Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
翌日。早速、許可証の裏にある地図と住所の示す先に向かってみた。なるほど、確かに一般人は立ち入り禁止という場所であるらしい。
そして、確かにそれ以外はなんの変哲も無いように思われる。何かの施設なのかな、くらいに考えれば、日常生活を送っている上なら納得してそのまま受け入れてしまいそうだ。
だが、今回はそんな場所に遠慮も容赦も全くのゼロという具合で進入していく。堂々と検問所の前に行き、係員に話しかける。
「ちょっと、ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ? 然るべきところで発行された許可証がなきゃ……」
「あー、それなんですけど。発行元が個人なんですけど、大丈夫そうですかねぇ……?」
自分がやりたいと主張していたので、イリアが許可証を出す役になった。それを見るなり検問所職員は目を丸くする。
すぐに冷静さを取り戻し、発行元を凝視して、また冷静さを失い、どこかへと電話をする。おそらくは、その受話器の向こうにはかなり慇懃無礼に経緯を説明している女がいることだろう。
「……確認が取れました。お返しします。いや、まさか鷹羽のお嬢様から直接許可とは。そうであるならば、認めないわけにはいきません」
やはりと言うべきか、オドリはこの大陸船団においてはかなり絶対に近い権力を有しているようだ。おそらく、王と議長に次ぐくらい。もしくは、議長より上か。
いずれにせよ、そのような種類の許可を得たからには、もはやVIP待遇すら期待できるレベルと考えても思い上がり過ぎではないだろう。尤も、ここはあくまで公園なので、おもてなしは期待できないのだが。
それどころか、かなり歩く羽目になる。なんと言っても、この立ち入り禁止エリアはかなりの広さがある。その中でも最重要地域にあたる、「鋼鉄の大地」の本体部分は、ほぼど真ん中で、どこから行っても遠いのだ。
日差しもなかなかに強い道中を歩くこと、およそ1時間。地面の質感に違和感が生じてきた。
「……? ちょっと、地面硬くなってきましたか?」
ワカモが口にした段階ではまだ、確かに少し硬くなったかもな、くらいであり、その本質は表れていなかった。だが、そこから少し遠くを見れば、それが見える。
“あの辺りから、鉄が露出している……? この辺りはあの鉄板の上に土が覆い被さってるってこと?”
「そういうことになる、のでしょうか?」
そちらの方に向ってみると、やはり質感が鉄。そしてそうなっている領域が、ここからかなり広がっている。
いくつかの継ぎ目があり、ただの地面として作られたわけではない人工物であることは明らかだ。かなり広がりがあるが、それ以上に感じられることがある。寸法の違和感だ。
細長いのだ。横幅にあたる部分も相当に長くはあるのだが、しかし縦の長さと称するべき部分がやたらと長い。そして奥の方に、管理事務所にしているのだろうか、建物らしきフォルムのものも見える。
「ふむう。これは、もしや──」
カイが想像を巡らせて、推理を披露しようとした、その時だった。奥の建物の方から、人影が走ってくる。そしてとてつもない大声で呼びかけてきた。
「おうおうおーう! こんなところにお客さんが来るなんて、またひっさしぶりだなー!」
赤髪の元気娘が凄まじい勢いで走ってくる。物凄く速い。生身とは思えないスピードで、いつの間にかすぐそこまで来た。
「なんだお前は──」
「おっおー、構えが速いねぇー。ある意味ワタシが待ってたタイプの人なんじゃないの」
銃を構えるレイアの懐に、これまたとてつもないスピードで入り込んだ。思わず飛び下がるレイアを守るように、カンナが前に割り込む。
「ここの管理者だろうか? であれば、無礼なことをした。許してほしい」
「いいよいいよ。どーせやり合うんだから。鷹羽さんのお嬢の紹介でしょ? じゃあご用件なんて分かりきってるからね。ワタシは代議院の議長の指名でここを管轄してる。ナツノヒ、って呼んでね」
ここまで来ると慣れたものだが、どうもこの異聞帯の上層部にはマイペースな者が多い。だがそれを差し置いても、このナツノヒという人物は異質だ。
何か、帰属意識の薄さのようなものがある。守るべき秘密に対する意識も無いのか、この場所についての情報をペラペラと喋り始めた。
「ほんとに地面が鉄で驚いたよね? 実はここ、元々船だったんだ」
「あり? 大陸船団自体が船じゃないの?」
ナノの指摘に、よくぞ聞いてくれたとばかりの「チッチッチ」をかます。このノリについていくのは骨が折れそうだ。
「機能としてはそうなんだけど、大陸船団のほとんどは大陸として利用するために広げた土地なわけでね。その全ての大元、王様が使ってた船の跡が、ここってわけ」
土地を広げた、というが、そのリソースはどこから持ってきたというのか。とてつもないエネルギーを王は生産できるらしいということは、かの心臓から見てとれる通りだ。しかし、それをこのような大質量に変換する術があるのだとして、それでもあの程度では到底足りない。
“そんな歴史的なスポットで、何をするべきなのかな? そんなに複雑なことは、できそうにないけど”
「うん、複雑なことはやるつもりはないよ。というかワタシは単純なことしか取り柄にできないからな! ガハハ。……こほん。それで、試練だね。まあ何度も言うように、単純に、これだよ」
ガスン、と重い音を鳴らして地面に立てたのは、ヘビーマシンガンとロケットランチャー。それを片手で扱う武器かのように持って、立てたのである。何か、嫌な予感がする。
「な、何さ! いくら強さ自慢だからって、7人&司令官に勝てるわけないよ!」
「む。キミは……ああ、聞いているよ、イリアだね。いやまあ、確かに仰る通り。なので、こちらにも勝ち目がある程度あって、勝負としてちょうどいいバランスのことをしよう。つまり──ルールをしっかり決めたチーム戦による、決闘だ」