太陽が燦々と輝くある晴れた日、普段は行列が出来る程大勢の人がごった返す映画館だが今日は雨でもないと言うのに人が殆ど居なかった
「………………………………」
タダシはその原因となる2人組のアマゾネスと対峙していた。一人はアマゾネス特有のスラッとした高い背と美しい容姿をしていたがもう片方はとても美しいとは言えない醜いヒキガエルの様な姿をしていた
「営業妨害は止めて頂きたいものです」
2人の客ではない人物に心中穏やかではないタダシはそれを顔に出さず2人にそう告げる
「悪かったね、そんなつもりは無いんだ。私はアイシャ、【イシュタル・ファミリア】の者だ。うちの主神様があんた達が目障りらしくてね。うちの傘下に入るかでなければ………………これ以上は何も言わなくても分かるだろう?」
「成る程、そう言うことでございますか。しかし私はイシュタル様にお会いしたことがございません。お互いの事を知らずにいきなり傘下に入れと言われましても困ります。なので後日改めてイシュタル様に映画を観て頂きその際にお返事をしたいと思います。これでも人…………失礼。神を観る目は確かな物と自負しておりますので」
「ゲゲゲゲゲゲ!!あんたらに提案する権利は無いんだよ!!」
「フリュネ止めな!!」
「うるさいよ不細工!!」
「兎に角、責任者同士直接話をしなければ始まりません。なのでそう言った話をするならばイシュタル様ご本人に直接来て頂くようご説明願えますか?」
「…………………………分かったよ。伝えておく」
「宜しくお願い致します」
タダシはそう言い一礼すると2人のアマゾネスは去っていった
翌日
イシュタルはフリュネを連れ現れた
「貴様がマネージャーとやらか?私を呼び出すとは言い度胸だ」
「お褒めに与り光栄にこざいます。本日はイシュタル様に当施設の説明と映画を観て頂きたくお呼びしました。お望みの話を致しましょう」
その言葉にイシュタルは気分を良くしタダシの説明を受け映画を観る
「本日イシュタル様にお勧めするのは此方の作品になります」
タダシはそう言いファイルを取り出し中を見せる
「【累】?」
「はい、此方はまさにイシュタル様にピッタリの作品となっております。美の女神であるイシュタル様に」
イシュタルはその映画を観るため飲み物とポップコーンを買い席に座る
映画泥棒が終わり本編が始まるとイシュタルはその話を一言一句聞き逃さない様にと集中する
話の内容は顔が醜いと罵られ虐められる少女と美しい容姿を持つ少女がある日容姿が入れ替わる不思議な口紅を手に入れた事で始まる美しさと醜さとは何かを描いた物
「いかがでしたでしょうか?」
「ふん、つまらん話だった。こんな物この者達がたまたまこうだっただけだろう」
「……………………そうでございますか。では、例の話なのですが」
「ッ!!ああ、私の傘下に入れ。そうすればお前の欲しい物を全て与えてやる」
「では、返答ですが……………………お前ごときが2度と我らが聖域に足を踏み入れるな」
「なっ⁉貴様……………………何と言う言い草だ!!」
「この話を観て多少は心を入れ替え謙虚になるかと思ったが。貴女の視聴後の対応は寧ろ横暴そのもの。何より自身の権威を振りかざせば全てが手に入ると思っている」
「この!!フリュネ!!この男を我が本拠に連行しろ!!」
「ゲゲゲゲゲゲ!!やっと出番かい?」
イシュタルの隣に座っていたヒキガエルの様なアマゾネス、フリュネが体を解しながらタダシの前に立つ
「うちの主神様を怒らせた事を呪うんだね」
フリュネはそう言い拳を繰り出すとタダシはその拳を受け止めた。フリュネは拳を引こうとするがピクリとも動かない
「どうしたフリュネ!!怪力しか脳の無い貴様が負けることは許さんぞ!!」
タダシはフリュネの腕に手を置き力を込めながら何時もの笑顔から鋭い怒りの表情に顔を変える
「当館での暴力行為は等しく粛清される」
タダシがそう言うとモニターに再び映像が流れる。そこには先程の累が口紅を塗るシーンが描かれ塗り終わると此方に向かってキスをしようとしていた
次第に顔が近付き唇がゆっくり接近すると画面から飛び出しゆっくりとイシュタルに向かっていった
「ま、まさか、止め……」
その先を観ていたイシュタルはキスから逃れようと席をたとうとするが金縛りにあった様に動けない
「や、止め、止めろおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
チュッ♡
と累がキスをするとイシュタルの顔が累に変わり口から耳元に掛けて大きな傷が現れイシュタルの顔となった累は満足した様に映画の中へ戻っていく。しかし途中で動きを止めイシュタルの顔でニヤリと笑うとその手でフリュネを掴む
「や、止めな!!離しな!!離せえええええええええ!!」
フリュネはそんな叫びを上げながら映画の中に取り込まれる。映像が戻り画面を観るとそこには累を演じ続けるフリュネの姿と画面の端でその演技を観て笑うイシュタル顔の累の姿があった
「顔っ!!私の顔!!私の顔を返せ!!返せええええええええええええ!!」
戻っていった累を追う様にイシュタルはモニターに縋りつきそう叫ぶが累が画面の向こうから出てくる事は無かった
「貴女への罰は美の象徴たるその顔を奪う事の様ですね。永遠に」
「うわああああああああああああああ!!」
イシュタルはその場で泣き崩れタダシはその叫びを背にその場を離れた
後日、イシュタルは自らの本拠の屋上から飛び降り天界へ帰った
「愚かな事です。彼女に張り付いた顔の正体は呪いでも魔法でもなく罰。罰から逃れる術は無いと言うのに」
天界
「何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!!!」
イシュタルは天界に帰った後も自身の神殿でナイフを片手に泣き叫んでいた。辺りには顔の皮膚が無数に散らばり顔の傷は神の力により再生され再び顔の皮を剥ぐと言う愚かな行為を永遠に続けたと言う
映画館での罰
映画館での決まりを守らなかった者に与えられる。一見タダシが行っている様に見えるが実際はタダシにもどんな罰が下るか分からない。イシュタルは相当な怒りを買い自身の象徴であり最も大切な物【美貌】を失った。その期間は永遠。つまり終わり無き罰が与えられそれは天界に帰っても逃れる事は出来ない
次回は元【イシュタル・ファミリア】のムッツリ狐人が映画を観る話