私は怪盗団のストーカー   作:棚木 千波

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(一瞬間違えて投稿してしまったので再投稿しています。お騒がせいたしました)


#22 その邂逅は聞いてない

 

 桐条さんたちシャドウワーカーとの長い話が終わり、日付が変わるまで一時間を切った深夜近く。動けるようにはなっても万全とは言い難い身体を引き摺った私が何をしているかというと。

 

「ごめん……なさい……!」

 

「分かったから顔を上げてくんない?! 絵面が良くないというか、俺の社会性が死ぬからさぁ!?」

 

 クラスメイトの男子の前で土下座を敢行していた。

 

「流石に桐条さん達の前でやるわけにはいかなかったけど、ここなら大丈夫かなって」

 

「いいわけないだろ。いきなり部屋に来たクラスメイトの女子に土下座された俺の気持ちにもなってくれない?」

 

 元々今日は遅くなるという事で、近くのホテルの一室をあてがわれた私たち。家族への連絡も済ませてから謝りに来たのに、むしろ火に油を注ぐ結果になってしまったようだ。

 見切り発車が過ぎたみたいだけど、ここで再会した時からそれくらいはしなきなゃいけないかなと私は思っていたのだ。

 

「じゃあやり直させて貰うけど……。改めて、心配かけた挙句に約束も破っちゃって、本当にごめんなさい」

 

 そう言って頭を下げ直したのは、主にここ数日の私が原因で起こった事についての謝罪だ。直接ではなかったが、三島くんにも色々と不安にさせてしまっていたらしい。

 

「私が異世界に落ちちゃった所為でスマホも全然見られなかったし、戦えない状態で前に出ちゃったしで、言い訳のしようもないです……」

 

「らしいな。いや、本当にまた異世界に行ってるとは思わなかったけどさ」

 

 呆れた顔になる三島くんには私が八十稲羽へ旅行に行く事を事前に伝えていた。なので現地についてから写真の一つでも送ろうと思っていたのだけど、諸々あった所為で今日ここに来るまで全くチャットをチェックしてなかったのだ。連絡は家族の方を優先してたし、車での移動中はアイギスさんに夢中だったのでその分、申し訳なさみも増しているのだった。

 

「それでとうとう寺崎はペルソナを手に入れたんだよな。いつかやるとは思ってたけど」

 

「うっ……。はい、その通りデス……」

 

 そして一人抜け駆けした私を責めるような目になった三島くんに、私はただ目を逸らすしかない。

 八十稲羽の異世界に行けなくなった私じゃもう三島くんを連れていく事は出来ないし、そもそも新たにペルソナ使いになろうとする事を歓迎する人がいない。マリーさんもそうだったし、桐条さんも似た感じの渋い顔になってたからなぁ。

 

「……やっぱり俺も行っとけばよかったかな、八十稲羽」

 

「いや、一度は誘った私が言うのもなんだけど、オススメはしないかなー。結構キツい方だったし、アレ」

 

「え、詳しくは聞いてないけどそんなに大変なのか、やっぱり」

 

「ざっくり言うと自分の恥ずかしい所、見られたくない所を見せられる感じなの」

 

「……逆に分からなくなったけど、まぁそう……なんだな?」

 

 どうにか向き合えた私とて思い出すにも相応の精神力がいるので大まかにしか言わなかったが、三島くんもその辺りを察してくれたようで深く訊いてはこなかった。

 それよりも気になったのは、最初に彼が呟いた言葉の中身だ。

 

「もしかして、シャドウワーカーに接触したのもその為だったりする?」

 

「そりゃ寺崎の事を知ってるのは俺だけなんだから、俺が動かないと駄目だろ。イセカイナビを持ってるのも俺なんだし」

 

「それでハッキングまでしてくれるとは思わなかったけど、そっか。それならありがとうって言わないとだね」

 

「っ……。別に、それだけじゃないけどさ……」

 

 取った手段がどうであれ、原因が私にあるならそう伝えるべきだと思って笑みを作る。

 けれどそれだけじゃ足りなかったのか、三島くんは微妙そうな顔になってそっぽを向いてしまった。ならどうやって埋め合わせをすればいいのかなと思案していると、先に口を開いたのは彼の方だった。

