追放ものに転生した。ただし、ざまぁされる側らしい   作:流石ユユシタ

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第42話 シエラ視点

「あり得ない、あり得ない、あの女」

 

 

 

 

 私は激昂に駆られていました。その理由はあの女が、ユルレがミクスさんの頬にキスをしたから。

 

 

 あの女、私がまだしてない、彼女である私がまだ出来てない事を、彼女である私よりも先に行いました。

 

 

 あり得ないし、めっちゃ腹立つ。

 

 

 

『あ、僕は領地内の探索があるからこれで! それじゃ、またあの宿屋にお邪魔するからねー。それじゃあね、未来のダーリン!』

 

 

 

 何がダーリンだクソ野郎。あの人、私が魔力で威圧しても全然驚きとかがないみたいですし。

 

 最初は驚いていたようなのですが、最近はなんともない感じがあります。

 

 大分図太い人みたいですね。だからこそ、あんまり彼氏には引き合わせたくないですね。

 

 って言うか、人の彼氏にちょっかい出すってどう言う良識のなさですか。それでおいて、結婚したら一緒に住んで良いとか。

 

 

 やはり貴族の感覚なのでしょうか。あくまで欲しいのは優秀な血筋。

 

 特にミクスさんみたいな実力者や才能ある人は他の貴族に囲われるより先に囲んでしまいたいと。それでおいて元貴族で事情とかも理解してますし。

 

 後かっこよくて、良い匂いがして、スキルも特別で、知見にも深い人物を欲しくなるのは当たり前かもしれません。

 

 ミクスさんは私の強さを褒め称えてくれますが、これもミクスさんによる、あのゲロマズい味を改良する腕があってこそです!

 

 ミクスさん抜きでは、あの悪魔を瞬殺どころか、とてつもなく大苦戦していた可能性すら……いや、なぜかわかりませんが、そんな確信があります。

 

 本人が素晴らしいだけではなく、周りも強くしてしまう。

 

 全世界の人が惹かれるのも自然現象かもしれません。

 

 そんな人が私の、か、彼氏……!最高すぎます……。

 

 

──やっぱり、嫌ですね!惹かれるのは1億歩譲っても、私彼女なんですけど!! 形だけでも愛人とかになるのも嫌です!!

 

 

 

 

 

 

 

 領地を出て、宿屋の部屋に帰宅しました。私としては今すぐにミクスさんをキスをしたいくらいです。

 

 

 

「シエラ、悪いな。付き合ってる人が他の異性と仲良くしてるのは嫌だよな」

「い、いえ! あれはミクスさんではなく、ユルレが悪いです!!」

 

 

 

 もう、ユルレさんとか呼ばなくて良いです。ユルレでいいです。ミクスさんは私を気にしてくれてるのか、宿屋に帰ってきたらすぐにそのように言ってくれました。

 

 

 

 

「あ、で、でも、わ、私、彼女なのに他の人とキスするの見て、その対抗心がありまして……」

「あ、そうか」

「……い、いえ、ミクスさんが嫌ならその……」

 

 

 

 あの時は、舌入れたキスするとか言ってしまったけども。でも、いざするってなるとめちゃくちゃ恥ずかしいです。

 

 

 

 

「……嫌じゃない。俺も恋人だって自覚はあるから。だから、しよう。折角したいって言ってくれたしさ」

「え、えぇ!」

 

 

 

 お、おおお!! やった、すっごい嬉しいんですけど!!

 

 

 やったぁ!

 

 

 遂に、好きな人とキスするまで私は来たのですね! な、なんて嬉しいことなのでしょう。

 

 

 ベッドにミクスさんと一緒に横並びになりました。ブラックさんとホワイトちゃんは気を遣っているのか目を伏せています。

 

 

 

 だから、今は2人だけの世界。横には好きな人が居ます。さ、最高すぎてどんな顔をしたら良いのか……

 

 

 

 

 

 

「……」

「あ……」

 

 

 

 

 あ、やばい。多分これキスする流れです。いや、私が望んだ展開なんですけど!!

