人間(ヒューマン)オークションで海軍本部中将の〝錬金〟のガイアを買って家に帰ってきた後、父様が母様に「なに、テラマキアに奴隷与えてるの!」としばかれていた。
その後、母様にその人を逃がしてあげなさいと言われて手錠と首輪の鍵を渡され母様は父様を引っ張って部屋から出ていった。故に今は2人きりにである。
ていうか母様、父様に馬乗りになってビンタしてたぞ。怖えぇ。
で、母様には逃がせと言われたけど俺はこいつに聞きたい事とかしてほしい事があるからそう簡単には逃がすことはできない。
しかし、
「何かしゃべれ」
「……」
「…しゃべってくれ」
「………」
「お願い、しゃべって」
「…………」
なーんにもしゃべってくれない。
これ以上ない気まずい雰囲気。
父様母様、心が折れそうです。
はあ。
仕方がない。
俺は母様から与えられた鍵でガイアの海楼石の手錠を外した。
「!───」
「さあ、手錠は外したから話してくれ」
「…君はどうしてこんなことをする?」
おっ!
やっと口聞いてくれた。
「どうしてって、話してくれないからだよ」
「私はロギアだぞ?首輪を外して今すぐ逃げるかもしれないんだぞ?」
あっ。
そうか。ロギアには爆弾首輪は通用しないんだ。
「でもあんたは逃げずにここにいるじゃないか」
「…不思議な天竜人だな、君は」
「…そうか?」
確かに他の天竜人に比べたらずいぶん違うだろうが。
「とにかく話を聞いてくれるか?」
「…分かった。聞こう。君は他の天竜人とは違うようだからね」
よかった。
聞いてくれるみたいだ。
「よし、あんたには聞きたい事としてもらいたい事、二つある。まずは聞きたい事だ」
「なんだい?」
「ゴール・D・ロジャーはどうなった?」
やっぱり年代を確かめるならこの事だろう。
これで22年以上前か後かが分かる。
大海賊時代かそうでないかが。
「? どうなったって、別にどうもしないが」
「本当に?」
「本当だ」
よし、これで原作より22年以上前だってことが確定した。
大海賊時代はまだ始まっていない。
「何でそんなことを聞くんだ?」
「いや、別にたいしたことじゃない」
さて、次こそが本題だ。
受け入れてくれるかどうか…
「じゃあ次だ。あんたにしてもらいたいこと。それは…」
俺は一旦息を吸い込む。
そして言った。
「俺を、鍛えてくれ!!」
「……は?」
ガイアは唖然としている。
「今、なんて?」
「いや、だから俺を鍛えてくれ!」
確かに唐突だけど。
「…ダメか?」
「ダメというわけではないが…何故なんだ?君は天竜人だろ。なら強くなる必要なんてないはずだ」
「それは…」
やっぱりある程度は強い方がこの世界では動きやすいし、損はないと思う。
俺は膝をついた。
「頼む、お願いだ!!」
そして、土下座した。
「お、おい!顔上げるんだ!」
「鍛えてくれたら必ず逃がすから!」
「わ、分かった。分かったから!鍛えてやるから土下座はやめてくれ!」
「本当か!?」
思わず顔を上げる。
「あ、ああ、本当だ。君は天竜人なのにどうして奴隷なんかに頭を下げたり…」
「え、人にものを頼むのに頭を下げるのは当たり前だろ。ましてや鍛えてもらうんだから土下座ぐらいしないと」
「…君は本当に不思議だな」
天竜人としてはおかしいだろうな。
だが生憎俺は転生者だからな。
その辺の礼儀はちゃんとするんだ。
「とにかく鍛えてくれるだな?」
「ああ、鍛えてあげるよ。テラマキア聖」
「そんな堅苦しい呼び方はやめてくれ。テラでいい」
「えっ、でも私は君の奴隷で…」
「これからあんた、えっとガイアさん、は俺の師匠なんだから」
「……仰せのままに、テラ」
「よし!」
やったぜ!
何せ海軍本部中将だからな。
絶対強くなれるはずだ。
「ん、そう言えばまだ聞きたいことがあったんだ」
「なんだい?」
「ガイアさん。なんで人間オークションなんかにいたんだ?」
「!!……」
俺がそう聞くと、ガイアは黙ってしまった。
「話したくないんだったらいいんだ、別に…」
「……負けたんだ。私は」
俺が話を切り上げようとした時、ガイアは話しだしてくれた。
「負けたっていったい誰に?」
何しろ海軍本部中将だ。
一筋縄では倒せない相手なんだから倒した奴もそれなりに名のある奴なんだろう。
「わからない…」
分からない?
「どういうことだ?」
「…私は無名の海賊に負けたんだ」
おいおい、嘘だろ…!
「奴には私の攻撃がまったく通用しなかったんだ」
何かの能力者だったんだろうか?
「そして私は突然ものすごい衝撃を受け、気を失ったんだ…」
一撃でやられたのか…
海軍本部中将を一撃ってどんだけ強いんだよ!
「そして気づいたらいつの間にか人間オークションにいたというわけさ」
「そうか…」
「テラマキア、彼は逃がしてあげましたか?」
ガチャッと扉が開いて母様が部屋に入ってきた。
「か、母様!?」
「あら、まだ逃がしていないの。早く逃がしてあげなさい」
「あ、あの?」
ガイアは戸惑っている。
まあ、当たり前か。目の前で天竜人が自分に逃げてと言ってるんだからな。
それよりも母様には鍛えてもらうことは話しておこうかな。
先にばらしておいたほうが動きやすいし、母様ならきっと分かってくれるはずだ。
「ねえ、母様」
「ん、何ですか。テラマキア」
「私は強くなりたいんです」
「?」
「だから彼に鍛えてもらうことにしました」
「!! 何言ってるの!テラマキア!やめなさい!そんなの危ないじゃないの!」
「母様!どうか分かってください!」
「ダメです!」
「お願いします!母様!」
俺は頭を下げる。
「………」
沈黙。
「…それがあなたの意志なのね、テラマキア」
「…はい」
「そう。ならあなたの自由にしなさい」
「母様!ありがとうございます!!」
「子が本気で何かをしたいというんだもの。それを止める親がどこにいるのよ。」
母様はガイアの方に向き直る。
「ガイアさん、でしたわね。テラマキアをよろしくお願いします」
「は、はい…」
気の抜けた返事をするガイア。
「テラマキア。ゾディアックには私から言っておくから安心しなさい」
「何から何まで本当にありがとうございます、母様」
「じゃあやるからにはうんと強くなってね」
そう言って母様は部屋から出ていった。
「君の家族もすごく不思議だな」
「そういう天竜人もいるってことさ」
こうして俺は家族公認で〝元〟海軍本部中将に修行をつけてもらえることになった。