Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
それを見た瞬間、この前と同じだということをはっきり理解した。
あたしは今、椅子に座っている。そういう夢を見ている。目の前には、この前夢で見た人と同じ人が見えた。顔はよく見えない。いや、見えているのかもしれないけれど、認識ができない。夢だから、そういうことも起こる。
ただ、ものすごく、キラキラしているような気がする。存在からして、眩しい。そして、誰なのかがなぜか分かる。
「ママ……だよね?」
「そう思うのなら、そう思うといい」
はぐらかされた。でもそれが不思議と確信になる。信じたいものを信じてるだけなのかもしれないけど、信じたままに行動させてもらう。色々と、聞きたかった。
夢の中のママは、あたしに都合のいいことしか言わないかもしれないけれど。
「あたし、もしかして大事なことを忘れてないかな?」
「いきなり聞くのがそれとは。余程気にしていたらしいな……確かに、お前が忘れていたことは、どうでもいいことばかりではない。少し前にも、思い出したことがあっただろう」
あの夢を思い出そうとしてみる。あの夢の中で、ママは何を言っていたのか。
「いつか、間違ってると言ってほしいって?」
「それも、そのひとつかもしれない。まあ何が大事になるか、今はワタシも知る術はないよ。ひとつ確実なのは、そうだ。いつかお前のような人間が、ワタシを救ってくれることを、願っている」
「──っ!」
頭が痛くなる。あの時とは逆に、痛いと感じないはずのところで、猛烈に痛いという感覚が実際に襲いかかってくる。
「ワタシが正しくあれない時代は、確実に近づいてはいる。ただ、それが想像以上に遠いだけ。ただ、今がその時のような気もする。ワタシとしても、苦しんでいるんだ。救いであると同時に、それは自分を否定することにもなる。むしろこちらが、相談をしたいくらいだな」
「誰……なの? ママって……一体……?」
自分の親であるはずなのに、ビジョンが全然ハッキリしない。自分の親であるという情報以外、あたしは何も知らない。自分の親だという情報も、そもそも人は親がいるものなのだから、今生きているかはさておきいるのは確かなので、やはりなんの意味もない。
「安心していい。お前は、覚えている。ただ、鍵をかけているだけ。その鍵を外したときに、我々の命運は決まる。過ちだとして終わらせるか、正しいと信じて進み続けるか。誰にも従わなくていい。お前が決めていい」
「じゃあ、ママは?」
「ずっと、そうしている。だからこそ、自分を疑ったときにどうしたらいいか、結論が出ない。その答え、出すことに挑むがいい。それができるという、自信があるのなら」
「待って、ママ!」
叫びながら飛び起きた。まだ夜だけど、少し空が明るくなってくる頃。大陸船団の航行位置的に、今は夜明けが早いらしい。
だとしても、こんな大声を出すにはまだ早い時間。先生達を起こしていないか、注意深く音を聞く。良かった、起きてないみたい。
少し、部屋を物色してみた。たぶん無いだろうけど、何か自分に何があったのかを示す鍵があるんじゃないか、と考えてみる。十数分探って、結局何もないという結論に至った。
昨日は色々あった。あたし自身が何かしたということは、あまり無かったけれど、とにかく怪しまれた。普通の女の子というのは、流石にもう無理があるのは分かっている。けれど、この普通じゃなさがどこから来るのか、答えが全く見えない。それが腹立たしくて、イライラして、たまらない。
だからあたしは、これからも「普通」に固執する。ごく普通に生きていて、ふと王様に疑問を抱いて、対抗しようと思い立っただけの人になる。いつか来るような予感がする、どうしてもそうでいられなくなる日まで。
だから、もう普通じゃないことを考えるのをやめよう。目が覚めてしまっただけで、まだ眠いんだから、ぐっすり寝よう。
あたしは、石弓イリア。大陸船団ならどこにでもいる、普通の生徒。
地上は素晴らしい場所だった
見たこともないもので溢れた、とても豊かな大地
だがどうしてだろうか、満ち足りているとは何一つ思えず
むしろ彼女よりも、何かに飢えていた