Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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1-18:触れ得ざるべくして

 翌日。早朝から、日中にかけて掘り続け、山を穿ち、ユウカの言う「エネルギー反応」の正体を突き止める。その計画のため、行動をしていた。

 移動をしながら、ユウカが進めたデータ分析の資料と、ウタハが夜通し収集していたココホルト君の集めたデータを何度も確認する。それによると、空洞はヒノムの山に向かっていく──途中で、切れていた。というよりは、栓のような何かで塞がれていると見られている。

 そして、その栓というのが、かなり温度が低く、しかし水分量の多い凍土。しかもそこから低温層は続き、その行き着く先というのが、ヒノム山の内の低温層、そのひとつだった。

 

“……アヤシイ!”

「当たり前のことを言うねえ。最初から怪しかったのは確かじゃないか」

 

 日の出前の雪道を進む。この時間であろうと、警戒は怠れない。執行部隊とはプロであるはず。それこそ、夜中であろうと敵を確実に仕留めるための策を練り続けているだろうし、探せる限りは探すことであろう。

 というわけで、先生を警護するために至近距離にカスミとヒナがついているのだが、おかげで空気感が変なことになっていた。

 

 幸いにも、その警戒はする必要もなかったという結果になった。山には誰とも会うことなく、適当に食糧補給ができるくらいの獣狩りをしたくらいだった。準備万端、目標地点まで一直線。

 

“単純な深さで言うと、1000m近いところにもなるけれど、ここから横に坑道を掘れば、皆の技術なら夕暮れまでには辿り着くと思う。万魔殿を迎え撃てるように、何人かはここに留まるけれど、基本は全力で掘り進めて”

「だとしたら、適任は私と、あとは……陸八魔アル。あなた、やれるかしら?」

「やれる、けど……こっちに推す根拠は?」

「だって、掘削機を使うの、向いてなさそうだし……」

「どういうことーっ!?」

 

 相変わらずアルに無慈悲なヒナ、というか一同。ある意味それくらいがちょうどいいが。

 他の全員はとにかく掘る役。スーパー穴掘りテクノロジーがあったとしても、相当な時間をかけなければならない、体力仕事である。早速取り掛かり始めた。

 

「はぁ……生活安全局志望でヴァルキューレに入ったのに公安局に送られた時も、なかなかに悲哀があったが……まさかそんな私が、局長にもなってこんな鉱山みたいな作業をする日が来るとは」

 

 ガリガリと氷を、土を削りながら、カンナはため息をついた。その横で、セナもまた、同じく、と言いながら大きなため息。

 前日は途中で中断となったが、それでも相当にしんどい作業なのだ。この異聞帯が寒い場所で良かった。暑い場所だったら、とてもとてもやってられない。寒いなら勝手に体を動かしたくなる。

 

 1時間と少しが経過。極低温層ではないが、少し温度が下がる層に到達する。土でない成分が増えてきた。かなり硬く、ペースも落ちてくる。坑道自体そこまで広くはとっておらず、それもあって何回も交代しながらやっていて、体力消耗は抑えられていた。

 

「はーい、ちょっと皆下がってね。これさー、これでいけたりしないかな!?」

 

 メグが取り出したのは火炎放射器。氷への対処といえば炎、これで穴も猛スピードで……掘り進められはしない。だが多少はマシになったろうか。

 そろそろ、出入り口で襲撃に備えている先生達ともかなりしっかりと離れ始めた。とはいえ、銃声が一度響けば、即座に反応はできようが。当然そうなったなら、全員が作業を中断して助けに入る気でいる。

 というか、執行部隊はそれくらいしないとすぐに殺しにかかる。

 

 

“……来たか”

 

 遠くから迫ってくる、群れの影。そこまで木が多い方面は向いていないので、よく見える。戦車は無いし、人数も多すぎはしない。だが、だからこそ分かる。

 あれは昨日見た、執行部隊だ。おそらくは、読んでいたのだろう。あの場所を発掘していたからには、ここにも手を出すものだろうと。

 あるいは、ここだけは何かされたらまずいので、最優先で来いと命令されたか。もしそうだとしたら、ある意味答え合わせであり、ありがたい。

 

「どうするの先生、ヒナ? 私は即刻戦闘に移る準備はあるけど」

“戦闘は不可避だろうし、準備をするに越したことはない。けれど、まずは私が前に出る”

「……そう。話し合いをしたいってことなら、先生らしいかも」

 

 近付いてくる。顔が見える。武器の数々も見える。殺意が見える。それでも前で、無防備な姿を晒す。

 これから不倶戴天の敵となる者達への、せめてもの誠意として。

 

“君達が来ることは、分かっていたよ”

「おや、初顔合わせのはずですが。分かっていたとは……いえ、詮索は無用でしょう」

 

 ある意味で変わっていなさそうなアコ。副長という立場だが、言葉を弄する役も担っているか。

 

“気にしないでいただけて助かるよ”

「貴方が──汎キヴォトス史、その教導者ですね」

“そちらの認識ではそうなるかな。ただ、それでも私はただの先生さ。教導者という言葉の響きも、私が背負うには少し重い”

 

 とはいえ。自分の生徒のために世界と戦うのであれば、あの嚮導者と同じ立場にいるのかもしれない。

 ただ、そういう問題ではない。あれは、彼にとっては「哲学」にも近いのである。

 

「まずひとつ、確認をさせてください。自分達が何をするためにここに来ているのか、分かっていますか?」

 “自分達のキヴォトスを取り戻す。そのために、この異聞帯を……消し去るため、ここに来ている”

「そのために、我々を手にかけると?」

“それが生存競争だよ。その最前線をやらなきゃいけないのは、本当に不本意なことだけどね”

「地底探索部の面々は? こちらの推察では、確か手を組んでいるものと思うのですが」

“ああ、そうさ。本人達も納得の上で、協力関係だよ。夢を応援する、その代わりと言ったらなんだけどね”

 

 その時。アコはやはり、全く知らない在り方を選んだ、()()()()()()()()ということを思い知らせてきた。

 

「ああ、やはり彼女の夢は、触れ得ざるべき場所に届く。顕になってはならない、『()()』を求めるのであれば……私達は、それを決して許さない!」

「オッケー、アコちゃん。それじゃあ、執行開始しましょ」

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