私は怪盗団のストーカー   作:棚木 千波

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沢山見ていただきありがとうございます! 流石はペルソナ5だぁ……。

(最後に追記があります)


#2 遭遇したからには仕方ない

 

「今回の獲物は1つだけだ。気張っていくぞ、オマエラ!」

 

 少し大きいぬいぐるみサイズの黒くて丸い人型物体、もとい本来の姿に戻ったモルガナの号令で怪盗団が城の中へと入っていく。他3人もその顔にそれぞれの仮面を装着しており、姿も各々が持つ反逆の意志を表すモノとなっていた。

 

「……凄い。高巻さん(パンサー)ってホントにスタイルいいなぁ」

 

 そんな彼らを城の門の陰からこっそり見ているのは一人の不審者。もちろん私のことだ。

 

 結論から言うと、イセカイナビ巻き込まれ作戦は一発成功だった。原作でいうと高巻さんが最初に巻き込まれた位置をざっくり割り出し、それでいて彼らに気付かれないように息を潜めてただけだけど。まぁ原作知識ありきだし、彼らに一切の非はないと言える。

 

「……さて、そろそろいいかな」

 

 景色が歪み、認知世界へと移動してから十分程。既に怪盗団の姿はなく、城の前にいるのは私一人になった。

 何となく城の中から喧騒が漏れていることから、怪盗団が警戒度Maxのパレスを駆け抜けているだろうことが想像出来る。さて、そんな城の中に入る前に、だ。

 

「う、うおおおおおお!! ホントにお城になってるぅ〜! ていうかパレスにホントに来れちゃった〜!! やったぁぁぁぁ!!」

 

 起動したカメラアプリのシャッターを切りまくりながら、感激すぎて声を上げる不審者と化した私が一人荒ぶる。勿論、城中には聞こえないようなボリュームで。

 

 だってホントに成功するか不安だったし!! 万が一怪盗団の皆にバレちゃう可能性だってあったから世界が変わっても必死で口元押さえてなきゃだったし!! そろそろ爆発させておかないと私が保たないから!!

 

「……………………よし、行こう」

 

 アルバムをスクロールして写真の出来を確認し終えてから、すんと表情を切り替える。

 パレスへの潜入は完了した。後は彼らの戦いを間近で見届けるべく、決戦の地である王の間を目指して地を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

「…………今のは?」

 

 誰もいなくなったはずの城門前。そんな一部始終を見ていた少女の声だけが最後に響いた。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「来い――アルセーヌ!」

 

「ブッ込め――キャプテン・キッドォ!」

 

「踊れ――カルメン!」

 

 仮面を外し、青い炎が散る。それは困難に立ち向かう為の心の鎧。もう一人の己と言える存在と共に、彼らは怪物と化したパレスの主、シャドウカモシダと渡り合っていた。

 

「ぬおおおおおお!?!?」

 

「ふおおおおおお!!」

 

 しまった、興奮のあまりカモシダと叫びが被っちゃった。まぁちゃんとボリュームは下げてるからいいか。

 

「ペルソナもちゃんと見えるし、皆スタイリッシュに動きまくってて最高〜〜! そうだよね、ゲームじゃないんだもんね〜!」

 

 王の間の巨大な扉の陰から見えるのは、巨大なカモシダの周囲を動き回る怪盗団の面々だ。

 敵も味方も決められた順番通りに行動する原作と違い、当然だが自分だけが動けるターンなんてモノはない。なので全員が動き続けて隙を窺ったり、或いは一網打尽にしようと狙いを定めている。そんな光景を端から見るとどうなるか?

 

「パンサーのペルソナが動いた、あれはアギ……いや範囲が広いからマハラギかも?! そこそこ効いてるけど、あー駄目だすぐ消されちゃったぁ!」

 

「カモシダがバレーボールを――って、スカル今打ち返した?! そんな攻撃は最大の防御みたいなことある?!」

 

「ひゃっ……! 今ジョーカーがナイフでフォークを弾いたよね……!?」

 

「やっぱりペルソナと織り交ぜながら本人も戦うっていうのが熱いんだよね!」

 

 御覧の通り、限界オタクが出来上がる。なんでこれでバレてないのか不思議になるくらいだ。

 そして戦闘がある程度進んだ所で、私は一度その光景に背を向けて休憩を取ることにした。

 

「よしよし、ちゃんと撮れてる! これで家でもまた好きなだけ見返せるってわけだよね!」

 

