フィリア(LP900):
手札 1枚
モンスターゾーン 《真紅眼の黒竜》×2
《真紅眼の遡刻竜》×1
魔法&罠ゾーン 《リビングデッドの呼び声》
《凡骨の意地》
《血肉の代償》
亮(LP2000):
手札 2枚
モンスターゾーン 《サイバー・エンド・ドラゴン》
《サイバー・レーザー・ドラゴン》
魔法&罠ゾーン 《未来融合-フューチャー・フュージョン》
会場中が沸き立っていた。
場に現れたのは三頭の頭を持つ巨大な機械竜。
相対する真紅眼の黒竜すら凌駕する迫力を持つ、白銀の竜が咆哮を上げる。
《サイバー・エンド・ドラゴン》
融合・効果モンスター
星10/光属性/機械族/攻4000/守2800
「これが・・・・・・サイバー・エンド」
暫し圧倒されるかのように、フィリアはその機械竜を見上げる。
エースモンスター3体の融合によりうまれる三つ首の竜・・・・・・そういった特徴はまさしく、かの伝説のデュエリスト・海馬瀬戸の切り札たる「青眼の究極竜」を彷彿とさせる。
「フューチャー・フュージョンの効果によって融合召喚された融合モンスターはそのターン攻撃できない」
「・・・・・・バトルフェイズ終了後に召喚しておいてよく言うな。あってないようなデメリットじゃないか」
「フっ、そうだな」
呆れたような視線を向けるフィリアに、亮はどく吹く風といったように薄く微笑む。
(・・・・・・・・・それにしても)
再び、サイバー・エンドを見上げるフィリア。
(やっぱり、かっこいいよなぁ)
ソリッドビジョンで見るのは初めてな分、感じる迫力はカードのイラストで眺めるよりも段違いだった。
デザインにおいても、ただ元のサイバー・ドラゴン3体の首が胴体から生えている訳ではなく、3つの頭それぞれが態々異なった造形をしている。
特に眼の色がそれぞれ赤、黄色、青となっているのは、この学園全ての頂点に君臨する男に対するシンボルとしては申し分ない。
「オレはカードを1枚伏せ、ターンを終了する」
亮 手札:2 → 1
「ぼくのターン、ドロー」
フィリア 手札 1 → 2
「今のドローで通常モンスター《ギル・ガース》を引いた事により、《凡骨の意地》の効果が発動。更に1枚ドローする」
フィリア 手札 2 → 3
「引いたカードは通常モンスター《ブラッド・ヴォルス》。《凡骨の意地》の効果によりさらにドロー」
フィリア 手札 3 → 4
「ドローカードは効果モンスター《閃刀姫-ロゼ》。よって《凡骨の意地》の効果は終了する。・・・・・・だが、ドローフェイズ終了前に、速攻魔法《リロード》を発動。手札を全てデッキに戻し、その枚数分ドローする」
フィリア 手札 4 → 3
「引いた3枚の内、再び通常モンスター《ブラッド・ヴォルス》をドローした事により、《凡骨の意地》の効果が起動。再びカードを1枚ドローする」
フィリア 手札 3 → 4
「通常モンスター《デーモンの召喚》をドローしたことにより、更に1枚ドロー。
・・・・・・ドローカードは《打ち出の小槌》」
フィリア 手札 4 → 5
手札1枚の状況から一気に5枚まで増やしてみせたフィリアに対し、亮は表情こそ変えないが内心では感嘆と呆れに満ちていた。
(《凡骨の意地》の効果を活かすためとはいえ、ここまで通常モンスターを投入しておきながらこうも容易くデッキを回してみせるとはな。しかも、再びあの手札入れ替えカードまで引いたか)
「更に
おまけに最後に引いた《打ち出の小槌》で手札の無駄な通常モンスターをデッキに戻して再びドローする手際の良さである。
「そしてフィールドの《
遡刻竜が光に包まれながら姿を消していく。
「遡刻竜が墓地に送られたことにより、ぼくの墓地に5体のモンスターが揃った。ここで《貪欲な壺》を発動する。墓地のモンスターカード5体をデッキに戻し、2枚ドロー」
(更に手札を増やすのか・・・・・・!?)
