Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
予想以上に、内装も硬かった。ハンドガンの威力では少しずつしか損傷を与えられない。それも、精度や威力減衰の関係からかなりの接近戦を強いられる。当然ながら危険が伴い、無視できないくらいの被弾もあった。
それでも根気よく粘って、同じ箇所におよそ20回は当てた頃だろうか。見た目ではほとんど分からない程度の歪みであるが、その歪みが確かに変化をもたらした。
「……? 何も出ていないのに開きっぱなしのシャッターが? まさか!」
「やってくれたな局長殿! いや、これは私かな? まあいい、確実に変なところで調子を悪くしているのだからな!」
どこで歪んだのがどう作用したのか。制御システムが変になったのか、アナログな部分に不都合が出たのか。どちらにせよ、狙いやすい場所がカンナ側に出来た。
しかし、そこで戦法を全く変えないほど、この機動兵器の思考は単純なものではないのだ。火力を上げて横も蹴散らしつつ、現状大いに邪魔になっているアイムの方を確実に仕留めるために、殺意の塊のような砲台を向けてきた。
「ヒュッ……あ、どうしようこれ、まずいよ〜! 避けられ……ダメ、ずっと続けられる自信がないし、えーと、えーと、えーと」
声に出して思考をアウトプットしたところで、いい発想が降りてくるとは限らない。こと彼女の場合は、ランダムに──
降りてきた。
その発想自体は、先に思いついていたが、そんなのが通じるわけがないとして切り捨てていたもの。しかし、降りてきたその天啓は、確実すぎるほどに自身に満ち溢れた声で語っているように感じる。
これが、正解だと。
「ここだーっ!」
咄嗟に撃つ。目の前には大口径がこちらの頭を吹き飛ばそうとばかりの勢いでその殺意を向けている。失敗したら、怪我どころでは済まないかもしれない。下手したら死ぬ。
それでも、やるのだ。その大口に向かって、散弾の全てがその中に入るくらいに、至近距離から。
それと同時に、低い音が響いた。砲撃の音のようなのだが、少しおかしな響きがある。なんとも中途半端で、気持ちの良くない、変な重さのある音が。
それから、少しだけガタンという大きな振動を起こす。
“……何が起きてる? いや、何となく分かりはするけど……ショットガン一発、タイミング良く撃ち込んだら起こるものなの?”
『報告……敵の主砲、弾が詰まっています。砲塔の一部が狭まっているようです。デリケートにも程があります』
しかも大きな振動は、内部に何らかの大きな不具合が起きている証に他ならない。いよいよ、この機動兵器にも有効なダメージが入り始めたようだ。
「アイムさん、一応聞かせてもらうがいいかな?」
「う、うーん? なになにカンナさん」
「それと同じ手、他の銃口にも通じると思うか?」
「……うん、ちょっと事情が違うかも、だけど……無理じゃない、ってことかな〜?」
やれるが、大した意味があるわけがないというところだろうか。とはいえ、今の振動と同時に他にも少しおかしくなってきた箇所があるようだ。
まず目立つのが、進む方向に関して。特定の方向に動けなくなった。そして一部シャッターが閉まらずに内部の構造が露出している場所が増えた。これだけか、と言いたくなるところかもしれないが、これは間違いなく大きい。
この機動兵器、自己の不具合に対応して動き方を修正することができるくらいの賢さはある。だが今回はそれがむしろ仇になったと言えるだろう。いちいち時間を掛けてターンをして動くようになったからだ。ターンそのものも高速だが、かかる時間の大小は問題ではない。
なぜなら、相手している全員がそれをちゃんと活用できるくらいには実力があるからだ。
「ほう、ここまでやればしっかり凹むくらいになるんだな。そちらはどうかな局長殿?」
「お前に局長殿などと呼ばれるとバカにされているような気がしてきてならないな。だがこちらも順調だ。空砲らしき音も聞こえてきた。弾薬にも余裕がある。仕掛けていくぞ、申谷カイ!」
普段はいがみ合う関係にある両者だが、意外と組むと相性がいいのは面白い発見だった。同じ種類の得物、違う立ち振る舞い。ここで十分に立ち回れるが、埋め合わせるかのように効果的にハマっていく。
そしてこれは攻めの姿勢あってこそであり、アイムが敵の意識を引きつけているからこそできたことだった。
そして先生には絶えず情報が送られており、最適な的を選び出していく。もちろん人の判断である以上、最終的には現場判断。高効率で兵器内部の損傷が進んでいく。
「チームで戦うってこういうことか……うん、いいなあ、ワタシもこういうの、好きかもなぁ……」
ナツノヒは焦がれた。憧れた。兵士は育てた。それよりも強い兵器を持っていた。それよりも、自分の方が強いという自信も持っていた。彼女は、自分に無いものを見た。見せられた。魅せられた。
自分の財産がボコボコにされ、壊されていくのが見えるが、それはもうどうでもよくなっていた。
「なんか大事そうなモーターはっけーん! アイム、トドメ刺しまーす!」
撃ち抜いた。何が起こるか分からないので、全員一斉に下がる。そして悪い予感は当たった。ハチャメチャに振動を起こし、何トンあるのかという謎素材の塊が人の肩くらいの高さまで跳ねたり、バランスを崩しそうになったりしている。どの突撃よりも、砲撃よりももしかしたら危ないかもしれない最後っ屁の後に、止まった。
「ふー……勝った、な」
「私にも、生きた心地がしないと思えるような心があったなんてな。確かに強いが、乱暴が過ぎる!」
「びえ〜ん! ううっうっ、えぐっ……うわぁーん!」
各々が思い思いの反応をしている。ゾーンに入っていたのかアドレナリンのせいか、集中力が凄まじかったアイムだったが、それが嘘のように大泣きしてしまった。一息つこうとしていたカンナが宥めながら、中間の元に戻ってくる。
一方、ナツノヒはちょっとだけ引いていた。
「え、あんなに凄かったのに? やばいなあ、あの子。まあ良いか。話の続きをしないとね」
彼女は、結局は同じだった
忌み嫌っていた、欲深い者達と
故に知る、全てを等しく分け与えたとて
それは全てが、等しく足りぬことしか意味しない