 

 

 いざくるとなると変に堅苦しくなってしまいます。

 

 

 

 

 

──ミクスさんが優しく肩を持って私と目線を合わせた。

 

 

 

 

 

「……」

「ん……」

 

 

 

 

 

 ゆっくり、唇を重ねた。

 

 

 

 優しい口づけだった。なんだか、体が熱い、目線合わせるのですら恥ずかしい。

 

 

 

「あ、えと」

「大丈夫か? やっぱり早かったか?」

「も、もっと、もっとしたい……です……」

 

 

 

 

 う、うぅ、我ながらなんて欲深いことなんでしょうか。ミクスさんもちょっと恥ずかしい、のか、顔赤いですし。

 

 

 

 

 

「んん……」

 

 

 

 今度は私から、ミクスさんにキスをした。こんな近くで瞳が交差するなんて初めてです。

 

 

 ミクスさんはこんな綺麗な紅い瞳だったんですね。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

「……シエラ、大丈夫か」

 

 

 

 

 

 

 う、うん。どうしましょう。興奮してます。脈が尋常ないほどに速いですし。心臓の鼓動もとんでもなく速いです。

 

 

 

 

 

 

「も、もっと」

「シエラ、一旦、お、落ち着いて」

「は、はい! 落ち着きました! なので、もっかい」

「いや、落ち着いてないな。さっきから腕の力がすごく……」

 

 

 

 

 あ、気づけばミクスさんを逃さないように抱擁がとんでもなく強くなっていたようです。

 

 

 

「それと、スキルなのか? この状況は」

 

 

 

 あ、気づけばミクスさんを逃さないように植物が成長して、逃げられないようにミクスさんの体を覆っていました。

 

 

 まさか、私が意識をしてないうちに、無意識のうちにこんなことになっていたとは。

 

 

 

「い、一旦離してくれるか?」

「……」

「聞こえてる?」

「……にひひ。これなら……私が、私だけの……」

 

 

 

 

 そこまで考えて私はそれ以上を考えるのをやめました。はい、私にとっては都合が良い状況、最高の状況だとは思いましたけど。

 

 

 でも、ミクスさんからしたら急にそんな事されても戸惑うだけです。

 

 

 そもそも折角幸せなカップル関係に慣れているのに、それは壊しかねない。

 

 

 だからこそ、ここは我慢しましょう。本当はしたくないですけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

──ミクスさんを解放して、微かに距離を取った。

 

 

 

 

 

 あれ、少し距離を取っただけで寂しいです。これはあれですか。依存ってやつでしょうか。

 

 

 

 その人が、好きな人が少しでも離れてしまうと落ち着かない。

 

 

 

 なるほど、これが依存。

 

 

 

 

 しかし、これは以前と変わりないですね。今までもそんな感じですし、ミクスさんが死んだら私も死ぬと決めているので今までと変わりないですね。

 

 

 

 

 

 

 

──そして、離れた後、その日はもう夜遅くなっていたので寝ることになりました。

 

 

 

 そして、寝るのでベッドで2人並んで寝ることに……

 

 

 

 まさかの、隣で一緒に寝ることができるなんて!! 最近、私運が良いことしかないんですけど。

 

 

 

 

 最高すぎですね。

 

 

 

 

 一緒に寝ると言うことでミクスさんに抱きつきながら、眠りにつきました。

 

 過去で一番、幸せな眠りでした。

 

 おやすみなさいです。ミクスさん……。

 

 

 

 ーーしかしその夜、私は何度目かの不思議な夢をみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『初めまして。僕はユルレ・リューゼン。良い野菜出してるね』

『……お金が必要でして』

 

 

 

 

 

 

 これはサリアバザーの夢でしょうか。サリアの町の一角、そこで私は1人で商品を売っていますね。

 

 

 恐らく私が出しているのはスキルで作った野菜とかなんでしょうけど。

 

 

 それにユルレが興味を示しているようです。

 

 

 この不思議な夢は毎回ですが、ミクスさんが居ない。いえ、今私が接しているミクスさんが居ないと言っておきます。

 

 

 前に、私がミクスさんを殺す夢を見ましたがあれはミクスさんでははない別の誰かでしたし。

 

 

 

 

 