 

「……そういう事なら前から訊きたかった事があるんだけど、それを訊いてもいいか?」

 

「え、うん分かった。まだまだ貸しも沢山あるし、頑張って答えるよ」

 

「じゃあ訊くけど――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「……………………」

 

 何でもないような、それでいて要領を得ないようなその問いかけ。けれどその真意に気付いた私は、ただ目を見開く事しか出来なかった。

 

「――いつから、気づいてたの?」

 

「イセカイナビを手に入れてから少し経った時に偶々な。というか、寺崎も自分で気づいてたのか?」

 

「いや、私の方からは確かめようがなかったけど、シャドウと向き合った時から何となくそんな気はしてたんだ。でもそっか、やっぱりあったかー」

 

 苦笑しながら頬をかく私だけど、覚悟はしていた事だ。何となくは八十稲羽の皆さんにも桐条さん達にも伝えた事だけど、確かにその質問は三島くんにしか出来ないものだろう。イセカイナビを持っている、彼にしか。

 

「それを知ってどうす……いや、ちょっと待ってね。少し準備するから」

 

「え、準備?」

 

「うん。三島くんには迷惑かけっぱなしだから教えることはやぶさかじゃないんだけど、この先もしかするかもしれないからさ。だから悪いんだけど、軽く書けるモノとかない?」

 

 困惑した様子の三島くんから紙とペンを借りると、彼が求めているだろう答えをスラスラと書き記す。そのメモを何回か折って中身を見えなくしてから、三島くんへと手渡した。

 

「多分これがその答えになってると思うんだけど、出来ればギリギリまで見ないで欲しいかも。いや強制はしないけどさ」

 

「ギリギリって、いつまでだよ? というか何を見越してこんな事を……ってそっか、寺崎はこの先に起こる事が分かってるからか」

 

「うん、大体はね。けどそれはあくまで怪盗団の事だけで、私が関わっている辺りは分からないから保険って感じかな」

 

「なるほど、保険ね……。ん? 寺崎が関わってる辺りって、それはどういう?」

 

「うーんとね、三島くんにはその辺りも話したい気がするけど……。ごめん、流石に今日はもう眠いから明日以降でいい? 絶対、絶対に教えるからさ」

 

「そうやって念を押されるとそれはそれでちょっと不安になるけど……まぁそうだな。明日もまだあるんだし」

 

 やや不満げではあるけれど、三島くんも少しは眠気を覚えていたらしい。私が八十稲羽で色々やってた間に彼もアレコレしてたみたいだし、明日もシャドウワーカーの皆さんとの予定が入っている。そろそろ寝ないと明日の私が駄目になりそうなので、そこで引いてくれたのは有り難い限りだった。

 

「じゃあ私も部屋に戻るね。三島くんには迷惑かけっぱなしだから、また何か出来る事があったら言ってよ。私、頑張るからさ」

 

「……お、おう」

 

 そうして何とか話がひと段落した事で、気が抜けた私は欠伸を堪えながらも立ち上がる。

 八十稲羽から始まって最後まで中身たっぷりだった今日を終えるべく、私は部屋のベッド目掛けて最後の移動を始めるのだった。

 

「……なんか最後、目がトロンとしてたな……」

 

 ドアを閉める時に何か聞こえた気がするけど、まぁきっと気のせいだろう。

 

 ☆☆☆

 

「美鶴さん、こちらが寺崎さんの検査結果であります」

 

「ありがとう、アイギス」

 

 思いもよらぬ来訪者を迎え入れた翌日。

 グループでの立場故に多忙な美鶴は別の仕事をこなしていた手を止めて、アイギスから報告用紙の束を受け取った。

 その中身は早朝から桐条グループの研究班が例の少女について調べた結果を纏めたモノであり、大まかな経歴調査と共にペルソナについての分析結果が記されていた。

 

「ここに来て新たなペルソナ使いが現れるとはな。それにアルカナが……『道化師』だと?」

 

 美鶴がまず目に留めたのは、少女に発現したペルソナのアルカナだ。

 