しかもよりにもよって前の亮のターンで使った《貪欲の壺》。考えることは同じらしい。
フィリア 手札:5 → 6
更なる手札増強カードの発動に、亮はいよいよ頭が痛くなってきた。
・・・・・・ここまでの怒濤のドローを見せられれば、さしものカイザーたる亮も舌を巻くしかなようだ。
「魔法カード《アームズ・ホール》発動。デッキトップのカード1枚を墓地に送り、墓地の装備魔法《ヘル・アライアンス》を手札に戻す」
再び《ヘル・アライアンス》を手中に収めるフィリア。
「
《真紅眼の黒竜》A
通常モンスター
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守2000
再び炎の螺旋が巻き上がり、螺旋の中心により、再び黒竜が舞い戻る。
「これでまたレッドアイズが3体・・・・・・正に不死身だな」
笑みを深める亮。
《貪欲の壺》でデッキに戻した《真紅眼の黒竜》を見事に丁度引き直し、再びフィールドに生け贄召喚する芸当に亮はもう笑うしかなかった。これで、少なくとも3体のレッドアイズはそれぞれ1回以上は死の淵から戻ってきている事になるのだ。
何度布陣を崩そうとしても、赤目の麗人の元に、レッドアイズたちは舞い戻ってくる。
断言できる。
彼ほどレッドアイズに愛された人間を、亮は見たことがなかった。
「そして装備魔法《ヘル・アライアンス》を再び装備・・・・・・レッドアイズの攻撃力は2400上昇する!」
《真紅眼の黒竜》A
攻撃力:2400 → 4800
黒い瘴気に包まれたレッドアイズの体が一気に倍化し、同時に攻撃力もそれに比例して膨れ上がる。
地獄の瘴気を身に纏い、
このターン、サイバー・エンドは敗れてしまうだろうと亮は腹を括る。
だがその矢先、更なる予想外の出来事が亮に襲いかかった。
「悪いが、ここで決める。速攻魔法《融合解除》発動!」
「なにっ!?」
(ここで融合解除だと!?)
目を見張る亮。
「サイバー・エンドを分離させ・・・・・・お前の墓地から3体の《サイバー・ドラゴン》を攻撃表示で特殊召喚させてもらう」
消えていく、《サイバー・エンド・ドラゴン》
途端に、亮のデュエルディスクにある墓地が光が出し、3体の《サイバー・ドラゴン》がフィールドに飛び出してくる。
《サイバー・ドラゴン》A
効果モンスター
星5/光属性/機械族/攻2100/守1600
《サイバー・ドラゴン》B
効果モンスター
星5/光属性/機械族/攻2100/守1600
《サイバー・ドラゴン》C
効果モンスター
星5/光属性/機械族/攻2100/守1600
「これで的が3体できたな」
「っ」
「バトルだ。レッドアイズで《サイバー・ドラゴン》に攻撃・・・・・・ダーク・ヘル・フレア!」
《ヘル・アライアンス》を装備したレッドアイズが、1体のサイバー・ドラゴンに向けて地獄の黒炎を放つ。
サイバー・エンドの攻撃力すら優に超える炎を、ただのサイバー・ドラゴンが受けてしまえば、たちまちの亮のライフはゼロになる。
「させん! リバースカードオープン、《ダメージ・ダイエット》発動! このターン、オレが受けるダメージは全て半分になる」
亮が発動したのはダメージ軽減カード。
戦闘ダメージのみならず効果ダメージまで半減するこのカードは、《ダメージ・ポラリライザー》と同じく本来は《黒炎弾》への対策として入れていたカードだった。
地獄の黒炎に呑まれた機械竜が爆散していく。
亮 LP:2000 → 650
「まだだ。更にレッドアイズ2体で、残りのサイバー・ドラゴン2体に攻撃。ダーク・メガ・フレア!」
2対の真紅の炎がそれぞれ、残りのサイバー・ドラゴンたちへと向かっていく。
真紅の炎に呑まれたサイバー・ドラゴンもまた同じく破片をまき散らして砕けていった。
「クッ!」
亮 LP:650 → 350
怒濤の連撃に思わず身を庇う亮。
(ここまで、追い込まれるとはな・・・・・・!!)
