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時を遡ってテラマキアたちがサカズキと対峙する少し前。
「全くテラのやつ、どこ行ったんだ?」
ガイアはお忍びで勝手に出かけたテラマキアを探してシャボンディ諸島にいた。
「テラの御父上に連れてこいと言われたんだがな」
数日後に行われるはずの大人間オークション。
それが多くの天竜人の希望、またの名を命令で今日に変更にされたのでゾディアックはテラマキアも連れていこうとしたが、案の定テラマキアはいつも通り勝手に外に出かけていた。
ガイアはカンカンに怒っていたゾディアックを思い出して嘆息する。
「連れて帰ったらお仕置きだな」
その時、悲鳴が聞こえたと共に何かが彼の体を凄まじい衝撃で走り抜けた。
「うおっ──!?」
己の体を見下ろすと胴に肉球型の穴が空いていた。
自然系の能力者じゃなければ致命傷は避けられなかっただろう。
「
素早く体を後ろに引く。
先程まで立っていた場所を砂の刃が通り過ぎ、そのまま建造物を斬り倒す。
気づくのが遅れていれば当たっていたかもしれない。
「
「
どうやらこんな市街地のど真ん中で海賊たちが小競り合いを始めたようだった。
その余波で次々と周りの人や建物が傷つき、壊れていく。
「ああっ!私の家があぁ!!」
住人らしき女性が斬り倒された家を見て、嘆きの声を上げていた。
「おい、しっかりしろ!」
その向かい側では男性が気を失った恋人らしき女性を抱えてうずくまっている。
その二人に砂の刃が迫っていた。
ガイアは能力でその二人の前に鋼鉄の壁を作る。
砂の刃は壁に阻まれてあっさりと霧散した。
ガイアは戦闘音の響く方を睨み付ける。
もはや怒りの限界だった。
「
地面から土が大きく盛り上がり、直径4メートル程の巨大な塊となる。
「
その塊は拳の形を模して、未だ暴れている海賊たちへと放たれた。
「くっ!?
突然乱入したその巨大な土の拳に海賊の一人―――クロコダイルが反射的に巨大な砂嵐を繰り出す。
「なにっ!」
が、その土の拳は砂嵐を物ともせず突き破り、クロコダイルを容易く粉砕した。
しかし、覇気を纏わない攻撃だった以上、砂の自然系であるクロコダイルには効かない。
粉々にされて宙に舞った砂が集まり、元の形をとっていく。
「自然系の能力者か」
その一部始終を見て得心するガイア。
「お前は確か……」
「キーッシッシッシ!堕ちた中将、ガイアか! まさかこんな海軍本部に近い島にいるとはな。海軍に未練でもあるのか?」
モリアがガイアの姿を見て、嘲笑うように問いかける。
「貴様らに話す必要があるか? 海のクズどもが」
クロコダイルにゲッコー・モリア、それにバーソロミュー・くまの三人。
海軍に所属していた頃の癖で手配書をこまめに確認していたガイアは暴れていた海賊が最近名を上げているルーキーだと一目でわかった。
「民間人に被害が出る。よそで暴れろ。無様を晒したくなければな」
一応、言葉で軽く脅しをかける。
が、相手は海賊。
それも血気盛んな怖いモノ知らずのルーキー。
「もはや海軍ですらない貴様に言われる筋はない」
「カスが死のうと俺には関係ない」
「キッシッシッシ! 巻き込まれる奴が悪いんだ!」
満場一致の拒否だった。
ならば後は単純である。
「そうか。なら力づくだ」
ガイアはバキリと指を鳴らす。
海軍を辞めて今では奴隷にまで堕ちた身だが、未だ己の正義を捨てたつもりはない。
弱きを助け、強きを挫く。
今もその信念を胸に生きている。
そしてそれを為すべきなのはまさしく今この時である。
「これ以上被害を出したくないんでな。手加減なしで行かせてもらう」
まさにガイアとルーキーたちが戦闘が始まろうとする時。
