私は怪盗団のストーカー   作:棚木 千波

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別にPhantomXにハマっていたわけではないです。ホントです。

でもスマホでペルソナが遊べる時代とは……。


20XX/06
#9 その機会を逃してはならない


 

「なんと……お詫びを申し上げたら……いいかっ……!」

 

 マダラメパレスでの決戦後から数日。正確にはまたもや疲労でダウンした私がどうにか復活してから数日。

 

 怪盗団に歪んだ欲望を頂戴された斑目一流齋が号泣記者会見を開き、怪盗団の存在がより世間に知られるようになった。

 それ自体は原作通りで喜ばしいのだけど、同時に怪盗団が警察やその裏に潜む黒幕にマークされ始める事も意味している。二度目となればまず偶然じゃないからね、そりゃそうだ。

 

 そして一度目が鴨志田先生だった事で秀尽学園の生徒の中に怪盗がいるんじゃないかと思われるのは明白であり、事実この頃から生徒会長による雨宮くんへのストーキングが始まったりする。

 

 あれは微笑ましくもあるが、ほぼ当たりをつけている生徒会長こと新島(にいじま)(まこと)が証拠を掴むためにしていた事だ。言わば90%を100%にする為の一押しというか、そんな感じ。

 

 けどもう一人、この6月頭の段階で怪盗団の正体を知っている奴がいる。というか私たちと同じように、あの異世界で怪盗団を目撃しているであろう人物が。

 

「――失礼。その制服、秀尽の学生さんだよね? ちょっといいかな?」

 

 それが何故か私に話しかけてきた長身の優男だ。

 秀尽学園の行事の一つである社会科見学。例によって怪盗団絡みのイベントを見るために私もテレビ局を希望していたのだけど、その初日の帰り際の廊下で突然声をかけられたのだった。

 

「…………え、は、はいっ?!?!」

 

「ああごめん、驚かせちゃったかな。僕、明智(あけち)吾郎(ごろう)って言うんだけど」

 

「ほ、ほ、ほぁぁぁっ!?!?」

 

 そう、彼こそが二代目探偵王子こと明智くんだ!

 怪盗団を追うフリをして雨宮くんに近づき、うっかり籠絡されてマブダチになっちゃう精神暴走事件の犯人である! 王子様モードも腹黒モードも私は好きです!

 

 けど突然の事にテンパった私はそんな内心ではなく、真っ先に浮かんだ疑問を口にしていた。めっちゃ噛みながら。

 

「たんっ、探偵王子のあけっ、明智さんがっ! なっ、なんのっ、用でっ?!」

 

「いや、キミたちの学校は明日もここのテレビ局の見学なんだろう? その時に収録する番組に僕も出演するから、その挨拶をと思ってね」

 

 うん知ってる。明日の番組収録中に怪盗団に対するスタンスを語り、そして地上波で怪盗ご本人と討論するのを楽しみに私はここに来てるんだから。

 

 でもそれだけで私に話しかけてくるとは考えられない。秀尽学園の生徒だったから偶々声をかけてきた、なんて偶然あるわけないし、原作でも怪盗団のみんなに話しかけてきたのは意図的だったはずだ。

 

 つまりコレ、私の事バレてるんじゃ……?

 

「ごめん、ホントに偶々通りかかっただけだから、そろそろ行かないと。それじゃあ、明日はよろしくね」

 

「は、はいっ……!?」

 

 そんな考えに沈んだ私が混乱と緊張でしどろもどろになっていると、腕時計に目をやった明智くんが手を上げて去っていってしまった。そして残されたのは一人固まったままの私だ。

 

「お待たせ~。時間帯悪くてちょうど混んでてさー……って、どうしたの叶」

 

「あけっ、明智くんが、私のめっ、目の前にっ……!」

 

「明智って……ああ、探偵王子。え、会ったの? マジ?」

 

「マ、マジだよ! なんでか私に話しかけてきてくれたんだって!」

 

「へぇー、さっすがテレビ局。やっぱ芸能人いるんだね」

 