「噓・・・・・・お兄さんのライフが、350まで!?」
「まさか亮があそこまで追い詰められるなんて・・・・・・!」
「カードを1枚伏せ、ターンを終了する」
フィリア 手札:6 → 1
サイバー・エンドを撃破し、亮をライフを残り僅かまで追い詰めたというのに、心なしかフィリアの表情は苦いままだった。
結局、サイバー・エンドを対処するのに手札を4枚まで使わされ、更に肝心のモンスター1体を残してしまった。
サイバー・レーザーに対する対策は打ってあるとはいえ、それが通用する相手ではないと予感していた。
・・・・・・事実、その予感は的中していた。
「オレのターン・・・・・・ドロー!」
亮 手札:1 → 2
カードを引く亮の声は、心なしかいつもよりも熱と息を帯びていた。
もっとこのデュエルを続けていたいと、亮はそう思いながら、目の前の相手を見据えた。
「
亮 手札:2 → 3
「手札より、ユニオンモンスター《アーマード・サイバーン》を召喚!」
《アーマード・サイバーン》
ユニオン・効果モンスター
星4/風属性/機械族/攻 0/守2000
フィールドに現れたのは、金色の塗装を施され、左右に巨大な砲身が取り付けられた戦闘機のような見た目をしたモンスター。
「《アーマード・サイバーン》の効果を発動! このカードは、《サイバー》と名のつくモンスターの装備カードとして装着することができる」
その効果に、フィリアは唖然となった。
《アーマード・サイバーン》の効果はフィリアだって知っている。
しかし、フィリアの知る限りで、この《アーマード・サイバーン》を装備できるモンスターなどフィールドにいない筈だった。
「《サイバー・レーザー・ドラゴン》に装着・・・・・・アーマード・サイバー・レーザー!」
本来、《アーマード・サイバーン》を
胴体に本体が装着され、その左右に巨大な砲身が取り付けられ、重武装化したサイバー・レーザー・ドラゴン。
フィリアの知る限り、《アーマード・サイバーン》を装備できる対象は、あくまで《サイバー・ドラゴン》か、それを融合素材とする融合モンスターに限られていた筈だった。
またアニメ効果かと割り切った所で、フィリアは悟る。
亮の本当の狙いを。
装備モンスターの攻撃力を下げることで効果を使える《アーマード・サイバーン》と、自身の攻撃力より高いステータスのモンスターを破壊できる《サイバー・レーザー・ドラゴン》の組み合わせは、最悪だ。
「《アーマード・サイバーン》の効果発動! 装備モンスターの攻撃力を1000ポイント下げる事で、フィールド上のカードを1枚、破壊できる!」
サイバー・レーザー・ドラゴンがその身を少し屈めると、可動した《アーマード・サイバーン》の砲身がフィリアのフィールドに向けられる。
「まずは、《凡骨の意地》を破壊。ジャッジメント・キャノン!」
砲身から放たれた紫の光が発射され、フィリアのフィールドにあった《凡骨の意地》が砕かれた。
自身のデッキの主力の1つを破壊され、苦い顔になるフィリア。
《サイバー・レーザー・ドラゴン》
攻撃力:2400 → 1400
「まだだ。《サイバー・レーザー・ドラゴン》の攻撃力を更に下げ・・・・・・《ヘル・アライアンス》を装備したレッドアイズを破壊。 ジャッジメント・キャノン!」
「・・・・・・1ターンに一度じゃないのか・・・・・・!」
《サイバー・レーザー・ドラゴン》
攻撃力:1400 → 400
さらに砲身が光りだし、放たれた紫色の光線が《ヘル・アライアンス》を装備したレッドアイズへ向かう。
「リバースカード《メタル・コート》を発動。レッドアイズに装備!」
発動された罠カードが装備カードとなり、レッドアイズに装備される。
ただでさえ《ヘル・アライアンス》で強化され巨大化したレッドアイズの体が、銀色にコーティングされ、紫色の砲撃を跳ね返した。
