Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
王が使っていた船が、確かに元はただの船であったということの証がこの鋼鉄の大地というスポットの意義である、という簡単な説明を最初にされていた。これは、その続きの話。
「知っての通り、ここの王様はただの人間とは思えないほどの絶大な力を持っている。王となることを心から望み、絶対的な力を求め、その結果として手にしたんだよ」
“だとすると、やっぱり元々は? ”
「ただの人だったかもしれないし、運命の下にいた人だったのかもしれない。どちらにせよ、人の領域を
それからは、自らが王たることのできる勢力圏の拡大を試みた。最終目標は、キヴォトス全て。
それと同時に、由来がオデュッセイアであることも関係しているのだろうか。その中核として、巨大な船を使うことに拘っていた。それはだんだんと、巨大船を領土とするという計画に発展していった。
遊泳大陸船団の、初期案である。
「あの王の思考のスケールが大きいのは、昔からというところか。うーん、まあオドリの下で得られた情報ではあったが……」
「ん。さてはオドリを虐めたって薬屋さんかな? ああいや、あの子を虐めるのはワタシとしては一向に構わないんだけど。せっかくだし聞いてみようか。この計画の明らかな問題点、何かわかる?」
何か分かるかと聞かれても、細かいものを挙げたらキリが無いだろう。それはカリスマだとか力だとかで潰せるものも多いだろうが、それでもどうにもならないものがあった。カイは、それに気付けない器ではない。
「この大陸船団の深層にあるという心臓をもってしても、材料は作れまい。作れたところで、大洋をちびちびしか動けないだろう」
「ンン〜正解! 船を借りるとか、鉄鋼やらを買うやら収奪するやらしても、足りないものは足りないし、海は広いけど動くには意外と狭苦しい。だから、名案を思いつくまで、沿岸部の小自治区を吸収しながら、考えていた」
そして、思いついてしまったのだ。悪魔的発想を。それが何であるかについては、今はまだ語るべきではない。
よって、話もここで一区切りとなる。ここまでを話したタイミングで、地響きが起きた。
「な、なんだ!? いや、こういう時こそ、落ち着いてじっとしてるんだ!」
地震かと思い、咄嗟に備えを促そうとしたカンナだったが、程なく違和感に気付く。
ここは海の上に浮いている巨大な船。あまりに巨大なので波で揺れることはほとんど無く、仮に巨大な波や津波があっても補正をかけるので、無事でいられる。つまり、本来地震が起きる土地ではないのだ。なのでこれは、地震とは違う振動ということになる。
「おっとぉ、驚かせてしまったようだね。ちょっと大掛かりな仕舞い方をしている上に、こいつ自体もなかなかオーバーな出力でね。動かすだけでちょっと地面が震えるんだよ」
よく見ると、横の方で地面がシャッターのように開いている。その下にはスロープがあり、そこから上がってくるのは、なんとも奇妙な、装甲車の類と言われてギリギリ納得できないようなデザインの、箱状の巨大な何かだった。
威圧感は確かにあるのだが、いくらなんでも見た目がシュールすぎる。これの写真をウタハに見せたらどんな反応をすることだろうか。顔を青ざめさせてなんとも言えない笑みを浮かべるのが想像できるが。可能なら、リオにも見せたいかもしれない。
「え……えーと。ごめんナツノヒさん、ちょっとこれ何ていうやつ?」
「あー、うん。ごめん、残念ながらいくらイリアの質問でもそれには答えられないな」
「なんか言い方変だけど。なんで答えられないの?」
「そりゃあ、質問の答えそのものが存在しないからねえ。まだこいつには名前を付けていないんだ。今後付ける必要性も感じない。王様とワタシの次に強い奴なら、もうそれでいい気がしている」
というより、どうでもいいのだろう。名前に拘りがあるタイプかというと、そうでもないのは明らかだ。なぜなら、ナツノヒは
その雑さを尊重し、以降はこれを「機動兵器」と称することとする。
機動兵器と戦うメンバーはアイム、カンナ、そしてカイだ。カンナとカイは相応に実力が保障されており、アイムもまたカンナと行動を共にしても問題ないくらいの能力がある。何より、運に頼るような形になるが、確実に正解を引き当てる閃きが降りてくる能力は大いに役立つ技能だ。
戦いのスケールが大きいことが予想されるからか、かなり広い場所をとる。
「よし、配置についたということでいいね? では同時に動き始めることとしよう。では、我が自信作よ。発進せよ!」
ナツノヒの合図と共に、轟音が鳴り響く。とてつもない出力で機動兵器が起動する音だ。ハッキリ言って、効率がいいとはとても思えない。大陸の心臓はエネルギー資源としてほぼ量的に無限だが、出力的には有限であり、たいへんに王に迷惑をかけていそうだ。
あるいは、別のエネルギー資源を使っているのだろうか。それこそ、石油であるとか。
この音はしかし、威嚇としても機能するものだ。並の精神力であれば、そのあまりの心臓に悪い起動のし方に狼狽えずにはいられないはず。
ただ、これはあまり意味がなかった。今回選ばれたメンバーは、皆かなり強力な耐性を有していた。アイムは、恐ろしくそういったものに鈍感だった。カンナとカイは、これまた恐ろしく強靭だった。
「では局長、アイム。手筈通りに動こう」
作戦は主にカイが担う。先生の役割は、状況の整理と伝達。方向性を決める役割も担う。
カンナが主力。アイムは先頭で、陽動と調査を行う。つまりは、どういうことであるのか。
「チャージング……ショットー!」
この機動兵器が、どれだけの防御性能を持つのか測るという役。渾身の一撃のつもりで放ったのだが、ある意味予想を裏切らない、しかしいくらなんでも、という結果がそこに現れていた。
機動兵器には、傷ひとつ無いように見えたのだ。