 そんな私の元に戻ってきた友達の反応で、ようやく今のが現実であると飲み込めたのだった。

 だからいつまでも驚いたままではいられない。明智くんは既に私にも気付いているという前提で、この先どう動くかを確認しないといけないのだ。

 

「よし、じゃあ帰りにパンケーキ食べにいかない? なんか今はもうパンケーキの事しか考えられないからさ!」

 

「別にいいけど……なんでパンケーキ?」

 

 私の提案に首を傾げる友達を連れて、テレビ局を出ようと歩き出す。

 その途中で怪盗団の姿を見かけたので、明智くんは彼らとは顔を合わせたのかな?と疑問には思ったけど、まぁそこは原作通りでしょと思って深くは考えなかった。

 

 そして、その答えが出るのは暫く先の事になるのだった。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「というわけで本日のゲストは、高校生探偵として活躍する明智吾郎君です!」

 

「皆さんどうも、明智吾郎です」

 

「わぁー……! やっぱりホンモノだぁ……!」

 

 司会者のフリに合わせて笑顔で挨拶をする明智くん。そんな彼の舞台を客席に座って見る私は、あくまで彼の一ファンとしておかしくない程度の声を上げていた。

 

「うわー、確かにアレは王子様だわ。私も話せるなら話したかったのに、ついてなかったなぁ……」

 

「収録終わった後とかにまだチャンスはあるかもだよ? 諦めるには早いって」

 

「そこまでのガッツはないっていうか、絶対にブロックされるでしょ。むしろなんでフリーの時に話せたのよ叶は」

 

 隣に座る友達とそんな軽口を叩きながら、話題の怪盗団について語る明智くんを見守る私。

 因みに怪盗団のみんなはスタジオから見て正面左側のブロックに座っており、私たちはその反対側の右ブロックだ。なので明智くんに反発する彼らの姿はちょっと見づらいのがちょっとだけ不満だった。

 

 その上で考えているのもまた明智くんの事だ。といっても探偵王子ではなく、その裏の顔についてなんだけど。

 

(明智くんは私の事を知っている。じゃあやっぱり、予告状が出た日にマダラメパレスに来てたって事かな)

 

 昨日接触してきた事から彼が怪盗団だけでなく私にも気付いてるとするなら、恐らく露見したタイミングはそこしかない。私は途中から変装してなかったし、怪盗団にさえバレなければいいと思ってたからそこはいい。

 

 だって人知れず怪盗団を監視していただろう明智くんにもバレないようにする、というのが無理筋な事は最初から分かっていたからだ。原作中でも暗躍していた彼が異世界でどう動いていたかはあまり明かされていないし、そこまで意識すると流石に何も出来なくなるだろうから。

 

(なら昨日の私の反応はどう見られたんだろう……? ううーん、分からない!)

 

 その上で私に接触しにきたのなら、そこにどんな意図があったのか。実際に会って確認したかったのかもしれないけど、あんな限界ファンみたいな反応で何か分かったとは思えない。あれで私の狙いまで見透かされていたら流石に脱帽ものだけど、それについての答えが出ることはなかった。

 

 けれども予想はしてある。

 マダラメから明かされた怪盗団以外の侵入者。そのタイミングで当人(明智くん)以外に黒い仮面をした不審者が現れれば、彼らは何を考えるだろう?

 

(きっと明智くんと黒幕は私の存在も利用する腹づもりで動いてくる、はず)

 

 この段階では明智くんサイドからも敵か味方か分かってないとは思うけど、黒い仮面である以上はそういった考え方に行き着きそうだなと私は思っている。というか三島くんから黒い仮面を受け取った時点で私もそのルートが浮かんだんだから、さもありなんだろう。

 

 すなわち自分たちの利益に繋がるか否か、それを見極めようとしてるんじゃないかなというのが私の予想だった。すぐに消すのか泳がせるのか、そもそもどこまで知っているのか等を探る為に近づいてきたのが昨日の事の真相かなぁと。

 

 だからすぐに私を排除しようとはしてこないはずだ。いくら鋭い彼らでも、まさか私が黒幕一派に関する大体の事を既に識っているとは思うまい。

 まぁ、どれもこれも私の希望的観測が大いに入ってるのは否定出来ないんだけども。

 

(だってこんなに早く来るとは思わなかったんだよ! 流石に怪盗団の方を優先してくると思うじゃん普通!)

