なので、最初のドローフェイズで予め必要枚数分ドロー → アニメ版小槌で引き直しの流れに訂正しておきました。
最終的な手札配分は変わってないので、読み直さなくても大丈夫です。
午後の体育館での実技試験。
同時に行われた対戦カードに、ギャラリーたちは目を奪われていた。
まず第一に驚くべきことは、あの遊城十代と万丈目準のデュエル。
本来、他寮同士の生徒が実技試験の相手になることはないというのに、それがオベリスクブルー成績トップとオシリスレッドの一生徒がデュエルするとなれば、注目の的にならざるを得ない。更には、これで遊城十代が万丈目に勝てば、十代は昇格し、ラーイエローになるという。
(これだけでも、驚きだというのに……)
チラリと、明日香は真ん中手前に設けられたデュエルフィールドから目を逸らし、その奥の方にあるもう1つのデュエルフィールドに目を向ける。
そう、今回もう1つ違う寮同士での対戦カードが組まれていた。
「ど、どうして……門戸さんとお兄さんが……!?」
「驚きの連続というしかないな。フィリアはここ一ヶ月で月一試験でブルーにあがるために行動していたのは知っていたから、こうなることは予想できたが……その相手がまさかのカイザー。
……それに加えて、オシリスレッドの遊城十代の対戦相手はオベリスクブルートップの万丈目……この2つのカードが同時に行われるとはな」
できればどちらもじっくり観察したいものだが……、と三沢が悩むように付け加える。
どちらも決して無視できないカード。
幸い、両陣とも短手の縦烈に並んでいるため、同時に見ることも不可能ではないが、さりとて交互に見続けるにはそれぞれ濃密な内容になりそうで悩む所である。
(……万丈目くんの相手をする十代も気になるけど……何より問題なのはアチラ)
フィリアの対戦相手として立つ青年を見つめながら、明日香は神妙に考える。
(……亮、アナタ。なぜ態々実技試験に割り込んでましてフィリア君とデュエルを? 私からフィリア君のことを聞いたから? それとも、アナタも兄さんの手がかりを……)
……だとしたら、この勝負はフィリアが圧倒的に不利だと明日香は結論付ける。
別に、互いの実力差がどうとか言うつもりはない。問題は、デュエルを始める前の条件。
……明日香は、フィリアと十代のデュエル内容と、自身がフィリアとデュエルした時のことをカイザーこと丸藤亮に話してしまっている。あの夜の灯台で。
そうなると、必然的にカイザーは少なかれフィリアのデッキの内容を把握していることになる。未だに同じレッドアイズ使いとしてフィリアのことを兄と重ねてしまう明日香だが、逆に重ねてしまうからこそ、フィリアと兄のデュエルの些細な違いにも敏感になってしまっている。
兄と、フィリアの、デュエルの違い。
デッキ、カード、戦術に至るまで、明日香は亮に話してしまっていたのだ。
(だとしたら……ごめんなさい、フィリア君。亮は理論派、
フィリアに対して申し訳なさと諦観を抱きつつ、このデュエルを見守ることを決意する明日香。
だが、この時明日香は知らない。
……そのような諦観、これから早々に覆されることになることを。
それは、同時に起こった出来事だった。
「これが……《VWXYZ-ドラゴン・カタパルト・キャノン》だ!!」
《打ち出の小槌》と《前線基地》のコンボにより必要なモンスターパーツを瞬く間に
……そして、対向のデュエルフィールドでは……
「《
たった1ターンで、レッドアイズ3体を生け贄召喚するという暴挙をやってみせたフィリアの姿があった。大凡男性には見えぬ、赤き目の麗人により従えられし3体の黒竜が、1度にフィールドに集結するその姿に、観客達は目を奪われる。
明日香もその1人だった。
(また、レッドアイズを3体。しかも十代とのデュエルの時とは違い、1ターンで3体の生け贄召喚……《打ち出の小槌》と《凡骨の意地》を組み合わせたコンボで手札を増強して、3体のレッドアイズを手札に引き寄せるだけでも相当な無茶なのに……こんな荒技まで行うなんて……!!)