 美鶴が今までに知り合った範囲でのペルソナ使いは、その殆どが『愚者』から『刑死者』までのアルカナに分類が出来ていた。一部の特別なペルソナ使いはその例から漏れていたが、『道化師』もその例外に当てはまる――と思いかけた所で彼女は首を振った。

 

「確か『道化師』は『愚者』の別解釈でもあったか。なら分類的には『愚者』の亜種と見ていいな」

 

「そのようでありますね。一応過去にも近いアルカナを持つペルソナがいたので、そちらに合わせたとの事です」

 

「……()と同じアルカナというだけでも留意すべきだと思うが、まぁいい」

 

 二人の脳裏にとある事件の関係者が想起されるが、今回の彼女もそれに並ぶくらいの曲者かもしれない。そんな不安を覚えながらも美鶴は紙の束をめくっていく。

 

「戦力としてはそこまでの脅威はない……いや待て、なんだこのスキルは」

 

「『天啓の一手』。不意打ちに特化したスキルだそうで、恐らく彼女の『シャルロット』だけが持つスキルではないかと」

 

「……彼女が友好的で良かったな。万が一を思うとぞっとするよ」

 

 本人からの自己申告も含まれた概要を読んで、軽く息をつく美鶴。全く素性が知られてない状態で使われたら為す術なく仕留められるという反則級の技だったからだ。その由来となっているだろう暗殺の天使と呼ばれた女性の逸話からも、その凶悪さは推して知るべしといった所だった。

 

「それと召喚方法についてでしたが、やはり寺崎さんは私たちの召喚器を知っていました。というより、その召喚器を求めて接触しようとしていたそうです」

 

「寺崎くんはペルソナを欲していた。それで八十稲羽へ行く程だから、そう考えるのも自然ではあるな」

 

「なので召喚器を使った召喚もすぐにこなしていましたが、その後に八十稲羽のペルソナ使いと同じ方法での召喚にも成功していました。青いカードを空中に出現させ、腕を薙いで破壊することでもペルソナを呼び出していたであります」

 

「今までのペルソナ使いのハイブリッドとでも言うべきなのか、彼女は。好き放題やってくれているようだな」

 

 自分たちシャドウワーカー、というか特別課外活動部(S.E.E.S)のペルソナ使いと八十稲羽のペルソナ使いとでは召喚方法は異なっている。それは発現方法も場所も違うからであり、それ自体は何もおかしくない。

 

 しかし桐条グループが開発した召喚器を用いた召喚は、八十稲羽のペルソナ使いでも可能である事が実験により判明している。しかしカードを出現させる感覚が八十稲羽のペルソナ使い特有のモノであった為に、その逆は出来なかったのだ。かつてのGWでの事件ではそもそも召喚器がなくても呼び出せた為に困る事がなく、その感覚を培う事が出来なかったというのもあるかもしれないが。

 

「そして最大の違いが、ペルソナ召喚と同時に本人の姿が変化した事であります」

 

「姿が、変化した? どういう事だ」

 

「召喚器での召喚とカードを砕いての召喚を終えてから、彼女が試してみたいと言って黒い目隠しのようなモノを取り出したんです。本人は仮面と言っていましたが」

 

 立ち合いとしてその場にいたアイギスが、その時の様子を思い出すように語り始める。

 

「それを装着した上で召喚すると、寺崎さんの姿がそれまでとは違うモノになりました。私服から、白い修道服のようなモノへと」

 

「白い修道服……それもペルソナ能力の一環というわけか?」

 

 俄かには信じられないが、その目で見たアイギスが嘘を吐く理由もない。もう一枚紙をめくった先に、アイギスが評した通りの姿が写真の中に入り込んでいた。もっとも美鶴の知る一般的な修道女のそれと違い、ミニスカと鎖でコスプレのようにも見えてしまったが。

 

「それ以外には目立った点もなく、力も安定していて暴走の気配もないと来たか。ペルソナ使いとしては、確かに申し分なさそうだな」

 

「それでは、彼女の提案を受け入れるという事ですか?」

 

「そうだな……」

 

 最後に少女の経歴にも目を通してから、検査結果の束を机に置いて思案する。

 彼女のこれまでに不審な点は特にない。普通の一般家庭で生まれ育ち、何かの事件に巻き込まれる事もなく秀尽学園高校に進学した、至って普通の女子高生だ。

 ただし前世の記憶を持っている事が、その全てを覆しているのだが。

 