 

 でも一番意外だったのは、明智くんがこのタイミングで私に接触してきた事だ。早くても雨宮くんの後についで感覚で来るかなと思ってたら、まさかの怪盗団よりも早いエンカウント。どいつもこいつも不意打ちばっかりしやがって! いや喜びもしたけど!

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、急に来られるとこっちだって心の準備が出来てないというか――)

 

「それではそちらの学生さん、マイクをどうぞ!」

 

「……………………えっ?」

 

 突然やってきた明智くんへの不満に憤慨していた私の所に、何故か差し出されているマイク。何だっけコレ、とりあえず受け取っちゃったけど。

 

「もし怪盗がいるとしたら、彼らの事をどう思いますか?」

 

 そして身に覚えのある笑み(営業用スマイル)と共にそんな事を聞いてくるアナウンサーのお姉さん。

 も、もしかしてこれって原作にもあった質問タイム?! でも雨宮くんじゃなくてなんで私の方なの!? 心の準備が出来てないから不意打ちは止めてと……この人には言ってないね!

 

「え、えと……」

 

 とりあえず何が言わなきゃと頭を回すついでに周囲を見渡す。生暖かい目の友達、ニコニコしたままの明智くん、流れに合わせてこちらを見てくる怪盗団の皆様……ああうん、味方はいないね!

 

「怪盗団は……その、カッコいいと思います」

 

「カッコいい、ですか?」

 

「もし本当に彼らが人の心を盗んでいるのなら、それは怪盗団にしか出来ない事だと思うから、ならそれはカッコいいなって、その、思っちゃってぇ……」

 

 顔の上半分に熱を感じるけど、言い繕う余裕もないので今思った事をそのまま吐露する私。TVカメラの前というよりも、ご本人たちがいる場で言わなきゃいけないのが恥ずい……!

 

「へぇ、カッコいいと来たか。これも中々に面白い見方だね」

 

「怪盗団は法で裁かれるべきだという明智くんとは反対に、彼女も怪盗団をヒーローだと見ている意見だね!」

 

「えっ、あっ」

 

 まずい、明智くんの笑みが少し深くなった気がする。司会者のおじさんも面白がってる雰囲気だし、番組としても美味しい展開になっちゃってないかなコレ?! 私なんかよりも討論に相応しいご本人がすぐ隣にいるんだから、何とかしてパスしないと――!

 

「じゃあそんな彼女にも一つ、訊いてみたい事があるんですが……。もしあなたの身近な人が突然心を変えられたりしたらどう思う? 怪盗団の仕業だとは考えない?」

 

「やりやがったなあけ……っぴろげに! って思う気がします! はい!」

 

「……開けっぴろげ?」

 

 ああああああ?!?! またなんか変なこと口走ってる私ぃ!?

 いやだって怪盗団がそんな事するわけない以上、その場合の犯人は絶対に明智くんじゃん! その時は普通にあなたを恨むと思うよ、うん!

 

「いや、その、心を奪われたら過去の二人みたいに色々と告白し始めると思うから、よくも私の友達を開けっぴろげというか赤裸々にしたなと怒るかなって」

 

「え、私なの?」

 

 突然槍玉に挙げられた友達が、驚きと共に顔を向けてくる。ごめん、誤魔化す為につい咄嗟に出しちゃった。

 

「その上で怪盗団の仕業だとは思わないです! だって彼らが狙うのは悪い事をした人だけで、私の友達はそうじゃないですから!」

 

「え、それも私なの?? ねぇ叶??」

 

 隣の友達から袖を掴まれながらそう言い終えると、何だか周囲が微笑ましいモノを見る目に変わっていた。よく分からないけど誤魔化せたのならヨシ!

