「いやはや、時が流れるのは早いな…」
天竜人として産まれてからあっという間に4年の歳月が流れた。
そしてやっぱり天竜人は漫画と変わらず胸糞悪い奴ばかりだった。
2歳の時に屋敷から両親と初めて外に出たが、愕然とした。
普通に人や魚人に鎖をつけて、ペットみたいに連れて歩いているのだ。
それどころか殴る蹴るの暴行も加えて、最後には殺していた天竜人すらいた。
(漫画で見るより酷いじゃねえか…!)
あまりにも残酷過ぎて、吐いてしまったこともあった。
(いくら安全に暮らせるからと言ってもこれは耐えられないぞ!)
神の奴め…覚えてろよ!
そして今、俺は4歳だ。
一応原作知識は頂上戦争まである。しかし、
「今はいったい、いつなんだ?」
今の年代がいつなのか全く分からなかった。
世間はどうなってるんだ?
原作、もうはじまってるのか?
俺はまだマリージョアから出たことはなかった。
理由は簡単。
ゾディアック父様が出ることを許可してくれなかったからだ。
どうやら俺を下々民、つまり人間に近づかせたくなかったかららしい。
天竜人の価値観って本当に腐ってるよな。
でも父様はまだマシだった。
まあマシといっても他の天竜人と比べてだけど。
父様も奴隷を持ってはいるが殺したりすることはなかった。
役に立たなくなると解雇するだけ。他の天竜人なら役に立たない=殺すだからな。
ある意味殺人狂じゃね。天竜人。
だが、俺は母様を見て天竜人の価値観が変わったんだな。
驚くべきことに母様は一般の天竜人とは全くの逆だった。
奴隷は一切持たないし、
前に父様から奴隷をもらっていたが、わざと逃がしたりしていた。
他にも、他の天竜人が下々民と同じ空気を吸うのが嫌だからといってつけているシャボンや防護服を身につけている姿を一切見たこともなかった。
そのせいで他の天竜人から変わり者扱いされているのだ。
かの父様もどうやら母様に感化されてあんなふうにマシになったらしい。
前になぜそんなことしているのかそれとなく聞いてみたことがあった。
そしたら母様は話してくれた。
「そうね…罪滅ぼしかしら。母さんはね、小さいころに人さらいに誘拐されて人間(ヒューマン)オークションに売られそうになったのよ」
「もうだめかと思った時、とっても強い人間が人さらいを蹴散らして助けてくれたの」
「私は彼に聞いたわ「どうして助けたの。私はあなたたちが憎んでいる天竜人よ」って。そしたら彼は「誰かを助けるのにそんなのは関係ない」と言ったの」
「私には衝撃的だったわ。今まで人間は憎悪しか向けられたことがなかったから。ましてや助けてくれるなんて思いもしなかったわ」
「私は彼を屋敷に招いてお礼するために、両親に紹介したわ」
「事情を知った両親はいきなり銃で彼の頭を撃ち抜いたの。
「下々民の分際で娘に触れるとは何事だって」ね。助けてくれたことを棚にあげて」
「私はショックを受けたわ。助けてくれた彼が殺されたこともだけど、それよりもその彼を殺したのが自分と同じ天竜人だってことに。吐き気すら催したわ」
「その時に初めて分かったの。目の前で大切な人が殺される人間の気持ちが。そして誓ったの。そんな天竜人にはならないってね」
そんなことが…
「あら、少し熱がはいりすぎてしまったわね。テラマキアは少し難しかったかしら」
大丈夫だ、母様。
ちゃんと理解してる。
「そう。でもねテラマキア、これだけは覚えておいて。たとえどんな人から助けてもらったとしてもその恩を忘れないで。そして必ずその恩をかえしなさい」
その言葉を重く受けとめる。
浅はかだったよ、俺は。
今までは天竜人が悪だと認識していた。
でも母様みたいな天竜人もいる。
全てが悪ではないんだ。
海賊みたいに。
俺はその日に天竜人に対する認識を改めた。
他にも天竜人についていくつか分かったことがあった。
まず漫画の天竜人は語尾に「〜え」や「〜アマス」とつけたりするが、実際にやっているのは一部の天竜人だけだったりする。
これは意外だったな。
漫画で見ていた時、全員が語尾に「〜え」とかつけると思ってたんだが。
まあ現に俺の父様と母様はつけてないからな。
それと全ての天竜人はどでかい屋敷を持っている。
いずれの屋敷も絢爛豪華だ。
金の無駄遣いだろ。
広すぎるから今でもたまに迷ってしまうことがある。
あ、そうそう。
原作でシャボンディ諸島に出てきた天竜人のロズワードは家のご近所さんだ。
とはいうもののまだまだ若いが。当たり前にまだ子供のチャルロスとシャルリアはいない。
二十代だろうか。
ん、待てよ。
原作に出たとき、正確な年齢は分からないけど見た目からして恐らく四十代だったはずだ。
つまり今は原作より最低でも20年以上は前ということになる。
やったぜ!
思わぬところから情報ゲットだ!
状況を整理するためにモノローグしたのが功を奏したな!
「何を喜んでおるのじゃ?テラマキア」
「あっ父様」
俺は現実に引き戻される。
「いえ、他愛のないことですよ」
「ほう、そうかの」
あぶねー。
危うく変なこと口走りそうだったぜ。
「それはそうとの、テラマキア。お前に伝えたいことがあるのじゃ」
伝えたいこと?
「何ですか?」
「外に、出てみるかの?」
「本当ですか!」
「本当じゃ。お前もそろそろオークションに行くのも悪くないと思っての」
げっ人間オークションかよ…
まあいいや。外に出れるなら何でもいい。
「行きます!」
「うむ、では支度をせよ」
よーし!待ってろよ、シャボンディ諸島!