Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

115 / 115
3-23:Recollections

 黄金の港に行くための列車が出る、3時間ほど前。駅にいち早く来たのは、ナノだった。他の皆は一旦いつもの場所に集まっているだろうとは考えている。それを分かった上で、自分だけが来た。

 これは、読みだ。この大陸船団の外から来た旅人が、不可思議な幼馴染について尋ねてくるのではないか。その答えとしたい内容は、本人の前では言えないことなのではないか、と。

 

 だらしなく見えるように振る舞っている(そして、それは半ばわざとである)が、彼女は頭の回りが早い。加えて、人の思考を先読みすることについては、相当に長けていた。

 その旅人達は、彼女が駅に着いてから1時間ほど経ってから、予想通り来た。

 

「おや? 独りでここに来たのですか?」

「まーね。色々気になってることもあるでしょ? 下手なこと話せないからさ、一応」

“お見通し、かな”

 

 先生もこれには感心。聞きたいことがある、と切り出すまでもない。

 

「そゆこと。じゃ、何聞く? たっくさんネタあるけど」

“……イリアが、どういう生徒なのか。知ってる限りを教えてくれるかな? ”

 

 何もかも読み通り。もちろん、他の可能性も想定して色々とネタを用意してきたのは本当だし、ついでに聞かれたら答えるつもりだ。だが一番直球なものが来た。

 その上で、一番直球かつ、一番その実態を知らないのだが。

 

「おっけー。アテシの幼馴染のイリアちゃん。すっごい不思議だよねー、実際アテシからしても不思議」

「なに? 昔からの付き合いでもそうなのか?」

「うん。小1からの付き合いでも。出会う前は大陸船団の外にいたってことは知ってるんだけど、具体的にどこでどんな生活してたのかは知らない。その頃からなーんにも覚えてなかったから」

 

 記憶喪失であろうか、それとも単に忘れただけだろうか。今に至るまで、外の記憶は一切ないという。

 そもそも、外で生まれた人が真っ当に大陸船団の王立学園に通うことは困難である。しかし当然のように、同じ学び舎にいた。出自から周囲からは避けられていたが、むしろ興味を持ったのがナノだ。

 

「なんにも、ですか? いや、確かに失われた記憶があるのなら、説明がつきそうなところもありはするのですが……」

「あ、ワカモは心当たりある感じ?」

「ええ、大陸の心臓を前に、妙なリアクションを。あれを見て落ち着くというのは……いや、無理筋でしょうか」

 

 少し考え込むが、結論としては「確かにそれは妙なことかもしれないけれど、弱い」ということになる。ただ、無関係と断ずるのも違う。こういった心理は、潜在的な記憶によるものである可能性もゼロとは言えるまい。

 

「イリアはね、やっぱり最初はうまく馴染めなかったんだ。生活上の常識のレベルで、微妙に細かくズレてるって感じ? だからさ、アテシによく聞いてきたワケ。普通の子だったらどうするの、って」

 

 要するに、彼女は「普通」になりたかったのだ。皆と同じ人間として扱われるようになりたかったのだ。聞く相手が、多少ひねくれている(と、少なくとも本人は思っている)ナノだったのは、少し不運かもしれないが、別に常識が何もないわけではない。

 あらゆる場面で、アドバイスを送り続けた。やがて、小学校高学年になる頃には、驚くほど「普通の子供」になっていた。

 

“妙に普通を強調していた気がするのも、そういうことだったのかな……?”

「そ。黙ってれば、普通に生きてる限りは、普通でいられるくらいに馴染んできたけど、その頃には執着みたいな感情を持ち始めちゃったってハナシ。いや、悪いことじゃないよ? ただ、ちょっと歪なの。ま、そろそろ()()()()のかもしんないけどねー……」

“時?”

「先生達が来てから、ちょっとボロ出し始めてるなってのはアテシも思ってんの。無関係とは思えないし、そういう運命の元にあると思って」

 

 運命とは。本当だったらそんなものがあるか、疑わしいところもある。しかしその存在を、先生は、その身近にいる生徒達は、感じずにはいられない。

 

「君も、運命論を信じるのか。少し意外だな」

()()、ねぇ。お巡りさんが随分とロマンチックなこと考えるんだ〜」

「ロマンチックか? あいにく私には、真実味があるように思えてならないがね」

 

 その真実味を感じるまでは、むしろ信じていない側だったのかもしれない。しかしカンナは運命の数奇さの前線に、どういうわけかいる機会も少し多めにあった。だからだろうか。

 ずっと、負ける気はあまりしていない。

 