「フフフフ。まさかあの堕ちた中将がこの島にいるとはな」
それを影から見物する男───ドンキホーテ・ドフラミンゴが嗤っていた。
彼がこの場にいたのは単純に偶然だった。
この島に来た目的を終えて、海軍に気づかれない内に手早く島を離れようとした時にあの小競り合いが始まった。
それだけなら大して珍しくもないもので足を止めるに値しなかったが、あの堕ちた中将が出てきたことで話が変わった。
さる情報筋で中将ガイアが奴隷に、それも天竜人に買われたことは既に耳にしていた。
が、どうしたことか、あの中将は奴隷の首輪をしていないどころか海軍にいた頃のようにピンピンしている。
一瞬、情報の信頼性について疑ったが、すぐに否定した。
天竜人が関わった取引などオークションに裏を取ればすぐに分かってしまう。
デマが入る余地すらない。
ならば天竜人から逃げ出したのか。
これも可能性が薄い。
逃げ出すのは不可能ではないだろうが、仮に逃げ出した場合、次期大将とも噂されていた大物である。
必ず政府や海軍に何らかの動きがあるはずだが、目ぼしい動きもなかった。
思考が目まぐるしく流れていくが、一向に答えは出ない。
しかし、少なくともが知らない動きがあった事ははっきりしていた。
計画を進める上であれほどの大物の動きを把握できていないのは危険だ。
そう考えて結局、ここで様子を見て、自身で答えを探る方が手っ取り早く確実という結論に辿り着いた。
そうした事情と退屈しのぎも兼ねてドフラミンゴは面白そうにこれから始まる戦いを観戦しようとしていた。
「錬金〝ダイヤモンド〟」
ガイアは能力を発動させる。
「
ガイアの体から様々な種類の無数のダイヤモンド製の武器が射出され、クロコダイルたちを狙う。
もちろんガイアはそれらに武装色の覇気を纏わせている。
そんなことは露ほども知らないルーキーたち。
モリアとくまはあっさり躱すが、クロコダイルだけはいつものように自然系の能力を信頼し、躱すことを怠った。
それは当然過信であり、ガイアの放った覇気を纏った武具たちは何の抵抗もなく当たり前にクロコダイルの体を貫いた。
「がはっ…! なんだとっ!!!??」
驚愕。
全身に走る激痛すら押しのけてクロコダイルは頭はそれに支配された。
弱点である水をかけられて攻撃が当たったことはあるにしても、通常の状態で攻撃を受けたことはなかった。
自然系に物理攻撃は通用しない。
実際に今までこの言葉の通り、前半の海で己の体に触れることが出来たのは誰一人いなかった。
そしてこれからもそのはずだった。
にも関わらず目の前の敵は容易くその己が信じていた現実を打ち砕いてくれた。
「面白れぇ……!」
クロコダイルは獰猛な笑みを浮かべる。
「こりゃ驚いた。自然系に物理攻撃を通すなんざ、どんな手品使ったんだ?」
モリアも驚愕の表情を見せ、くまは眉間に皺を寄せる。
「覇気も知らないようじゃ程度が知れるな」
ガイアは無慈悲にもクロコダイルに追撃を図る。
「行け、
しかし、モリアがガイアの背後を狙って己の影を突進させる。
当然見聞色の覇気も修めているガイアには通用するはずもなくあっさり躱される。
「キッシッシッシ! 何に知ろうが知るまいが勝ちゃあいいのさ」
「勝てればな」
影はなおもしつこくガイアを追撃する。
もちろんガイアはそれらの攻撃を全て掠る事すらなく躱していく。
見聞色の覇気を使っている以上、格下の攻撃に当たる事はまずない。
「ちいっ!すばしっこいやつめ!」
そんな事を知る由もないモリアは攻撃が当たらない事に歯嚙みする。
唐突にモリアが膝をつき、吐血する。
モリアの背後にあった家に肉球型の穴が空いていた。
「ごふっ……。てめえ、くま……!」
「注意散漫だな」
くまの「
ガイアへの攻撃に集中していたモリアに避ける術はなかった。