「……いや、まだ彼女の語る全てを認めることは出来ない。今日の調査次第としよう」

 

「やはり美鶴さんは、新たなペルソナ使いを擁する事には消極的なのですか?」

 

「そこまでは言わないが、まぁ思う所がないと言えば嘘になるな」

 

 アイギスからの問いかけに幾ばくかの本音を添えて答える美鶴だが、もっと正直に言えばあまり乗り気ではなかった。

 

 今回の一件はタルタロスやGWの事件と違って桐条グループに一切の過失はない。なので解決の責務がシャドウワーカーにあるわけではないが、東京で今起こっている事を知ってしまった以上は放置も出来ない。

 

 しかし関わる為の手段や情報の一切をあの二人、というか寺崎叶が握っているという状況があまり良くない。それはそのまま作戦の主導権と同義であるからだ。

 しかし彼女から教えられるまで何も感知出来なかった自分たちから強く出る事もまた難しかった。

 

「ある意味で私たち大人を頼ってくれている、と言えるだけマシかもしれないな」

 

 かつての自分たちがそうだったとしても、未成年の子供を戦わせる事を良しとしたくはない。その為のシャドウワーカーではないのかという思いもあるが、それでいて今回の主役は自分たちではないという諦めもあるにはあった。

 

 認知世界での戦いは、恐らくその怪盗団に与えられた運命のようなモノなのだろう。かつて自分たちがタルタロスで、八十稲羽のペルソナ使いたちがテレビの中で戦ったように、他者には譲れない戦場が人にはあるのだ。

 

 寺崎叶はそこに介入しようとしていたが、力不足だった為にシャドウワーカーと接触した。それは体よく利用されていると見做す事も出来るが、今回の事件の末席を汚せる権利を得られただけでも良しとすべきなのだろう。

 

「では昼からはよろしく頼むぞアイギス。くれぐれも非戦闘員に危害が及ばないようにしながら、私の分も二人を見極めて来てくれ」

 

「了解であります」

 

 それでもあの少女に対して飲み込みきれない所はある。なので軽い溜息と共にそう命令を下すのが美鶴の見出した妥協点だった。

 

 ☆☆☆

 

「……なんか、俺たちの日常に帰ってきた感あるな」

 

「確かに……」

 

 早朝から桐条グループでの検査を済ませてから、私たちは見覚えしかない街こと渋谷へとやって来ていた。私生活的にもゲーム的にも馴染み深い景色を見た三島くんがそう言うのも無理はないと思う。お互いに今まで生きてきたのとは別世界にいたような感覚を昨日まで味わっていたのだし。

 

「こんな人がようさんいる所から異世界へ行けるなんて、流石にまだ慣れへんな」

 

「姉さんの言う通りですね。大抵の場合は人気の無い時間か場所を選んでの突入でしたから」

 

 まぁ、その別世界の住人代表みたいな二人が今日も隣にいるんだけども。

 

 アイギスさんとラビリスさんのロボっ娘姉妹は昨日と同じく正体を隠す為の黒服姿だ。しかし八月の炎天下にはまずいない服装だし、サングラスをしていてもその美女ぶりが漏れているしでまぁ目立っていた。

 

「三島くん、コレ大丈夫かな? さっきからチラチラ見られてるんだけど」

 

「大丈夫じゃないけど、俺とラビリスさんの二人だけだった昨日よりはマシだ。あの時は肩身の狭さが尋常じゃなかったんだからな」

 

 苦い顔で語る三島くんは、昨日もイセカイナビの実証の為にラビリスさんとメメントスへ行っていたらしい。それだけ聞くと羨ましいなと思ったが、彼としてはやっぱり目立って声かけられるし緊張するしで大変だったそうな。

 

「なら二人がまた声をかけられちゃう前に行くしかないね!」

 

「まぁそれしかないか。変に装うよりしれっと消えた方がバレにくいだろうし――」

 

「――あれ、三島か?」

 

「えっ俺?!」

 

 そうして三島くんがスマホを取り出した矢先、声をかけられたのはまさかの彼だった。いやまさかのって言うと失礼かもだけど。

 

「それにそちらは……寺崎さんか。こんにちは」

 

「あ、こちらこそこんにちは……ってあなたは!?」

 

 そして私にも挨拶してくれたのは、黒い天パにメガネでありながら、春先よりも格段に魅力的に見えるクラスメイトだ。

 そして私たちとシャドウワーカーが会っている所を見られたくない存在の第二位でもある、怪盗団のリーダーこと雨宮くんだった。やっばぁ?!