「しかしそうなると、全てが明らかになる日が近いのかもしれませんね。あの人にとっても、分からないことが全て明かされる日となるでしょう。そして、全てが変わってしまうかも……」

「んにゃ〜? それでも人生の半分くらいはアテシとの付き合いあることになるんだよ〜? ダイジョブダイジョブ、少なくともアテシは友達だからさ! 皆の味方のまんまかは分かんないけど」

 

 ナノ的にはそれで大丈夫かもしれない。所詮はちょっとした協力者くらいのもので、重要そうであっても切り捨てることが必要ならそれに問題はないのだ。

 ただ当然、汎キヴォトス史は風向き次第で命綱が切れる。背筋が凍りそうなことを言うものだ。

 

 

「ちょっと〜! 先に行ってるなら連絡くらい入れてもいいじゃ〜ん!」

「ねー。もう置いてくつもりでいたよねー」

「相変わらず分からないよな、何やってるのか」

 

 残りの3人は、これまたナノの読み通りの行動をしていた。言ってはいないが、船内の集合場所を経由していたのも完全に予想通りだった。

 

「いやいや、集合場所ここって話にはなったじゃん? したらここに集まるもんじゃん?」

「なったけどー! 先生もだよ、あたしの家の部屋貸してるんだから一緒に行くくらいは……」

 “いや、先に行っててって言ったのは……まあ、いいや。とりあえず乗ろう。列車自体はもう乗れる状態みたいだし”

 

 少々、グダグダではあるが。

 なんとか、最北端の地域に行くことには問題がなくいられるようだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

SEKIRO: SHADOW DIES AGAIN, in KIVOTOS(作者:まーぼーどーふ)(原作:ブルーアーカイブ)

主の忠義に死した、隻腕の忍びは、▼しかし、透き通る世界で生を成した▼竜胤により再び齎される、▼出逢い、そして使命▼かつて、御子が願った不死断ちを再び果たさんと、▼隻腕の狼、学園都市に忍ぶ▼◇◇◇▼隻狼とブルアカのクロスオーバーです(n番煎じ)▼※隻狼とブルアカ、双方に深く関わった描写があるので、「?」となる場面があるかもしれない事をことわっておきます。そうな…


総合評価:432/評価:7.53/連載:11話/更新日時:2026年03月12日(木) 11:00 小説情報

メガネナイフマン憑依転生者と透き通る世界(作者:ロクモン)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカ世界にメガネナイフマン憑依転生者をinさせました。▼本編だとオリ主かオリキャラか先生くらいしか酷い目に遭わないはずですので安心してくださいね。


総合評価:368/評価:7.58/連載:18話/更新日時:2026年05月11日(月) 21:35 小説情報

ジェリコの咎人(作者:ミヤフジ1945)(原作:ブルーアーカイブ)

▼……我々は望む、七つの嘆きを。▼……我々は覚えている、ジェリコの古則を。▼だがしかし、私は破った。ジェリコの古則を。▼乙女達の青き箱庭に、許しを得ず来た私は報いを受ける。▼ジェリコの古則を破った私は。▼契約の箱に納めし、十の戒めを破った私は。▼消える事のない、咎を背負う。▼【挿絵表示】▼


総合評価:14470/評価:9.11/連載:17話/更新日時:2026年05月02日(土) 11:54 小説情報

生徒(黄昏接触済)に転生したけど何とか原作以上の結末を目指します。(作者:冴月冴月)(原作:ブルーアーカイブ)

▼ 目が覚めたら目の前にシュロが居た。▼ 絶叫から始まった二度目の人生はキヴォトス、それも目覚めた時点で自分は普通の生徒ではない状態だった。▼「なんで私黄昏に接触してるの? アヤメは??」▼ 脳内を疑問符で占領されつつも、折角転生出来たならと百花繚乱編に限らず、先生を助けるべく奔走することを決める。▼「私が皆の『吉兆』になれるように」▼ そんな思いを抱いて。…


総合評価:1869/評価:8.11/連載:9話/更新日時:2026年05月24日(日) 18:30 小説情報

ブルーアーカイブ -灰の翼-(作者:空素)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカxAC6のn番煎じ…!▼ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー▼強化人間、C4-621、独立傭兵レイヴン。▼彼には、選択肢があった。▼恩師に報いるか、友の祈りに寄り添うか。▼彼が選んだのは、恩師へ報いる事だった。▼彼は、友と決別し、そして、立ちはだかった戦友を空の上で堕とし、友もまた、自らの手で討ち滅ぼした。▼恩師は彼の手が届かない場所に連れて行かれ…


総合評価:1234/評価:6.64/連載:165話/更新日時:2026年02月19日(木) 17:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>