活気溢れるオラリオ。その中でも特に異彩を放つ建物、映画館
そんな場所を前に立ち尽くす女性だけの一団。彼女達は【アルテミス・ファミリア】
普段はオラリオの外で活動している彼女達だが今回は団員のレベルアップと外での調査の報告の為オラリオに来ていた
報告が終わり息抜きと再び外に出る準備も兼ねて街を散策していた時、映画館を見付けたのだがオラリオの外で活動する彼女達にはそれがどんな物なのか見当も着かなかった
「前来た時こんな物ありませんでしたよね?アルテミス様」
「ああ、ここは一体…………」
「取り敢えず入ってみません?冒険者だけじゃなくて一般の人も皆普通に入ってるし危険は無いと思いますよ?」
「…………………………そうだな。ただし危険を感じたら即座に撤退する」
「分かりました」
そう言い一団は映画館の中に入る。中は見たこともない灯りと飾りを一面に施され見たこともない程精巧に作られた絵画が並んでいた
「凄い…………」
「見て下さいアルテミス様!!この床すごく柔らかいです!!」
「此方の壁はサラサラしてる。木でも鉄でもない。何で出来てるんだろう?」
初めて見る光景に戸惑っていると紳士服を着た初老の男が姿を現す
「いらっしゃいませ」
男は笑顔で一礼するとアルテミスが声を上げる
「君は何者だ?」
「失礼致しました。私、当映画館のマネージャーをしております。ヤマモト・タダシと申します」
「えいがかん………………それは何だ?」
「映画館は映画と呼ばれる娯楽品を見ていただく為の施設です」
「映画と言うのは?」
「それは実際に観ていただいた方が早いかと思います」
タダシの言葉に【アルテミス・ファミリア】の面々は顔を見合せコソコソと何かを話す
「取り敢えずその映画と言うのを観せてもらいたい」
「かしこまりました。映画を観るに当たって私の方から施設のご説明をさせて頂く事も出来ます」
「…………では、お願いしよう」
「かしこまりました。まず、映画を観る方法ですが、此方の方で観たい映画のチケットを買って頂き指定のシアタールームの指定の席に座って頂きます」
「それだけ?」
「はい、映画の見方は以上になります。そして映画をよりお楽しみ頂く施設として軽食販売のコーナーもご用意しております」
「軽食?」
タダシの指す先に視線を移す
「いらっしゃいませ~!!映画のお供にお菓子とジュースはいかがですか!!」
「ふむ、どんな物が売ってるんだ?」
「一番人気はポップコーンです!!トウモロコシを元にしたお菓子で色んな種類の味があります」
「そうか、ではそのポップコーンと言うのを貰おう」
「はい!!フレーバーとサイズはいかがしましょう?」
「フレーバー?サイズ?」
「はい、塩・キャラメル・カレー・コンソメ・期間限定の5種類がございます。サイズは大きい方からXL・L・M・Sがございます」
「では、一番大きいのを3つ貰おう。飲み物も果実水を一番大きいサイズで人数分頼む」
「かしこまりました~。少々お待ち下さい」
「では、待っている間に映画を決めましょう」
「どんな物があるんだ?」
「様々ございます。【ホラー】【アクション】【ファンタジー】に【SF】他にも多数存在します。お客様はどの様な映画をご所望でしょう?」
「はい!!アルテミス様に恋を教える様な映画をお願いします!!」
「あ!!それ良いね!!それでお願いします」
「お、お前達⁉」
「かしこまりました。それでしたら此方の作品はいかがでしょう?」
タダシはそう言ってファイルを取り出すと【アルテミス・ファミリア】の面々に見せる
「【ロミオとジュリエット】?」
「はい、此方はとある不釣り合いな家柄の男女が恋に落ちるラブロマンスとなっております」
「ラブロマンス!!」
「そうそう!!そう言うの!!」
「ラブロマンス………………下らないな」
「そうですか?此方はなかなか人気のある作品なのですが」
「すいません。アルテミス様は恋愛アンチなんて言われてまして」
「そうでしたか。では恋愛要素は控えめな物が良いですね。でしたら此方はいかがでしょう?」
タダシはそう言って別のファイルを取り出す
「【君の膵臓を食べたい】?物騒な題名だな」
「確かにそうかもしれませんが。此方はなかなかに奥ゆかしく尊い作品となっております」
「…………………………」
アルテミスは何とも言い難い顔で眷族達にチケットを握らされシアタールームに向かう、途中軽食販売員から注文した品物を受け取り席に座る
映画泥棒を経て本編が始まる
とある少年が同じ年の少女が難病を患っていると知ってしまった事を切っ掛けに彼女と共に過ごす事になった
普通とは違う少女の普通の生活に振り回されながら少年は彼女との生活を楽しいと感じていた
しかしある日彼女は少年と待ち合わせしている時に通り魔に襲われ亡くなってしまった
その後、少年は大人になり教師として自身がかつて学び少女と共に過ごした学校で教師となり少女の遺産を長い時をかけて見付けた
「いかがでしたでしょうか?」
「ああ、何ともやりきれない気持ちになりながら何処か美しい話だったよ」
アルテミスは何処か悲しそうにタダシにそう返した
「此方は書籍がございます。宜しければお貸ししますよ」
タダシはそう言いアルテミスに本を差し出しアルテミスはそれを受け取った
「……………………ありがとう。読み終わったら返すよ」
アルテミスはそう言い眷族と共に映画館を後にし後日オラリオからも姿を消した
その後、アルテミスが本を返しに来ることは永遠に無かった
因みにアルテミスの狩猟の神としての面を切り取るなら【クレイヴン】を観せる予定でした