない。ミクスもシエラも、やってたわ。あいつは男だし、シエラは厄災だし。やって当然でしょ」

 

 

 

 2人の話し合いに、アルドは口を挟む。

 

 

 

「だから、代わりに錬金スキル持ちを探してると言ってるだろ。だが、誰も入ろうとしない。この救済の光に入るなんて名誉なことなのにな」

「アタシ達のパーティーが凄すぎるから全員気後れしてるのよ」

「あぁ、そうだな! アルド、オレもイザベルと同じ意見だ」

「まぁ、アルドさんにぃ、イザベルさん、ギルバートさんもぉ、全員Bランクだしねぇ。釣り合わないって思ってるのかもしれないわぁ」

 

 

 

 

 各々が自らの意見を述べ、交流をする。その様子をギルド受付嬢『ルーシャ』は内心ため息をしながら、聞き耳を立てていた。

 

 

 

 

 

(はぁ、バカな人達……錬金スキル持ちが入りにこないのは、釣り合わないって思ってるから。と言う推理はある意味で当たっているけど)

 

 

 

(でも、根本的に原因がわかってないわね)

 

 

 

(原因はミクスさんがパーティーをやめたからよ)

 

 

 

 

 

 彼女はなぜ、救済の光に錬金スキル持ちが入ろうとしていないのか、手に取るようにわかっていた。

 

 

 

 

(このベルンの町に居る錬金スキル持ちは、大体ミクスさんから錬金について教えてもらってる。あの人は錬金についての知識とか、やり方については基本的に隠そうとしていない)

 

 

(勿論。全部を晒してる訳でもないとは思うけど)

 

 

(だとしても、錬金関連の本を買って、それを読んで、再解釈と実験をしてそれについて、新人に教えたりもしていた。そんなの本来なら高額の授業料とったりするものなのに!)

 

 

 

(まぁ、本人も自身の知識や仮説があっているかどうか確認する為には統計を取りたいとか言ってたから、自分のためなんだろうけど)

 

 

 

(そんなミクスさんを追放したとかどうとか、吹聴して周りがそんな場所に入ろうとするわけがないじゃない。ある者は【黄金】の2つ名を持つ錬金スキル持ちが追い出された場所は自分では不相応だと思い)

 

 

(ある者は不義理な救済の光に嫌悪を持ったりしている。まぁ、元々ミクスさん以外は嫌われてたけど)

 

 

 

(あーあ、私もご飯誘おうと思ってたのになー。ふざけやがって、Bランクで錬金スキル持ちでイケメンで高身長で、元貴族なんて超優良物件追放とかしやがって)

 

 

 

(もう、稼げそうな依頼回すのやめよ。そもそもミクスさんに気に入られたいからやってただけだし)

 

 

(まぁ、私の個人的な感情で依頼を回してただけじゃなくて。ギルド側の意向でミクスさんに良い依頼を回してただけなんだけどね)

 

 

 

 

(あの人は多く稼いで、錬金スキルの本とかを高額で買う。その知識や考えを他の錬金スキルを持つ新人に回す、それによって他の錬金スキル持ち冒険者の実力も上がり、それが好循環になる)

 

 

 

(だから、やってたんだけど。まぁ、私が気に入られたいから渡す時は絶対私が依頼を渡してたけど。あーあ、ミクスさんこの町から消えちゃったー)

 

 

 

(ミクスさん、年も近いし。他の冒険者からの評判もいいし。超狙ってたのに……死ね、地獄に落ちろ。救済の光)

 

 

 

 

(あ、そういえばミクスさん今何してるんだろ……シエラさんと一緒かな……。あの子もミクスさんが好きなのは知ってるけど。ミクスさん人気だから、そう簡単にはうまく行かなそうねー)

 

 

 

 

 そんなことを考え、内心で救済の光に中指を立てながらギルド嬢の優雅な仕事の時間は過ぎていった。

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 一方、その頃……同じくベルンの町、町掲示板前には2人の冒険者が佇んでいた。1人はCランクの剣士ともう片方はCランクの錬金スキル使いだ。両者共に男性冒険者であり、年も若く、両者20代であった。

 

 

 

 

「おい、錬金スキル使いを救済の光が募集してるってさ。入ったらどうだ?」

「やめてください。冗談でも入るとか言いたくないです」

「まぁ、そりゃそうだよな」

「あいつら、ミクスさんを見限ったとか言ってますけど、逆でしょ。見限られてたんでしょ」

 

 

 

 

 とあるCランク錬金スキル使いはそうつぶやいた。

 

 

「お前、ミクスさんに以前世話になったんだっけか?」

「はい。超世話になりました」

 

 

 

 彼の頭の中には、錬金術師ミクスと出会った時の記憶が蘇っていた。かつて、彼はEランク冒険者で伸び悩んでいた。

 

 

 錬金スキルと言うのは、比較的に珍しいスキルであるが、珍しさ故に師事をしてくれる者も少ない。また、師事をする者も居るには居るが、高額の授業料を取るスキル使いもいる。

 

 にも関わらず、やり方などについても感覚的な部分もあり、意味をなさない場合もある。

 

 

 

 どうすれば良いのか、悩んでいた時だった。仲間の冒険者にも、聞いてはみたが分かるはずもない。それもそう、彼等は錬金スキルを持っていないのだから。

 

 

 だが、諦め切れず悩みをギルド職員に相談したときであった。

 

 

 

