神の現身との接触   作:倉木学人

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一応次の案はあるけど、難産になりそう


First Contact

 俺が、統治者コーウィンの判断によって部屋に軟禁されることが決まった次の日。

 部屋に現れたのは、そこまで知っている訳ではないヒドラの姿だった。

 

「警護してくれるというのは嬉しいが。お前さんの名前を聞いてもいいか? 俺は超能力で知っているとはいえ、自己紹介は大事だろう」

 

 ヒドラ達が着ている服というのは、どいつも法服を着ているので俺には区別しづらいが。

 こいつは法服の下の胸元(あるいは胴元?)についている大量の勲章で区別はつきそうだ。

 そこら辺の文化はどうも人間と変わらないらしい。

 

「国防大臣であるジョバンニ・デレ・バンデ・ネレと申します。以後、お見知りおきを」

「長い名前をどうも。創造主の化身、elだ。よろしく」

 

 国防大臣、つまりは軍人のトップであり軍の大将とも言える人物。

 この地位に就く人物にしては異様に若いが、地位に見合った実力を持っているのだろう。

 

 …銀河帝国のリーダー年齢が若くなる傾向は、単にステラリス上の問題かもしれんが。

 人間だったら普通、もっと重要な役職ってジジイが就くもんじゃないのかね。

 まあ、あんまり在任期間が短いとプレイヤーとしては困るんだが。

 

「俺はコーウィンに対しては同情的でな。俺がこの部屋から出られないっていうのは別にいい」

 

 あいつは民主主義を守るために暫く俺を軟禁する判断をした。

 それは俺も理解できることなので、それ自体は良いのだ。

 あの様子なら別に俺の意見が通らないって訳でもなさそうだし。

 

 それに俺はこの部屋の外のことなんて全く分からないしな、ワハハ。

 食事はいらないとしても、服と住居はどうもならんのでな。

 この部屋から放り出されたら一体どうなることやら。

 

「ただ、いい加減ネット環境に触れたくなってきた。用意してくれない?」

「はい。今すぐということでしたら、このホログラフィックモニター付きのPCはマツリのネットワークへとつながています」

 

 外に出る必要性は全く感じてはいないが。

 俺もネット中毒なので、ネットサーフィンがしたくなった。

 …俺の知っているようつべやVRCみたいなSNSが生きてるかは大分怪しい所だが。

 

「ああ、これね。テレビみたいなものだと思ってたわ。使い方を教えてくれない?」

「は。私で良ければ」

 

 部屋のリビングに設置してある100インチ程の超大型モニターの前に近づく。

 俺も暫くこの部屋にいたが、使い方が分からず困っていた所だった。

 

「つーか。キーボードとか、タッチパネル文化じゃねーのか。こんなレバーだらけのコントローラーとか初めてみたぞ」

「主には申し訳ないのですが、我々が操作する物ですので。…異種族対応のコントローラは、まだ企画段階と聞いています」

 

 君等ヒドラの手というか、口で操作するタイプのコントローラーなんだな。

 だからスイッチやタッチではなく、レバー文化が発達したのか。

 はえー。

 

「じゃあ、あの国務大臣、専用のPCとか持たねえの? 君等と手の形状が違うから不便でしょ?」

「彼がPCを操作することはなく、普段は我々の信者が操作してますね」

「お偉いさんならそれもアリか。つーても俺がネットサーフィンするのに、お前さんにやらせるのもなー」

 

 とはいえ、どうせなら俺が自分でPC操作するようになりたい。

 国務大臣のやり方じゃあ、母親に操作してもらって淫夢動画を見るようなものだからな。

 ネットサーフィンは一人で、静かにやりたいものだ。

 

「ともかく、これでも一応、慧・椎とも連絡が取れる訳だ。そういや、今日はあいつは見ないがどうしたんだ?」

「彼は本来の任務である星図作成のため、宇宙へと向かわれました」

 

 あー、アイツ道理で見ないと思ってたが。

 ゲーム上だったら俺も科学者のリーダーには似たようなことやらせたしな。

 どんな帝国でも、未知の宇宙を探索して他の帝国とのファーストコンタクトを取るというのは科学者の重要な仕事なのだから。

 

「国防大臣ってことは軍人なんだろうが。お前さんも、宇宙探索に行かないでいいのか? 宇宙探索して、宇宙蛮族やら宇宙生物にやられて死ぬのも軍人の仕事でしょ?」

「ええ。主の命とあらばこのジョバンニ、喜んで命を捧げるつもりです」

 

 ちなみに、ゲームだったら国防大臣も宇宙探索に送り出される筆頭である。

 そして、敵に会って高確率で死ぬ。

 そんな国防大臣の姿の悲しい運命は、俺達プレイヤーたちの笑いの種であったことを覚えている。

 

「そして主の警護という仕事については、こればかりは他の誰にも任せられませんので」

「あっそ」

 

 とはいえこの国防大臣に宇宙へ行ってもらうってのは、今は無理だな。

 役人や科学者としての仕事があるコーウィンや慧・椎たちと違って、国防大臣が一番余裕があるだろうからな。

 俺のことを認知している護衛として、彼が相応しいというのは間違いない。

 

「ふーん。じゃあ、これで慧に繋いでくれるか?」

 

 俺は暇な時間、マツリの社会学(生物学)について現在勉強中であり。

 その際に、慧・椎に色々聞いていた。

 今日は慧とまだ会っていないので、いくつか質問が溜まっている。

 

「主よ、お言葉ですが。彼は既に出発されており、現在電波の届かない環境におかれておりまして」

「は? FTL航法はあるんでしょ? 超高速通信とかないの? 亜空間通信は? タキオン通信は?」

「残念ながら」

 

 まさかの情報。

 お前ら、FTL通信確立してないんかい!

