多分、内容的にはたどり着けないと思います...
残念ではありますが...
25/10/6 気になる点を修正
俺はいつものタワマン部屋で、慧・椎と超能力による通信を行っていた。
こういう時に超能力は遠隔でも通信出来て便利だな。
彼は任務で宇宙にいるため、俺からの情報が帝国の最新情報である。
俺は彼に、宇宙に居るキャラバンという連中のことを伝えた。
『流石です、我らが主よ。異星人とのコンタクトをこんなに早く済ませてしまうとは』
「そういうのはいいから。さすおにとか、この年になってから経験してもしょーもねーんだわ」
『良いではないですか、良いではないですか。偉大なる主の存在を考えるならば、流石はお兄様です、と言っても一切過言ではありませんよ』
「…この世界でもあるのか? さすおに?」
レルネー1が地球に似ているとはいえ、そこら辺の文化も似るもんかね。
暇が有ったら、レルネーの娯楽小説も読み漁ってみたいもんだ。
「ま、FTL通信も、天才のお前さんなら出来たことかもしれんがな」
『あの、流石に、その、主よ。私がFTL航法を見つけた、というのはプロバガンダの誇大広告なので。アレに関しては、私がプロジェクトの責任者だっただけですので』
アレ?
俺の記憶では、歴史書にはFTLを慧・椎が見つけたって書いてあったはずなんだが。
「そうなん?」
『ハイパーレーン航法を通信に適用するなんて、簡単だとはちょっと。…私の専門外なので、発言は慎みたいと思います』
俺もFTL航法や通信が簡単だとは言えないか。
ここはサイエンス・フィクションの世界だし、俺もそこら辺は専門外というか完全に未知の世界だし。
現実だったら超高速のワープや通信なんて存在しないはずだしな。
『コホン。では、我々の探査船の目的地は変更として、そのキャラバンとやらの本拠地へと向かうとします』
「ああ、他の勢力との接触が、マツリの何よりの悲願だったな。頑張れよ」
『主にそういって頂けると幸いです。宇宙というのは広大で孤独ですからな。こうやって主に道を示していただけるなら、この上ない我らの喜び』
そうやって、俺は自ら彼個人との通信を切った。
ふう。
通常の通信と比較して、精神の力を使うシュラウド通信は精神的な疲労がするな。
大した疲労ではないが、心というものはどうも無限でもないらしい。
「主よ。緊急事態です」
そう思っていると、部屋に二人のヒドラが入ってきた。
今となっては良く見知った姿だ。
「コーウィンに、ジェバンニか。国のトップ二人同時とは珍しいな。俺に何か用か?」
「ええ。国の危機ですので、是非とも主のご協力をいただきたく」
「国の危機ぃ?」
普段のコーウィンは落ち着いた物腰だが、大分切羽詰まったような印象を受ける。
まだ帝国は序盤も序盤だろうに、侵略的宇宙人の侵略でも受けたんか?
浄化主義とか殺戮機械とかだったら嫌だな。
「異端者のテロリスト共が、正体不明の宇宙船に乗って脱走しました」
「…あ~~~。そういうのあったな~」
そういや序盤はそういうイベントあったな。
カルト教団の反乱って奴。
「おお! 流石は全知全能の我らの主よ!」
「主は、ご存じのようですが。これは一体?」
「確かに危機ではあるが。アレだ。別に放っておいても良いぞ」
俺が楽観的な態度を示すが、彼らは多頭の首をかしげている。
あまり納得はしてなさそうだな。
「その。お言葉ですが、主よ。もう少し、恥ずかしながらこのコーウィンに、助言の方を頂けると幸いなのですが」
「恩赦を与えたら、勝手に戻ってくるぞ。幸いにも、お前ら精神主義だしな」
カルト教団イベントとは開始時の帝国に発生するイベントの一つであり。
弱小で敵対的な宇宙船の艦隊が現れるというものである。
長くて面倒な割に報酬が不味かったので、割と最近のアプデで美味しいイベントになったと覚えている。
「成程。流石です!」
「…国防大臣。貴様はどう思う?」
国防大臣は勝手に納得してるが、コーウィンはまだ疑っているな。
国のトップは、適度に疑問に思ってくれるほうが俺としてはありがたいな。
というか、国防大臣は何が流石なのか。
「なあに、簡単なことですよ。主の言葉さえあれば、異端者共を改宗させることなんて容易いですからね! ですよね?」
「え?」
「え?」
「え?」
ヒドラ二人のたくさんある目が、全部こっちに向いている。
こっち見んなし。
「おい。この場合、国のトップっつーか、代表って、コーウィンじゃんね? あいつらを説得したり恩赦を与えるやつって、コーウィンじゃんね?」
「お言葉ですが。国防大臣が申しあげる事には、主以上にお告げを与えるに相応しい人物はいない、ということでして。私も、その事に関しては同意したいと思います」
何、お前ら俺に投げるんか?
