ちょっと遅刻したけど誤差という事で!セーフ!セーフです!
朝方トレーナーの所にチョコを私に来たステイゴールド!
「ハッピー、バレンタイン。よっトレーナー」
「あはは、どうしたんだステゴ」
朝方、インターホンが鳴り響き重いまぶたを擦りながら玄関を開けるとソコには担当ウマ娘──ステイゴールドが居た。
2月14日、世が甘い恋に浮かれるバレンタイン。恋人が居ない俺にとっては美味しいチョコが食べれる休日程度だった筈だが、思わぬ客の来訪だ。
「とりあえず、上がってもいいか?」
「いいけど、どうしたんだこんな時間に」
「言ったろ、ハッピーバレンタインって。親愛なるトレーナーにチョコのプレゼントさ」
そう言いながらニタニタと、揶揄うのが楽しいと言わんばかりの笑顔でチョコ菓子を渡してきた。
「ありがとうステゴ」
「あぁ、生憎と手作りしてる暇無かったから有り合わせだがな」
「けどコレ、東京の有名な所のチョコだろ?嬉しいよ」
「……そっか」
ステゴは旅に出ていた筈だ、きっと日本に戻ってチョコの甘い空気感でバレンタインが近い事を思い出したのだろう。
「それにしても」
「ん?」
「……寝巻きのアンタはちょっとレアだな、なんかおかしいや」
「ステゴがこんな時間に来たからじゃないか、俺朝食もまだだったんだぞ」
「おっと、こいつは失礼」
そう謝りながらも楽しそうに笑うステゴを見て、怒る気も不満も吹っ飛んでしまった。
「ステゴは朝飯は?」
「いんや、まだだよ」
「分かった、ついでに用意するよ」
「ありがとう」
「いいよ、けど文句は聞かねぇからな」
「アンタの飯は毎度美味いからな、その心配はしたこと無いね」
「ソイツはサンキュっと」
俺はグリルに鮭の切り身をふた切れ入れ、味噌汁の鍋を温める。その間に卵を割り混ぜ、そのままフライパンに入れ卵焼きを作る。
「すー……いい匂いだな」
「もう少しだからもちっと待っててくれな」
そうしてほかほかの白米に焼きジャケ、卵焼きと味噌汁にきゅうりの浅漬けという豪華朝食が並んだ。
「おー!ザッ日本の朝食!って感じだな」
「まぁね、こういうのが良いんだよね」
「朝食に随分と力入れてるんだな、実は凝り性だったり」
「いや、そういう訳じゃないんだ。ただ……」
「ただ、どうしたんだ?」
「いや、自分でも変だなって思ってはいるんだが……ステゴがそろそろ帰ってくるかもなって思って」
「──ッ」
「そう思うと、日本食も久しぶりだろうし何か思いっきり日本食ッて感じのやつを用意したいなって」
「そっか…………」
我ながらおかしな話だが、そういう予感がした。思えば自分の生活の中で一体どれだけ、〝ステゴ以外の事〟を考える時間があったかと考え込む程彼女は俺にとってかけがえのないものになっていた。
「ん?どうしたステゴ俯いて、飯が口に合わなかったか?」
「いいや、とっても美味しいよ」
「そうか?なら良かった」
朝食を終え、先程貰ったチョコとホットミルクを用意した。
「んっ美味いなこのチョコ、最近チョコ自体食ってなかったがコイツはイイな」
「あれ、アンタ甘いもの好きじゃなかったか?」
「最近はコンビニのシュークリームにハマっててね、普通サイズとプチシューの詰め合わせが手軽に買えて助かってる」
「ふふっそうか」
たわいない会話を続けていると、ステゴが〝そろそろおいとまするよ〟と帰り支度を始めた。
「ホワイトデー期待してるからね、トレーナー」
「出来れば傍に居てくれてたりすると助かる」
「ソレは保証しかねるね、旅するかどうかは思いのままだからね」
「分かったよ、その時はまた見つけるさ。いつもみたいに」
「ふふふっ待ってるよ」
ステゴは玄関の扉を開けるが、そこで何かを思い出したかのように振り返った。
「そうそう、言い忘れてたけど……トレーナー」
「なに?」
「さっきの、アレ本命だから。そこんとこよろしくな」
そう言ってダダダっとウマ娘特有の強い走り音を鳴らし、彼女は去っていった。
「……ってえ!ちょステゴ!?」
慌てて扉を開けるも既に彼女の姿は無く、先程言われた言葉を脳内で反芻し思わず手で顔を覆ってしまう。
「はぁ、どうするか……どうしよっか」
俺は何時だって、彼女に振り回される運命なようだ。