「防いだか。ならば最後だ。《サイバー・レーザー・ドラゴン》の効果発動! フォトン・エクス・ターミネーション!」
最後にレーザー・ドラゴンの尾先に内蔵された砲身が展開され、そこから放たれた青白い閃光が、他のレッドアイズへと向かう。
3体目のレッドアイズが破壊され、悲鳴を上げて散っていく。
《真紅眼の黒竜》A(《ヘル・アライアンス》&《メタル・コート》装備)
攻撃力:4800 → 4000
同名のレッドアイズが散った事で、《ヘルアライアンス》を装備したレッドアイズの攻撃力が下がる。
「更に手札から
「ッ!?」
顔つきを変えるフィリア。
・・・・・・そういえば、それがあったかと悟る。
前世込みでサイバーデッキと戦うのが久々であったものだから、つい存在を忘れてしまっていた。
元々、融合素材にさせないためにサイバー・レーザーよりも通常のサイバー・ドラゴンの撃破を優先させたわけなのだが、このカードの存在を思えばむしろレーザーの方を片付けてしまった方がよかったかもしれない。
「オレは墓地の、3体の《サイバー・ドラゴン》を墓地から除外し、融合デッキに戻ったサイバー・エンドを、再び呼び戻す!」
「・・・・・・なんだって?」
身構えるのも束の間、思いがけない言葉に一瞬、言葉を詰まらせる。端からみれば墓地のモンスターを融合するという所業に対する驚きに見えるが、実態は違う。
少なくともフィリアの知るOCGの《オーバーロード・フュージョン》は、確か機械族。闇属性しか召喚できなかった筈。
そこは相変わらずのアニオリ効果なのだと片付けることはできるし、其方が出てくるのはむしろ安心ではあるのだが。
────もしかして、“キメラティック”はアイツの融合デッキに入っていないのか?
だとしたら、それは有り難いことなのだが。
《サイバー・エンド・ドラゴン》
融合・効果モンスター
星10/光属性/機械族/攻4000/守2800
再びフィールドに現れる三つ首の機械竜。
その迫力に、フィリアは再び圧倒される。
────前言撤回・・・・・・やっぱり怖いな。
「これで終わりだ! サイバー・エンドでもう1体のレッドアイズを攻撃。エターナル・ヴォリューション・バースト!」
「させない・・・・・・手札の《クリボー》を捨て、戦闘ダメージを0にする」
三つ首の頭からそれぞれ放たれた光線が束ねられ、革命の一撃となって3体目のレッドアイズに襲いかかるが、手札の《クリボー》を捨てることでダメージを凌いだ。
「《クリボー》のお陰で戦闘ダメージは0。・・・・・・但し、同名モンスターが破壊されたことにより、レッドアイズの攻撃力は更に下がる」
《真紅眼の黒竜》A(《ヘル・アライアンス》&《メタル・コート》装備)
攻撃力:4000 → 3200
「これも凌ぐのか・・・・・・カードを1枚伏せ、ターンを終了する」
亮 手札:3 → 0
フィリア 手札:1 → 0
「ぼくのターン。ドロー!」
フィリア 手札:0 → 1
(・・・・・・さてどうする気だ? 君の場に《凡骨の意地》は既にない以上、手札を大幅に補充ずる術はない。加えて、既に意味を成さない永続罠が2枚。特に残りライフが1000を切っている以上、《血肉の代償》も意味を成さない)
《血肉の代償》は相手のバトルフェイズ時にもライフを500ポイント払うことで、手札のモンスター1体を守備表示で召喚できる効果も兼ね備えている。其方の効果は確かに今のフィリアでもギリギリ使えるだろうが、サイバー・エンドは守備モンスターに対する貫通能力を備えている以上、今この場においてこれ程無意味な効果はない。
(だが、今までの事を考えるのならば・・・・・・)
「手札から魔法カード《強欲な壺》を発動。デッキからカードを2枚ドローする。
フィリア 手札:1 → 2
ここまで来れば鏡合わせも同然か。前のターンの亮と同じように、フィリアもまた強欲な壺を引いて見せたのである。
(そう来なくてはな。さあ、ここからどう巻き返す?)