 まぁ休憩というか、シャッターを切ったスマホのアルバムを確認する時間だったけど。当然バレないようにフラッシュオフ、かつズームとかで狙いを定める余裕もなかったが、案外ピントは合っていたので良しとした。最近のスマホって凄い。

 

「けどこの映像って絶対にバレたらマズい奴だよね。決定的な証拠にもなりかねないし、扱いを徹底して誰にも知られないようにしないとだね!」

 

「お、お前何やってんの?」

 

「ひゅあああああ!?」

 

 決心を固めていた所に突然声をかけられて首を上げると、そこには短めの黒髪男子がいた。生々しいキズをあちこちに散りばめ、どこか光のない瞳で問いかけてきた彼の事を、私は知っている。

 

三島(みしま)、くん? え、なんでここにいるの?!」

 

「いや、それはこっちが聞きたいんだけど。ここにいるって事は、お前もカモシダ様に楯突く仮面連中の仲間?」

 

「え、カモシダ? てか仮面の連中って……あっ」

 

 怪訝そうな顔を向けてくるのは、どう見てもクラスメイトにしてペルソナ5本編の月コープ担当、三島くんだ。けれどその言葉の内容やこのパレスにいると言う事実から、本人ではなくカモシダによる認知存在であると気づいた。マジでぱっと見じゃ分かんないや……。

 

「違う、違うからね! 私はあの怪盗団とは一切関係ないから! むしろ怪盗団に知られたらきっと消されるから!」

 

「それはそれで何してんの? もっとヤバい奴じゃん」

 

「ヤバくないよ! 多分! ……いやきっと!」

 

 ストーカーしてた事以外は正直に答えたのに、なんて言いぐさなの三島くん。

 

「あ、というか三島くん、もしかしてカモシダ……様に呼ばれてる?」

 

「そんなの当たり前だろ? それで中に入ろうとした所でお前がニヤニヤしてたから声をかけたんだ……ってやばい! はやくカモシダ様を手伝いにいかないと!」

 

「ちょちょ、すとーっぷ! まって待って三島くん、いかないで!」

 

 私と話している場合ではないと気づいた三島くんが慌てて王の間に入ろうとするのを、私はすんでの所で引き止めた。しかし当然、三島くんも私の事を必死に振り払おうとしてくる。

 

「ちょ、離せよ! ていうか何でお前が止めるわけ?!」

 

「だって三島くんから私の存在がバレちゃうかもしれないじゃない! いくら私でもクラスメイトと同じ顔をしたあなたを倒したくはないの!」

 

「え、俺ってお前に負ける位弱いと思われてんの?!」

 

 ぎゃあぎゃあと騒ぎながら三島くんを羽交い締めにするが、ギリギリで私の力の方が強いようだった。かつてバスケ部にいた時の貯金が残っていたか、はたまた火事場の馬鹿力と言う奴か。

 どちらにせよこのまま抑えられていれば私の事を知られる事はないし、怪盗団の戦いも多少楽になるはず……いや待って。三島くんの次に現れるのって確か――

 

「ええと、二人とも何やってるの?」

 

「た、助けて鈴井(すずい)! コイツ、多分ヤバい奴なんだ!」

 

「す、鈴井さん?! おお、ホントに凄い格好してる!」

 

 そんな私達の前に現れたのは、女子バレー部に所属する鈴井さんである。しかし現実の彼女は飛び降りをしてしまった後であり、また目の前の鈴井さんは何処ぞの教師の趣味が反映されたバニー姿だ。つまりは彼女も認知存在で間違いない。

 

「あなた、ヤバい奴なの? というかそもそも誰……?」

 

「そうだよね、私と鈴井さんは面識ないもんね!」

 

「なんでもいいから助けてくれ鈴井! コイツがいると、カモシダ様の所に行けないんだよ!」

 

 状況が飲み込めず困惑する鈴井さん、叫ぶ私と三島くん。三人寄った事で更なる混沌が生まれかけたが、それを裂いたのは例の男の声だった。

 

「おい! ボールを上げるだけなのにどれだけ待たせるつもりだ!? オレ様が誰なのか、分かってんのかァ?!」

 

「「っ!」」

 

「マズい、カモシダ怒ってる……!」

 

 王の間から響いてきた怒号に認知存在の二人が焦りの色を見せる。そしてそれは私も同様だった。

 

 いつまでも二人を抑えていられる自信はない。というかこの二人を行かせた所でメリットなんてないのだ。戦う怪盗団的にも、認知存在の二人自身にとっても良くない展開になるだけだし、何より私の存在がバレてしまうという危険がある。