「俺達は別にあの男を倒すために協力している訳ではない」
それは至極真っ当な事だった。
彼らはガイアが来るまでの間も戦っていた上にそもそも人一倍我の強い海賊。
元海軍という共通の敵相手とはいえ協力という言葉が出てくるはずもない。
少なくともくまはそうだった。
「バトルロイヤルという訳か?」
「的を射ている」
その瞬間、くまの姿が消える。
いつの間にかガイアの後方に移動し、しこを踏み始めていた。
それが目で追えない動きだったことにガイアは少しだけ驚く。
見聞色の覇気で背後を取られた事はわかったが、まさか覇気も知らないルーキーが自分の目を超えるとは思ってもみなかった。
「速いな。剃のような移動法という訳でもないし、悪魔の実か?」
「答える義理はない」
くまがしこを踏み終え、両手を前に突き出して構える。
突き出された両手にあった本来、人の手にない肉球を見てガイアは目を細めた。
「肉球?」
「つっぱり
くまは怒涛の勢いで何もない空をはたく。
はたかれた大気が衝撃波となってガイアを襲う。
「なるほど、大気をはたいて砲弾の様に使うか」
ガイアはそれらを何でもない様に紙一重で躱し、くまとの距離を瞬時に詰める。
予想外の速さに対応が遅れたくまは急いで両手を前に持っていき、肉球による反撃を試みようとした。
「遅い」
が、それよりも先にガイアが武装色の覇気を纏わせた拳でくまを鳩尾を抉る。
くまの巨体が一瞬、空に浮く。
呻き声を上げると共にくまは膝をついた。
「お返しだ」
ようやく立ち直ったクロコダイルがその攻撃の隙を狙ってガイアの背後に迫る。
「
「
しかし、三日月形の砂の刃で斬りかかろうとしたクロコダイルは影の槍に貫かれて出鼻を挫かれる。
「くそっ!邪魔しやがって!」
「そいつは俺の獲物だ!やらせるか!」
言い争いを始めるモリアとクロコダイルにガイアは嘆息した。
先程の戦いで三人の大体の力を掴んだガイアはさっさと終わらせようと挑発を試みる。
「どうでもいいから全員でかかってこい。五秒で終わらせてやるから……?」
挑発の最後が疑問形になったのは見聞色の覇気がある声を捉えたからだった。
苛立ちと怒りの声。
それもそれなりの実力者のだ。
そして声の主が動き始める。
「ごちゃごちゃうるせえええええええええーーーーーー!!!!!」
突然、何者かの怒声が響き渡る。
同時に巨大な長いものが戦闘で半壊した酒場から屋根を突き破り、存在を誇示するかの様に垂直に聳え立つ。
「なんだありゃ?」
「鱗の生えた尻尾?」
その巨大な長い鱗の尻尾らしきものはゆらゆらと揺れた後、ガイア達を目がけて振り下ろされた。
圧倒的な質量を持ったそれが全てを叩き潰さんとばかりに迫る。
「ちぃッ!」
「ふざけやがって!」
「くっ」
海賊たちが尾から逃れようと回避行動を取る中、ガイアは迫る尾を見据える。
「これ以上、町に被害を与えてたまるか。
瞬時にガイアの右手が膨れ上がり、巨大な土塊の手と化す。
その手が振り下ろされた巨大な尾を受け止める。
轟音。
衝撃が大気を震わせる。
ガイアの足元を中心に地面に亀裂が走り、砕ける。
被害はそれだけで治まった。
受け止められた尾がシュルシュルと小さくなって、もはや見る影も無くなった酒場の跡地に戻っていく。
それを見届けたガイアも警戒を解かずに手を戻す。
「たくっ。おちおち酒も飲めやしない」
その跡地から青い髪の青年が現れた。
けだるそうに酒瓶を片手に文句を垂らす。
「手配書で見た顔だな。《神咲》のブルーだったか」
ガイアにブルーと呼ばれた青年は持っていた酒瓶の中身を一気に呷って、それを投げ捨てた。
酒で汚れた口を手で乱暴に拭うと、ガイア達を見据える。