「更に
「更に墓地の儀式魔法《黒竜降臨》の効果を発動。墓地のこのカードを除外することで、デッキから《レッドアイズ》魔法または罠カードを手札に加える」
(儀式魔法? ・・・・・・そうか、《アームズ・ホール》のコストで送った時に・・・・・・)
フィリア 手札:3 → 4
「そして《打ち出の小槌》を発動。このカードと、手札の2枚をデッキに戻して、さらに3枚ドロー」
またそれか、と突っ込みそうになるのをぐっと堪える亮。
発動したら墓地に行くことなくデッキに戻って再び手中に戻ってくる手札入れ替えカード。いざ使われてみたらこれ程厄介とは。
《凡骨の意地》とのコンボといい、彼はこの《打ち出の小槌》を考える限り悪用できるデッキ構築にしてあるのだと思い知らされる。・・・・・・それでも、あくまでレッドアイズを中心に据えるという根底の思想がぶれない所に、亮はフィリアにデュエリストとしての気高さを見出していた。
「まだだ。
これで再び、レッドアイズ2体が墓地に。
(《凡骨の意地》を破壊したにも関わらず、結果的にレッドアイズが墓地に2体いる状況のまま、実質ノーコストで手札を4枚まで増やすか・・・・・・)
最早何も言うまいと、亮は納得──というより諦めの境地に達していた。
無論、次に待ち受けている展開も予想している。
「
現れる、2柱の炎の螺旋。
再び黒竜が、地獄から現世へと舞い戻ってきた。
《真紅眼の黒竜》B
攻:2400 /守:2000
《真紅眼の黒竜》C(守備表示)
攻:2400 /守:2000
『グギャオオオォォォォッ!!』
『ゴアアァァアアアォアアッ!!』
復活の雄叫びを上げる2体のレッドアイズを見上げ、亮は再び口角を釣り上げた。
胸の昂ぶりが最高潮に達しているのが自分でも分かる。
こんな気持ちは何時ぶりだろうか。
「そして同名モンスター2体が揃った事により、レッドアイズの攻撃力は再び倍になる」
《真紅眼の黒竜》A(《ヘル・アライアンス》&《メタル・コート》装備)
攻撃力:3200 → 4800
『グオオオオォォオオッ!!』
再び黒い瘴気を纏って巨大化するレッドアイズ。
その雄叫びは、力を取り戻したことによる興奮か。
それとも同胞たちが再び戻ってきたことによる喜びか。
2体のレッドアイズの復活の咆哮に共鳴するかのように、彼もまた咆哮で自らの力と存在を観客たちに知らしめた。
「噓だよ・・・・・・これで復活するのもう何回目!?」
「これだけ攻め立てているのに、何度倒してもレッドアイズは復活する・・・・・・おまけにカイザーのライフは残り350。フィリア・・・・・・君ならばもしくは本当にあのカイザーを・・・・・・」
「亮が、ここまで追い詰められるなんて・・・・・・」
翔、三沢、明日香の3人は驚愕の表情を隠せないままだった。
いくら攻め立てても復活するレッドアイズたち。
何度倒れようとも、あらゆる手段とルートを通じてフィリアの元へ集ってくる。
「ここまで攻め立てて・・・・・・未だその布陣を壊せないとはな」
「・・・・・・」
いよいよ喜びを隠しきれないといわんばかりに笑みを浮かべながら言う亮に、フィリアは黙ったまま見つめるだけだった。
「最初はほんの興味本位だったんだが、今なら言える。クロノス教諭に我が儘を言ってよかった。こんなに楽しく、熱いデュエルは久々だ! 門戸フィリア」
「・・・・・・!」
「初めてなんだ、これほど追い込まれたのは。互いに全力を出し切って、勝つか負けるかの瀬戸際の競い合い。カイザーと呼ばれ、この学園の頂点に経って以来、こんなに熱くなれたことはない
