Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
要は、こういうことだ。
ワープするような動きをしているその一瞬は、ナツノヒの体はその道のりの全部に渡る長さに引き伸ばされている。そこに弾丸を置くことができれば、命中ということになるのではないか、と。
その一発が有効打になるほどのものかは分からない。案外それだけで認めてくれるのかもしれないし、このあまりにも難しい条件で戦闘不能に追い込まなければならないのかもしれない。
「その様子……理解したね? 驚異的だよ、最初に何かしら誤解をしたり、ただ速いだけみたいに思い込まれたりするものかと思ってたけど。どうやら君達の先生というのは相当なやり手らしい」
というよりは、シッテムの箱という異聞帯においてすら他に扱える者のいない不可思議な端末の性能が凄まじいというところだろう。アロナやプラナも頑張っているが、その情報を処理する土台が良すぎる。
だがその端末が導き出した常識外れの結論も受け入れられる度量が、その使い手には肝要だ。先生は常識の通じない体験をしすぎた。そういう意味では、最適なのだろう。
「弾丸は奴の移動よりもかなり遅いと言える。動かれてから撃つのでは間に合わない」
「なら、観察です。見たところおそらく、最高速では曲がれませんから。どこに飛ぶか、当たりをつけられませんか?」
「曲がれない? ならどこで踏み切っている? こちらに撃っている最中はどう見ても着地していないぞ」
それも、観察だ。ごくごく短時間であっても、よく見れば何かしらの特性を見抜くことができる。発想を逆にしよう。そもそも、どうやって連射をしている最中ずっと浮いたままでいられるのか。体感時間は極限の集中が引き延ばしているとはいえ、それを踏まえてもあまりに浮きすぎているように思える。
これを空間操作として考えるなら、地面との距離を遠いことにしている、といったところか。あるいは、物理的距離の引き延ばしのタイミングということか。射撃には支障が出ていない辺り、かなり能力を使いこなしている。
逆に、ワープ移動のタイミングは距離を縮めている。速くなった瞬間に、いきなり地面に降りるような挙動をしているのではないか、と予想した先生は、観察してみることにした。
予想は的中。足の動きから、どちらに蹴ろうとしているのか、おおよその見当もつけられそうだ。
“ここまで分かったら、当てられそう?”
「分かりません。ただ、そうですね。実際問題としてどうかという話を抜きにして、私の感覚に従って言うのであれば……あなた様が、信じてくださるのなら、必ずや」
「何をどうしたらそこまで信頼を置けるんだか。一目惚れしたとかでもないとあり得ない話だよ……まあ、同感だ。やってみせようじゃねーの」
足をよく見る。蹴る方向は予想がある程度できる。狙いをつけられると避けるので精一杯だが、逆に自分狙いでないと分かれば、流れ弾を喰らう位置でない限りは集中して狙いにいけるはずだ。そして、そのチャンスはワカモに訪れた。元より武器種の性質上、チャンスは彼女の方が期待できた。
「そこっ!」
タイミングが絶妙に合ってくれれば、相手の反応が間に合わなければ、そこに当たってくれる。そう期待していたのだが。
「……ヒヒッ」
その笑いは嘲笑であろうか。それとも、あまりにも楽しすぎるから、抑えきれなくなったのだろうか。ナツノヒの足は唐突に向きを変えてから、地面を蹴ったのが見えた。当然、移動して現れる先も予想外の場所。
それは、ワカモの真横だった。
「何をっ!?」
「それに気付かれただけじゃ、ワタシは捕まらないよ」
それを言うためだけに、わざわざ変更した行き先をワカモの側にした。だが確かに言う通り、こういう後出しができてしまう以上まだこれでは一撃を入れるには至らない。
解決法はふたつ考えられる。まず、後出しにすら対処できる方法を探すこと。もうひとつは、後出しが不可能なシチュエーションを探すこと。これは容易ではないことであるかのように思われた。
だが、ここでレイアが閃く。この方法ならどうか。軌道の計算は分からないが、しかし確実に最初から決まった地点を目指していなければ成り立たない移動が、ひとつだけあることに気付いた。
レイアの真上。跳躍して向かう先。ジャンプして移動するのだから、その後の落下は方向転換できない。そこから破壊の一撃が落とされる際の回避方向を、ハッキリと彼女は決めていたのだ。
「ここなら、避けられないだろ!」
ナツノヒは困った。本当に言う通りだったのだ。大きく斜めに跳躍して、ちょうどナツノヒの落下起動に合わせて撃たれた。極限まで加速した思考は、そのまま受けるべきだと判断した。
あるいは、急加速して着地をしようとしたものなら、体に弾がめり込む事態になりかねないと考えたか。
撃ち落とされる。落下の衝撃は落下距離そのものが小さくなれば抑えられる。そのまま立ち上がればいい、と次に備えようとしたが、やや行動が遅れたか。
「そこまでです。あなたって、刃物が直に当たるのは平気かしら?」
首元に銃剣を突きつけるワカモ。全力の大急ぎで接近したので息切れ気味だが、手元はブレない。レイアもまた、着地した勢いのまますぐに接近して銃口を押し付ける。
「今撃ち返して脱出してもいいんだけど……ちょっとこの移動疲れるし、もうこれ以上はやれないかな。おめでとう、試練は終わりだよ」
普通はここまできたら「勝ち」でいいのだ。力押しはできるかもしれないが、戦略的に負けた以上は意地を張るのはみっともない。
少なくとも、彼女の意図としては、これで十分だった。
“なんというか、君……常識外れにも程がある戦い方するんだね。ちょっとビックリした。っていうか、時空を歪められるって、本当に人間?”
「なるほど、人間かどうか疑うときた。アレだね、純粋な疑問って感じで。よっぽど人外と会う機会が多かったみたいだ。うん、まあ、その疑いは正しい」
“つまり……?”
「ワタシは、神として作られた命。人の身から神になった王が生み出した、