《地獄の暴走召喚》と《血肉の代償》を組み合わせたコンボで、更に手札に集めた3体のレッドアイズを生け贄召喚する所業は正気の沙汰とは思えない。
(確かに、兄さんと門戸くんのデッキはかなり違う。レッドアイズを中心に据えている点は共通していても、戦術も、デッキ構成も異なっている……それでも、こんな荒技を平然と行うなんて信じられない。門戸くん……貴方何者なの?)
疑念が深まる明日香。
(やっぱり門戸くんはすごいや。十代の兄貴に勝った実力は半端じゃない。……それでも、お兄さんには勝てないんだ)
(……手札増強戦術に加えて、ライフを削ってレッドアイズ3体を1ターンで生け贄召喚する、怖れを知らぬ大胆な戦術。一体彼はどこでこのような戦術を身に付けたのか? ……寮が離れれば彼のデュエルを見る機会は減ってしまう。十代と万丈目のデュエルを見逃すのは惜しいが……今回は彼らの方を優先的に観察するとしよう)
フィリアの実力に感嘆する翔であったが、その一方でやはり兄である亮には勝てないと決めつけ諦観する。
その一方で、同じくフィリアの戦術に感嘆した三沢は、十代と万丈目、フィリアとカイザー、どちらのデュエルを観察すべき迷っていたが、後者の方を選択する。
三者三様、デュエルを見守り続ける中で、明日香だけがその変化に気付いた。
「亮が、笑っている?」
誰もがデュエルの盤面だけに集中するあまりに気付いていなかったその変化。
僅かに口角をつり上げていたカイザーの様子に気付いた明日香は、唖然としながら呟いた。
◇
……《キラー・トマト》が来てくれなかったら死ぬかと思った(小並感)。
いやね、初手《サイバー・ツイン・ドラゴン》が来るとは思わなかったよ。レッドアイズを3体同時召喚するコンボを狙っていた関係上、最低でも2回は攻撃を仕掛けてくれなければこっちも困っていた所なんだけど。
此方も先行を取れたのはよかったけれど、相手も後攻の方が都合がよかった関係上、開始の条件はほぼ五分といったところか。
それはそれとしてOCG仕様よりも遙かなチート効果(おそらくアニメ効果だろうか)を持つ《打ち出の小槌》に続いて、クロノス先生から頂いた2枚目のレアカードである《血肉の代償》。《地獄の暴走召喚》でダブルコストモンスターを3体揃え、更にこのカードの召喚件を増やす効果を使ったコンボで無事レッドアイズ3体を同時生け贄召喚を叶えたわけだが……正直、《黒竜の雛》さえいれば《血肉の代償》なしでもなし得たコンボではあるんだよなぁ。
しかし、現状ぼくの手元に《黒竜の雛》はいないため、しぶしぶこの《ダークフレーム》とかいうダブルコストモンスターで代用している訳だが、ない物ねだりは仕方ない。レッドアイズ関連のサポートカードが《黒炎弾》と《紅玉の宝札》、いま手札にいるコイツしか持っていない現状、それらに加えてこの世界で集められる限りの汎用闇属性サポートや通常モンスターサポートカードをかき集めて作ったのがいまのぼくのデッキだ。
今回はそれらに加えてクロノス先生から貰ったカードを加え、それらを活かせる構成に特化したデッキ構築となっている。
……そして、一応“アレ”も入れているわけなのだが、一向にぼくの手札に来てくれている様子がない。《凡骨の意地》とアニメ版《打ち出の小槌》のコンボでも引けんとかどれだけぼくのことが嫌いなんだよお前!? 召喚に必要なキーカード2種いずれかすら引けないし、いい加減拗ねるぞ!?