『それでしたら、ミクスさんに聞いてみては?』

『ミクスさんって、Cランクの?』

『はい。この町で1番の錬金スキル使いですね。まぁ、多忙な方ではありますが、無碍にはしない方でもあります』

『え、その、自分お金とか持ってなくて……』

『あぁ、その心配をされる錬金スキル使いの方多いのですが、心配ないですよ。ミクスさん、信じられないかもしれませんが無償で教えてくれます』

『ええ!?』

 

 

 

 彼等がギルド内で丁度、その話をしていた時、

 

 

『すいません。依頼終了しました。承認お願いします』

『あ、ミクスさん。丁度今、お話をしてまして!』

 

 

 

 丁度、良いタイミングで白髪に紅の瞳の男性冒険者が現れた。そう、当時Cランク冒険者であるミクスである。

 

 

 

『実はこの子なのですが──』

『──なるほど、そうなんですね。分かりました』

『はい! お願いします!』

 

 

 

 

 ギルド職員と話し合った後、ミクスは彼に向かって微笑みながら手を出した。

 

 

 

『Cランク冒険者のミクスと申します。いきなりなのですが、自分に出来ることがあれば相談に乗らせて頂きます。この後お時間ありますか?』

 

 

 

 

 最初に抱いたのはなんでこの人、下のランクの冒険者にもこんな丁寧に接するのだろうかと言う疑問だった。

 

 

 しかし、気づけばミクスの手を彼は握り返していた。

 

 

  

 Cランク冒険者ミクスという存在はこの町では当時から有名だったからだ。こんな人から学べるチャンスなど2度とない。

 

 

 

 

『なるほど……ポーションは確率論みたいな所ありますからね。正直、絶対成功は個人的にはあり得ないかと』

『そ、そうなんですね』

『失敗して引きずるのが良くないですね。私もスキル使い始めて半年くらいは1割、調子良くて2割ってとこですね。しかも成功しても質は良くない感じでした』

『そうだったんですね。俺、スキル覚えたの2ヶ月くらい前でして。今成功率が1割くらいだったのですが』

『それ普通ですね。まぁ、個人差もありますけど、大体どの錬金スキル使いの人も同じような確率です』

『……他の人と同じなんですね。あ、えっと、そういうのってどこで分かるんですか? それと、他にも教えてる人がいるんですか?』

『教えてるってほどじゃないですよ。まぁ、この町だと13人、だった気がします。あとは他の町でも、それと情報屋から色々聞いて、本も買って読んで大体そんな統計になったって感じです』

 

 

 

 

 夕暮れ時の居酒屋にて、彼はミクスに誘われて食事を共にしていた。それと同時に彼から錬金スキルについてあれこれ聞いていたのだ。

 

 

 

『そ、そんな重要な情報ってペラペラ話していいんですか?』

『私も、貴方から情報もらってますし。統計がまた信憑性を増しましたね』

『え、えぇ……あ、あの、普通そういうのって高額授業料とか取りませんか?』

『あー、そういうことを仕事にしてる人はいると聞きます。ただ、お金貰ってしまうと中途半端にできないですし。そこまで本気でやろうと思ってないですね』

 

 

 そう言ってミクスは肉を口に運んで、渋い顔をする。

 

 

 

『あんま美味しくないな……臭みがなぁ。おっと失礼、それで他にも聞きたいことがあればどうぞ』

『あ、えと、ポーションの作り方って色々、人によっていうこと違ったりしませんか? 本とかそこまで読めてないのですが、今まで2冊よんで、2冊ともやり方が違いまして』

『そうですね。私も何冊か読みましたけど、大体違いますね。まぁ、大まかには同じですが、細かい部分が違ったり、手順が違ったりですね。個人的におすすめなのが【アンリミテッド・ロスターナ】のレシピですね』

『だ、誰ですか?』

『200年くらい前に活躍していた錬金スキル使いみたいですね。まぁ、あんま有名じゃないですが、この人のレシピは参考になります』

『その人のレシピとか、本って売ってますか?』

『いえ、自分が買ってしまってますし。多分、何冊もあるタイプではないでしょうね。なのでこれレシピどうぞ』

 

 

 

 そう言ってミクスはポーションのレシピが書かれた紙を彼に手渡した。

 

 

 

『え、その、これ、いいんですか?』

『はい。私が買っちゃいましたし。原本は手元に残しておきたいので』

『あ、あのこれ普通お金取りませんか?』

『うーん。私としては……なんかあったら助けてほしいなくらいには。ただ、人間関係って、基本こういうの繰り返しですし。こういう事普段してないと、本当に助けてほしい時に助けてもらえない気もするし。人間関係広げておくのも悪くないですし』

『そ、そうなんでしょうか?』

『それに、このレシピが本当に良いのか、実験も兼ねてますし。私や今までの錬金スキル使いはたまたま良かっただけ。という可能性もあります。本当は1万人くらいで一斉に作ってくれれば楽なんですけどね。真偽はっきりするし』

『は、はぁ? そうですか……』

 

 

 

 

 

 よく分からないうちに彼はミクスからレシピを授かり、そこから時折、アドバイスをされ、季節が過ぎ彼はCランク冒険者になっていた。

 

 

 

 

 

 

 ふと、そんな昔をのことを彼は思い出していた。

 

 

 再び、町の掲示板を見ると、救済の光が錬金スキル使いを募集していると記載されている。

 

 

 それを見て、彼は少し笑った。

 

 

 

「ミクスさんが出ていったとこなんて、誰も行かないですよ。あの人が無理なんて、相当でしょう」

「まぁ、大体の錬金スキル使いはそう思ってるだろうな」

 

 

 

 

 そう言って、2人の冒険者は募集用紙前を通り過ぎた。

 

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