オラリオで映画館を運営する転生者達の話   作:寝心地

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第37話

世界の中心オラリオ、そんな謳い文句で知られる場所には光もあれば影もある。そしてその影に潜む悪を見逃さない為に存在する複数の組織の中でも有名な1つが【ガネーシャ・ファミリア】だろう

 

男神ガネーシャを主神とした一団はまさに正義の象徴となり民衆を温かく照らしている。そんな彼らを纏め上げるのが【象神の杖(アンクーシャ)】ことシャクティ・ヴァルマだろう

 

彼女は毎日繰り返される犯罪に辟易していた

 

「団長お疲れですね」

 

「ああ、最近は少しずつ犯罪も増えてきているからな」

 

話し掛けてきた団員に返答し溜め息をつくと団員に息抜きを提案される

 

「そうだ!!映画でも見てきてはいかがですか?」

 

「映画?ああ、前から噂になっている新しい娯楽か。そう言えば行こう行こうと思っても行く機会が無かったな」

 

「でしょう?折角ですから行ってきたらどうですか?」

 

「しかし仕事が……」

 

「大丈夫です。此方で調整しておきますから」

 

「…………………………分かった。映画館に居るから何かあったら使いを寄越してくれ」

 

シャクティは部下の言葉に押され映画館に向かった

 

映画館につくとシャクティは見事な絵や見たこともない壁の材質に驚く

 

「話には聞いていたが予想以上だな」

 

「いらっしゃいませ」

 

周りを見ていると紳士服を着た初老の男が一礼する

 

「ああ、シャクティ・ヴァルマと言う。映画を観たいんだが」

 

「ご丁寧にありがとうございます。私当映画館のマネージャーをしております。ヤマモト・タダシと申します。お客様は当施設のご利用は初めてと認識しておりますが間違い無いでしょうか?」

 

「あ、ああ」

 

「では、私の方で施設の説明を致しますが?」

 

「ではお願いしよう」

 

「かしこまりました」

 

タダシはそう言うとシャクティに一から丁寧に施設を説明していく

 

「以上が当映画館の説明となります」

 

「分かった。では早速映画を観たいのだが」

 

「では、映画をお選び下さい」

 

「そうだな……………………何か適当に見繕ってくれ」

 

「…………失礼ですが、お客様は【ガネーシャ・ファミリア】のシャクティ・ヴァルマ様では?」

 

「そうだが?」

 

「ではお客様に見せる作品は此方ですね」

 

タダシはそう言うと一冊のファイルを取り出す

 

「【ウォッチメン】?」

 

「はい、此方はお客様にピッタリの作品となっております」

 

「………………ではそれにしよう」

 

「ありがとうございます」

 

シャクティはそう言うとチケットとチーズバーガーセットを買い席に座る

 

映画泥棒が終わり本編が始まると様々なヒーローの成り立ち等が始まり【キーン条約】によって自警活動が禁止された事を知る。そんな中【コメディアン】と言う曽てのヒーローが何者かに襲われ殺されると言う事件が発生し主人公【ロールシャッハ】が事件を調査していく

 

彼はシャクティ以上に犯罪者に容赦が無かったが事件を調査していく中で【ロールシャッハ】は罠にかかり警察に捕まりその正体と【ロールシャッハ】になった原因が明かされる

 

『ロールシャッハの事を知りたいか?だったら教えてやろう。誘拐事件を調査していた。被害者はブレア・ロッシュ、6歳の女の子だ。当時俺は若く犯罪者に甘かった。殺さなかった。男の腕を折って女の子の居場所を聞き出した。少女がいた形跡はあった。だが家中探しても居なかった。その後見つけた』

 

【ロールシャッハ】が窓の外を見ると2匹の犬が骨を奪い合っていた。その骨の片方の先端には小さな靴がついていた

 

『フレッド!!バーニー!!パパに吠えてるのはどっちだ?』

 

『夕方、犯人が戻ってきた。辺りは暗くなっていた』

 

男は家の異変を感じ武器を構えながらゆっくりと中を調べる。途中死んだ犬が男に向かって投げ込まれ窓を突き破り男は発狂し【ロールシャッハ】は男を暖炉に繋ぐ。喚く男に向かって少女の遺品を投げつける

 