……まぁ、どの道《サイバー》が相手となると、機械族の“アレ”も問答無用で彼の融合モンスターの素材にされかねないので、引けたとしても出すかどうかは微妙なわけだが。
……話を戻そう。
勿論、ぼくがわざわざライフを削ってまでしてレッドアイズを1ターンで一気に召喚したのには訳がある。
何もパフォーマンスを目的でやったわけではない。
前世よりもデュエルスピードが遅い環境だからこそ、レッドアイズを3体揃えることには意味がある。
当面はこの布陣を維持することがまず1つ。
ドローソースと《凡骨の意地》のコンボで手札を増やして、レッドアイズがフィールドに一体でも残り続けている《黒炎弾》を引いて一気に勝負を決めること……これが、このデッキの基本コンセプトになる。
……あとはこの布陣が目の前の相手にどれだけ通用するか。
でも、不思議と負ける気がしないのだ。
後ろには準がいるし……って、よく見れば準のフィールドにいるのってあの《VWXYZ-ドラゴン・カタパルト・キャノン》じゃないか!?
まじかよ、向こうが何ターン経ってるのか把握できてないけど、こっちはまだ相手ターンで数えて3ターンしか経ってないのに……もう呼んでるのか。
多分、ぼくと同じように《打ち出の小槌》を使って必要なパーツを引き当てたんだろうけど、《凡骨の意地》ようなカードとの併用もなしに揃えたのは驚愕の一言しかない。
……あぁ、やっぱり、準はすごいな。
ぼくのやったことなんて目じゃない。
相変わらず、羨ましくなるくらいの、ツキの良さだ。
なんか「お前にだけは言われたくないぞ」みたいな目で睨み返されたけど、この環境であっという間にソレを完成させられるのは至難の業なんよ準。
……うん、でもなんかより一層頑張れる気になってきた。
えぇい、カイザーの異名がなんじゃい!
こっちには後ろに準がいるし、ロゼは……さっきレッドアイズ出した時にまた姿を消しちゃったけれどきっとデッキが見守ってくれているだろうし……何よりぼくにはクリーブランド姉貴の加護(?)がある。
見ていろ、機械仕掛けの帝王。
いまのぼくは……社長よりも強いぞ!(甚だしい思い上がり)。
◇
正に圧巻の光景と言うしかないと、カイザーこと丸藤亮は思う。
明日香からは、兄吹雪とは同じレッドアイズを中心に据えながらもその戦術とデッキ構成は異なると聞いてはいた。
実際、その通りではあった。
明日香の兄にして、彼の親友でありライバルだった天上院吹雪はレッドアイズをエースに据えつつ、ドラゴン族モンスターとドラゴン族をサポートするカードで構成したデッキ。
それに対して、フィリアはレッドアイズを中心に据えつつも、ドラゴン族という観点ではなく、闇属性という観点からレッドアイズをサポートするカードを揃えている。どちらの種族、属性もサポートカードが豊富であるという共通点がある。
(ドラゴン族であることを活かすか、闇属性であることを活かすか……吹雪と彼のデッキ構成の違いはそうした観点から分かたれているのだろう。……だが、レッドアイズを生かすという根底的な思想は変わっていない筈だ)
先ほど使った《キラートマト》も闇属性専用のリクルートモンスターであり、その《キラートマト》でリクルートできる、闇属性通常モンスター専用のダブルコストモンスター《ダークフレーム》。
確かに、扱うモンスターこそ違うが、似たような戦術は吹雪もやっていた。そこに驚きはない。
(……だが、さすがにこれは予想外だ)
目の前にそびえ立つ3体のレッドアイズを前にして亮は冷や汗をかく。
レッドアイズの攻撃力は亮のフィールドにいる《サイバー・ツイン・ドラゴン》には及ばない。いくら伝説のレアカードであるレッドアイズを何体並べた所で意味はないと思うだろう。
だが、そんな意味のないこと、彼がする筈がないと亮は確信していた。
フィリア(LP1700):
手札 4枚
モンスターゾーン 《真紅眼の黒竜》×3
魔法&罠ゾーン 《リビングデッドの呼び声》
《凡骨の意地》
《血肉の代償》
亮(LP4000):
手札 2枚
モンスターゾーン 《サイバー・ツイン・ドラゴン》
魔法&罠ゾーン 伏せカード×2
(だが、レッドアイズではサイバー・ツインの攻撃力は超えられない。となると……)
「
「っ!」
目を見開く亮。
やはり、あのカードを持っていた。
当然だ。あれだけカードをデッキに戻してはドローを繰り返していたのだ。1枚くらいは引いていたっておかしくはない。
「させん! カウンター罠《ダメージ・ポラリライザー》発動。ダメージを与える効果が発動した時、その発動と効果を無効にし、互いのプレイヤーはカードを1枚ドローする!」
フィリア 手札 3 → 4
亮 手札 2 → 3
黄色い装飾に縁取られた鏡のような盾が亮の前に現れると同時、亮に迫り来ていた黒炎弾がその盾に阻まれる。
「……やっぱり黒炎弾を対策するカードを入れていたか」
「入試でのクロノス教諭とのデュエルを見せられてはな」
「それもそうか……でもこれで、心置きなく攻められる」
「……?」
フィリアの発言に訝しげになる亮であったが、次の瞬間、その意味を思い知ることになる。
「装備魔法《ヘル・アライアンス》発動。1体目のレッドアイズに装備」
先ほどフィリアが《凡骨の意地》の効果で引いた最後のカード。
そのカードがレッドアイズに装備される。
《ヘル・アライアンス》の効果は、亮も知っている。
予め複数の同名モンスターを用意しなければ真の力を発揮できないカードだが、今この場には3体のレッドアイズがいる……!
