Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
あちらとて、負けるために試練を置いているわけでもないはずだ。なので、あちらに多少有利な条件を押し付けられたとして、それは認めよう。とはいえ。
“一方的に不正を認めるような形だったら、それはやめてほしいけどね”
「おや、ワタシもしかして信用ない? 全く、今までどんな目に遭ってきたんだろうなー? いや、あの偉そーなお嬢様ならやりかねないかもなー」
あの派手な権力者の信用は、余程無いらしい。世襲の危うさとは、かくなるものであったか。
「ワタシの試練は、3連戦を勝ち抜くこと! そう、3回に分けて戦うんだ。ただし! 出られる戦いは、ひとり当り、1回限り」
「なるほー。良かったじゃん、アテシ達けっこー人数いるから楽できるよ先生」
確かに、人数はいる。ただ、ある程度個々人の実力が測れているわけだが、その極端さも浮き彫りになってきた。誰をどう役立てるか、頭を悩ませることになりそうだ。
連戦の流れは、ナツノヒがいつの間にか先生の手に持たせていたリストに書いてあった。最初に訓練兵達、次に機動兵器、最後に「ワタシ☆」とだけ書いてあった。
「ふ、ふざけている……!」
“落ち着いてカンナ。いやまあ確かにこれは結構なおふざけだけど。でもいいの? この順番で?”
「いいんだな、これが。強い兵器を作ろうと頑張ったんだけど、結局ワタシより強くはならなかったし。まあ、王サマとワタシの次に強いヤツってことで、御勘弁!」
こんなふざけた奴が、と言いたくなってしまう。なのだが、身体能力の高さはすでに片鱗だけでも見せつけられており、警戒に値するのは確かだ。
というわけで、彼女には複数人をぶつけたい。ワカモと、レイア。彼女らがやり遂げてくれることを願う。
そして、カンナとカイも強い相手に当てたい。アイムも先の試練でカンナと共に行動していたことから、実力に信頼感がある。
というわけで、訓練兵達には残りをぶつけることになるのだが。
「えーーーと……うん。ナノ、自信ある?」
「あーーーと……んにゃ。人数次第、先生次第、あとイリア次第」
「そんなぁ」
この昔馴染コンビ、荒事に自信がなさすぎる。
“心配しないで、私も全力で指揮をとらせてもらうから”
「うん、よろしく。あたし今まであんまり役に立ててないから、そろそろ頑張りたい気持ちー」
ナノをはじめ、仲間を紹介してくれただけでもなかなかの貢献ではあるが、確かに直接の活躍の機会はまだ訪れていないと言える。ここが見せ場になることを願いたいところだが、全く専門分野ではないわけだ。
「よし、最初のセットは決まったか。それでは、ワタシの私兵達、カモン!」
ナツノヒの後ろの建物のドアが開くと、そこから年少者で構成されている軍勢が迫ってくるのが見えた。遠目で見ても、少なくとも高校生という年頃ではないことは察せられる。もしかすると小学生くらいかもしれない。おそらくはこれも、以前に黄金の港で競り落としたということなのだろう。
“……アロナ。この状況、どう見る?”
『は、はい。率直に言って、結構まずいかもです! 見たところ、20くらいはいそうなので……圧倒できる戦力が無いなら──考えはありますが、あまり気は進まないです……』
弱者の戦い方というのはある。ただし、その場合少々せこいことになる。気は進まないのは当然のことではあるが、もうとっくにその辺りは割り切った。先生はやる気である。
「うーん、だけどこれだとこれでこっち優位のように見えるな。一応この兵も年少で労務員の身分とはいえ、訓練はしているわけだ。うん、じゃあ自分達で考えて行動してもらおう! 指揮は年長者たるキミ、任せたよ」
「はっ! 我らの王の敵、この手で打払ってみせましょう!」
「そーんな大袈裟な戦いじゃないんだけどなぁ……あ、でもまともな言葉遣い教えた覚がないや。あとで教育かな」
第一戦にに出るこの訓練兵達、そしてイリアとナノが前に立ち、武器を構える。これでいつでも開始できる。
開戦は、指揮官を任された少女の合図から。
「囲めーっ!」
隊列が横に広がっていく。ある程度の数が揃っているのなら、包囲ほど強い戦法もない。全方位に気を配るなど不可能だからだ。
2000年以上、これは集団戦の基本であり続ける戦法である。しかし、だからこそそれに対する対策はある。
“追いつかれないように、逃げながら戦って! 追いつかないとそもそも囲めない!”
「うおおおっ! 走るよナノっ!」
「それだけじゃ勝てないって! このっ!」
包囲の前提を壊すというやり方もあるが、それに関してはまだ少し不安がある。というわけで、逃げ道を常に用意できるようにする。
幸い、足の速さに関しては並程度にはある。アロナがリアルタイムで作成しているルートで走り続ければ、あとはスタミナの限りはまだ逃げられる。そう、スタミナの限りは。
「言わなかったかな? ワタシも兵士は鍛えているんだ。一般人として生活しているような人々よりは、走ることくらいはできるはず」
と、ナツノヒが予想していた通り。まずナノが疲れ始めた。
「やっぱダメ! このまんま疲れたら勝てる戦いでも勝てないって! そろそろ止まる!」
「ちょっと、そんなこと言ったら……ああ、あっという間に!」
『ああ、こうなっちゃうんですか……でも、諦めませんよ。そうですよね、先生?』
“うん、ここからは賭けだ。包囲網に穴を空けて突破、繰り返せばそのうち全員落ちる!”
20人程度の規模の囲みなら、ひとり戦闘不能にすれば十分な抜け道になる。それをやれる戦力でないなら、どの道無理だったのかもしれない。なら、やるしかあるまい。
「……! そこっ!」
そして、やれと言ってみれば、イリアのショットガンが火を吹いた。一番動きが重そうなところを見極めて、速攻で落として、抜け出す。戦いに自信がないとは全く思えないような動きを見せる。
「……あれ? あたし、今どうやって動いたんだろ?」
「やっぱり。
管理者は、不敵に笑う。