 FTL航法が確立されているから、勝手に通信も確立していると思い込んでいた。

 え、めっちゃそれ不便じゃねえか?

 

「え。お前たち、シュラウドウォーカー中立機構とコンタクトしてるんでしょ。彼らと通信した時とか、どうしてたの?」

「その場合は、直接宇宙船で彼らのもとへと向かうことになってました」

「ゲームの方のFTLみたいなことしてんなお前ら」

 

 思えばStellarisは、そんなに宇宙の通信技術を突き詰めるようなゲームでもなかったからな。

 他国に対する、暗号力や解読力とかの技術はあるにはあるが。

 それこそ超能力を使った、シュラウド通信以外の通信方法って存在していたっけ?

 

「FTL航法が通信に利用できたとしても、同期ズレとか激しそうだな。...こりゃ、超能力理論やシュラウド通信の確立を急いだ方がいいのかもしれんな。FTL通信がないと、星系間の通信とか不便だろうに」

「シュラウド通信、…超能力のテレパシーを利用していると聞いています。わが国の国務大臣も、シュラウドウォーカーとの連絡に限れば不自由しないようですね」

 

 この国で超能力を使えるのは、現状恐らく俺と国務大臣だけ。

 この二人から通信を取る分には、不自由しないが。

 逆に言えば、この二人と通信を取るには現状の通信技術を用いるしかない。

 

「俺が現状通信できるのは、評議会の連中だけだなー。どんだけ離れても、慧・椎やコーウィンとは話が出来ると思う」

「やはり、主は偉大なお方」

「シュラウドウォーカーの連中でも出来ることだろうに。将来的にはお前たちも、出来るってそれ一番言われているから」

 

 21世紀相当の通信技術でも、ネットは既に十分な戦略兵器だったからな。

 宇宙文明が戦争をするにも、それ相当の通信技術が必要になってくる。

 そん中でも超能力による通信は、宇宙文明全体から見ても最上位の技術と言っても良い。

 

「シュラウドウォーカーの奴に頼んで、超能力を学ぶこととかできないのか?」

「彼らに一度頼んで、超能力の研究の補助をお願いしたのですが。超能力の確立は、取引に含まないと言われまして。国務大臣の方も役人としての業務で忙しく」

「超能力者の役人をよこしてくれるだけ、まだ取っ掛かりにはなる、か」

 

 まさか、通信だけのために俺や国務大臣を酷使するわけにもいかんしな。

 いや、国務大臣は既にそういう仕事にもついているのか?

 いずれにしても、超能力の軍事レベルへの普及は大分急務に見える。

 

「こりゃあ、他の帝国や勢力とのファーストコンタクトも苦労するかもしれんなー」

 

 亜空間エコーといったイベントやタキオンセンサーといった技術は知っているので。

 宇宙文明に相応しいセンサーや通信技術が、ないはずはないんだが。

 いやはや、どーしたもんかね。

 

「いや、ひょっとすると。どうにかなるかもしれんな」

「と、いうと?」

「シュラウドウォーカー以外の中立勢力で、超高速通信が出来そうな奴、いたなって」

 

 確定ではないが、高確率でこの銀河にも存在している奴の存在を思い出した。

 

 俺は自分の超能力を起動させ。

 VRで使っていたメニュー画面を弄り始める。

 どこからか経由で、ウェブブラウザに接続できないかな?

 

「あった、ようつべの検索バーじゃん」

「私には、何も画面に見えませんが。主は超能力で何かをお探しで?」

「ああ。そいつらを探してみる」

 

 何故かStellarisの関連の動画しか並んでいない画面を無視して。

 俺はいくつかの単語で検索バーで探し始める。

 タキオン粒子、銀河帝国のプリセット、そういった単語で検索を繰り返す。

 

「お、いい動画みっけ。超能力でこの映像をお前さんにも見せれるようだな。ディスプレイに表示しよう」

 

 現実のディスプレイに、超能力で干渉し。

 俺のようつべの動画を、このディスプレイでも表示してみる。

 VR内でも出来たことだ、多分ここでも出来る気がした。

 暫くのローディングの後、その動画は流れ始めた。

 

『…快適な惑星環境をお求めではないですか? そんな時は、ヴェングラル・トリウムの大気消臭剤! 今ならたった2ヵ月分の社会学研究で!』

 

 健康に影響が出そうな点滅する光。

 わざと音量のボリュームを間違えてる非常にやかましい声。

 正に現代ネットの広告と呼ぶに相応しい広告の映像が流れた。

 