「レッドアイズの攻撃力は、場の同名モンスター1体につき800ポイントアップする」
『グオオオオォォオオッ!!』
瞬間、一体のレッドアイズが黒い瘴気に包まれ、体が一回り大きくなり、咆哮と共にその威容を増す。
《真紅眼の黒竜》A
攻撃力:2400 → 4800
「攻撃力4800だと……!?」
「お兄さんのサイバー・エンドを超えた!?」
「レッドアイズ3体を揃えたのはこの為……!」
一気に攻撃力を倍増したレッドアイズに三沢、翔、明日香が三者三様に驚く。
(同名カードが揃う事で力を発揮するカードを使ってくるのは予想できたが……《ヘル・アライアンス》とはな)
「でも、黒炎弾を使ったレッドアイズは攻撃できない筈じゃ……」
「……いいや。それはあくまで《黒炎弾》の効果の発動が無効にされていなければの話だ。《ダメージ・ポラリライザー》の効果で無効化されている今、レッドアイズの攻撃は問題なく可能だ」
疑問を挟む翔に、それに対する回答に三沢が辿り着く。
(……迂闊だったな。オレが《ダメージ・ポラリライザー》で無効化する所まで読んでいたのか。こうなれば無効化せずにサイバー・ツインが戦闘破壊を避ける方を選択するべきだった)
「バトルだ。レッドアイズで《サイバー・ツイン・ドラゴン》を攻撃。……ダーク・ヘル・フレア!」
《ヘル・アライアンス》の効果で攻撃力が倍増したレッドアイズの攻撃は通常の比ではない。肥大化した体が口を開け、体に纏った黒い瘴気が湧き上がると同時に禍々しい黒炎が口の中に集中する。
今だけは、《サイバー・ツイン・ドラゴン》が赤子のように弱々しい存在に見えた。
やがて倍化した黒炎が炸裂し、サイバー・ツイン・ドラゴンを呆気なく飲み込んだ。
「クッ!?」
亮 LP:4000 → 2000
さしもの衝撃に、身を庇う亮。
攻撃力を4800にまで引き上げられたレッドアイズの破壊力は並大抵のモノではない。ソリッドビジョンといえど、その迫力は真に迫っている。
「そんな……お兄さんの《サイバー・ツイン・ドラゴン》が!?」
「あの亮がライフを一気に半分まで削られるなんて……」
(それだけじゃない……カイザーの場に既にモンスターはいない。残り2体のレッドアイズの内、どれか1体でも攻撃が通ればカイザーは……!)
亮のモンスターが削られ、ライフが一気に半分まで減らされたことに驚愕する3人。
だが、それを易々と通す亮ではなかった。
「
《サイバー・ツイン・ドラゴン》
融合・効果モンスター
星8/光属性/機械族/攻2800/守2100
雷鳴と共に再び現れる双頭の機械竜。
いくら一体のレッドアイズの攻撃力が上がれど、残り2体の攻撃力が下回っていれば攻撃を通すことは適わない。
「……これで残り2体のレッドアイズの攻撃は通らない。やっぱりお兄さんには……」
(……いえ、違うわ。これで亮は入ってしまった、フィリア君とレッドアイズの射程圏内に……!)
