追放ものに転生した。ただし、ざまぁされる側らしい 作:流石ユユシタ
シエラ最強、シエラ最強!!
シエラ最強、シエラ最強、シエラ最強!!!
シエラ最強、シエラ最強、シエラ最強、シエラ最強!!!!
──俺の頭の中にはこれしか無かった。
いや、本当に俺は今回ほぼ何もしてないんだけども。気付いたら魔族が2体とも体全部吹き飛んでいたのだけど。
「はははは。いやいや、君には参ったよ。ミクスくん! あの時の少年がこんなに強くなっているとはねぇ!」
リューゼン家の屋敷。食事をするダイニングのような場所で俺は席について食事を出されていた。
目の前にはユルレ、左斜め前には彼女の父親。そして隣にはシエラが座っている。更に周りには執事やらメイドなどが立っている。
「ははは、娘から少し聞いていたが……ヴァニッシュが魔族であったとは。ワタシは何も怪しい部分はないと思っていたが」
「僕も勘だけど……本当に魔族とは思ってなかったよー。いやー、流石はAランク冒険者のミクス様だね。お父様、この人と結婚してもいいでしょ」
「ワタシとしても、優秀な血統は大歓迎さ。式はいつにしようか」
「僕はさっさとしたいなぁ。ほら、まぁ、良い年齢だし」
この親子はさっさと話を進めてくるのでもう少し落ち着いてほしい。俺は絶対に結婚するつもりはない。
それに彼女が今はいるしね。
「あの、俺は結婚とかはするつもりないのです。それに今は彼女が居ますので」
「ほう、彼女が居るのですか。そちらの方ですか?」
「はい。彼女はシエラと言います」
シエラは無言で頭を下げた。いつもなら、彼女だと大声でアピールをするところだが、今は黙っておくらしい。
「ほう、彼女でしたか。それならば、ワタシの娘と結婚して、愛人として彼女を迎えては?」
「──っ」
シエラが微かにこちらを見た。勿論、そんなつもりはないから安心してくれ。
「申し訳ないのですが、私は愛人として彼女を愛するつもりはないです。それに、そもそも貴族になるつもりもないのです」
「ふーむ、しかしAランク、いやSランクの冒険者を放っておくことも出来ないものですが。それにワタシが声をかけなくてもこれから無限に声が来るでしょう」
その場合は国外逃亡でもしたいけど、それをこの場で言う必要がない。今の所は彼女が居て、ついでに貴族になるつもりもないと告げて断るだけで良い。
「俺は結婚とかは」
「いや、僕としておいた方がいいって。絶対幸せにするから」
いや、軽いんだよ! お前が幸せにするとか言ってもさ。ユルレはそう言うけど、正直信用とかは出来ない。
「僕の家としては優秀な血は大歓迎だぜ」
そうか。歓迎されるのは嬉しいけど、あまり乗り気はしないんだよね。
その後は、断っても永遠に誘われ続けるので疲れた。
シエラが魔族を吹き飛ばした時に穴が空いた壁。澄んだ空気が部屋に入ってきたので、それを感じながら只管に耐えた。
──食事の後は、さっさと帰りたいので家から出た。
家から領地の外までユルレがわざわざ送迎してくれるとのことなので、付いてきた。
「いやーごめんー。僕のお父さん強引で」
「貴方も相当強引でしたよ。私黙ってましたけど、すごーく嫌でした」
「あ、そうなんだ。シエラさん、大人しかったから納得してると思ってたよ」
「そんなわけないでしょ! 私はここで下手なことを言ったら彼氏が迷惑だと思ってニコニコしてただけです!!」
「あ、そうなんだ。黙ってたから納得してると思ったよ」
シエラは先ほどとは変わり、うわぁー、と騒ぎ始めた。流石はシエラ、あそこは俺のことを考えて自身の感情を抑えてくれていたようだ。
「しかし、貴方のお父さん私を見ても特に何も反応してませんでしたね」
「あぁ、我が家は差別主義じゃないからね。見た目なんてどうでもいいんだよ」
「そうですか」
「うん。大事なのは有能かどうか。有能はとことん上に上がるべき、そうでないなら下にいろって言う感じかな」
「それはそれで差別主義では?」
うん、シエラの言う通り。それはそれで差別主義の気がするんだけど。
いや、それはツッコマないでおこうかな。
「僕としては君の野菜とかも有能と思ってるんだよ。魔族の姿を暴いた薬の木の実もシエラさんが作ったわけだし。僕の領地って、最近作物の実りが悪いんだよね」
「はぁ、そうですか」
「だから、一緒に来てよ。愛人ってのは肩書ってことでいいから」
「嫌です。肩書きが大事なんです」
「えー。つれないなー。じゃ、彼氏誘惑しよ」
そう言ってユルレがめっちゃベタベタ触ってくる。ハグしてくるし、顔を胸板に当ててくる。
「おいこら……」
しかし、次の瞬間、ユルレが俺から引き離され、間にシエラが強制的に割り込んでいた。
「は? 速いね……全然見えないんだけど」
「はい、私の彼氏から離れてくださいね」
「えぇー、ちょっとくらい良いじゃん」
「良いわけないでしょ!!」
シエラが硬めのブロックをしているのでユルレが全然近寄れない。ボディガードをされてるってこんな感じの気分なのかな。
「ふん、まぁいいもんね。交易祭でまた会えるからね」
「もう彼氏を会わせたくないですね」
「うーわ、束縛してる」
「貴方みたいな人に会わせたくないので」
うーん。こう言う時に俺はどんな反応をしたら良いのだろうか。とりあえず、黙っておこう。
そんな感じでずっと2人はお話ししてた。
これもう逆に仲が良いのでは?