 

「つまり君も、どこまでも怪盗団が正義であると言いたいんだね」

 

「えっ」

 

 いや誤魔化せてないかもしれない。

 こちらを見つめる明智くんは依然としてニコニコ笑顔のままだ。先ほどから全く、そう全く変わっていない笑み。私たちの扱う営業用スマイルなんてチャチなものではなく、まさに本心を隠す仮面のようだった。怖い。

 

「でも僕は、彼らの行いの善悪よりも更に大きい問題がある気がするんです」

 

「んん? どういうことだい?」

 

「『人の心をどうやって変えたのか』。つまりそんな力があれば、自白だけに使われるとは限らないと思うんですよ」

 

 そうして私から場の主導権を取り戻した明智くんは怪盗団の持つ力の危険性について語り、今後の捜査に意欲的である事を示した所で番組は終わった。

 けれどその間ずっと視線を感じるような気がして、私は落ち着かなかった。周囲からもまだチラホラ見られているような、何なら怪盗団のみんなからも見られているような……。いや、いつもは私が見ている方だからそこは甘んじて受け入れるべきだね、うん。

 

「アンタ、暴れたね……」

 

「いやいや、今回の私は被害者だと思うんだけど!? 急に話を振られて動転してたというか、その状態で噛まずに言い切っただけでも褒められて然るべきじゃない?」

 

「急にアンタの話に出されて居たたまれない気分になった私こそ被害者だと思うんだけど?」

 

「すみませんでした」

 

 さっきの明智くんとは別の意味で怖い笑みになった友達へ素直に頭を下げる。忘れてたけどこれ地上波で流れる番組であり、あの流れで私とその隣に座ってた友達もばっちりカメラで抜かれていたらしい。そりゃ文句の一つも言いたくなるよね。

 

「ならえっと、今日の帰りに何か奢るから! パンケーキとか!」

 

「それは昨日食べたでしょ……。なら貸しにしとくから、忘れないでよね」

 

 呆れたままではあるが、どうにかそれで納得してくれるらしい。またバイトを頑張る理由が増えてしまった。

 

「――寺崎さん、ちょっといい?」

 

「へ? 雨宮くん?」

 

「叶、友達だったの?」

 

 そんな私たちの元へ、何故か怪盗団のリーダーである雨宮くんがやってきた。教室でも殆ど絡んでいないはずの彼からの接触に、友達が目を丸くする。

 ところで雨宮くんはちゃんと明智くんと話せたんだろうか。私的にはそっちの方が気になります。

 

「さっきの収録について、撮影の許可的な話があるらしい。俺と一緒に来てくれないか?」

 

「ええと、うん分かった。ごめん、ちょっと行ってくるね」

 

「……ん、なら先に行ってるね」

 

 有無を言わさない感じの提案に、私はよく分からないままに頷いていた。同じくよく分かってない友達と別れると、雨宮くんは私をスタジオの裏の廊下の方へと誘導していく。なんだろう、警戒しなきゃいけない気がしてきたな……。

 

「あの、雨宮くん。なんでこんな所まで――」

 

「――それは僕が彼に頼んだからだよ。回りくどくなってごめんね」

 

「…………ほわっ!?」

 

 案内人たる雨宮くんに連れられてきた場所にいたのは、昨日今日と何度も顔を見た男。我らが高校生探偵こと明智くんだった。気づけば雨宮くんに後ろを取られており、挟み撃ちの形になっている。あれ、私これからシバかれるのかな?

 

「昨日も会ったけど、改めて名乗っておくよ。僕は明智吾郎、よろしくね」

 

「えっと、寺崎叶です……。さっきはその、失礼な口を叩いちゃってごめんなさいというか……」

 

「いいや、むしろありがたかったよ。そこの彼もそうだけど、やっぱり対立意見がないと盛り上がらないからね」

 

「まさか寺崎さんも怪盗団のファンだとは思わなかった。驚いてる」

 

 身の危険を感じて腰を低く低くしてたけど、むしろ明智くんと雨宮くんは嬉しそうにしている。なんなんだこの空間。けどまだ痛い方のお礼参りじゃないと決まったわけではないので警戒はしていなきゃ……。

 

「って、雨宮くんも明智くんと知り合いだったの? どこで?」

 

