「………………ッチ」
どんよりと暗い曇り空の下を1人の青年が不機嫌そうに歩く
その頭には狼の様な耳があり鋭い視線と牙が覗く
彼の名前はベート・ローガ、【凶狼】の2つ名を持つロキ・ファミリアの実力者だ
そんな彼は現在団長フィンによって暇を出され本拠に帰れないと言う状況に陥っていた
そんなベートは行く宛も無くブラブラと道を歩く
酒でも飲んで忘れようと道を進んでいるとふとその建物が目に入る
その建物の名前は映画館、映画と言う新しい娯楽を産み出しあっという間にオラリオの住人の心を掴んだ施設だ
(…………そういや、フィンや
ベートはどうせ暇だしなと己に言い聞かせ中に入る
「いらっしゃいませ」
中では紳士服を着た初老の男が立ちベートに一礼してくる
「テメェがここのマネージャーとか言う奴か?」
「はい、仰る通り当映画館のマネージャーをしております。ヤマモト・タダシと申します」
「………………そうかよ、それよりここはそれなりに面白れぇ場所って聞いたんだが?」
「ええ、お客様にも楽しんでいただける場所だと自負しております」
「ハッ!!面白れぇ、それなら楽しませて貰おうじゃねぇか」
「畏まりました。では、お客様は当施設は初めてのご利用と思いますが、当施設の説明はいかが致しましょうか?」
「雑魚どもがワイワイ騒いでたのを聞いてるから知ってる、まずは見る映画を選ぶんだろ?」
「はい、では、お客様はどの様な映画をお求めでしょうか?」
「………………詳しくねぇから何でも良い、適当にそっちで決めてくれ」
「かしこまりました」
ベートはそう言うとチケットを買い軽食販売コーナーに向かう
「いらっしゃいませ~ご注文お伺いします!!」
ミユが満面の笑顔でそう言うとベートはメニューに目を通す
「………………ハンバーガーセットのLサイズを2つくれ」
「はい!!お飲み物とサイドメニューお選び下さい」
「………………グレープジュースとバニラシェイクってのとポテトを2つくれ」
「はぁい、少々お待ち下さい」
テキパキと注文の品を作りミユは出来た品をベートに渡す
ベートは品物を受け取ると席に座り映画が始まるのを待つ
始まったのは1人の学生が虐められる日々を送る
そんな日々のある日、少年の前に1人の男が現れ少年の傷を治すためある施設に連れてくる
そこで少年が出会ったのはボクシングと呼ばれる格闘技の練習施設
少年はボクシングに心を奪われその男にこう問い掛けた
『強いって、一体どんな気持ちですか?』
「………………ああ、全くどんな気持ち何だろうなぁ」
ベートは少年の問いに思わずそう呟く
少年は努力を積み重ね様々な技を身に付け強くなっていく
その姿があの日見たミノタウロスに立ち向かう兎の様な冒険者にどうしても重なって見えた
少年は努力の末新人王に輝きその名声をその国中に知らしめた所で話は終わった
「いかがでしたでしょうか?」
突然声が聞こえ振り返るとそこにはタダシがいた
「て、テメェ何時からそこに!?」
「ふむ、20分程前でしょうか?それでいかがでしたでしょうか?」
「ああ、まぁまぁ楽しませて貰ったよ、コイツなんて名前だったか?」
「作品名は【はじめの一歩】そしてその主人公の名前こそ【幕ノ内一歩】です」
「…………一歩、一歩か」
ベートは立ち上がり一歩の名前を呟きながら映画館を後にした