領地を歩き続けて、そろそろ彼女とはお別れの時がやってきた。リューゼン家の領地ってここくらいまでだよな。
領地の末端となると整備されてないなぁ。
「あ、そうだ。色々言ったけどさ……2人にはちゃんとお礼だけは言わせてほしいな」
「まぁ、良いけど」
「そうですか。お礼だけ言われたらさっさと帰りましょう、ミクスさん」
「おい、2人とももうちょっと反応あるだろ。お礼するって時なんだから」
ユルレが真面目にお礼を言うとは普段の言動を見てると、想像つかない。
しかし、彼女はまさかの真面目な顔つきになった。ほぇ、真面目な顔なんてできるんだ。
アニメの時は何回か見たことあったけど。こっちだと見たことないわ。
あ、ちゃんと凛々しい顔してるわ。
「ミクス様、シエラさん。この度は本当にありがとうございました」
そう言って深々と頭を下げた。こうもかしこまって礼を言われてしまうと少し、むず痒い気分にもなるが、まぁ、お礼は素直に受け取っておこう。
「どういたしまして。取り敢えず、下手な人と結婚しなくてよかったな」
「まぁ、私としても仕方なかっただけです。ミクスさんが手を貸していたので」
シエラがそっぽを向いてるけど、照れてるのがわかる。あんまり感謝とかされたことないって前言ってたし。
ユルレはそんなシエラを見て、少しだけ微笑んだ。
「それじゃ、またね。また会いにいくから」
「おう」
「まぁ、彼氏に手を出さないって約束するなら」
「うん。しないよ。流石に彼女いる男の人に手を出すとかしないよ」
さっきまで抱きついてたりしたけど、それはスルーしておくか。
「あ、ミクス様。そういえば忘れ物あったよ。渡すの忘れてた」
「あ、そうか」
「えっとね」
そう言って、ユルレはポケットに手を差し込んだ。うん、何か忘れ物があったかな。
「あ、忘れ物ね。お礼ね」
──そう言って、ユルレは頬にキスをした
あ……え? 忘れ物ってそう言うこと!? ってか、こいつシエラがそれやったら怒るって分からないのか?
どんなメンタルしてるんだよ。
──次の瞬間、シエラから爆発的な魔力の高まりがあった。
先ほどの魔族など比ではないほどの極限の魔力。嵐や竜巻っていうほどの魔力量。
それに伴い、突風すら発生し飛ばされてしまいそうだ。
──それだけでなく、スキルの効果も漏れ出しているのか。
辺りに果物の木や、野菜がどんどん溢れ出してきた。荒れた土がまるで耕したようにふかふかな感じにもなっている。
お、おいおい、シエラが怒ってるぞ。
「うわぁ、最近、不作だったのにこんなに野菜や果物が……領民が食べれるのが増えて嬉しいな」
こいつ……マジで図太い性格してるよな……。
「私だって、キスくらいします。もう、舌入れるくらいの!!!」
シエラも張り合わないで大丈夫だぞ。
──後に分かったことだが、この領地が不作だったのは……
魔王軍幹部【十二凶】の1人、【魔毒】のソリサ
の毒スキルによって、大地や果物が死んでいっていたかららしい。まぁ、そんなのはシエラの怒り一つで無に帰るどころか、プラスになるんだけど。
ちょっと気付いたが毒のスキルはこのように解除とかもできるから、そこも含めてヴァニッシュはリューゼン家に取りいったのかもしれないな。
まぁ、そこまで詳しく原作小説とか読んでないけど。アニメしか見てないからね。