シトシトと静かな小雨が降る中、一人の男が歩いていた
冒険者の中でもかなり恵まれた体格をしておりその背中には巨大な大剣を背負っている
彼の名前はオッタル、オラリオ、否、世界最強の冒険者Lv.7であり【猛者】の名を関する者
彼は今日、フレイヤを虜にする映画を観に向かっていた
理由は何と言う事はない、フレイヤの護衛をしていた時フレイヤの振った話題に着いて行けず彼女を落胆させてしまった
フレイヤの振った話題はただ1つ
『オッタル、貴方の好きな映画はなに?』
と言う物だった、そんな簡単な問いにオッタルはまともに答える事が出来なかった
故に、オッタルはフレイヤの最近の話題に答えられる様に初めて自らの意志で映画館に向かった
「……………………???」
中に入り暫く待つがタダシが来ることはない、それでも少し待っていると礼服を着た男が寄ってくる
「いらっしゃいませ」
「ああ、映画を…………お前は」
言葉を続けようとした時、オッタルは首を傾げる。目の前の男は以前より若々しく服装も若干違う、良く見ると以前チケット売場にいた青年だった
「どうも、えっと、マネージャー代理兼チケット販売員、タナカ・リュウセイです、宜しく」
そう言って一礼するリュウセイはやはり着慣れない服なのかネクタイを緩める
「何時ものマネージャーはどうした?」
「休暇です。あの人映画好き過ぎて此方が適度に外に出さないと何時までも仕事してるんですよ。だから今日は俺がマネージャー代理です」
「そうか、取り敢えず映画を観せてくれ」
「畏まりました、お客様はどの様な映画をお求めでしょうか?」
「俺に相応しい映画を……」
「はぁ、となるとバトルものですかね」
「うむ」
「となると…………此方は無しか………………じゃあこれで」
リュウセイはそう言うとオッタルにファイルを渡す
「【終末のワルキューレ】?」
「この作品は神と人間が1対1で戦う話です。それも天界で十全に力を発揮できる状態の神です」
「全力の神と人間が?」
「はい」
「……………………折角だ、観てみよう」
「あ!!武器はお預かりします、他のお客様のご迷惑となるかもしれませんので」
オッタルは渋渋大剣を預けチケットと軽食を買い席に座る
映画は人類を滅ぼそうとする神々に対抗し戦乙女達に選ばれた13の戦士が戦うと言うもの
オッタルは彼らの戦いに魅入られていく
1回戦、トール対呂布
2人の力対力の戦いにオッタルはゾクゾクとした物を感じる
互いに好敵手と呼べる存在が羨ましかった
2回戦、アダム対ゼウス
2人の父としての戦いもオッタルの心を昂らせる物だった、此方の作品も素晴らしかったがゼウスが違う意味で変態だったのはとてつもない不快感だった
三回戦、ポセイドン対佐々木小次郎
神として全ての戦いに勝利してきたポセイドンと常に敗北から学び強くなった【史上最強の敗者】
孤高を貫くポセイドンと人類の研鑽を背負い戦う佐々木小次郎の勝利で終わった
全ての戦いが素晴らしかった、全ての戦いに惚れ込んだ、断言できる、これは間違いなく俺の好きな映画だ
オッタルは気付くと笑っていた彼らの闘争を思い起こして
彼らの誇りを思い出して
彼はその足で女神の元へ帰る事はせずダンジョンに籠ったと言う
明日と明後日は他作品の執筆があるのでお休みします