Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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1-25:デストロイ・アンド・デストロイ

 キヴォトスの住人というものは、そのスペック故に戦車の能力を相対的に弱く見せてしまう。まして、この個人が強すぎる異聞帯では、普通の生徒達が群れるだけで、少人数では苦しい戦車隊も圧倒できる。

 それもあって、先生は注意力をどちらかというと方舟の方に向けていた。

 

“あの魔王、どうやら直に舟を狙っているみたいだね。レールガンの砲身が壊されたらまずい”

『一応予備もあるにはあるよ。威力は落ちるから、できるだけこっちで済ませたいけどね。それと』

“……ウタハ?”

『それに真っ先に気付いた人達が、上に大急ぎで上がっていったよ』

 

「おーい、先生ー!」

 

 上から聞こえてきたのは、ふわふわとした響きながら、その体の小ささに反した頼りがいに満ちた声。

 

“ホシノ……それに、イズナも!?”

「こっちは頑張ってガードするから、先生は下に集中して。私の盾で防げるくらいだし、それにこのニンジャちゃんが凄くてさ〜」

「主殿をお守りするために鍛えた術の数々、活かす時です! こちらはお任せを! それより、そちら側は大丈夫なのですか?」

“大丈夫って……なっ、しまった!”

 

 戦車隊そのものは、実際脅威でもなかった。だが、マコトはそれを単身でどうにかできる戦力だった。その可能性自体は考慮していたのだが、あまりにも突き抜けている。

 完全に初動で慢心で失策をした。何も邪魔するものが無いかのように、集団のど真ん中で無双している。

 

「なんだ、お前達はこんな相手にいいようにされているのか? その便利な乗り物は何の為に乗っている」

 

 叱責をする余裕まである。これではまずい。

 

“メグ、アル、ヒナ。注意を引きつけ──いや、君達に構わないといられないと感じられるくらいの、とにかく絶妙な横槍を入れるんだ!”

 

 注意を引く程度では、振り切られる。完全に注力しなければならない状況まで追い込まなければ、殲滅は続くだろう。まずは注意を引く段階まで持っていかなければならないが。

 そのための初手として、アルの狙撃がまず一発。的確に、人と人との間を縫って、マコトの後頭部にヒットする。

 

「やれる奴がいるじゃないか。()()()()()()()()()、痛かったぞ」

「なんでちょっとしか効かないのよー!」

 

 アルの使う異聞帯の銃の性能そのものは慣れたものと同じくらいか、少し強いくらい。アルのスナイパーライフルは元々、ヒナにヘッドショットを決めてちょっとした反応が来るくらい。強靭さはそんな彼女とほぼ同じ水準といったところ。

 そのため、それ相応の銃器を持てるくらいの存在が相手にしたいところだ。そのための、メグとヒナなのだが、問題がひとつ。

 

「ちょっと出てきてよ、撃てないよ!」

同士討ち(フレンドリーファイア)は不可避ね。覚悟の上でやる?」

「無理無理無理、皆を撃つのは無理! それならテキトーにそこら辺の戦車撃ってヘソでお茶を沸かすよー!」

「……()()()()()、って言いたいの?」

 

 手と首をブンブンというけたたましい音が立ちそうな勢いで振るメグ。片手持ちしたショットガンで、アルに対して反撃をしてきた。狙撃手らしくかなり距離はとったのに、普通に当たる精度で返してくる。ショットガンというものは、遠くに狙い撃つものではないはずなのに。

 味方集団を分離させていきたいところだが、移動させようとしてもついて来られるに決まっている。あちらから出ていかなければならないようにするには、どうするべきか。

 

“出てこなきゃ当たらない、そう思わせて誘い出すのがいいか。アルは攻撃を当てつつ回避に意識を向けたほうがいいかも”

「簡単に言ってくれるわね、もう〜!」

 

 などと言いつつ、なんとかできている。それでも、まだ頑なに集団から出ない。内側から、何かしらの爆発力を──そう、祈りながら、指示を出す相手を探していたところ。

 

「……! なんだお前!?」

「聞こえたよ先生、こいつのことをメッタ撃ちにしたいんでしょ! 私も力になって……ぶぎゃっ!」

「本当になんだお前は? それで喰らいついているつもりか?」

 

 ジュンコが急にゼロ距離まで詰める。鬼気迫る動き、顔つき、迷いのない接射。それが大してマコトにとって痛いわけではないが、格好の的となりアルが撃つ隙を与えている。

 これが痛いために、余計に苛立ってきた。

 

「なんなんだ、まだ動くのか!? 構わないでおく方がいいのか……ええい、鬱陶しい!」

「私は皆みたいに、すごく強いわけじゃない。だから、ここで頑張らないと、ゲヘナを取り戻しても……胸を張っていられないでしょ!」

 

 その気力だけで迫る姿勢が、まさに先生の待ち望んだ爆発力を生み出す。ジュンコに構いすぎることが、もはや無意味であると、思い知らせることになる。

 希望を託そうとしているなら、その希望を潰えさせるのが効率的──そう見たマコトは、ついにその誘いに応じた。

 

「乗ってやろう、そこまでするのならな! 姑息な目論見など私には通用しないということを、見せつけてやる!」

 

 まず、ヒナとの距離を急激に詰める。マコト側からだけでなく、ヒナ側からも。二人共、特に大きな理由もなく、しかし強く望んでいた。

 こいつは、自分が倒さねばならない。直接対決の構図になるのは必然だった。

 

 当然、メグとアルも援護射撃に入る。だが3対1という不利に、考えもなく乗る万魔殿議長ではない。

 

「イロハ、イブキ、チアキ!」

 

 戦車、歩兵が分断する。マコトと比べれば、雑兵にすぎないかもしれないが、戦車隊と学園警備隊の筆頭格達を、ここに集中させれば、タイマンの状況を作り上げることはできる。

 

「私達は壁役ですか、あの先輩人使い荒いんだから全くもう」

「壁役じゃないよ。やっつけるんでしょ、そうだよねチアキ先輩!」

「私ぃ!? そ、そうですね。それができれば最上ですとも、イブキちゃんいいこと言う! ……はぁ、また陸八魔アル(あのスナイパー)いる……」

 

 こんな調子でも精鋭だ。突破するにしても、相当に時間は稼がれるだろうと、一層気を引き締めた。

 

「空崎ヒナ。全てはお前から始まったのだ。あの好奇心の獣どもに、盗んだ知恵を与えた。その結果がこれなのだ。償いは、させなければならない」

「あなたに似てるだけの、別人だけれど……私にずっと、嫌がらせしてくるのがいるの。今までずっと、あいつは逃げてばかりだったけど、あなたは向かって来てくれるのね」

「……なに?」

「ずっと待ってた。やっとその顔を、()()()()()()()()叩き潰せる」

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