『俺が女の子と関係あるってか⁉見付けたんだ!!俺がやったって言う証拠でもあんのか⁉』

 

男がそう喚くと【ロールシャッハ】はライトを付け犬の死体に向ける。男は諦めた様に言葉を続けた

 

『分かった。白状するよ。あの子を拐って殺した。逮捕しろ。ほら、逮捕しろって!!俺がやったって言ってんだろ!!』

 

しかし【ロールシャッハ】の手に握られたのは手錠ではなく男が少女を切り刻んだであろう鉈だった

 

『頼むよ。俺さイカレてんだ助けがいる。警察に連れてってくれ助けがいる。おい止めろ止めろ!!警察に連れてけって!!止めろ!!止めろ!!!』

 

それが男の最後の言葉となった

 

『この、獣め!!殺されて当然だ!!』

 

【ロールシャッハ】はそう言うと男の頭がグチャグチャになるまで鉈を振り下ろし続けた

 

『衝撃で腕が震えた。俺の顔に血が飛び散った。俺の中のウォルター・コバックスはあの晩少女と共に死んだ。完全に【ロールシャッハ】となった。あの子を殺したのは神じゃない。あの子を切り刻んで犬に食わせたのも運命なんかじゃない。神はあの晩の出来事に気付きもしなかった。俺は悟った。こんな世界を作ったのは神じゃない。人間だ』

 

その後、ウォルター・コバックスは曽ての仲間に助けられ刑務所から脱獄しヒーロー狩りの犯人が世界で最も頭の良いヒーローだった男【オジマンディアス】であると言うことを突き止め全員で南極に向かい彼を止めようとするが既に彼の企みは達成され【ロールシャッハ】はそれを世間に知らせるため南極を出ようとするがそこに最も神に近い男【Dr.マンハッタン】が立ち塞がった

 

『そこを退け。世間に知らせる』

 

『…………させるわけにはいかない』

 

『突然人間性が芽生えたか?都合が良いな』

 

【ロールシャッハ】はそう言うとマスクを脱ぎウォルター・コバックスとなり言葉を続ける

 

『もっと早くに芽生えてりゃこんなことにはならなかった』

 

『………………私は何でも変えられる。だが人の本質だけは………………』

 

『お前は新たな理想郷を守らなきゃな。もう1つ死体が増えたって同じだろ?』

 

『…………………………』

 

『ほら何を躊躇ってる?』

 

『……………………』

 

『やれよ』

 

『…………』

 

『やれええええええええ!!!!』

 

【Dr.マンハッタン】が軽く手を振ると【ロールシャッハ】は跡形も無く消し飛んだ

 

その後、【Dr.マンハッタン】は命に価値を見出だしたと言い残し地球を去った。【ロールシャッハ】の親友だったダニエルは怒りに任せ【オジマンディアス】を殴る

 

『ダニエル。世界は平和になった。犠牲は付き物だ』

 

『いいや!!人間を理想化したつもりだろうがお前は歪めた!!骨抜きにした!!お前の功績だ!!』

 

そうして残されたメンバーは新たな生活に戻った

 

一方とある新聞社では視聴者からの手紙からでもネタを見付け出せ!!と罵られた記者が【ロールシャッハ】の残した手帳を見付けた所で話は終わった

 

「いかがでした?」

 

シャクティが隣を見るとタダシが座っており映画の感想をシャクティに尋ねてくる

 

「ああ、中々に興味深かった。特に彼の信念【絶対に妥協しない】と言うのは共感しかない。7年前を知る者は特にそうだろうな」

 

シャクティはそう言うと何処か懐かしむ様にモニターを眺めていた

 

「………………………………この」

 

「はい?」

 

「この男は私を現している様だ」

 

「そうでしょうか?私は普段の貴女を知りませんので何とも言えません」

 

「そうだな。私も7年前妹を失った。あの娘は人を傷付ける事を嫌っていた。だからと言うべきか、【闇派閥(イヴィルス)】に唆された子供の自爆に巻き込まれ死んだ。だから私は……………………いや、忘れてくれ。貴方の言う通り私にピッタリの作品だった」

 

「ありがとうございます。またのご利用お待ちしております」

 

タダシはそう言うとシャクティに一礼しシアタールームを後にした

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