平成ライダージェネレーション Re:Inherit   作:双子座流星群

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貴方に命を懸けてでも守りたい物はありますか


俺の変身

街の片隅にある古びたがどこか落ち着く小料理屋「和心」。

 

暖簾をくぐれば出汁の香りと穏やかな灯りが出迎えてくれる。

 

店主の名は榊 正志(さかき まさし)。

 

五十に手が届く年齢のどこにでもいるような男だ。

 

誠実で口数は少ないが、誰よりも客を想う職人肌。

 

自ら包丁を握り、食材を一品ずつ丁寧に調理する姿はまさに料理人の鑑である。

 

家には高校生の娘、透と妻の真理がいる。

 

親子の仲は平凡だ。

 

会話は少ない。

 

思春期の娘との間に見えない壁があるように感じることもある。

 

それでも、彼は言葉以上の想いを料理に込めてきた。

 

透が小さかった頃に好きだった玉子焼き。

 

反抗期でも残さず食べていた母親譲りの肉じゃが。

 

「美味しい」

 

その一言を聞くために、彼は今日も厨房に立つ。

 

その日、榊一家は久々に家族水入らずで外食を楽しんでいた。

 

珍しく娘の透も、笑っていた。

 

注文した天丼が運ばれ、箸を伸ばしかけたその時——。

 

爆発音。

 

絶叫。

 

そして、黒い霧の中から現れたのは黒ずくめの異形の怪物たちだった。

 

異界の者とでも言うべきその存在は店にいた人々を恐怖の底へ叩き落とした。

 

逃げ惑う人々。

 

だが出口は瓦礫で塞がれていた。

 

「真理!透! こっちへ!」

 

榊は即座に二人を背に庇い、辺りを見渡す。

 

助けは来ない。

 

通報する余裕もなかった。

 

人々が追い詰められ、子供達が怪物達に囲まれる。

 

何かを愉しむように、ゆっくりと彼らに手を伸ばしそして

 

子供の顔を殴り倒した。

 

痛みで子供は泣き叫ぶ。

 

それを見て下品に笑う怪物共

 

その瞬間、榊の中で何かが弾けた。

 

怒り。

 

激情。

 

命を弄ぶその姿が、堪え難かった。

 

ネクタイを解き、妻に言う。

 

「真理、透と皆を連れて……後ろの安全な場所まで行ってろ」

 

「やめて! 何してるの!? お父さん死んじゃうよ!」

 

娘の透が叫ぶ。

 

榊は振り返り、ニッと笑う。

 

「大丈夫。父さん、強いから」

 

そして、彼は歩み出た。

 

怯える子供の前に立ちはだかり、両手を広げて怪物達と向かい合う。

 

恐怖などとっくに通り過ぎた。

 

彼を奮い立たせたのは家族を、この場に居る人を助けたいと願う気持ちからだった

 

「なんだお前は」

 

嗤うように問いかける戦闘員。

 

「……俺か? 俺はただの……人間だよ」

 

榊は震える声で答える。

 

「格闘技も知らないし、体力なんてとっくにオジサンだ。だけどな……」

 

目の前の子供の震える肩。

 

後ろで叫ぶ家族の声。

 

そしてかつての記憶。

 

幼い頃に見た『アギト』。

 

記憶を失いながらも命を守るために立ち続けた津上翔一。

 

その姿。

 

——

 

あの強さが。

 

俺の心を燃えさせる。

 

「……俺達の未来が、お前らの手にあるって言うんなら……それを……奪い返す!」

 

突き上げる熱。

 

胸の奥で光が弾けるような感覚。

 

「……力を……貸してくれ……アギト……!」

 

自然と体が動く。

 

遥か昔の記憶に眠るあの日見た光景が蘇る、静かに彼の腕と足を導く。

 

構え。

 

そして、叫ぶ。

 

「変身!!」

 

何も起きない。

 

それでも構わなかった。

 

彼は走った。

 

誰もが怯える中、たった一人。

 

男が、娘を守るために。

 

人々のために、命を賭けて敵へ飛びかかる。

 

——しかし現実は非情だった。

 

怪物の拳が体を打つ。

 

肋骨が軋む。

 

痛みに吐血し、倒れ込む。

 

それでも榊は立ち上がる。

 

「……まだ……終わってねぇ……!」

 

逃げられる時間は稼げたか? 娘は? 妻は?

 

耳を澄ませる。

 

——「お父さんっ!」

 

透の声が人混みの中から聞こえた。

 

それが彼のすべてだった。

 

「……まだ……やれる……」

 

再び立ち上がる。

 

「なんだお前は……何者だ!」

 

血を流しながら、榊は叫ぶ。

 

「……俺は……妻と娘が大好きな、ただのオジサンだよ……」

 

拳を構える。最後の一撃を受ける覚悟。

 

——その時。

 

閃光。

 

怪物達の足元に、あの紋章が浮かび上がる。

 

「……アギト……」

 

空から、まばゆい光と共に降臨する金色の戦士。

 

仮面ライダーアギト。

 

地に着地する瞬間、放たれたキックが怪物の中心を貫く。

 

榊の意識が途切れるその刹那、優しい声が響いた。

 

「——アギトは、一人じゃない」

 

榊 正志。

 

彼は特別な力を持たない。

 

だが勇気を持って立ち上がった。

 

その姿は確かに人々の記憶に刻まれた。

 

そして、彼の魂に灯った光は——

 

家族を照らして守っていくのだろう。

 

 

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