 

 だから、私に出来る事は一つだけだった。

 

 ☆☆☆☆☆

 

 雨宮(あまみや)(れん)にとって、ここに来るまでの全てが波乱に満ちていた。

 

 転校初日から異世界に足を踏み入れてペルソナ能力を手に入れ、そこから始まった鴨志田との因縁の末に怪盗団として戦う事になるまで、穏やかな道のりなんてモノはなかった。

 

 そして現在、パレスの主としてのカモシダと戦う今もまた、気の抜けない状況が続いていた。

 

「――お待たせしました、カモシダ様ぁ!」

 

「遅いぞ全くゥ! これでようやく俺の必殺スパイクを見せてやれるなァ!」

 

「増援か……!」

 

「気をつけろジョーカー! アイツ、何か仕掛けてくるつもりだ!」

 

 厄介だったトロフィーを破壊した後、何処ぞへと声をかけていたカモシダだが、いよいよ次の手が動き出すらしい。

 コードネーム呼びで注意を促すモルガナ――もといモナに従い、蓮も怪盗団のジョーカーとして、その動向に目を向けた。

 

「じゃあさっさとオレ様にトスを……って誰だお前ェ?!」

 

「カモシダ様の忠実な部下です!! 今回は代理で来ました!」

 

「おい、なんだよアイツ……?」

 

「あれもシャドウなの? いやでもあの感じは人っぽくなくない……?」

 

 なんか、黒い兜を被った不審者がそこにいた。

 いや兜自体は今まで戦ったシャドウ達と同じなのだが、その下に着ている秀尽(しゅうじん)学園のジャージとのちぐはぐ感が凄かった。ソイツだけバラエティ番組から飛び出してきたような場違い感と言えばいいだろうか。現にスカルとパンサーも困惑している。

 

「おいお前、代理とはどういう事だ?! オレが呼んだのは――」

 

「鈴井さんは保健室での準備が忙しくて来れないそうです! なので私が代理としてやってきた次第であります!」

 

「え、志帆が?!」

 

「保健室だとォ? そんな指示を出した覚えはないが……ふん、だがそういう事なら仕方ないなァ!」

 

 謎の不審者が出した名前に、親友であるパンサーが驚きを顕わにする。しかし当のカモシダはニヤリと笑ってその報告を受け入れていた。

 つまり本来なら彼女がここに来ていたと言うことになるが、それで何をさせるつもりだったのだろうか。答えの出ない問いに、ジョーカーは首を傾げた。

 

「あと三島くんは逃げました! なのでこの場には私しか来ません。ええもう絶対に!」

 

「チッ、三島の奴はホントに駄目だなぁ! ならこの際お前でもいいから、早く準備をしろ!」

 

「オマエら、他の事を気にしてる暇はないぞ! 構えるんだ!」

 

 謎の不審者によって逸れかけた思考を、モナの鋭い声が引き戻す。

 気付けばどこからか持ってきた巨大なバレーボールをその不審者に構えさせ、少し下がったカモシダが得意げにその狙いを暴露した。

 

「いいか、これがオレ様の必殺スパイクだ! 現役の頃にブイブイ言わせてた、必ず殺すスパイクなんだ!」

 

「っ、全員防御しろ!」

 

 今までの攻撃とは一線を画す何かが来る。カモシダの言葉からそう直感したジョーカーは即座に指示を飛ばすが、当然それを待つカモシダではない。

 

「よいしょっ!」

 

 そんな掛け声と共に兜ジャージがボールを上げ、それに合わせてカモシダが動き出す。

 それはかつてのオリンピックでも通用した、カモシダのとっておき。怪盗団を打ち倒す為に放たれた凶悪な一撃が――

 

「ってなんだこのトスはぁああああ?!」

 

「えっ」

 

 ――ジョーカー達の頭上を掠めていった。スパイクに失敗したカモシダが、べチャリと地に落ちる。

 

「高すぎる癖に無駄に回転つけやがって! そもそも今のフォームはバレーじゃなくてバスケのシュートをする時の奴だろォ?!」

 

「ご、ごめんなさーい!」

 

「……よく分からんが、カモシダの体勢が崩れたぞジョーカー!」

 

「……よし、行くぞ皆!」

 

 どうやらあの兜ジャージが変なトスを上げた事が原因らしい。他にも色々と気になる所はあるが、今がチャンスだというモナの言葉もまた真実。ジョーカーはリーダーとして号令をかけ、隙を見せたカモシダへと総攻撃を開始する。