「俺の事なんざどうでもいいんだよ。人が機嫌良く酒飲んでる横でドンパチやりやがって。死にてぇのか」
「それならここで暴れ始めた奴等に文句を言え」
「ああん? どいつ等だ」
ガイアが顎で示した先を怒りを滾らせた目で追う。
そこにいたのは三人の極悪海賊達。
「知るかバカ」
「そこにいる奴が悪い」
「死ね」
つい先程、圧し潰されかけた直後。
当然、反省も謝罪もあるはずなく、その口から出るのは罵倒のみである。
それを聞いたブルーの反応。
「わかった、全員殺す」
案の定だった。
再び一触即発の雰囲気が場を満たす。
海賊達の下らないやり取りに呆れたガイアは、さっさと終わらせようと動き始めた。
「こんな所で何を暴れておるのじゃ」
「なっ……!」
が、聞き慣れた声に驚き、足が止まる。
他のルーキーたちは現れたその姿を見て、驚愕と屈辱に顔を歪ませながら、慌てて膝をついて顔を下げる。
「それでテラマキアは見つかったのか、ガイア」
唐突に戦場に現れたのは天竜人。
四つん這いではなく、しっかり大地に足を踏みしめて立っている巨人の奴隷の、その肩に乗ったゾディアックだった。
「フフフフ! 天竜人の奴らまで絡んできたか」
ドフラミンゴは未だ事態の行く末を遠方から見物していた。
先程まではバレない程度に近くの物陰から様子を窺っていたが、ブルーの尾に巻き込まれそうになり、一旦距離を取ったのである。
「しかし、読めねえな。あの中将いったいどういう立場だ?」
ドフラミンゴの目に映るのは最初は膝まづいていたとは言え、今は天竜人相手に真正面に立って対応するガイアの姿。
そしてそのガイアを銃で撃つ事はおろか、咎める事さえせずに普通に天竜人は会話している。
距離が離れているせいで会話の内容は分からないが、見る限り険悪な様子ではない。
通常の天竜人なら考えられない極めて異常な状況だった。
下等種に対して何の措置もしない天竜人。
ドフラミンゴの脳裏に最低最悪の記憶がちらつく。
「……イライラさせやがって」
地獄の底から響くような声。
もしも聞いていた者がいたなら、関係ないにも関わらず、今すぐ土下座して許しを請うていただろう。
それ程までにその言葉には狂おしい程の怨嗟と憤怒が込められていた。
その顔が醜悪な笑みで歪む。
「仕方ねえ奴だ。その気がねえなら俺がその気にさせてやろう」
ドフラミンゴは右手をゆっくりと動かす。
まるで操り糸を手繰る様な手つきで。
「フフフフフ……!」
「これ、そうかしこまらんで良い」
巨人に肩から地面に降ろしてもらったゾディアックは自分の姿を認めて、慌てて膝をつこうとするガイアを止める。
「ですが……」
ガイアはこの状況が政府、ひいては他の天竜人に知られる事を危惧していた。
テラマキアの両親であるゾディアックとサマルドリアが通常の天竜人と違い、人間その他種族達に対する情を持っている事はこの奴隷生活を通して既知の事実だった。
そしてそれを周囲に隠している事も。
「心配せんでも良い。仮に見られてもどうにでも出来る様に、その辺りの根回しは済んでおる」
しかし、ガイアは心配は杞憂であった。
ゾディアックはこれまで長い間、その異端な思想を持ちながら家族を守る為にあらゆる手段を用いて、周囲を欺き続けてきた百戦錬磨の人物である。
今更この程度の状況を見られた所で、それを握りつぶす事は造作もなかった。
「しかし、海賊共が」
「放って置け。ごろつき共の目撃証言など誰も相手にせんわ」
ガイアは周囲に膝まづく海賊達の目を気にするが、そんな躊躇いをゾディアックは一蹴する。
「……では、お言葉に甘えて」
「うむ、それでよい。お主を粗末に扱ったらサマルドリアにどやされてしまうわ」
恐る恐る立ち上がるガイアを見て、満足げにゾディアックは頷く。
海賊達は一連の会話の流れを聞いて、心の中で困惑していた。