 

「えと、雨宮はどうしてここに?」

 

「渋谷に買い物へ来て、その帰りだ。二人は遊びに来たのか?」

 

「あーうん、そんな感じ! これからカラオケにでも行こうかなって話してた所なの!」

 

「そうなんだよ、折角天気もいいしな!」

 

 私たち二人は焦りつつも、ひとまずこの場は誤魔化そうという事で意思を一つにしていた。なんかこう、実は付き合ってたんだな的な勘違いでもいいから納得してもら……いや待って、雨宮くん今私たちの後ろの方を見なかった?

 

「さっきからあの黒服の二人もこちらを見てるけど、ひょっとして知り合いか?」

 

「「えっ?!」」

 

 め、目ざといな雨宮くん?! 怪盗だから視線には敏感なのか、はたまたサードアイでも使ったのか。どちらにせよこの流れはマズイよ……!

 

「――これは失礼しました。私はアイギスと言いますが、あなたはお二人のご学友でしょうか?」

 

「――ウチはラビリス、よろしくなー」

 

「……雨宮蓮です。同じクラスの友達がいたので声をかけたんですけど、邪魔をしたならすみません」

 

 話を振られたと見た黒服の二人も近づいてきて挨拶してくれたが、それに対して雨宮くんは驚きを一瞬で鎮めた。そしてすぐさま自然な笑みを形成し、初対面の外国美女にも動じずに名乗りを上げてみせたのだ。

 まさかこの男、八月にして器用さや度胸を極めつつあると言うのか?! ならその優しさも発揮して私たちの事はそっとしておいて欲しかったな……!

 

「えーっとだな雨宮。そう、今日は怪チャンのオフ会なんだよ! な、寺崎?!」

 

「えっ、あ、うんそうなの! 掲示板で仲良くなったから会ってみようって話になって、それで今日は集まったんだよね!」

 

「そ、そうなのか」

 

 しかし言い淀んだ末に悪くない言い訳を三島くんがでっち上げたので、私も全力で乗っかる事にした。勢い的にちょっと訝しんでる様子の雨宮くんだが、ここは数で押し切らせてもらう!

 

「そうですよねアイギスさん、ラビリスさん!」

 

「いえ、別に私たちは――ムグッ」

 

「そ、そうやね! そういう事やからよろしくな、雨宮くん!」

 

「は、はい……?」

 

 私の必死のアイコンタクトが伝わったのか、首を横に振ろうとしたアイギスさんを抑えてラビリスさんが相槌を打った。流石に鋭い雨宮くんは違和感こそ抱いているが、こう言えば深掘りはしづらいはず。

 

「そういう訳で、俺たちこれからカラオケなんだよね! なんというか悪いな、雨宮!」

 

「カラオケか……。確かに別の日だったら、一緒に行きたいと言っていたかもしれない」

 

「雨宮くん、今日はもう予定ある感じ?」

 

「ああ。これから四軒茶屋でちょっと」

 

 そう残念そうに言う彼の手には、何やら物が詰まった紙袋があった。渋谷で買い物をしてから四軒茶屋って、もしかして……?

 

「そっか、なら仕方ないな。じゃあ今度どんな感じだったか聞かせてやるよ!」

 

「ああ、楽しみにしておく」

 

 そうやって怪チャンのオフ会で集まったという演技が堂に入ってきた三島くんがいい感じに締めた事で、雨宮くんも立ち去る口実を得たようだった。

 一時はどうなるかと思ったけど、これならアイギスさん達と会っていた事もそんなに違和感なく認識してくれるだろう。そんな安堵と共に息を吐いて――

 

「それじゃあ三島、また今度――」

 

「――あ、いた! アイギス、ラビリスー!」

 

「「えっ?」」

 

 私たちは揃って、その声の方を向いてしまった。

 

 その主は伸ばした水色の髪を一本の三つ編みに纏め、左肩から身体の正面に垂らした大人の女性だ。薄手の白いワンピースに上品さすら漂わせ、ふわりとした笑みを浮かべて近寄ってくるお姉さんに、私たち高校生組の思考は一致した。

 

(((更に増えた、だと……?!)))