 

「クソォ! オレ様にこんな事して許されると思ってるのかァ……!?」

 

「カモシダめ、しぶといな……! どうする、ジョーカー?!」

 

「ああ、それなら――」

 

 思わぬ仕掛け処が出来たものの、まだまだカモシダは健在だった。なので次にどうするかを考えようとして、ジョーカーが真っ先に気付いた。

 

 いつの間にか、例の兜ジャージがいなくなっている事に。

 

(総攻撃の間に逃げたのか? しかしカモシダもそれに気付いていないみたいだ。……なら、誰か一人を別行動させてもバレない可能性がある……!)

 

 怒りに我を失っているカモシダを見て、更なる一手を思いつく。結局なんだったアイツという疑問はひとまず棚に上げ、ジョーカーは冷静に口を開いた。

 

「――先にオタカラを奪う!」

 

 ――その後も続いた激動の果てに怪盗団はカモシダを撃破してオタカラを頂戴するのだが、途中に出てきた兜ジャージが何だったのかは、パレスの謎として全員の記憶に残ったのだった。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「……はぁ、はぁ、何とかなったぁ……!」

 

 その声の主は王の間から抜け出し、城の入り口までを走る人影。そしてこの城の元である秀尽学園のジャージを身に纏い、カバンを脇に抱えた上で頭だけ兜を被った不審者。

 

 つまり、変装した私の事である。

 

「ほんっとうに緊張したぁ〜! でもどうにかコレで誤魔化せたよね!」

 

 印象深い最初のダンジョンなのでマップは大体頭に入ってる。なので見張りのシャドウをすり抜けつつ近道を通りながら、先ほど取った作戦の内容を思い出す。

 

「代わりに私が行くって言えば認知存在の二人を納得させられるし、なおかつコレだけ変装してれば私ってバレる事はないはず!」

 

 私と出会ってしまった三島くんと鈴井さんには、あの後適当な言いくるめで場内へと戻ってもらっていた。

 なんせあくまで彼らは認知存在。このパレスの主であるカモシダ様の為だと言えば、ある程度はゴリ押せた。

 

 そして王の間への呼び出しには私が行くという体で説得し、彼らの口から私の存在が漏れないようにしたというわけだ。我が事ながら、呆れるくらいのパワープレイである。

 

「流石に戦いの中に突っ込むのは怖かったけど、シャドウカモシダとか怪盗団を間近で見られたし、結果オーライ!」

 

 勿論不安はあった。シャドウと間違われて攻撃されれば終わりだし、変装も偶々持っていたジャージと近くに落ちてた兜という杜撰なモノ。まぁそちらはバレなければ別の印象を植え付けられるのでいいっちゃいいんだけども。

 

 しかし私は賭けに勝った! 私の正体は恐らくバレてないし、見たいものも見られたから満足なのです!

 本当は決着まで残りたかったけど、流石にパレスの崩壊が始まればペルソナ能力のない私では逃げ切れない。ならばこのタイミングで離脱するのがベストのはず。

 

 そんなわけで兜を捨てても何故か重い身体を引き摺りながらも城の入り口へと到着すると、同時にパレス全体が揺れ始める。

 

「怪盗団の皆がオタカラを取ったんだ。じゃあ私もそろそろ出ないとだね!」

 

 パレスの核である欲望の根源、もといオタカラを怪盗団が奪取した事を察しながら、私はそのままの勢いで入ってきた所へと駆け出した。

 

 例えアプリを持っていなくとも、最初の場所に戻れば現実世界に戻る事が出来る。あとは怪盗団が来る前にその場を離れれば――!

 

「――ひゅあっ?!」

 

「うわっ!」

 

 そうして世界が歪んだ瞬間、何かにぶつかって尻もちをつく私。どうやら元の世界で偶々そこにいた誰かと出現位置が被っていたらしい。

 怪我とかさせてないか、というか突然私が現れたように見えてないよねと心配しながら、その人物の顔を見上げると、そこにあったのは……

 

「……あれ、三島くん? ホンモノ?」

 

「え、ホンモノって何。ていうか、ぶつかってきたのって寺崎?」

 

 さっきも見たやつれ顔の三島くんだった。けれど既に背後に城はなく、広がる青空もここが現実世界である事を示している以上、彼もきっと本物のはず。というかよく見たら認知存在より疲れてるというか、お労しいというか……。

 

「あーうん、ごめんね。ちょっと前見てなくて。三島くん、怪我とかしてない?」

 

「俺は別に……。いや、俺も周りよく見てなかったから、気にしないでよ」

 

 ひとまず謝っておくと、目を逸らしながら答えてくれる三島くん。とりあえず私が突然現れたとは思ってないみたいけど、どうにも心ここにあらずといった様子だった。ええと、確かこの頃の三島くんは……。

 

(……あ、そういえば三島くんも退学を宣告されてたんだっけ?)

