オラリオで映画館を運営する転生者達の話   作:寝心地

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第65話

          光を見た

 

灰色に汚れた、鈍い鉄の輝きを

 

          光を見た

 

誰よりも弱く、誰よりも泥臭く、そして誰よりも強い

 

灰と鉄の輝きを

 

彼が決して世界を救う事はないだろう。

 

彼が何かを変える事はないだろう。

 

けれど、この目には

 

彼こそがこの場にいる唯一の英雄に映った

 

「っっ!!」

 

英雄願望(スキル)】の引鉄(トリガー)、思い浮かべる憧憬は【小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)

 

幾千数多の小鬼を屠り、そして最後の1匹まで討ち続けるだろう、たった1つを極めし異端の戦士

 

出会う筈の無かった1人の英雄を瞳に焼き付け、全ての力をその身に装填する

 

分かっている。彼は英雄では無い、勇者ではない、冒険者の1人に過ぎない

 

何時か画面の向こうから見ていた【笑顔を守る戦士(クウガ)】でも

 

何時か正義とは何かを考えさせられた【木の実を纏った戦士(鎧武)】でも

 

何時か命とは何かを考えさせられた【命を守る戦士(エグゼイド)】でもない

 

「ベル・クラネル!!」

 

何処からか飛んできた大剣を掴みゴブリンスレイヤーに背を向ける

 

「ゴブリン……スレイヤーさん」

 

「ああ」

 

「背中、お願いします」

 

「分かった、やれるか?」

 

「はい!行きます!!」

 

「ああ、行け!!」

 

英雄に背を押されベル・クラネルは龍に向かって突き進む

 

「あああああああああああああああああ!!!!」

 

龍を光が包みその身を滅ぼしベルはその場に倒れ込む、それをゴブリンスレイヤーは受け止める

 

「………………すいません」

 

「いや、良くやった」

 

「ゴブリンスレイヤーさん…………英雄みたいでした」

 

「…………いや、俺はゴブリンスレイヤーだ、英雄ではない、だが」

 

「お前は、龍殺しの英雄(ドラゴンスレイヤー)だ。ベル・クラネル」

 


 

四方世界を統べるのは、宿命と偶然の賽子。その出目は、神様にだって分かりません

 

それでは、冒険者達の冒険とは?それもやっぱり、宿命と偶然に左右されます。

 

けれどいるのです。彼等の中には決して、賽子を振らせようとしない者が、そしているのです。彼等の中には

 

どんなに悪い出目でも、目も当てられない様な目でも、希望に変えてしまう者が

 

神々は、そんな彼等のことを、あるいは英雄と、そう呼ぶのでしょう

 

「な~んて感じの締めくくりでどう?」

 

神殿内、幻想の神のそんな声が響く

 

「普通に喋れるなら最初からそうしなさいよ」

 

「フレイヤちゃんが何を言ってるのか分からないな~、いやぁ、でも良い冒険だった、此方の彼も君の所の彼もどっちも頑張って割とエグい難易度のダンジョンをクリアしたし!!英雄願望(アルゴノォト)凄かったよね!!良いなぁ、うちああ言う神業みたいなの無いからなぁ」

 

「そう」

 

「あ、そうだ!!ゲームも終わったしフレイヤちゃんの世界の映画館って所に行きたいなぁ~、ポップコーンにコーラにチーズバーガー♪聞いただけでお腹が空いちゃう名前だよね~♪」

 

「貴女、それらは映画を楽しむ一端でしか無いって理解してる?」

 

「してるよ~。さぁ、空気の読めない真実が来る前に行こう!!」

 

幻想はそう言うとフレイヤの手を引っ張りオラリオの街を駆け抜け映画館に向かった

 

映画館

 

「お、お帰り~遅かったなフレイヤ、その隣のかわい子ちゃんは誰や?」

 

そこには映画を見終わりグッタリとした入団希望者だった者達の山とそれを見ながらケラケラと笑うロキがいた

 

「そう言えば入団テストの途中だったの忘れてたわ」

 

フレイヤの言葉が止めとなり入団希望者だった者達は泣きながらオラリオを後にしたと言う

 

尚、幻想の神は【13日の金曜日】がお気に入りになったとか

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