明日香が感じた嫌な予感は亮も同様に感じていた。
……自分の残りライフは2000。
すなわち、一発でも黒炎弾を喰らえば、亮のライフはゼロになってしまうことを意味する。
────凌がれたか、やはり一筋縄じゃいかないな。
さして動揺した様子は見せないフィリア。
帝王の異名を持つ男だ、これしき終わる筈がないとフィリアも感じ取っていた。
「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」
フィリア 手札:3 → 2
ターン開始時に既に残り2つしかなかったフィリアの魔法&罠ゾーンは《ヘル・アライアンス》と伏せカード1枚に埋まってしまう。
「オレのターン。ドロー」
亮 手札:3 → 4
(一先ず、乗り越えたか。だが……)
メインフェイズに入り、亮はフィリアのフィールドを観察する。
既に魔法&罠ゾーンは埋まっており、手札から新たに魔法カードを発動することはできないだろう。
……となれば、あの1枚の伏せカードはフリーチェーンでどのタイミングでも好きに発動できる類いのモノに違いないと亮は当たりを付ける。
攻撃反応型の罠だとすれば、相手依存になってしまうため、そうなると此方から攻撃しない限りは相手の魔法&罠ゾーンは埋まったままだ。
(……となれば、此方の攻撃はまず通ると見て間違いないな。今は責める時だろう。)
……だが、その前に聞かねばならない事があると思い至り、亮はフィリアに問いかけた。
「1つ君に聞きたい事がある。そのデッキ、あと何発《黒炎弾》を放てる?」
「……ッ」
……僅かに、相手に目が見開かれた。
その質問で確信に至った亮は、思わず笑いを零した。
「フフフ」
それは、喜びと呆れを含んだ感嘆の笑い。
よくまあ、このような恐ろしいデッキを組んできたものだ。
(なるほど、怖いなこれは)
亮は大凡フィリアが組んできたデッキのコンセプトを掴んだ。
まず、レッドアイズを態々3体並べる布陣を組み立てたのは、《ヘル・アライアンス》の効果を最大限発揮するためのモノではない。其方はむしろおまけだろう。
本当の目的は、場に常に1体でもレッドアイズが残り続けるようにするためのモノに違いない。
仮に攻撃力が相手のモンスターに届かなくとも、いつでも《黒炎弾》が放てるように。
《凡骨の意地》で手札を増強させ、《リロード》や《打ち出の小槌》などの手札入れ替えカードを投入して無理にでも《黒炎弾》を手札に手繰り寄せるのが根底の思想だろう。
(さらに、オレの予想通りならこの布陣……崩すのは容易ではない。複数回攻撃が可能なサイバー・ツインを残せたのは僥倖だったか)
歪んだ口角を抑え、亮は真顔に戻ってデュエルの進行を再開した。
「バトルだ。《サイバー・ツイン・ドラゴン》でレッドアイズを攻撃。エヴォリューション・ツイン・バースト!」
《サイバー・ツイン・ドラゴン》による1打目の攻撃がレッドアイズを襲う。
「ッ!」
フィリア LP:1700 → 1300
レッドアイズを破壊された痛手は、フィリアのライフポイントだけには留まらない。
《真紅眼の黒竜》A
攻撃力:4800 → 4000
同名モンスターがフィールドから離れた事により、《ヘル・アライアンス》を装備していたレッドアイズの攻撃力がダウンしてしまった。
……だが、ここで亮の予想は外れる。
「罠カード《時の機械-タイム・マシーン》を発動。戦闘で破壊されたモンスターをフィールドに呼び戻す」
フィリアの背後から重々しいマシンが蒸気を噴き出しながら、ハッチを開ける。
ハッチが開いた機械の中身から、再び、先ほど破壊されたレッドアイズが姿を現した。
《真紅眼の黒竜》B
攻:2400 /守:2000
そして、再び同名モンスターが復帰したことにより、《ヘル・アライアンス》を装備したレッドアイズの攻撃力が戻った。
《真紅眼の黒竜》A
攻撃力:4000 → 4800
だが、亮の攻撃はまだ終わっていない。
「2回目の攻撃。エヴォリューション・ツイン・バースト!」
今度は、3体目のレッドアイズに向け、その光線を発射する双頭の竜。
無論、為す術もなくそのレッドアイズは破壊され、フィリアのライフポイントも減る。
