Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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序:異聞帯への旅と「舟」

 シャーレに集まったのは、氷室セナ、宇沢レイサ、白石ウタハ、久田イズナ、それからD.U.が元々活動拠点である尾刃カンナ。カンナは仲間と連絡が通じるが、他は孤立した身と考えると、状況はかなり厳しい。

 だが、そんな中にも希望はある。その「希望」をその頭脳に、身に宿している生徒と、すぐに個人面談の場を設けることを先生は決めた。

 

“さて、と。こうして私が話そうとしていることは、分かるよね?”

「分かるよ。D.U.から出られるのか、という話だね? 結論を言うと、理論はもう既に出来てるよ」

“それは本当なの!?”

 

 生徒の集合を待つ間、プラナが作成した異聞帯との境界である「壁」の性質調査記録を眺めていたが、あれは普通に通れる代物ではないはずだ。物理の壁でありながら、概念の壁である。言うなれば、「何も通過しない」という定義そのもの。

 異なる世界同士、物事が交わり合わないように、あるいは存在証明の外側に行かないようにするための、そういうあり方なのだ。

 

「私達は、既に体験済みだからね。世界と世界の境界を超える存在、突拍子も無いことだったけれど、それと交戦をして、特に技術的に大きな役割を果たしたミレニアムには、大量のデータが蓄積してる。ミレニアムのサーバーは繋がらないけど、個人用端末にもある程度直接保存してるよ」

“なるほど。後で皆に詳しく話すけれど、あれは世界と世界の壁に近いもののはずなんだ。必要な原理は近いかもね”

「じゃあ、いけるね。本来はもっと次元が高いところにあるが故に、観測できないのが境界だけど、それが三次元空間上に現れたものと考えれば、完成品は見えたようなものだよ」

 

 相変わらず、流石のエンジニア部部長。本当に偶然ミレニアムから離れていたのが功を奏した。

 個人面談はここまでとして、黒服から聞いた話を集まった生徒達に伝えた。

 

 反応は様々だ。レイサとイズナは衝撃で固まり、セナとウタハ納得しながらも表情は険しく、カンナとミヤコは信じていない。そしてそのカンナが、それを言葉にした。

 

「先生は、その……黒服とかいう輩の言うことを、信じるのですか? キヴォトスに異変を何度も齎した人物であるのなら、私としては信用に値するとは──」

“うん、全面的には信用してない。肝心なとこだけは話さないとか、やってきそうな奴だからね。けれど、だからこそ、大枠は嘘じゃないと思う”

「……わかりました、信じます。先生がそうおっしゃるのであれば」

 

 嘘をつく意味も、そこまで感じられないだろう。

 というわけで次に、ウタハに発言してもらう。

 

「皆知っての通り、このD.U.は『壁』により脱出できない。世界と世界の境界となる壁だね。けれど、詳細は省くけど、私はそれを乗り越える手段を用意できるアイディアがあるんだ」

“そういうことだから、私は連邦生徒会にも協力を要請しておくよ。こんな危機だから、バックアップ含めて手は尽くさないと”

 

 ウタハの考えは、「ウトナピシュティムの本船」よりも少し小さいくらいの規模の陸海空全対応の「舟」を作るというものだった。幸い、資材の調達は可能そう、あとは運用のための裏方メンバーの確保、そして多元世界解釈のためのキーが必要。

 

 連邦生徒会は、すぐに信用、了承をしてくれた。連邦生徒会長代理のリンが、プラナにも劣らないスピードで調べを進めていたのだ。

 

「ある意味で、これは軍事でもあります。防衛室長の協力を求めることも視野に──」

“あー、うん。一応まだ、担当はそうだもんね。ただ、ちょっと勝手が違うし、どうしても欲しい時にだけ話に入れてあげて”

 

 などなど、先生とリンが今後の方針を話し合っていると、アロナから呼び出し。

 

「すみません、お話の途中に呼び出してしまって」

“いいよ、急ぎでしょ?”

「あう……別に後でもいいんですけど、我慢できなくて、つい。サンクトゥムタワーとの接続で、変な信号をキャッチしたんです。通信が断たれたはずの、D.U.外から来たような」

“……! よし、ウタハに共有しよう”

 

 彼女から聞いていた理論における、先生の中に生じていた僅かな懸念点。それの解決方法も、すんなりと見付かった。

 シッテムの箱を通じて、多次元世界解釈を行って、超次元航行を行う──この方法には、「道標」が足りなかった。それにあたるものを入手した。実に幸先がいい。

 

 一週間ほどかけて、かなりの急ピッチではあるが、事は進められた。ほぼ急造品の巨大な「舟」が地下空間に出来上がりつつあったが、開発期間の割にかなりの出来だ。

 連邦生徒会には管制室が設置され、役員一同がバックアップを行う。そして本来なら数か月レベルで建造にかかるかもしれない巨大艦の製造は、とにかくあらゆる手段で動員できる人員を投入する。こうして、とりあえずは旅立つ目処が立った。

 

 異聞帯攻略のために集められた生徒達は、「舟」の前で再び一同に会することとなった。

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