・・・・・・昇格試験に水を差された君としては、少し迷惑だったかもしれないが」
思いを吐露しつつ、少しだけ俯いて申し訳なさそうにそう付け足す亮。
「・・・・・・ぼくも」
途端に、フィリアの控えめな声が聞こえ、俯いた顔を上げるカイザー。
そこには、顔を背けつつも少しだけ恥ずかしげに赤くなっているフィリアの姿があった。
「ぼくも、こんなに熱くなったのは久々だ。いつもは、勝つことばかり考えていて、楽しいかそうでないかなんて後から付いてくるものだって思ってけど・・・・・・今までにないくらいデッキが回っている筈なのに、ここまで一向に勝ちが見えてこない」
「・・・・・・!」
「さすがにいつもこんなデュエルをするのはごめんだけど・・・・・・この充実感も、たまには悪くないかもな」
「・・・・・・そうか」
フっと、亮は静かに笑いながら目を閉じた。
目を背け、必死に照れ隠しをしながら遠回しな肯定を返してくる後輩が、少し面白おかしくなってしまった。
(・・・・・・まったく、素直じゃない後輩だ)
素直に楽しいと言えばいいものを。
・・・・・・だが、強さと裏腹にあるその意地らしい面が、逆に可愛げがあると感じさせてくれる。女にしか見えない容姿が、余計にそうさせているのもあるのかもしれないが。
「一つ、詫びをしたい。オレも明日香も、君にある人物を重ねてデュエルを挑んだ。オレのかつての友でありそして、君と同じレッドアイズ使いの男だ」
「・・・・・・」
「だが戦ってみて分かった。君は奴とはまったく異なるデュエリストだ。戦術も、デッキ構築も、レッドアイズの活かし方も、全てが」
最後の1年で、まさかこんな後輩に出会えるとは思いもしなかった。
試験会場で初めて会ったときも、まさかこれほどにまで己を熱くさせてくれるデュエリストであったなどと、想像できる筈もない。
「ここから一デュエリストとして君に全身全霊をかけて挑む。簡単にやられてくれるなよ?」
「こっちの台詞だ。勝つ時も、負ける時も、ぼくは
亮の好戦的な笑みに対して、フィリアもまた指鉄砲を向け挑発しながら答える。
決着は、まだまだ先だった。
一方、既に試験を終え決着が着いた向かいのデュエルフィールドにおいて、その様子を、唖然と、信じられないといった表情で、そして妬ましそうに見つめている人影があった。
白熱していく一方で、かつて小さき時を共に過ごした2人の間に走る亀裂の足音が・・・・・・ゆっくりと聞こえ始めていた。
・主人公
・・・・・・ようやく万丈目以外の人間にもデレを見せ始める。
いつもドライな口調なだけに、今回は抜群のあざとさがある。
ちなみに、既にすぐ後ろの方で万丈目と十代のデュエルの決着が着いていることには気付いていない。
・カイザー
主人公を吹雪と重ねるをやめ、一デュエリストとして挑むことを決意。
ちなみに位置的に主人公よりも万丈目と十代のデュエルが見えやすい位置にいるのに、目の前のデュエルが楽しすぎて決着が着いていることに気付いてない。
・クロノス教諭
フィリアに対する申し訳なさとか、十代に対する制裁すら忘れ、ただひたすら2人のデュエルに魅入っていた。鮫島校長も同様。
・万丈目
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナゼダ? ナゼオレハ格下二負ケテ、アイツハカイザー相手二マダ・・・・・・
・ロゼ
ぬわああん疲れたもおおおおおおん・・・・・・え? まだやるの? もう何回フィールドと墓地とデッキを行き来してるか分からないんだけどぉ・・・・・・。