タダシと斉藤鈴は蝋燭の間から出ると転生者居住区の中の一室に入る
「どうぞ此方を着てお座り下さい」
タダシは鈴にそう言い鈴は言われた通り服を着て座るとタダシは暖かい緑茶を注いだ湯飲みを置く
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ。それでは先程の話の続きをしましょうか」
「は、はい。映画館のスタッフって」
「はい、我々は地球での死後、神に頼み込み地球とは異なる世界で映画館を始める事になりました。しかし最近では客足が増え人手が足りなくなり貴女を採用したのです」
「それで私も映画館のスタッフに?」
「はい、映画はお嫌いでしたか?」
「と言うより、殆ど観た経験が無いんです。私の生まれた家は凄く貧乏で両親は共働き。私の下に7才離れた弟が居たんですけど。私が面倒見てた位で………………」
「ふむ、しかし貴女は映画に興味がある。違いますか?」
「え?」
「貴女を採用したのは確かに私ですが。死んだ人間なら誰でも彼でも採用出来る訳では無いのです。幾つか条件がありその中の1つが【映画好きしか雇えない】と言う物なのです」
「……………………確かに私は映画が好きでした。予告を観るだけでも、友達から話を聞くだけでも私の夢は膨らんで行きました。そしてそれは今も変わらない」
ユラユラと揺れる緑茶の湯気を見ながら鈴は続ける
「だから、私をここで働かせて下さい!!」
「かしこまりました。それでは貴女は今日から映画館物品販売員サイトウ・スズさんです」
「はい!!よろしくお願いします!!」
「それでは明日から仕事をして貰います。今日はこの部屋でゆっくりお休みください。生活に必要な物は全て揃えております」
タダシはそう言い部屋を出るとサイトウはベットで眠りについた
翌日 映画館開館前
「と言う訳で、研修生のサイトウ・スズさんです」
「よ、よろしくお願いします」
「宜しくね!!女の子が増えて嬉しいな!!」
「………………………………宜しく」
タダシがミユとリュウセイにスズを紹介する。スズの服はミユと同じ映画館の制服だがその胸には【研修中】の名札が付いていた
「それではサイトウさんの仕事場と仕事を説明します。サイトウさんには此方の物品販売コーナーで映画館限定品を販売していただきます」
「は、はい」
「難しく考える必要はありません。コンビニやスーパーと同じ様に物を売れば良いのです。何か分からない事があったら私に聞いて下さい」
「が、頑張ります」
「それでは開館します」
タダシがそう言うと映画館に大勢が雪崩れ込んでくる。リュウセイとミユは何時もの様に客を捌いていく
「わぁ~凄い」
スズはテキパキと捌いていく2人を見て尊敬の念を向ける
「…………………………あの」
2人の働きぶりに感心しているといつの間にか綺麗な金髪の少女が目の前にいた
「ひ、ひゃい」
突然の事に驚き変な返事をしてしまう
「ここは何?」
「こ、ここは映画館限定品を販売するコーナーになります………………」
「限定品?」
「ひゃ、ひゃい」
「…………………………【マトリックス】の物はある?」
「【マトリックス】ですか?えっと。【マトリックス】は此方の【ネオなりきりセット】と【スミスなりきりセット】と言うのがあります」
「ネオの方を」
「か、かしこまりました。800ヴァリスになります」
「……………………ありがとう。貴女新しい人?」
「は、はい!!新人のサイトウ・スズと言います!!今日から宜しくお願いします」
「うん、私はアイズ・ヴァレンシュタイン。宜しく」
少女はそう言うと映画館から去っていった
「…………………………アイズ・ヴァレンシュタイン?」
その名前にスズは頭に疑問符を浮かべながらその日を終えた