フィリア LP:1300 → 900
《真紅眼の黒竜》A
攻撃力:4800 → 4000
同時に《ヘル・アライアンス》を装備していたレッドアイズの攻撃力がまた下がってしまう。
だが、ここでまたフィリアのカードが発動した。
「手札の、《真紅眼の遡刻竜》の効果を発動。自分フィールドのレベル7以下の『レッドアイズ』モンスターが戦闘または効果で破壊された時、手札のこのカードを守備表示で特殊召喚し、さらに破壊された「レッドアイズ」モンスターを可能な限り特殊召喚する」
《
効果モンスター
星4/闇属性/ドラゴン族/攻1700/守1600
(下級のレッドアイズモンスター……吹雪の《
《真紅眼の黒竜》を小さくしたような見た目の下級レッドアイズモンスターの出現に内心で驚く亮。
それだけに留まらず、この下級レッドアイズモンスターと同時に出現した《時の機械-タイム・マシーン》を思わせる機械から、先ほど戦闘破壊された3体目のレッドアイズが復活する。
《真紅眼の黒竜》C
攻:2400 /守:2000
そして、再び同名モンスターが舞い戻った事により、《ヘル・アライアンス》を装備したレッドアイズの攻撃力が再び上昇した。
《真紅眼の黒竜》A
攻撃力:4000 → 4800
「噓……お兄さんのサイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃を受けたのに……門戸くんのフィールドが元に戻っている」
「それだけではない。元に戻るどころか、先の下級レッドアイズが加わって、モンスターがむしろ増えている……!」
「盤面がまったく崩れない……なんて強固な布陣なの?」
またもや三者三様に驚いてみせる翔、三沢、明日香。
表情にこそ出ないものの、概ね亮も同じ気持ちであった。
────やはり、そう容易には崩せないか。ならば……。
「手札から《サイバー・ヴァリー》召喚」
《サイバー・ヴァリー》
効果モンスター
星1/光属性/機械族/攻 0/守 0
亮 手札:4→ 3
現れたのは、《サイバー・ドラゴン》とはまた異なる形状の機械竜。
「《サイバー・ヴァリー》の効果には3つの選択肢がある。オレは2つ目の効果を選択。《サイバー・ヴァリー》と《リビングデッドの呼び声》を除外し、カードを2枚ドロー」
「なッ……」
その選択に驚いたのは、フィリアの方だった。
《リビングデッドの呼び声》を除外するという事は、その効果によって特殊召喚された《サイバー・ツイン・ドラゴン》までも手放すということだ。……2枚ドローのアドバンテージを理解できるとはいえ、この状況で複数回攻撃できる《サイバー・ツイン・ドラゴン》まで捨てるのは、どういった狙いがあるのだろうか。
亮 手札:3 → 5
「いま、オレの場にモンスターは存在せず、君の場には4体のレッドアイズがいる。よって《サイバー・ドラゴン》を手札から攻撃表示で特殊召喚!」
《サイバー・ドラゴン》B
効果モンスター
星5/光属性/機械族/攻2100/守1600
手札より現れたのは、2体目のサイバー・ドラゴン。
《サイバー・ツイン・ドラゴン》をフィールドから態々どけたのは、これが狙いだったのだ。
「更に、
《サイバー・ドラゴン》A
効果モンスター
星5/光属性/機械族/攻2100/守1600
墓地から現れたのは、最初の亮のターンで《サイバー・ツイン・ドラゴン》の素材となった一体目の《サイバー・ドラゴン》だった。
「そして手札から速攻魔法《フォトン・ジェネレーター・ユニット》を発動。 2体の《サイバー・ドラゴン》を生け贄に捧げ、《サイバー・レーザー・ドラゴン》を特殊召喚」
亮 手札:5 → 2
《サイバー・レーザー・ドラゴン》
効果モンスター
星7/光属性/機械族/攻2400/守1800
あまりにも意外なモンスターの出現に、ピクリと眉をつり上げるフィリア。
《サイバー・レーザー・ドラゴン》はそこそこ強力な効果こそ持っているが、そのコストは《フォトン・ジェネレーター・ユニット》の発動に加えて態々フィールドに揃えた2体の《サイバー・ドラゴン》まで要求する。
……そこで、フィリアはカイザーのある狙いに気付く。
────もしや、本命は墓地肥やしか?