「どこでって、寺崎さんの前に彼にも質問をしていたじゃないか。彼とも君と同じくらい面白い話が出来たって事で、僕から話しかけたんだ。そこからの流れで君にも声を掛けたというわけだよ」

 

 それで幾ら番組で話したとはいえ、有名人である明智くんが直接声を掛けるのは避けた方がいいという事で雨宮くんからの呼び出しになったらしい。よく提案したし了承したね、二人とも。

 

「だから繰り返しにはなるけど、今日は二人ともありがとう。いつもの番組収録かと思ったけど、こんな有意義な出会いがあるとは思わなかったよ」

 

「あっ、うん! 私も最後の方はちょっと楽しかった、です!」

 

 けれどもこうして彼らと話せること自体は私としても嬉しい出来事だ。もちろん必要以上に関わっちゃいけないとは今も思っているけど、今日の流れならそこまで不審でもないからいいかなと。

 

 けど、そこまで朗らかにもなれない人がここにいた。警察から追われる事を明確に宣言された、怪盗団のリーダーである。

 

「でも明智は、怪盗団を追うんだろう?」

 

「うん、そうだね。君たちが怪盗団を肯定するのと同じように、僕は怪盗団を否定している。彼らの力はとても危険なものだ。野放しには出来ないね」

 

 立場の違いに乗じて敵意すら籠ってそうな視線を送る雨宮くんと、それを受けても泰然とした態度を崩そうとしない明智くん。そしてそんな二人に挟まれている私は、ただあうあうするしかない。

 

 既に怪盗は雨宮くんだと知った上で、あくまで興味深い相手として近づこうとしている明智くんと、そんな彼の事をパンケーキ事件によって怪しんでいるであろう雨宮くん。まぁパンケーキの件がなくても怪しむには十分すぎるから納得ではあるんだけども。けども……!

 

(ふ、二人が対峙してるのを、こんな間近で見られるなんて……! 最高すぎる……!)

 

 ペルソナ5を象徴すると言っても過言じゃない(はずの)二人の姿に私は感激ものだった。怪盗と探偵、そして因縁的にも決して相容れないはずだからこそ、その二人から生まれる友情があまりにも良いと言うか……! 絶対に二人のShowTimeも見てやるからな……!

 

「怪盗団はきっとその力に酔っている。だからより強大な存在に狙われでもした時は、呆気なく逃げ出すと思うよ?」

 

「怪盗団は逃げない。彼らなら、きっと戦うはずだ」

 

「へぇ、言うね。やっぱり君は面白いよ。……なら、もう一人にも聞いてみようか」

 

「なるほど。寺崎さんはどう思う? 怪盗団は戦うか、それとも逃げ出すか」

 

「え、そりゃあ勿論戦うでしょ! 力に酔っていたとしても、逃げ出したりなんてしないと思うし!」

 

「勿論ときたか……。二人してそこまで言い切るだなんてね。これは議論のしがいもありそうだし、よければ今後も話を聞かせてくれないかな?」

 

「……あぁ、構わない」

 

 そうして手を差し出してきた明智くんに対して、雨宮くんも手を出しての握手に応じていた。これで雨宮くんの中で正義コープが始まったんだろう。ここまで近くで見られるとは思ってなかったけど、社会科見学でここまで来た甲斐はあったと断言できる光景だった。おかげで途中で訊かれた事にもノリノリで返しちゃうくらいには。

 

「それで、寺崎さんの方はどうかな?」

 

「…………あ、私もなんですか!?」

 

「それこそ勿論、だよ。君たち二人とも、他の人とは違う何かを感じるし」

 

「それも探偵の勘か?」

 

「はは、そういう事にしておこうか」

 

 そしてその手は私にも向けられていた。雨宮くんも不思議に思ってないようだけど、これはちょっと私出しゃばりすぎてない? けどこの空気で断るのも変だし……。

 

「ええと、その。私は怪盗団を応援してるけど、明智くんの事もファンだから! 楽しく話せたらいいなって!」

 

「おっと、そうだったんだ。このタイミングで言われると、ちょっと頷きづらいけどね」

 

「あっ……!」

 