海軍から離反した元中将が何をどうしたら天竜人に親しげにされるのか。
まるで先が読めない状況にこの場を離れたい欲求が湧くが、天竜人の手前、下手に動く事も出来ない。
今、彼らに出来るのは固唾を吞んで事の成り行きを見守る事だけだった。
「それで、どうしてこんなところに?」
ガイアはまず当然の疑問を投げかける。
ここは先程まで戦場だった場所。
いくら天竜人とは言え、好き好んで来るはずはない。
「いや、儂もテラを探しておった最中で、その時にこの町から巨大な土の手が見えての。お主がおると分かって何があったのかと来てみた次第じゃ」
ゾディアックは顎を擦りながら荒れ果てた町を見渡した後に膝まづいている海賊達に目をやる。
「ま、お主が訳もなく暴れるはずがないからのう。大方そこの海賊どもを懲らしめていたという所か」
「仰った通りです。申し訳御座いません。すぐに済ませてテラを探しに行きますので」
「これ、そんな面倒な事はせんでよい。儂の方から海軍に連絡を入れておく故、お主はテラを」
そこまで言って、ゾディアックの言葉が止まった。
その顔面が歪んでいる。
何故?
拳がその頬に突き刺さっているからだ。
誰が?
その拳の主は海賊ブルー。
つまりは、殴ったのだ。
海賊が天竜人を。
ガイアが目の前に現実を理解した時にはゾディアックは殴り飛ばされていた。
地面を弾んで勢いよく転がっていく。
「ご主人様!」
巨人の奴隷が野太い悲痛な声をあげてゾディアックに駆け寄っていく。
ガイアは弾かれた様にブルーの首を鷲掴み、そのまま仰向けに地面に打ち据えた。
「全員動くな」
混乱に乗じてこの場を離れようとした海賊達はガイアの放った言葉の圧にその動きを止められた。
ガイアは打ち据えた目の前の男を睨みつける。
完全に油断していた。
普段のガイアであればあの程度の不意打ちなど問題なく対処できた。
しかし、あの時は天竜人の前で、ましてやその天竜人を害するはずがないと思い込んでしまっていた。
天竜人と敵対するという事は世界政府を相手にするという事で、実際に海軍大将を相手にする事になる。
海賊であるなら何としても避けたい事態のはずだ。
それらのリスクがありながらこの男はゾディアックを殴った。
この自分の前で、だ。
どんな理由があってそんな自殺行為を図ったのか、皆目見当がつかなかった。
「どういうつもりだ貴様」
自分でも驚く程、重く低い声が出る。
自分の不甲斐なさと目の前の男に対する憤怒が嫌でも漏れ出てしまう。
「どういう事だ……。俺は何で」
しかし、その問いかけられた男であるブルーの顔は恐怖でもなく、怒りでもなく、ましてや悲しみでもなく。
ただひたすらに困惑に染まっていた。
その予想外の反応にガイアは面食らう。
「何を戯けた事を! 貴様がやった事だろう!」
「違う! 俺の意思じゃない。体が勝手に……!」
強く問い詰めても否定するブルーの様子に、ガイアの内で疑念が湧き始める。
確かにあの状況であんな行動を起こすのはあまりにも腑に落ちない。
この様子を見る限り、天竜人を害する動機があったとは考えにくい。
それによく考えれば、あの時、あの攻撃をする際、この男の
覇気も知らない若造が
ならば―――。
「儂は少々海賊というモノを侮っていたらしい」
「ゾディアック聖! 立ち上がっても大丈夫なので?」
顔を大きく腫らし、体中に擦り傷を作ったゾディアックが巨人の奴隷に付き添われながら戻ってきた。
ガイアの心配を手で制して、ブルーを睨みつける。
「この儂に手を出したのだ。その蛮勇と愚かさに相応の報いをくれてやろう」
その表情は全身を苛む苦痛に染まりながらも憤怒の感情が滲み出ている。
「喜べ
そしてその感情を吐き出すかの様に海賊達に死刑宣告を言い渡した。