『へぇ、美味しい。本当に良い野菜とか作ってるじゃん。僕の領地は最近、不作でね。これ、全部買おうかな』

『ま、毎度あり……でも良いんですか? 皆んな、買いませんし。商品を炎で勝手に焼く人も居るくらいと言うか』

『そんなことする人いるんだ。まぁ、僕は良い商品を買う主義なだけだから』

 

 

 

 

 なんて言うか。この人は夢ですが、現実で接するのとあまり印象に差がないですね。

 

 

 

 

 

 

 そして、景色が切り替わり、私は大きな祭が行われている場所に立っていました。

 

 

 ここはどこ? でも、たくさん人が居ますし……

 

 

 

 

『おっす、シエラさん。交易祭にようこそ』

『……え、えぇ』

『あれ、元気ないね。折角他国の王族も来るくらいの祭りなんだから、もっと元気出してって』

『……そうは言いましても。その本当に私が出して良いんでしょうか?』

『良いよ。僕が許可する。君は良い野菜や果物を作ってるのは保証する』

『で、でも、その、私宛に今日出るなって、手紙とかが何通も来てて』

『無視でいいよ。価値がわからない人に何言っても意味ないしさ』

 

 

 

 

 

 そうか、これは交易祭が行われている場所なんですね。だから、こんなに賑わっているし。人もたくさん居るんですか。

 

 

 見たこともない建物とか、大きな塔が見えますが……これが行われる会場?

 

 

 

 

 

 

『あ、あのさ……別に自慢とかじゃないんだけどさ……』

『あ、はい?』

『僕、結婚することになってさ』

『そう、ですか。おめでとうございます……』

『うん……だから、ごめんね。この間、一緒に別の町に旅行に行こうとか話したけど、難しくなりそうなんだ』

 

 

 

 

 ……旅行ですか。どうやら、この夢の中だと私とユルレは大分仲良しのようですね。

 

 

 

『いえ、大丈夫です』

『うん、ごめん……』

『気にしないでください』

『……あの、本当はね…………ごめん、何でもなかった』

 

 

 

 

 

 少しだけ、ユルレが泣いてるように見えたのは気のせいでしょうか。

 

 

 

 

 そして、再び景色が変わりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──全身血だらけで体の原型をとどめていない、死体が大量に転がっていました

 

 

 

 四肢がもがれて、頭だけ、その頭すら砕かれているような、中身が出ているような肉片が転がっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこに、私はホワイトちゃんと立っていて。そして、その立っている場所は今日行った、リューゼン家の食事をした場所にそっくりでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……知らせを聞いて、来てみれば……本当にこんな事態になっていたんですね。ユルレさん……ごめんなさい』

 

 

 

 

 

 

 

 

『私が……気づけたら……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───そんな夢を見ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、どーもー。昨日はありがとね。彼氏にちょっかい出しに来たんだけどさ」

「帰ってくれます?」

 

 

 

 

 

 

 そんな夢を見たんですが、翌日にユルレは普通に宿屋に尋ねてきました。

 

 

 昨日の夢もあって、冷たい対応が少しやりづらいですが。

 

 

 

 

 

「いやね、昨日シエラさんが魔力を爆発させたのか知らないけど、大量に木の実とか野菜がなっててさ。あれは何? すごすぎ。領地だと豊穣の神が何かしてくれたとか話題になっててさ」

「あの、帰ってもらっていいですか?」

「あ、それでさ。ミクス様にも話があってさ。やっぱり婚約しておかない? お父様が気に入っててさ、あと、昨日の魔族の話がかなり話題になっててさ、絶対これから誘いとか面倒になるから。僕と一緒ならそう言うのもスルーできるしさ」

「あの、帰ってください」

「いやね、僕としても正直、ミクス様はタイプだしさ。ご飯も美味しいし、魔族と戦ってる姿もカッコよくて惚れちゃったんだけどね」

 

 

 

 

 

 こいつ、意地でも帰らないつもりですね。まぁ、お茶くらいなら出してあげてもいいですけど。

 

 

 

 

 

 しかし、あの夢は……一体なんだったんでしょう。

 




次回で2章終わりです! ここまで読んでくれてありがとございます!
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