お前ら、坊さんなんだからSEKKYOのも仕事のひとつだろーが!
元バンビ―の俺に説得しろっていうんか?
「…本当に、ええんか? 俺が赦したらあいつら無罪って、法の越権じゃねえの? 俺、別に、権利を持ってる訳じゃ。…ああ、この国、神権共和制だったわ畜生が」
今からでも神権じゃない平等主義の国になんねーかな。
この俺が、この場の全権持つとか正気じゃねーぞ。
辞めてえ。
「ちなみに、この国の法律によると、あいつらの罪ってどうなん?」
「死刑ですね。異端ですから」
わお、極端。
とはいえステラリスの帝国だし、普通はそんなものだろうな。
”そこまでせんでも”…なんて思う俺が平和ボケの甘ちゃんなだけだな。
はあ。
「…あい、わかった。一回ぐらい、降伏勧告はするべきか。最終的に殺すのは置いといて、それでもいいだろ」
「主が望まれるのであれば」
俺が赦しても、後から殺されるような気もするが。
まあ、その時はその時でいいや。
俺もいいだしっぺの法則だからやるだけで、その後までは知らんわ。
「あいつらの通信チャンネルとか、正確な座標とか。彼ら個人を特定できる情報はあるか? 出来れば全員分」
「こちらに。幸い、全員の身元は割れています。元軍所属の、…どうか我らの罪をお許しください」
「最低でも、宇宙戦艦の操作が出来る連中だからな。そうなるか、道理で。…しかし、若い連中だなあ、おい」
現代日本人からしたら、宇宙船乗りってトップエリートのはずなんだがな。
とはいえ、今は西暦で言えば23世紀。
その頃には宇宙航行の技術も簡易化していくのも当然だろう。
しかし、程度の低い連中でも宇宙船を操ることができる、というのは喜ぶべきなのだろうか。
そうでもしないと宇宙戦争なんて出来ねーからなー。
この世界はなんつーたって、戦争ゲームの世界だし。
「ちなみにさ。この国の軍人って、どういう連中なん? 国防大臣も聖職者ってたら、軍曹みたいに階級低い奴も聖職者なのか?」
「
日本でも自衛隊の幹部クラスは全員大卒だしねー。
ちなみに”成功したい? なら僧侶を目指そうね”というのは、この国で誰もが知っている常識らしい。
聖職者の道は科挙並みの難易度だが、その分見返りも科挙相当。
聖書曰く、僧の道は神が定めた
そういう社会なので、軍人もそれなりには尊敬を得るのが間違いではないそうだが。
それでも
「なるへそ。多分、これで連中とテレパシーでアクセス出来るとは思うんだが。コーウィン、どうすればいいと思う?」
「どう、というと?」
餅は餅屋、精神主義への説得なら聖職者。
俺はあまり上手い説得が思いつかないんだが。
カリスマ持ちのこいつなら、なんかいいアイデア持ってないかね。
「俺が無罪放免にするから帰っておいで、って言って納得するんかね? お前らはともかく、連中はさ?」
「彼らが元々信仰深い、とは言い難いですが。…ただ、彼らの身分では超能力に触れる機会が一切ないと思います。主の超能力の存在を見せつけるならば、…どうでしょうか?」
「そうか。大変結構」
たしかゲームでも、超能力自体が精神主義への魅力があったよな?