 

 軽く思い返してみれば、鴨志田先生が主人公たちに退学を言い渡した場に三島くんもいたような気がする。つまり怪盗団と違ってただ刑の執行を待つしか出来ない身だから、こんな無気力になっているというわけか。

 

「えーと、三島くん。心を強く持ってね! 私がぶつかってきても倒れない位には、ちゃんと地に足ついてるみたいだしさ!」

 

「お、おう……」

 

「よし、それじゃあ私は行くからね! バイバイ!」

 

 どうにか捻り出した励ましの言葉で三島くんの目が更に死んだ所で、私は逃げ出す事にした。

 いや大した事言えなくてゴメンね三島くん! けど鴨志田はもう大丈夫な事をこのタイミングで私が言っても不審すぎるんだもん! どうにか5月まで生きてね三島くん! ファイト!

 

 ☆☆☆☆☆

 

「……なんだったんだ?」

 

 秀尽学園前の路地裏のそばで一人残された三島は、ただそう呟くしか出来なかった。

 

 あの鴨志田に退学を予告されて何も頭に入らなくなっていた彼は、彼女の存在にもぶつかってくるまで気づかなかった。音もなく現れたような気もするが、今の自分ならただ鈍かっただけだろうと、深く考える事はしなかった。

 

 去り際に彼女が言っていた事も同様だ。心を強く持てとか言われたが、今更何をどうしろと言うのか。どうせ自分に出来る事は何もないと、諦めが胸中を占めていた。

 

 あの転入生と坂本は何やら考えがあるみたいだが、鴨志田相手に何が出来るというのだろう。それならまだ残された時間を有用に使った方がマシだろうに――

 

「ハァ、ハァ……きっつ……!」

 

「おい、ナビが……!」

 

「これは……」

 

「――え?」

 

 そうして自分も帰ろうと歩き出した所で、路地裏からまた声がした。まさしく今思い出していた、転入生と坂本の声だった。何故か高巻と猫の鳴き声もするが、気になったのはその会話の中身ではなく。

 

「……あいつら、いつの間に学校から出てきたんだろう?」

 

 ついさっきあの路地裏からクラスメイトの寺崎が出てきたばかりだが、実は最初からいたのだろうか。けどさっきも見た時は確かに誰もいなかったような……。

 

「まぁ、どうでもいいか」

 

 けれどそれ以上を考えようとはせず、きっと自分が見落としただけだろうと結論づけた。

 

 

 

 

 ――この出来事を彼が思い出すのは、翌日になって鴨志田が自宅謹慎を言い出し、予告状と怪盗団が再び噂になってからだった。




☆寺崎叶
  この後二日寝込んだ。ペルソナ無しで異世界を爆走した事とテンションの上がり過ぎが原因。
 
  因みに認知存在を言い包める様子→
『鈴井さん! カモシダ様は保健室で待ってて欲しいって言ってたよ!』
『え? 本当にあの方がそんな事を?』
『本当だよ! 私のこの目が嘘を言ってるように見える?!』
『いや、初対面の相手にそんなことを言われても……』
『とにかくそうした方がカモシダ様も喜ぶって! この先へは私が代わりに行っておくから! ねっ!』
『そ、そこまで言うなら……』
 三島も同様にパッションでゴリ押した。

☆怪盗団のみんな
  正史を知らないので助けられたという意識もない。変な部下がいたなぁ、くらいの認識。

☆三島由輝
  あいつら、鴨志田に何かやったのか? じゃあ、その前に会った寺崎も……?



☆追記
 感想でも指摘していただいた通り、認知世界でカメラのアプリを使った撮影は出来ません。原作でも竜司がそれを試みて失敗するというシーンがあったので、それは間違いありません。
 作者自身が『圏外にはなるがスマホは起動できる=撮影も出来る』という認識でいた為に、こういった描写となりました。なのでこのシーンはおかしいという指摘は合っています。

 ですが『寺崎叶は異世界での撮影が可能である』という事実は変えずに行きます。よろしくお願いいたします。
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