冒険者達に愛用される酒場【豊穣の女主人】
そんな酒場で働くエルフリュー・リオンはこの日暇を貰い映画館に来ていた
シルにつれてこられて以来来たことが無かった場所に足を踏み入れると以前の様にタダシが出迎える
「いらっしゃいませ」
「どうも、映画を観たいのですが?」
「はい、本日はどの様な映画をお求めでしょう?」
「私はあまり詳しくは無いのでお任せします」
「かしこまりました。タナカ君、4番シアターの席のチケットを」
「分かりました」
タダシに名前を呼ばれたリュウセイは言われた通りのチケットを発行しリューに渡す
リューはチケットを受け取ると指定の席に座る
始まったのはとある道化の話
仕事場では使えないと罵られ街で宣伝すれば不良に看板を奪われ壊され自分も叩きのめされる
仕事場から帰ってきても寝たきりの母の介護に追われる日々
更に自身も感情の起伏で笑うと言う疾患を抱えていた
そんな彼はある日そんな疾患が災いしとある不良に絡まれ彼らを殺してしまう
それからトイレに逃げ込みそこでタガが外れた様に笑い踊った
更に彼を今まで塵の様に扱ってきたサーカスのリーダーを殺し母を殺しその街の犯罪の象徴となった
そんな中、彼は憧れていたとある番組に呼ばれる。出演に際し彼は1つお願いをした
『僕の事を【JOKER】と紹介してくれますか?』
そうして彼は望み通り【JOKER】として番組に出演し電車での3人組の話をする
『電車での3人は僕が殺した』
『………………成る程、それでオチは?』
『無いよ、これは冗談なんかじゃない』
『君があの3人を殺したと?どうやって信じろと?』
『失うものが無いからさ。もう誰にも傷つけられない、僕の人生は喜劇だ』
『彼らを殺した事が喜劇だって?』
『ああ、もう演技はうんざりだ、【コメディーは主観的】だよねマレー?皆も分かってるよね?』
『……………………何かのシンボルにでもなりたいのか?』
『止めてよマレー、ピエロがシンボルになれると思う?彼らは死ぬ程音痴だから死んで貰っただけだ』
会場から非難の声が上がる
『ああ~!! 何で皆あんな奴らに同情するんだ?僕が道端で死にかけていても踏みつけて通る癖に、僕の事なんか誰も気付かない。でもあの3人は違う、トーマス・ウェインがテレビで悲しんでくれたからだ』
『彼と何かあったの?』
『ああ、なぁスタジオの外に出たことがあるかマレー?誰もが大声で怒鳴りあって罵りあってる。礼儀も思いやりもない!!誰一人として他人の事を気にかけたりなんてしない、ウェインの様な奴らが僕みたいな人間の気持ちを考えるか?あり得ないね!!こう思うだけさ「良いかお前らは、黙って大人しくしていれば良いんだ!!お前らは狼みたいには生きられない!!」って』
『それで?君は結局自分を憐れんで殺人の理由をあれこれ並べてるだけだろう!!皆が皆最低って訳じゃないんだぞ』
『……………………あんたは最低だ』
『私が?何処が?』
『僕の映像を流して、この番組に呼んだ。笑い者にするために、奴らと同じだ』
『私の事など知らないくせに、自分のしたことを考えろ、それが引き金になって暴動が起こった。2人の警官は重傷だ、君のせいで今日も殺人が起こっている』
『そうだね♪……………………もう1つジョークはどうだい?』
『お前のジョークはもううんざりだ』
『まぁ聞けって、「心を病んで孤独で社会に見捨てられ塵みたいに扱われた男を欺くとどうなるか」分かるか!!今教えてやる!!報いを受けろこの糞野郎!!』
彼はそう言うと内ポケットから銃を取り出し引き金を引く
『ハハ、ハハハハハハハハwwwww』
彼は笑い警察に捕まるが暴動を起こす者の1人に助け出され暴動が起こる夜の街で血で笑顔を描き車の上で踊り終わる
「いかがでしたでしょう?」
「何故、私にこれを?」
「貴女なら彼の気持ちが分かるのではと思いまして」
「……………………確かに、彼には苦労や痛みを共有・肩代わりしてくれる人が居なかった。私の様に向こうから手を差し伸べてくれる人も」
「私が思うに彼は【無理解】が産み出したヴィランです」
「…………………無理解、その発想はありませんでした」
「???」
「敵は敵、そうとしか思っていませんでした。何故そうなったのか、何故そんなことをしているのか、考えた事ありませんでした」
「では、これからは考えてみてはいかがでしょう?」
「…………………そんな機会、私にはもう……」
「何があるか分かりません、それが人生です。特にエルフは寿命が長いそうですし」
「…………………………そうですね、今日はありがとうございました」
「はい、またお待ちしております」
リューはそう言うと映画館を出て【豊穣の女主人】に戻った