 

風花(ふうか)さん、お久しぶりでありますね」

 

「そうだね、アイギス。ラビリスも元気だった?」

 

「ウチの方はバッチリや! そう言う山岸(やまぎし)さんも変わりなさそうやね」

 

「うん、けど少し到着が遅れちゃってごめんね。それで、桐条先輩が言ってたのがこの子たち?」

 

 一方で二人と旧交を温めようとしていたお姉さんが、遅れて気付いたように私たちを見た。既に正体を看破出来た私と、なんだこのお姉さんはと驚く男子二人に向かって、その人はこう言い放った。

 

 

「初めまして、山岸(やまぎし)風花(ふうか)です。桐条先輩からサポートを頼まれた、アイギス達と同じペルソ」

 

「わああお会い出来て光栄です山岸さああああん!! よろしくお願いしまああああす!!」

 

「え、ちょっと?! 近いっていうか勢いっていうか、わわっ!?」

 

 

 この後、事情を知らない山岸さんと知らせたくない雨宮くんを誤魔化すのに滅茶苦茶苦労した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

「なぁレン。さっきのアレ、どう思う?」

 

「ああ、驚いたな。まさか三島があんな人たちと知り合いになってたとは……怪チャン恐るべし」

 

「いや本気で信じてないよな? ミシマとテラサキの慌てっぷり、明らかに怪しかったぜ?」

 

「確かに何かを隠したい事は伝わってきた。けどそれが何なのか、何故隠したいのかは分からなかった。気になるけど、今は無理に暴く必要はない」

 

「……まぁそうか。最後に来たヤマギシって女が言ってた事も途中までしか聞き取れなかったし、あの黒服の二人もどこか他とは違う気がしたが……」

 

「それには同感だけど、今日はこれからフタバパレスで大仕事だ。そろそろ皆もアジトに集まった頃だろうし、今はそっちに集中しよう」

 

「……それもそうだな。よし、じゃあ切り替えていくとするか!」

 

「………………あの三人については、終わってから三島に聞けばいいし」

 

「何か言ったか?」

 

「何も?」

 




☆寺崎叶
 前世暴露系女子高生。諸々の疲れによる眠気は召喚器に触れられると分かった瞬間に吹き飛んだ。
 自覚も覚悟も済ませた後なので、三島くんにあるモノを託している。

☆三島くん
 一番心労が溜まってる人。色々な理由で殆ど寝られなかったが、寺崎の姿が変わった時に眠気がぶっ飛んだ。何なんアレ。
 不眠のタネとなった例のメモは、今も折られたまま彼が持っている。

☆桐条美鶴
 第二の心労枠。思ったより懸念事項が多くて困っている。
 提案に応じるべきだと分かっているが、感情的に迷いを断ち切れていない。
 とりあえず何人かには声をかけた模様。けど返事が来たのが今日だったので二人には言ってなかった。

☆アイギス
 まさか偶々会った友人が噂の怪盗団だとは思っていないので、真面目に答えようとした所を姉に取り押さえられた。なるほどなー?

☆ラビリス
 まさか偶々会った友人が噂の怪盗団だとは思っていないが、妹よりも察し力を発揮した。

☆山岸風花
 彼女は何も悪くない。強いて言うなら間が悪かった。
 この後よく分からないままカラオケルームに連れていかれる事になる哀れな人。

☆雨宮蓮&モルガナ
 八話ぶりに登場した本編の主人公。怪しんではいるものの、三島なので大丈夫だろうと思っている。それはそれとして気になるものは気になる。

 閲覧、評価、誤字報告など誠にありがとうございます! 感想もいただけると嬉しいです!
 ペルソナ召喚に関しては独自解釈入ってます。
 次回予告にいきなり失敗しましたが、次回こそ異世界に行く筈です。よろしくお願いします。
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