「今の映像は? 我々のものではないようですが」

「銀河上の”キャラバン”と自称する商人連合の広告を出してみた。惑星レルネーⅠにも届いているかと思ったが、どうもビンゴみたいだな」

 

 俺は、その広告を何度か再生させたり、キャラバンの別の広告を再生させたりする。

 その中の雑多な情報を選別し、奴らの情報を集めていく。

 動画の内容を参考に、なんとシュラウド通信用に作られた奴らのホームページを見つけ出すことが出来た。

 

 銀河の住所はスケールが大きすぎて良く分からないが。

 それでもアクセス方法は書かれているので、特定はなんとか出来そうだ。

 

「本拠地と思われる場所も特定出来た。ディスプレイに、銀河の星図は出せるか? 出来れば2Dがいいんだが」

「少々お待ちを」

 

 今度は、国防大臣にパソコンを操作させ。

 マツリ財団が保有している銀河の星図と呼べるものを出してもらった。

 俺が夢で見る銀河の姿には物足りないが、これで十分だった。

 

「この星だな。星系の名前はコーの羅針盤、だったか?」

「…未探索の領域ですが、セレファイス星系からも比較的近いですね。後は、ハイパーレーンが繋がっていればアクセス出来そうです」

 

 後は、マツリの科学者に探索させればファーストコンタクトは確立できるだろう。

 俺がもっと情報を引き出せないかな?

 後は、どこまで超能力が機能するかだ。

 

「彼らの営業部門とも話が出来そうだ。相手はまあまあ未知だが、対応してくれるかな?」

「…おお、主よ。異星人とのファーストコンタクトが、物凄いスピードで進んでいっている」

「超能力があれば、解読力や暗号力は上がるからなあ」

 

 相手もシュラウド通信を知っている分、こちらの話も通じるのではないか。

 そんな期待をもって、俺はキャラバンの連中にコンタクトしてみた。

 会話用のURLのリンクが送られてきた、これもディスプレイに表示できそうだな。

 

『はい、こちらヴェングラル・トリウム営業部です! おや? 新規のお客様ですか?』

「ああ、俺はある惑星で世話になっている、ただの科学者だ」

 

 恐らく、相手の営業マンと思われるエイリアンが通信画面に表示された。

 相手の姿は完全に未知なので、相手のフォーマットとかは分からないのだが。

 ともかく、日本語での会話の意思は感じられる。

 

「俺達は、超高速通信方法を探しているんだが。そういう技術は、お前たちの方で売ってないか?」

『お客様は、既にシュラウド通信の方を確立しておいでのようですが。それとは別に、ということでよろしかったですか?』

「ああ。こういう技術の売買は流石に専門外か?」

『とんでもございません! 我らの提携企業である、ヌマ修道会の方で取り扱っております! 勿論、わが社での契約も可能ですよ!』

 

 ヌマ修道会、その名もゲームで聞いた名前だ。

 キャラバンの一つであり、ヴェングラル・トリウムとは同類だったか。

 どういう物を扱っているのかはあまり覚えてないが、まあ誤差だな。

 

「売るとしたら、幾らだ?」

『そうですねえ。エネルギーにして、147PW(ペタワット)でどうですか?』

「参考にさせてもらう。交渉成立までは俺の一存では決められんのでな」

 

 宇宙の基本通貨であるエネルギーでの支払いか。

 ペタワット、という単位は聞き覚えがないが。

 多分かなり安いとは思うが、この等辺はコーウィン達の議会に通さないとダメだろうな。

 

『売買の成立をお待ちしております。よろしければ、お客様のお名前と住所、電話番号の方を教えて頂いてもよろしいでしょうか?』

「それについては、近いうちにお前たちの本拠地に向かわせてもらう。名前は、マツリ財団だ」

『マツリ財団様ですね、わかりました! お客様の到着を心よりお待ちしております』

 

 シュラウドの通信を終え、俺は国防大臣に向き合った。

 いつもの、崇めるような目つきで俺を見ている気がする。

 見なくともわかる。

 

「ん。これで、問題は解決しそうだな。後のコンタクトはよろしく」

「やはり主は、マツリの公に出るべきなのでは?」

「やだよ。面倒くさい」

 

 だから、俺はそういうの嫌なんだってば。

 言っても聞かねー奴らだな。

 これだから精神主義者はさー。

 

 扱いやすい連中とはいえ、こんな連中のお偉いさんやるのは不安がある。

 

「あの、主よ。キャラバンの住所について気づいたことがあるのですが」

「何よ」

 

 なんか、急に真剣そうな感じになったので。

 俺も姿勢を改める。

 

 俺、なんか変なこと言ったかね。

 

「彼らの存在は、シュラウドウォーカーの導師も認知する所ですよね。何故、国務大臣は彼らの通信を我々に知らせなかったのでしょうか?」

「スパム広告だったからじゃねえかな? キャラバンって、あんまり好かれている連中でもないんだわ」

 

 




リーダー:ジョバンニ・デレ
種族:軟体人
性別:男
年齢:44才
派閥:精神主義
クラス:軍人
特性:強靭
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