トレーナー室、そこにノックと共に来客が入室してきた。
「ただいまトレーナー」
「おかえりステゴ」
ステイゴールド、俺の担当ウマ娘だ。趣味の旅をよくしており、今回もその旅の帰りだ。
「そんじゃま、早速で悪いけど何時もの頼むよトレーナー」
「分かったよ、おいでステゴ」
俺は仕事机から席を立ち、ソファでステゴを手招きする。
ステゴは俺の股の間の隙間に座り、俺も背もたれに体を預ける。
「じゃあするね」
「おう」
俺はステゴの耳飾りを丁寧に外し、ステゴの両耳を両の手で被せる。最初は被せるだけ、徐々に力を入れグリグリ、ぐぐぐっと手のひらで圧する。
「んっ……んぅ、はぁ」
「どうかな、ステゴ」
「あぁ、すごくおちつく……」
「それは良かった、もうちょいする?」
「たのむ」
「了解」
そのまま俺はステゴの耳をマッサージしていた、このマッサージは確かに疲労回復やコリのほぐし等を出来るようにしている。だけど、その本質は〝耳を塞ぐ事による緊張感のリセット〟にある。
以前なんでコレを好むのか聞いた所──
『そうだな、もちろんアンタが良いマッサージをしてくれるのもあるが、一番はアンタに耳を塞がれるのが落くからだな』
『耳を?なんでだ』
『私たちは種族柄耳が良いもんだろ?ソレは確かに良いもんだし、旅すがらコレで身を守ってる。けれど、使うのに慣れててもやっぱり疲れるもんは疲れる』
『まぁ、そうだろうな』
『だけど、信頼できる相手とかに耳を塞がれると落ち着くんだ。ここは安全だぞ、安心していいぞってな』
『そうなのか』
『私は特に旅で警戒とかしてるからな、アンタにこうやって貰わないと緊張感が抜けづらくなっちまったよ』
と言った具合らしい。ソレを聞いてからは一層ステゴが気を休めれるように努力をしている所だ。
「トレーナー」
「どうした、ちょっと強かったか?」
「いや、出来ればもうちょい強くしながら耳を圧して欲しくてな」
「痛くないか?」
「平気だ」
「分かった」
俺はステゴの要望通り力を強めた、すると体に掛かるステゴの重さが少し増した。上手い具合に脱力出来てるようだ。
「うん、ありがとうトレーナー。もういいよ」
「そうか、ちゃんとほぐれたかな」
「あぁ、助かったよ」
そう言いながらステゴは体を向き直し、俺と向き合う形になったと思ったら肩を押されてそのままソファに寝転ばされた。
「ステゴ、なにこれ」
「マッサージありがとよ、けどもうちょいくつろぎたい」
「まったく……困ったお姫様だ」
「王子様ってのはプリンセスに振り回されてなんぼってのが世の常なんだぜ」
「光栄だねそれは」