「《サイバー・レーザー・ドラゴン》の効果発動。1ターンに1度、このカードの攻撃力以上の攻撃力・または守備力を持つ相手モンスター1体を破壊できる。オレは、君の《ヘル・アライアンス》を装備したレッドアイズを破壊する!」
《サイバー・レーザー・ドラゴン》がその尻尾の先を、レッドアイズに向けると同時、展開した尾先の中に内蔵されていた砲身が顕わになる。
「フォトン・エクス・ターミネーション!」
砲身から放たれた閃光がレッドアイズへと直撃。
唯一、明確に攻撃力を圧倒できていたレッドアイズが墓地へ送られてしまう。
残るは、素の攻撃力のままのレッドアイズが2体。
「魔法カード《天使の施し》を発動。自分のデッキからカードを3枚ドローし、カードを2枚捨てる」
前世では既に使えなかった禁止カードにフィリアは眉を顰めつつ、捨てられたカードを見てやはり墓地肥やしかと感ずる。
「更に魔法カード《貪欲な壺》を発動。自分の墓地のモンスター5体をデッキに戻してシャッフル……2枚ドローする」
亮 手札:2 → 3
「そして手札から装備魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動。融合デッキから融合モンスターを1体を、融合召喚扱いで特殊召喚し、このカードを装備する。オレが呼び出すのは……《サイバー・エンド・ドラゴン》!」
「ッ!?」
今度こそ、分かりやすくフィリアの目が驚愕に見開かれる。
《サイバー・エンド・ドラゴン》の名前もそうだが……それ以上に、自分とはまったく異なる効果を持つ《未来融合》のカードに対してだ。
────ターンを跨がずに召喚とかそんなのありか!?
……一瞬、そんな風に内心で突っ込んだフィリアであったが、
……そういえば、自分もインチキ効果の《打ち出の小槌》や、なぜか装備モンスター自身もカウントしてくれる《ヘル・アライアンス》とかアニメ効果カードらしきものを使っていたため、人のことはいえないと直ぐに気付いたのであった。
亮が態々墓地肥やしを狙っていた理由は単純明快。《貪欲の壺》で《サイバー・エンド》の融合素材となる《サイバー・ドラゴン》たちをデッキに戻し、《未来融合》によるデッキ融合を狙うためだったのだとフィリアは悟る。
「《サイバー・エンド・ドラゴン》、召喚!」
瞬間、降り立つ巨大な雷鳴。
この場にいる全ての人間がその威容に圧倒されることだろう。
《サイバー・ツイン・ドラゴン》よりも更に大きくなったシルエット。
胴体から生えるは、三頭の機械竜の首。
それぞれが異なる色の眼光を宿し、フィリアとレッドアイズたちを見下ろしていた。
機械竜と、黒竜たち。
帝王と、赤目の麗人が、それぞれにらみ合う。
勝負の行く末は、まだ誰にも分からなかった。
・主人公
「天使の施し」とか禁止カードだし、「未来融合」の効果とか何だそれぼく知ら(ry 状態。
でも自分もアニメ版小槌ぶん回したりとか、アニメ版《ヘル・アライアンス》とか使ってるから文句言えねえ……。
・カイザー
多分、1番楽しんでる人。
同じレッドアイズ使いでありながら吹雪とはまったく違う戦術に胸ワクワク。
・閃刀姫-ロゼ
複数の自分が死んだり蘇ったり死んだり蘇ったり死んだりで、軽く過労死状態。でもマスターのために頑張る。