 でも明智くんの連絡先とかプレミアが過ぎるから乗っちゃった! けど確かにその通りだった。今の段階でもストーカーであるとはいえ、不埒者ムーブが過ぎるな私。

 

 その後は互いに連絡先を交換した所でお開き、というか一番多忙である明智君が真っ先に去っていった。いつも最初に帰っちゃうよね、明智くん。

 

「ふぅ……びっくりしちゃったな……」

 

「寺崎さん、少しいいか?」

 

「ふぇっ!? ええと、なんでしょう……?」

 

 なので私も友達を追わなきゃなと思っていた所を、雨宮くんに呼び止められた。まさかここからが真のお礼参りかとびくびくしながら振り返ると、そこにあったのは真面目な顔だった。やっぱりお礼参りなだろうか。

 

「怪盗団について、どうしてそこまで肯定的なんだ?」

 

「肯定的って……明智くんからの質問に対してって事?」

 

 逆に問い返してしまった私だけど、雨宮くんは素直に首を縦に振ってくれた。

 聞けばあの番組の中で私が訊かれる前に雨宮くんもマイクを受け取っていたらしい。考えに耽ってきた私はその場面を見落としてしまったらしくて不覚な事この上なかったけど、それでも同じような発言をした私に興味を持っていたらしい。ここでも墓穴を掘ってるな私。

 

「明智くんにも言ったけど、やっぱりカッコいいからかな。彼らにしか出来ない方法で悪を挫き、彼らなりの正義を貫こうとする姿を見たら、やっぱり応援したくなるんだ」

 

 けどこの場は怪盗である雨宮くんと二人きりなので、もう少しだけ言いたい事を言う事にした。だって訊いてきたのはそっちだし、多分大丈夫……なはず!

 

「鴨志田先生の時も、斑目一流斎さんの時も、きっと心を盗むことで助けられる誰かがいたのかなって私は思ってるから。その為に動ける怪盗団なら、私みたいに惚れ込んだファンがいたっておかしくないでしょう?」

 

「…………」

 

「…………あれ、雨宮くん? 私、変な事言った?」

 

「いや、そんな事は…………ある」

 

「あるの!?」

 

 どこかで見覚えのある顔になった雨宮くんがつい心配になったが、すぐにいつものクールな彼に戻っていた。そしてまたもや変な事を言う人判定を食らってしまった。解せない。

 

「……やべ、友達からメッセ来た。じゃあ私もそろそろ行くね!」

 

「ああ。また学校で」

 

 そして何となく気まずいと言うか、いづらくなった雰囲気を壊したのは私のスマホに届いた通知の音だった。痺れを切らした上にこれ以上貸しを増やすのもまずいと思った私は、今度こそ雨宮くんと別れて駆け出す事にする。

 けどその直前に振り返って最後の挨拶を済ませることにした。予告とも言うかもしれないけど。

 

「うん、また会おうね!」

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「アケチって奴の勘というか洞察力も油断ならねえと思ってたが、近くにこんな見どころのある奴がいたなんてな……! テラサキだったな。その顔覚えたぜ!」

 

「ご機嫌だな、モルガナ」

 

「そりゃあんな子にあれだけ言われたらな。ファンの期待に応えてやるのも、一流としての役目だ!」

 

「まぁそれは……そうかもしれない」




☆寺崎叶
 明智エンカウントと契機に現実でもハッちゃけた人。
 なんか地上波デビューしたがビジュアル的には杏殿に一歩譲る感じなので声かけられたりはしない。というかその隣の友達の照れ顔の方が可愛いと話題になっていた。この後ヤケ酒ならぬヤケスタバを奢る羽目になった。

☆明智くん
 ワンターンツーキルを達成した人。二人ともテレビ局に来てるとかラッキーだね!
 雨宮連はともかく寺崎叶はなんだんだコイツと訝しんでいる。未知との遭遇。
 このエンカウントが今後どう影響するのかは、彼もまだ知らない。

☆雨宮連と怪盗団ご一行
 リーダーのクラスメイトからめちゃ応援されてる事を知ってそれなりに嬉しかった。
 ちょっと揺らいでいた時期でもあったので、また奮起する為の助けになったとかならなかったとか。
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