Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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1-23:空想からの交信、440iMHzから

 空想のサンクトゥムタワーを観測したことにより、シッテムの箱はアクセス経路を作り出した。アクセスが容易すぎることに違和感を覚えながらも入り込んだアロナから、先生の元に報告が入ってきた。

 

『空想のサンクトゥムタワー、あれは……タワーそのものは、崩壊前のサンクトゥムタワーと何ら変わりはありません! 同じ性質のもので、むしろ本物が崩壊して、人工的に再建中なせいか、システム的にはこちらが本物と認識してしまうほどです!』

“ということは、だよ。観測したサンクトゥムタワーの運営に入り込むことはできないかな?”

 

 ダメ元だが、頼んでみた。それから10と数秒が経過して、アロナとプラナが明らかにダメだったという顔で戻ってきた。

 

『ダメです……本当にモノとしては同じで、異聞帯産という点しか変わらないのに、その一点だけで全部弾かれます』

『原理、分析不能。世界が異なるという理由だけでは拒絶力が不足しています。同時に、()()()()()()()()()()()()()()を検知。こちらも原因は不明です』

 

 やはり、そう事は簡単に運ばないか。ただ、プラナの言い方には引っかかるものがある。確かに、多少の負担は強いられることになったとはいえ、アロナはプラナを受け入れることができた。シッテムの箱、並びにそれに関連するものは、世界線の違いで必ずしも強い拒絶反応を起こすわけではない。

 それに、表現困難、という他では彼女がしなさそうな言い方も気になるところだ。

 

 この結果について方舟の技術班にも伝達する。まずユウカからの応答があった。

 

『先生のシッテムの箱が出した回答と、ほぼ同一の結果がこちらにも出ています。どこかの時点で違っただけで、元々は同一のタワーだった、とするのが自然なのでは?』

“異聞帯の概念からしても、あの日黒服から聞いた話からしても、そう考えるのが自然かな。ウタハはどう思う?”

『モノとして同じなら、そういうことだろうね。ただ、それならこのゲヘナを切り取るために移動したことになりそうだけど、どうやって? そもそも建造物としてどういう性質を持っているのか、汎キヴォトス史のタワーが崩壊し、人工的に再建が進む状況で、むしろなぜ汎キヴォトス史は崩壊していないのか……疑問は尽きない』

 

 そしてこれはおそらく、ずっと付きまとう難題だろう。だが確かなのは、空想が現実になり代われる道理は、最初からあったということだ。勝手に押しのける力は持てておらず、頑張って取り戻さなければならない状況だったのだ。

 キヴォトスの存在は、保障されていない。

 

 そんな中、突然シッテムの箱に直接メッセージが贈られてきた。

 

『テキストメッセージを受信しました! 発信元は──空想のサンクトゥムタワー!? こっちからのアクセスは弾かれるのに一方的に……なんか、イヤな感じです……!』

“メッセージの表示、お願い”

 

 箱と舟の両方のモニターに、物々しい字体のメッセージが表示される。その内容は、このようなものであった。

 

 

見るがよい、これぞ世界の帰着点である

この世界の歩む道は決まっていた

先が知れていた

 

これは、いくらか先の未来には不可避であった出来事

停滞の末に訪れる滅亡、その到来の日

お前達は、ただ早めただけに過ぎないのだ

解決の目がある事案だと、傲った考えを抱いただけだ

 

全ての敵対者たるかの者は、全てを蹂躙する

空想の大地は血により紅蓮の華を咲かせる地獄となる

本塔は、その確定した結末に向かって異聞を運営する装置として、この地に在る

決まりきったモノを実現するため建つ

 

世界を運ぶための演算は、もはや終了した

本塔はこれより、全権限をかの者に移行する

異聞を拒むのであれば、あれを止めてみよ

 

 

“どうしても、あれは倒さなきゃいけないみたいだね”

『そのようだね。事実、あのタワーそのものは今さっき稼働をほとんど停止した。異聞帯の存在証明すらも、移行した権限に含むんだろう。一応こちらからの干渉も試みるけれど、ヴェリタスの真似事程度だから、あまり期待しないでほしいな』

 

 その強大さから、避けられるのなら本当は避けるのが良かった。だが、何が何でも魔王を倒さなければ終わらない。あの塔が言っているのは、そういうことだ。

 あれほど本能に訴えかけるような恐怖を振りまいてきた存在を、そしてあの巨大すぎる敵を、本当に相手にできるのか? 誰もが、少なくとも一瞬は不安を過らせる。

 

「分かりやすくていいわ。あれをどうにかしたらおしまいでしょう? 小難しい(いつもの)仕事を受けるよりよっぽど楽じゃない。皆、最後の戦い、踏ん張るわよー!」

「激励だとしても、これを楽と言ってしまえるのは相当ね」

 

 やる気のアル、それに奮い立たせられる一同、ため息のヒナ。やはりリーダーシップという点ではアルはとても優秀だ。

 

「先生、ここが正念場のようだね」

“カスミはどうだい? やれる?”

「体は震えてるさ。けれどここまで来たからには、お供はする。()()()()()を、迎えるためにね」

 

『今から方舟も動かすよ、目立って襲撃されないようにとか言えない状況だからね! それにこれは一応戦艦として使えるように設計もしたんだ、対大型目標なら十分使えるはずさ!』

“凄く助かるよ、というかそれなら主戦力になるんじゃない? 舟の防衛に重点を置いてさ”

『そうとも! エンジニア部は大型兵器の開発もなかなかやる、そういうところをお見せしようじゃないか』

 

 コスモの方舟が、空中飛行モードに移行する。実は初めての飛行だったりするので、操縦の責任者をしているエアトンはなかなか緊張していたようだ。何度かシミュレートはしているが、それでも実践は命も懸かっているところがあるのでそれはもう緊張する。

 だがちゃんと飛べている。良かった。先生も遠くからその様子を見ることができた。あちらの方が相当速いので、防衛役としてはできるだけ早急に合流する必要がある。急がなければ。

 

 

 万魔殿の戦車隊は、目的地の手前で巨大な白い艦に出くわす。それがこの世界のものではないと、理解するのは一瞬だった。

 

「ほう、これはまた大層な乗り物を作るのだな。汎キヴォトス史」

 

 方舟に向かって語りかける、銀髪がひとり。悪魔の王の視線の先で、だがそれとは目も合わせず武器を手に取った。

 

「疑問に思っていたのだ、壁に阻まれた別世界からどうやって渡って来たのかと。なるほど、合点がいった。では、総員戦闘準備に移れ」

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