それを信じるとするか。
これで、失敗したらどうするかな。
最悪殺せばいいとはいえ、
**
その宇宙戦艦は、セレファイス星系のレルネー1のごくごく近くに浮遊していた。
星系基地のすぐ傍という重要ポジションに陣取ってこそいるが、戦闘は始まっていない。
それは、お互いに戦闘の意思がまだないことを意味していた。
『どうだ。評議員どもの反応は』
『ダメです。恐らくは、現在議会で検討中なのかと』
『チッ。マツリ上層部のウスノロ共め』
その若い軍人達には大儀があった。
腐りきったレルネーの聖職者たちを一掃し、彼らの手で星に正義の鉄槌を下すのだと。
少なくとも下級軍人である彼らは、それが必要だと思っているようだ。
どこからどう見ても、どこに出しても恥ずかしいテロリストだね。
彼等は俺というヒューマノイドではないとはいえ。
俺には”若さという過ち”としか思えんし、実際それ以上の意味もないだろう。
「忘れちまえ、異教のつらさなんてよ…」
俺がテレパシーを使って、彼らに語り掛ける。
俺自身は宇宙船から離れた、地上のやわらかいソファの上に腰かけているが。
それでも余裕で彼らの脳内に伝えることができる。
『な、何者だ!』
『誰だ! 何者かのハッキングか! 通信はどうなっている?!』
『い、いえ! 通信ではありません! スピーカーも切断していますが、音声だけがどこからか伝わっています!』
イメージするのは最高の自分。
自信満々で、例え伝わらなくとも身振り手振りも入れる。
そうして俺は口を開く。
「よう、
そこで思い浮かべるのは、かつて見ていた漫画の神を名乗るキャラ。
特に意味はないが、携帯端末を持ってそれっぽい姿勢を演じる。
『神、だと』
『あ、あ』
テレパシーという、彼らにとって未知の感覚が直接脳内を揺さぶる。
一応、練習時は国防大臣に好評だったが、さて。
「わかるぜ。大人になりきれねー大人の断末魔。…”大人はつれえ”、”大人は退屈だ”」
俺は、あえて彼らの感情に寄り添う言葉を選んだ。
説得ってのは、まず相手の痛みをなぞるところから始まる。
それが若さの痛みなら、なおさらだ。
俺も昔は、似たようなことを思ってた気が…しないでもない。
『貴方を、ずっと待っていた!』
その声には、熱があった。
俺の言葉が、彼らの中の何かを突いたらしい。
テロリストってのは、孤独な信者でもある。
誰かに肯定されることを、ずっと渇望してる。
「なら…。ずっと…ずっと…この”暴走”の中にいてえなあ。覚めることなく、ずっと…ずっと…。違うか?」
俺は、彼らの幻想に乗っかる形で言葉を紡ぐ。
現実なんて、誰も望んじゃいない。
夢の中で暴れられるなら、それが一番楽だ。
『
『”神”が…!!』
『
彼らの脳内が、混乱と興奮で満たされていくのが分かる。
テレパシーってのは便利だな。
言葉以上に、感情が伝わる。
俺が”神”だと信じるには、十分すぎる演出だったらしい。
「オレは…そんな奴らを、少しだけでも…肯定してやりたかった。神が
俺の言葉は、命令でも説教でもない。
とはいえ、実際に効力は保証する。
俺が神なら、赦すくらいはしてやらんとな。
『
あっさりだな、若いってのはそういうもんか。
勢いで走って、勢いで止まる。
「行くぜ野郎ども出発だァ!」
『押忍!!!』
勢いだけは一級品だな。
俺の言葉が、彼らの暴走を止めたのか、加速させたのか。
でもまあ、今は止まった。
**
「流石です。主よ」
「…俺はこんな連中の神でいいんか?」
「お言葉ですが、主よ。我々の上はともかく、下はあんなものですよ」
やっぱ今からでも、人権的な民主主義になんねーかなー。
この国の底辺の下っ端を見て、俺はそう思わずにはいられんかった。